第三十二歩
現在は放課後。
本来すでに私は、帰宅部らしく家を目指して長距離走を始めているころだ
だが今日の私にはそうすることはできなかった。
現在地は学校の教室。
理由は簡単だ。
それは周りの会話に耳を傾ければ理解できる。
「アリサちゃんここってどう解くんや?」
「はやて。
そこ今さっき教えた公式そのまま使うだけなんだけど・・・。」
「すずかちゃんここなんだけど・・・。」
「ええっと・・・。
ここはこの公式を使って式を変形してから、この式に代入すればいいんだよ。」
「ありがとうすずかちゃん。」
「ええっと、これがこの文法だから・・・。」
現在目の前では、5人の少女たちが互いに教えあったりしながら勉強に励んでいる。
はっきり言おう。
何で私はここに来たのだろうか。
だってそうだろう。
5人の少女の中に、一人の男。
この場において私は『みにくいあ〇るの子』の、みにくいやつぐらいに浮いている。
別のたとえをするならば、
『複数の美少女系フィギュアの中に一体だけある釈迦三尊像』
おそらくこの例えがぴったりだ。
アウェイ感がすごすぎて、もう帰りたい。
今この状況になった理由はわかりきっている。
それを箇条書きにすると
・俺掃除当番
・掃除が終わった教室になのは御一行が入室
・なのはが私を発見
・「裕也君教室で待っててくれたんだ!」となのはが声をかけてきた。
・他の人が机の準備を始め、そこには6つの机が・・・。
・私は目の前が真っ暗になった
これが今の私だ。
本当はここに来ないで、家に帰っていつも通り勉強する予定だったのだ。
私はNOと言える日本人になりたかった。
それにはっきり言ってこの集まりは危険な可能性が高い。
ここは学校だからまだ襲われることはないだろうが、もしここを離れるようなことになれば私は袋叩きだ。
ほんとにもう泣きたい。
ここで一番望ましいのは空気になり、誰も私に話しかけてこないことだ。
「そういえばあんた、勉強しないの?
一応そういう集まりだし、あんたも自分の勉強してもいいのよ?
それに今日は結構宿題出てたし、今やっといた方が得よ。」
こういう思考をするから話しかけられるのだろうか?
それは置いといて、話しかけてきたのは、お嬢様オーラ全開の金髪少女。
アリサ・バニングスだ。
それは置いといてとりあえず返事をする。
「宿題なら授業中に終わらせたかな・・・。
それに今日は勉強道具持ってきてないからみんなのこと眺めてるよ。」
こうやって眺めてる発言しておけばおそらくあんまり話しかけてこないだろう。
実は、友達と勉強会などしたことがないからどうすればいいのかがわからないのは内緒だ。
気付くと周りが手を止めていた。
そして、全員の視線が私に集まっていた。
私は気付いてしまった。
この5人を刺激してしまったことに。
私は、リンチまがいのことをされ、そのあとあのビームで消されてしまうだろうことに。
私は迂闊なことを口走ったことに後悔した。
そしてアリサが口を開く。
「あんた、宿題を授業中にやったら意味ないでしょうが!?
それに勉強道具持ってきてないって、今日授業で使ったワークでもなんでもあるじゃない!
いいからやるっ!!」
「はいっ!?」
私は予想外の反応に思わず声が裏返ってしまった。
だが、同時に安堵した。
やはり教室では消されないのだと。
だがここでさらなる問題が発生する。
実は、国語以外のワークはもうすでに終わらせてあるのだ。
理由は簡単。
後々宿題にされたら面倒だからだ。
それに今日は国語のワークは必要ないと連絡があったため持ってきていない。
本当にやることがない。
「あの、アリサさん。
実はワークも全部終わらせてしまっているのでやることがないんです。
ですので見学していてもいいでしょうか。」
ちょっと怖くて声が震えるが気にしない。
一応ワークを貢ぐような感じで差し出す。
今は何もしないということであちらを刺激するのは危険なのだから。
「なっ!?
ちょっと見せなさい!」
そう言って私のワークをひったくるようにとって中身を見始めた。
「アリサちゃんどうなんや!
もしそれが本当ならそのワークをこちらに渡すんや!
それは危険物やから私が処理する!」
「はやてちゃんずるいの!
そこは間を取って私が借りる!」
「じゃあ私m・・・」
「フェイト、あんたは別にこんなバカに乗んなくていいのよ。」
「あはは・・・。」
そこから10分ほど教室内はとてもカオスな感じだったとか、そうでないとか。