第二十六歩
side はやて
裕也君の2つ目のレアスキルであるナイフを確認した今日、裕也君は学校に来ることはなかった。
先生の話によると、体調が悪いと連絡が裕也君からあったらしい。
本人から連絡があったのではどうしようもないが、さすがにサボるならもう少し別の言い訳を使うべきだと思う。
たとえば、脱出の際に足を怪我したとか。
まあそれは置いといて、現在私は、なのはちゃんや、フェイトちゃんともに、とある人物を待っている。
場所は私の家。
「クロノ君遅いな。
やっぱり時間の調整うまくいかんかったんやろか?」
そう待っている人物は、クロノ君だ。
「お兄ちゃんなら昨日にはこっちに来てたよ?」
フェイトちゃんからそんな言葉が聞こえてくる。
すると若干だが疑問に感じてしまうことがある。
「そうなんか?
じゃあなんで私に連絡くれなかったんやろ?」
「ああ、それはお兄ちゃんこっちに着くなり、すぐに寝ちゃったんだよ。
話によると、二日間の徹夜の末、書類をさばいてこっちに来たらしくて。」
そう言ってフェイトちゃんは苦笑しながら答えてくれた。
まさか、そこまでしてこっちにきてくれているとは知らなかった。
さすがに申し訳なく思う。
「そうなんか。
じゃあ文句言うのも酷ってもんやな。
本来、私がお願いしてきてもらってるんやし。」
そんな話をしていると、家のインターフォンのなる音が聞こえてきた。
どうやら来たようだ。
私は席を立ち、玄関に迎えに行った。
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「とりあえず、クロノ君お疲れさん。
ちょっと急やけど、現状報告から入らせてもらおうと思うんやけどいいかな?」
「こちらこそ、遅れてすまないな。
それでかまわない。」
そう言ってクロノ君は席に座り、こちらに目を向ける。
「まず最初に、いままでこちらで確認した監視対象『鈴木裕也』に関する情報や。
シャマルに調べてもらった結果、裕也君はリンカ—コアを持っていることが確認されているが、デバイスの有無は確認できてない。
リンカ—コアのランクは推定Aランク。
そして、レアスキル『幻術』。
それの効果は、私が体験したもので、幻術であるが、実際に触れた感触が存在するものや。
それと、追加事項で今日判明したことなんやけど、他にもレアスキルを保有してることがわかったんや。
その能力はおそらく『ナイフの召喚』や。
こちらの方は、私たち3人全員が確認したものなんやけど、はっきり言って、これもかなり危険なものや。
私たちが確認できたのは、裕也君本人が、ナイフに何か命令し、ナイフが命令通りに動いているとこやった。
その様子から、おそらくナイフはシューターのようなものやと思うんやけど、一番の問題はそれは刃引きが全くされてる様子はなかったことや。
つまり、もし私たちが裕也君と戦闘になった場合、血を流す結末になる可能性があるっちゅうことやね。
それに、ナイフの能力と幻術の能力が並行使用可能なものなら、対処はほぼ不可能じゃないかと思うところや。」
それを聞いたクロノ君は少し考えるようなそぶりを見せ、聞いてきた。
「はやて、そのナイフに魔力反応はあったのか?
もしないならないで、珍しいスキルになるが、もしそのナイフが強大な魔力を秘めていたなら、これはかなり危険なものかもしれない。」
「ナイフには、魔力反応はなかったはずや!
けど危険なものってどういうことや!?
何かこの能力に関することでわかったことでもあるんか!?」
「はやて、とりあえず落ち着いてくれ。
最近入局した、局員に似たタイプの能力を持った局員がいたというだけだ。
ただその能力自体は、かなり強力なものだったから、使い方を誤ればかなり危険なものという意味だ。
ところで、なのは達はその能力をどう見ているんだ。
はやてと一緒に確認したんだろう?」
そう言ってクロノ君は、なのはちゃん達に話を振った。
確かに、私だけの目線で語られたより、他の人からもどういう風に見えたかは、大きな情報となるだろう。
実際のところ、まだなのはちゃん達の考えは、私も聞いていないので気になっているのもまた事実だ。
「私とフェイトちゃんの見解では、あのナイフに関してはそれほど危険性を感じないという感じかな。」
私は、なのはちゃんの意見を聞いたときに、驚きのあまり声が出なかった。
だが、なのはちゃんがここまで言う以上、何か対処法がすでに思いついているのだろう。
この2人の友人の頼もしさに私は、素直に尊敬の念を感じた。
「けど、安全確保にも条件が合って、インテリジェントデバイスの所有が絶対条件なの。
理由は、幻術を使用された状態でナイフを飛ばされたら、私たちでは対処できないけど、機械であるレイジングハートなら、惑わされることなく防御を行えるからだね。
だから、もし裕也君と対峙する場合は、私とフェイトちゃんが出るよ。」
「そうか。
だがそのときは、僕も同行しよう。
さすがに、まだ正規の局員じゃない、なのは達だけを行かせるわけにはいかないからな。
じゃあとりあえずはこれで話は終わりか?」
「じゃあお話はこれでお開きやな。
ところでみんなうちで夕食食べていかへんか?」
そう言って、今日の話し合いを終わらせ、みんなをねぎらうことにした。
そうして、私たちは穏やかな時間を過ごすのであった。