第二十一歩
side はやて
休日二日間の激闘を終え、私はいつも通り登校する。
今思い出しても憂鬱になりそうなあの二日間。
いや、私たちの守りたいのは確かにあんな日常ではあるのだが・・・。
しかし、監視するにはあまりのも退屈な時間。
だが、それは平和である証であって・・・。
そんな思考が堂々巡りし始めた。
どうやらこのことは私にとって別の意味で地雷的な要素があるのかもしれない。
考えるをやめることにした。
そうして、今日もいつも通り教室に入る。
「おはようさん。
なのはちゃん、フェイトちゃん。」
「はやてちゃん、おはよう。」
「おはよう、はやて。」
なのはちゃんとフェイトちゃんいつも通り挨拶を返してくれる。
いつも通りだ。
しかし、どうやら裕也君は今日はまだ来ていないようだ。
普段は私たちよりも早く来ているようなので珍しい。
いや、新学期始まってから数日しか経ってないのに珍しいも何もない。
「なのはちゃん。
今日はまだ裕也君来てないんやね。」
「そうだね。
けど珍しいね。
いつも私たちより早く来ているみたいだったのに。」
どうやらそう感じていたのは私だけではなかったようだ。
「はやて。
そういえば、はやてって追試になってなかったっけ?
なのはもそうだけど追試今日らしいけど大丈夫?」
フェイトちゃんがそんなことを言ってくる。
この二日間を振り返ろうとしてみるがやめる。
意味がないのはわかりきっているのだから。
「なのはちゃん。
私どうしたらいんやろ。
今日が追試だなんて思ってなかったから勉強なんてしてへんよ。」
「はやてちゃん。
私も裕也君のことで頭がいっぱいで勉強なんてしてないの。」
私たちは同時にうなずきあい、そして同じ言葉を口にし、ある人のところに突撃した。
「アリサちゃん!
助けて!」
それはもちろんアリサちゃんである。
「ちょっ!?
なのはも、はやてもそんなに焦ってどうしたのよ!」
「今日追試らしいだけど、あっちの関係でいろいろあって勉強できてないんや!
ほんと今回だけでいいから助けて!」
アリサちゃんは困った顔をした。
そして、一言
「あんたたち。
今回はあきらめて補習頑張りなさい。」
どうやら今回は追試すら生き残ることができないようだ。
そのやり取りの後、先生はやってきてホームルームが始まった。
「今日の連絡だが、まず追試は日程変更で明日だ。
それと御神。
実はおまえが休んでいる間にテストがあった。
だからおまえ追試な。
追試者は勉強しておくように。
あと誰か鈴木の休みの連絡来てるか?」
どうやら神は私を見はなしていなかった。
それにしても、連絡がない。
もしかして、平日に行動を起こすつもりなのか?
そう思考し、すぐにサーチャーを飛ばした。
そうしていると教室に無機質な音が響きわたった。
誰かが携帯の電源を切り忘れたようだ。
「誰の携帯だ?
学校では電源切っとけ。
それと今は没収だ。」
そう言って先生が携帯の持ち主に歩み寄る。
そして持ち主からある意味驚きの言葉が紡がれた。
「先生。
鈴木からみたいです。」
先生は少し驚いた顔をして言った。
「いったん出て、そして俺に渡せ。」
その生徒はおとなしく従った。
「・・・・もしもし。」
持ち主の生徒はそう一言つぶやいた。
そして、すぐに先生に携帯を渡してその生徒は座った。
そうしている間にサーチャーは裕也君の家に到着する。
私は意識をそちらに傾け、中の様子をのぞきこんだ。
そして、そこに移る映像に私は驚愕した。
おそらくそれはある意味では奇跡体験と言えるのではないのだろうか。
いや、むしろ笑いの神が君臨したのかと思った。
通常そんなことコントの世界でのみしか起きるはずがない。
なぜならそこに映っていたのは
『膝を抱えるようにして、部屋の片隅で片手には本来ドアについているはずのドアノブを持ち、電話をしている裕也君の姿』
だったからだ。