第二十七歩
side 零
突然だが、最近俺は、モテモテ系の主人公の大変さを理解できた気がする。
本局に行けば、女性局員に囲まれてしまい移動のときに少々苦労してしまう。
ミッドの町に行けば、俺のサインを求めて、また人だかりができてしまう。
地球の町を歩けば、逆ナンパをしてくる女性が後を絶たず、買い物がなかなか進まない。
そのなかではある意味楽なのは学校である。
なぜなら、囲まれはするが、ミッドほど人数が多いわけでもないからだ。
まあそれは置いといて、仕事が終わり、入学式から、数日ぶりに来た俺は今日もあるものの多さに悩まされていた。
それは、下駄箱と、机の中にあふれんばかりに入っているものだ。
ここまで言えばわかるだろう。
ラブレターだ。
学校に来るたびに、これをさばくのは実は結構大変だ。
だってそうだろう。
それには、多くの場合、待ち合わせ場所と時間とが書いてある。
しかし、俺には体は一つしかない。
つまり、もし同じ時刻に体育館裏と屋上に呼び出されるようなことがあれば、片方はいけないことになってしまうのだ。
俺が行かなければ、その片方の少女を無視したことになってしまう。
はっきり言って、それが原因で俺の評判が下がるのは勘弁願いたい。
なぜなら、俺は、主人公であり、なのは達にとって、俺といることが常に誇れるような人間であらなければならない。
もし、俺が、一人の少女の思いを踏みにじったと聞いたら、なのは達は俺を誇ることはできるだろうか。
いや、できないだろう。
だから俺は、すべてを読み、行くのが無理であろうものならば手紙の返事を書く必要がある。
俺は全力でラブレターに立ち向かった。
書類の山を最近まで、さばいていた俺にはこの程度の分量なら、一時間目に始まる前には全部読み、マルチタスクで返事の内容を考えることなどたやすい。
そうして、全力で読み進め、返事を思考していると、はやての笑い声が聞こえてきた。
一度手紙から目線をあげ、周りを見渡すと、どうやら先生も来ていたようだ。
全員が笑っているわけでもないので、先生が面白いことを言ったということではなさそうだ。
きっと先生の言った何がはやての琴線にふれるものがあったのだろう。
ぜひとも、それを俺も共有したものだが、今から笑ったんじゃ完全に変人だ。
それは諦めよう。
しかし、はやての笑い声は、俺に活力をくれるようでいつまでも聞いていたいと、心の底から思う。
あぁ、癒される。
そして、これは俺が守るものだと思うと、さらに活力がわいてくる。
だが、それと一緒に少しばかり最近何もなかったか心配になった。
なぜなら、最近俺は時間が取れず、はやてたちをかげから護衛できていない。
それに加えて、忙しさのせいであまり話せていない。
俺がいなくて、寂しさを感じていないだろうか。
もしくは何か困ったことや、悩みはないのだろうか。
本当に心配だ。
だが、はやて達のことだから、なにか困ったらきっと一番に俺に頼ってくるはずだ。
だって俺はヒロインを守る主人公なのだから。
はやてから癒された俺は、また手紙に目線を目を戻してさばき始めた。
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手紙をさばき終えた俺を待っているのは返事を書く作業。
これに関しては、授業中も使わなければ昼までに終わらないだろう。
今回書かなきゃいけない返事の数は一五枚。
俺は、普段から鞄に入れている、少し大きめで、デザインが割とお気に入りの便せんをとりだした。
そうして、先ほどマルチタスクで考えていた内容を思い出しながら、心をこめて、丁寧に書いていった。
ここで一つ注意することがあるとすれば、それは、絶対に雑に書いたり、作業だと思ってはいけない。
理由は簡単だ。
そうしなければ、雑に書いている気はなくても、字が雑になってしまって、俺は字が汚いといううわさが流れてしまうのだ。
俺の評判は常に完璧であらねばならないのだ。
そう考えて、俺は書き始めた。
すると先生が問題を解答する人をあてようとしていた。
「この問題を・・・。
じゃあ高町さん、この問題を黒板に書いてください。」
どうやら今回はなのはのようだ。
そうして俺はなのはの方を見てみると、なのはは目に見えて慌てていた。
フェイトの方を何か懇願するように見るなのはと、そのなのはを励ますように接するフェイト姿は思わず悶えてしまいそうになるほどかわいかった。
俺は手紙を書くのも忘れ、そんななのはとフェイトを見守った。
おそらく、フェイトに念話で答えを教えてもらっているのであろうなのはは、少しあたふたしながらも黒板に書いていた。
それを見て、俺は決意した。
なんとか時間を捻出して、悪い虫がつかないように護衛を強化しようと。
そうして、書き終えたなのはは、ほっとしたような顔をして席に着いたなのはを見届け俺は、また手紙の返事に取り掛かった。
その後、ラブレターの返事を書き終えた俺は、ラブレターの差出人に直接返事を手渡し、放課後になると、告白を断る旅に出たのだった。