第二十五歩
side なのは
最初に疑問に思うことがあるとするなら、はやてちゃんはなぜここまで焦っているのだろう。
それが今の私の感想だ。
確かに、最初に送られてきた映像を見たときは驚いた。
裕也君は掛け声と、ほんのちょっとの魔力でデバイスを使わずに転送魔法を行ったのだから。
いや、おそらくは転送魔法ではなくレアスキルなのだろうが。
それを少しだけ頭の隅で考察し、私はフェイトちゃんと先ほどのナイフについて念話で話し合うことにした。
≪フェイトちゃんはあの魔法どう見る? ≫
≪あの魔法って、裕也が使ってたナイフのこと? ≫
≪そうそれ。
今ちょっと考えをまとめてるんだけど、フェイトちゃんはどうみえたのかなと思って。≫
実際、フェイトちゃんの立ち位置は一番物事の考察に適している。
なぜなら、途中参加のために、対象に変な感情移入や、先入観がないため正確な分析ができるからだ。
≪私は、あれは魔法じゃなくてレアスキルじゃないかと思うんだ。
転送魔法にしては魔力の消費が異常に少ないし、何よりナイフが空中を動き回るのはへんだよ。≫
≪やっぱりフェイトちゃんもそう考えるんだね。
そういう意味では、裕也君は珍しいレアスキルを2つも持ってるなんてすごいね。≫
確かにレアスキルの複数所持は珍しい、けどあり得ないこともないのは事実なのだ。
≪確かに珍しいけど、最近管理局に入った人に似たような能力の人がいた気がする。
ええっと・・・・。
たしか『投影』って名前だって話じゃなかったかな。
けど、効果には大きな差があるね。
聞いた話だと、その投影で召喚した物は、ほとんどが大きな魔力を秘めいて、召喚するものそれぞれが別々の能力を持ってるて話だったけど・・・。
裕也の能力は、そこまでのものじゃないんじゃないかな。
たぶんだけどあのナイフは、裕也の命令をただ実行するだけのものじゃないかな?
命令できる数は3つだと思う。
そうじゃなきゃ、防御と迎撃をわざわざ分ける必要はないしね。≫
やはりフェイトちゃんはさすがだと思う。
今の若干私情が見えている私や、完全に焦っているはやてちゃんではここまでの分析はできない。
本当にフェイトちゃんは頼りになる。
そしてフェイトちゃんはまだ続けた。
≪ここまでいろいろ言ったけど、もし戦闘になるようなことになったらだけど、あの能力に関してはあまり気にする必要はないかもしれない。≫
ここでかなり予想外の見解が飛び出した。
≪フェイトちゃん、それってどういうこと?
私的には幻術と一緒に使われたら、かなり厄介な能力ではあると思うんだけど。
多分私じゃ防げないの。≫
実際問題、私では幻術にかかってしまったら防ぐことができない。
≪確かに、幻術にかかってる状態で自分の意思で防ごうとするのは無理だよ。
だけど、私たちには心強い相棒がいるんだよ?
もうナイフの存在は私たちは知ってる。
だからあらかじめ、バルディッシュ達にナイフに注意してもらって、私たちが駄目な時は、防御してもらえばいいんだよ。≫
私は完全に盲点だった。
確かに私たちにはともに空を飛んできた心強い相棒がいるのだ。
それを少しないがしろにするような思考をしたことに私は申し訳なく思った。
≪それと一つ気になったんだけど・・・。
裕也って戦闘素人じゃないかな?≫
ここで無視できない意見がまた飛び出した。
≪フェイトちゃん、それなんで?≫
≪ん?
それはナイフの配分の考えたら一目瞭然だとおもうんだけど。
だって、あのナイフじゃ砲撃魔法も、広域殲滅魔法も防げないんだよ?
それがわかってるなら、あんなに防御に使うんじゃなくて、むしろ防御に減らしてでも迎撃に使うべきだよ。
そうじゃなきゃ、防御以前に、火力で一気に抑えつけられちゃうし。
そういう意味ではある意味幻術は怖いね。
何を使ってくるか全く想像もつかないから。
けど、どうしたの?
いつものなのはなら気づけないほどのことでもない気がするけど。≫
もしかしたら、私は気付かなかっただけで、はやてちゃんに似たような状態だったのだろうか?
もう少し落ち着かなくては・・・。
フェイトちゃんの洞察力は本当にすごいと思う。
私も今後のために、そういう方面ももっと勉強しなきゃだめだな。
そう思考していると、
「この問題を・・・。
じゃあ高町さん、この問題を黒板に書いてください。」
先生にあてられてしまった。
はっきり言おう、念話に集中し過ぎて、説明を全く聞いていなかった。
つまりどういうことかというと、
≪フェイトちゃん、どうしよう聞いてなかったからわかんないよ!?≫
≪なのは、落ち着いて!
この問題ならわかるから、教えてあげるから、とりあえず前に行かなきゃ!≫
私は、こっちのお勉強もちゃんとしないといけないようだ。