ハートフル死刑宣告ネギストーリー
1話
目を開ける。
視界に広がる見たことのない天井。
ではなくベッドのシーツ。
あの言葉を言いたかったのに。
いやいや、言ったら黒歴史に戻るじゃないか。何言ってるんだ俺は、ははは。
しかし何故うつ伏せで寝ている?
「あぁ、尻尾か」
把握。
仰向けだとお尻らめぇな状態になるんですね分かります。
いやはや、俺をベッドに運んでくれた人はなかなか優しい方みたい。
それはともかくここはどこ? パートツー。
商店街から森に出て何か恐怖を味わった所までしか覚えてない。
てか何に恐怖したんだろう。
思い出せない。
まぁいいや。
状況把握のため周りを見渡す。
部屋には俺が寝ているものと同じベッドが他に数台。
壁には大きめの鏡。
そして漂ってくる薬品臭。
あぁ、分かった。ここはあそこだ。
「保健室だ」
何か他に難しい言い方あった気がしたが忘れた。
懐かしい、よくお世話になったものだ。
主にサボリで。
さて、状況が分かったところで鏡を見せてもらおうかね。
俺は一体どんな格好をしているんだ。
ベッドから起き上がり鏡の前まで移動。
鏡に写るのは銀髪オッドアイのイケメンオリ主!!
ではなく普段どおり、黒髪で普遍的な顔立ちの男。
近くのコンビニに行けばいるんじゃね?というフェイス。
ただひとつ以前と違うのは、頭からピョンと飛び出た黄色い狐耳。
わぉ。
てか黒髪に黄色の狐耳に黄色の尻尾って……シュールじゃね?
せめて髪も金髪にしてよ。
これじゃ俺の体にオプション付けただけのコスプレ野郎じゃないか。
「あ、起きたんだ」
鏡に写る自分を彩るコントラストに軽く絶望していた俺に話しかけるのは何奴。
振り返る。
長い金髪を後ろで一括りにした女性がいた。
金髪が欲しいと思っていた所に金髪が現れるとは貴様、見ていたな!!
「なのはに砲撃されたって聞いたんだけど……元気そうだね」
「なのはって誰……砲撃?」
何だろう、このドキドキ感。
こう、胸の中をえぐられるような。
体中の血液が一瞬にして沸騰するような。
そんな俺の気持ちなど露知らず、金髪さんは真面目な顔で話してきた。
「とりあえず初めまして。
私は時空管理局、古代遺物管理部機動六課、執務官のフェイト・T・ハラオウンといいます。
第83管理外世界において小規模の次元震が観測された為調査を行っていたところ、次元震が発生したと思われる場所であなたを発見しました。
まぁ……ちょっとした手違いで気を失われたようですが……
一応重要参考人として事情聴取を行いたいので、ここ、機動六課へと運ばせていただきました」
「なるほどなるほど……さっぱりわからん」
そんな適当に辞書引いて目についた言葉を並べたような事を言われても。
時空管理局?
古代遺物管理部機動六課?
次元震?
う〜む。
「まぁ、ニュアンス的に次元震の発生でみんなのストレスがマッハ。
現場に俺が居たからみっくみくにしてやんよって感じか」
フェイトさん……だっけ。
彼女は少し首をかしげていたが、そんな感じですね、と肯定した。
全国のネギを根絶やしにしようと決意した瞬間である。
「聞きたいこともあるでしょうが、ひとまず私たちの部隊長に会っていただけますか?
そこで詳しく事情をお聞きしたいので。
自己紹介もその時まとめてしていただければ結構です」
いくらネギで狙われようと、この状況下で拒否なんて出来るはずもない。
連れられるまま、保健室を後にした。
「ところで、その尻尾……」
「はい?」
「本物ですか?」
「……多分。触る?」
「いいんですか?
……あ、アルフのより気持ちいい……」
恍惚とした表情で俺の尻尾を触りまくるフェイトさん。
うむ、手入れは欠かさないようにしよう。
ところでアルフって誰さ?
とある一室の前に到着。
フェイトさんがコンコンと扉を叩く。
はやてー入るよー、と言うと中から、ええでーの返答。
はやてさんは関西人という事が分かった所で、入室。
中にはサイドポニーの茶髪な人と、同じような色の髪を肩ぐらいまで伸ばした女性がいた。
あれ、また動悸が激しく……
「あんたが現場に居たって人やな?
