第十四歩
sideなのは
はやてちゃんと合流を果たした私は、先ほど聞いた不可思議な現象についての詳細とはやてちゃんの考察を聞いた。
はっきり言って信じられない。
だってそうだろう。
触った感覚ある幻術。
それはもはや幻術というカテゴリなのかも疑わしい。
それに魔力の使用痕跡までもがない。
つまり機械でなくては発動を感知することはおろか、かけられたことにする気付くことができない。
「なあなのはちゃん。
春休みのあの事件のこと詳細に思い出してくれへん?」
『あの事件』
はやての口から出るその言葉をなのはは思い出す。
それはミッドチルダで春休み中に発生したロストロギア盗難事件。
その場ではなのはだけがその事件において捜査を手伝った事件。
その日は、用事で私は本局を訪れていた。
用事といってもちょっとした報告だけの予定だった。
しかし、その日異変が起こったのだ。
本部近くの広場にガジェットが突如出現したのだ。
数は大したことはないが、急なことに広場では混乱が生じ、騒ぎの収拾になのはも駆り出された。
目的が読めない。
それが私の不安を若干煽る。
ガジェットをすぐに破壊した私はいやな予感がして本局に先に戻った。
そして、私はその事件に遭遇する。
本部に着くと遺失物管理科の方で魔力反応がしたのだ。
そしてそこに行くと、見張りの局員が倒れ、ロストロギアの安置してある部屋の扉が開いていたのだ。
すぐに周りに連絡し、私は中に突入する。
しかし、中には人影は見当たらなかった。
現場確認のために、レイジングハートにここら一帯にエリアサーチをかけてもらう。
すると生体反応がでた。
それも室内で。
相手もそれに気付いたのかすぐに逃走を図った。
レイジングハートに管制してもらい私は逃走者を追跡を行った。
不可視の敵の追跡は簡単なものではなかった。
レイジングハートのおかげで追跡することはできた。
そして、人のいない開けた場所に着いたとき私はすぐに攻撃に移った。
私の放ったシューターは逃走者を完全にとらえ直撃した手ごたえがあった。
悲鳴からして相手は女性。
しかし、そこでもまたガジェットが出現する。
それも広場に出現した数とは比べ物にならない数だ。
そして、それの迎撃をしているすきに逃走者の反応がロストし、逃げられる。
私は思いっきり辛酸をなめさせられた。
それが私の春休みに遭遇した事件の結末だった。
被害にあったのは私の始まりのロストロギア『ジュエルシード』。
その後も証拠すら見つかっていない。
今思い出しても悔しくなる。
「けどはやてちゃん。
確かそれって魔力反応がなかったから科学的な光学迷彩だって話じゃなかったっけ?」
「確かにそうや。
けどよく考えてみてや。
もしそれが魔力を必要としないレアスキルならどうや。
たとえば幻術系の。」
はやてちゃんの言葉に私ははやてちゃんの考えていることを理解した。
それが示すことはつまり
「裕也君があの逃走者だということ?」
「あくまで可能性の話や。
今シャマルに頼んで監視してもらっとる。」
しかし、私はその意見はどうかと思う。
だってそうだろう。
いくら顔がばれてないとはいえそれはあまりにお間抜けすぎないだろうか。
それにここには、フェイトちゃんやはやてちゃん、零君もいる。
私も含めこの三人は良くも悪くも有名なのだ。
そんな人間がいるのにこの学校に通うとは到底思えない。
最悪私に気付いた時点で、転校なり何なりして姿を隠すだろう。
「はやてちゃん。
さすがにそれはないと思うの。
無理やりこじつけた感があるし。
第一危険を冒してまで私たちのいる学校に通うメリットがないよ。」
「けどな、なのはちゃん。
そう考えるとあの子のなのはちゃんを見る視線も納得がいくンよ。
それに、私たちも常駐してるわけじゃないんよ。
これをうまく利用すれば下手な管理外世界より怪しまれず安全や。」
確かにそれは一理ある。
私たちがいる分この世界ではあまり大きなことはできない。
しかし、私たちの目をかいくぐることができれば、安全。
「だとしても裕也君をここに通わせる目的がわからないよ。」
その疑問にもはやてちゃんは答える。
「私たちの監視やないか?
用済みとして切り捨てられる人材。
もしくは私たちと相対してもなんとかなるほどの実力者。
そうなるとあの幻術以上のものもあるうえ、今までの行動が全部演技の可能性もありや。
それにもし、あれらすべてが演技なら、最悪裕也君をおとりに私たちを誘い出して一網打尽を狙っている可能性もある。
その場合、私たちが相手するのは裕也君だけでなく、どれだけあるかもわからないガジェット。
そうなったら最悪や。
そのうえ相手はジュエルシードまで保有してる。
だからとりあえずしばらくは裕也君の監視と警戒や。」
その言葉に私はうなずく。
しかし、話は理解はできるが心では信じたくないと思う自分がいる。
そして、頭には先ほどまで話していた嘘の下手な、これから仲良くなっていこうと心に誓った裕也君の顔が浮かぶ。
けどそれ以上に今の焦ったはやてちゃんが心配だ。
はっきり言ってこんなに焦ったはやてちゃんは見たことがない。
はやてちゃんは自分の状態にちゃんと気付いているのだろうか?
あの事件については本作でのオリジナル設定です。
感想でも多かったので、前回と今回でのはやてについて解説
前回と今回で主人公が異様なまでに黒かったりした理由は焦りです。
別に保身とかではありません。
①ガジェットの存在
この作品においてなのははガジェットにより倒されるイベントは回避されていません。
そして、本作のはやては形は違うが製作者は同じではないかと考えています。
事件において出てきた場所にも問題があります。
広場。
そこには関係のない民間人ももちろんたくさんいますので、その民間人がなのはと同じ状況になって助かるとも限りません。
なのはが遭遇した追加のガジェットもその要因になっています。
②ジュエルシードの存在
本作のはやては闇の書事件を通じて、誰よりも大きな力に敏感になっています。
なぜなら自分が原因で一度地球は滅びそうになりましたし。
数がそろえば世界を吹き飛ばすことの可能なジュエルシードを敵が保有しているという状況は、彼女に大きな危機感を与えています。
上記の理由も含みはやての心理状況は
『より多くの民間人を救うことができるなら、間違いだったときの汚名なんて気にしていられない』
って感じです。
それにガジェットもジュエルシードも、対応が遅れれば周りの被害は確実に大きなものであるというのもはやての焦りの原因です。
原作においてもはやてはすぐに対応できないことを嘆いていますし。
ガジェットに関しては敵の保有数不明というのは普通に考えても脅威ですしね。
そしてそれを最終的に形作ったのは経験不足です。
いまだはやては中学二年生。
いくら濃い人生を送っていても、やはりまだ全然足りていません。
以上のものが作用し、はやては盲目とまで言える必死さで、裕也を疑っています。