第三十四歩
あの精神削るような勉強会を終え、一週間が過ぎた。
その間に、何度か勉強会のお誘いがあったが、私は全力で避け続けた。
ときには、声がかかる前に授業終了したら、鞄を持って自宅まで全力で走りぬけた。
またあるときは、私と同じ髪型の人を見ると、一瞬私に見間違うように幻術をかけて歩いて帰った。
そしてまたあるときは、素直に用事があると言って帰った。
あの勉強会の時は、うまくあの集団にすりよれば命だけは助かるかもしれないとも思ったが、そうはしなかった。
いや、できなかった。
理由は簡単だ。
それは、あんな精神的に負担のかかることを続けていたらこちらがつぶれてしまうからだ。
常に気を張り続ければいつかは、緊張の糸が切れてしまうのだ。
そんな日常を自分が送ったら、間違いなく私は精神病にかかってしまう。
だから、私は下手な接近を可能な限り避けた。
だが、今日はそんなことも言ってられない可能性が高い。
その理由は今の授業に関係する。
「今日は前回の授業で描いた絵の発表会を行います。
では前回のペアになってください。
それでは全開のペアの人に描いた絵を見えないように渡してください。
受け取ったペアの人は絶対に見ないでくださいね。」
つまりこういうことだ。
最悪、絵のことで絡んできたとき、私に逃げ道はない。
前回なのはの反応は明らかに何かおかしかった。
それも多分私の描いた絵が関係しているのは多分まちがいない。
それをあの仲間意識の高そうなあの集団が見たらどうなるか。
そんなのは決まっている。
私は終わる。
だから私は今のうちに何か考えなきゃいけないのだ。
だがはっきり言って、どういう風に言ってくるかがわからない。
前もって何も策を立てることもできない。
もう泣きたい。
そうしていると、先生の声が聞こえる。
「じゃあ次は2番。
鈴木・高町ペアは前に出てきてください。
先に高町さんの絵の方から見ていきましょう。
鈴木君前に出てきてください。」
そう言って呼ばれたので私は前に出る。
「高町さん。
この絵で気をつけた点と、気に入ってる点を発表してください。」
いったんここで補足しておくと、この発表会の流れはこうである。
①ペアのうち片方が前に出る
②作者が自分の絵について語る
③周りからの質問・感想
④交代して上記を繰り返し
⑤お互いが自分の似顔絵を見る
⑥次のペアに交代
大まかに言うと、この流れだ。
「ええっと、この絵で気をつけたのは、目の位置です。
気に入っているのはちょっとかわいくなっちゃったけど裕也君っぽさが出た気がすることです。」
なのはの発表に周りはなんだか、そのとおりだと言わんばかりに首を振っていた。
なんだかすごくどんなものか気になる。
「では質問と感想がある人いますか?」
そうしてクラスの一人の少女が手を挙げた。
「ええと、質問なんですけど、何でその絵の裕也君は泣きそうな顔なんですか?
それと感想は、なんだか裕也君の不思議な雰囲気が出ていていとすごく思います。」
私はその発言を聞いてより一層その絵について気になった。
だってそうだろう。
まだ自分が見ていない絵の表情は泣きそうな顔らしい。
「では高町さん質問の答えお願いします。」
「はい。
それなんですけど、実はなぜかそれを描いているときに、裕也君の表情はそんな感じだったんです。
だからこの表情に関しては私もどう答えたらいいかわかりません。」
そして私に視線が集まる。
だが実際のところ、私にそんな顔をしていた記憶はない。
私は何か言われても何もわからない。
だから先に適当に答えることにした。
「ええっと自分では全く記憶にないのでわかりませんが、たぶんなのはさんの絵を描くのに苦戦して、表情が歪んでただけだと思います。」
「高町さんお疲れ様。
じゃあ次は鈴木君の絵の発表だから、前に出てきてください。」
先生がそういうのを聞き流しながら、私は少し、緊張を感じ始めていた。
先ほども言ったが、もしかしたらこの絵が原因で私の命は散るかもしれないのだ。
もうその気分を例えるなら、きっと
『美少女キャラに、どう見ても毒物な料理を無理やり食べさせられる主人公』
きっとこれだ。
つまり逃れられる可能性の極めて低い死刑宣告なのだ。
だが私はここで諦めるわけにはいかない。
生き延びて未来を切り開ければならないのだ。
私の戦いはここからだ!