私はこの機動六課の部隊長、八神はやてや。
そっちにいるのは高町なのは。
そして医務室からここまで案内してきたんがフェイト・T・ハラオウンや」
「初めまして、高町なのはです。
六課の戦技教導官をやっています。
よろしくね?」
「さっき自己紹介したかな、フェイトです」
八神さんに、高町さんに、フェイトさんね。
で、誰がネギ持ってんのよ。
「で、や。
あんたの事、聞かせてもらおか?
何者なんか、何であないな場所におったんか
そして……その尻尾は何や」
何でって……オッサンのせいとしか言えないのだが。
そしてここで嘘はつかない。
あるがままを語れば信じてもらえるものさ。
「名前は篠崎 龍也。
夕飯を調達しに商店街をふらついていたら路地裏にいた変なオッサンに絡まれた。
夢はあるかってしつこく聞かれたから、色々と力が使えて姿も藍様みたいな九尾になりたいって言って……
ごめん、間違えた。
綺麗な嫁さん貰って、退廃的な生活を送りたいって言った。
気がついたら森にいた。
更に気がついたら保健室にいた。あ、医務室か。
何故こんな姿になっているか分からない」
「なるほど……分かったわ。
とりあえずやな……一発ぶん殴る」
信じてもらえなかった。
素敵な笑顔でなんていうこと言うんですかこの子は。
せっかく頑張って初めて本名名乗ったのに。
俺の横では、必死に止めてくれるフェイトさん
あぁ、貴女が女神か。
「厨二患者やないか———!!」
「ま、待ってはやて!!
あの尻尾は本物だよ!!
あのモフモフは否定しちゃいけないよ!!」
「俺は厨二じゃない」
「仮に本当やとしても、そんな簡単に力を手に入れてええもんかい!!
てかオッサンて何やオッサンて!?
路地裏にいたオッサンに叶えてもらった!?
関西人なめんのもたいがいにせーや!!」
「は、はやてちゃん落ち着いて!!
気持ちは分かるけどあの尻尾は本当だって!!」
「俺は厨二じゃない」
高町さんも加わり、八神さんを落ち着かせる。
説得の内容が俺の体の一部分の事でしかなかったのは気のせい。
ひとしきり騒いた後には、大分おとなしくなっていた。
まだコメカミが少しヒクヒクしているが。
「まぁ、えぇわ。
つまり、そのオッサンに話しかけられた後に突然森の中におったんやな?
多分次元震はそん時にでも発生したんやろ」
「は、はやて……考えるの放棄したね……
えと、じゃあ龍也は次元漂流者になるのかな?」
「そうだね、保護扱いになるのかな。
最初はどうかと思ったけど、危ない人じゃなさそうだしね」
うんうん。
なかなか分かっているね高町さん。
でも最初はって何?
疑問が尽きない俺を置いて話はどんどん進んでいく。
完全蚊帳の外。
てかみんなの話に加わる為にはウィキが必要不可欠。
時折出てくる単語が分からない。
「はぁ……えぇわ。後はこっちで何とかしとく。
最後に、何や力を貰った言ってたね?」
「えぇ、多分。
あ、いや、嫁さんが……」
「ならフェイトちゃんか、なのはちゃんと模擬戦でもしてその力をちょっと見せてや。
あんたをどうするかはその結果見て判断するわ」
聞いてよ。
嫁さんがね……
「ぼっこぼこにされて私の溜飲を下げてな〜」
絶望した。
拒否したいが、それでは話が進まないご様子。
でも誰が相手になるの?
高町さんは何か本能的に遠慮したいなーと……
「じゃあ私がやるよ!!」
フェイトさん……ぼっこぼこにされろ発言の後のそれは死刑宣告にしか聞こえません。
助けて高町さん。
「にゃはは……フェイトちゃんはその……バトルジャンキーだからね。
龍也くんの力っていうのが気になるんだと思うよ?
だから……えっと……ファイト?」
「大丈夫、手加減するから!!」
拝啓、故郷のお父さん、お母さん。
今、目の前に女神に変装したラスボスが居ます。
フェイトさんがネギの所持者だったようです。
ガチャポンの景品のスライムしか倒したことのない俺が、素手でどう乗り切ればいいのでしょうか。
三途の川のサボり常習犯水先案内人に会う日も、そう遠くなさそうです。
敬具
少し慣れてきた所の文章。
書きためてあったのを修正して投下。
主人公はリリカルを知りません。
だって筆者自身見たことないから。
はやての一人称の修正
知識の無さが露見