ごはん処の奇行文。
11話
こんばんは、稲荷です。
挨拶でも分かるように、今は夜。
ティアナ人生相談事件、略してT.J事件から数日後、訓練が終わった後になのはさんに呼び出された。
その時はほいほい頷いたが、今になって後悔している。
眠気が、ヤベェ。
「あ、お稲荷さんごめんね、突然呼び出しちゃって」
指定場所は六課裏手の林。
なのはさん曰く、他人に聞かれたくないのだそうで。
みんなと別れてから、気付かれないようにこっちに来たらしい。
この流れ、俺には分かる。
どうやらフラグを立ててしまったようだね。
砲撃の日々の中でいつ立てたのかが謎だが。
無意識に立ててしまうのが俺クォリティーか。
ハッハッハ、モテる狐はつらいよ。
「お稲荷さんには、言っておきたくて……その……実は……」
うんうん、何だい?
「ティアナと、もう一度しっかり話してきたんだ。
私がやってる教導の意味を、知って欲しくて」
遂になのはさんも俺の魅力に気づい……なんだって?
「私、不器用だから……
私みたいになって欲しくないって思って一生懸命教えてたんだけど……
その意味を知らずに続けてたら、結局どこかで綻びができちゃうもんね」
「あ、その話、長くなりそう? 俺眠いから続きは明日で」
「特に、この間の、一件で、ティアナとは、きちんと、話す必要が、あると、思ったんだ!」
なのはさんが俺の首に腕をまわしてきた。
ギブ!
しまってる!
綺麗に入ってるからぁ!!
てか、なのはさんの腕力テラツヨス。
「この間の事で、ティアナが抱えてた悩みも少し軽くなったみたいだし。
そのお陰で私もお話しやすかったんだ。
だからお礼を言いたくて。
ありがとうね、お稲荷さん」
「首に集中していたがこの背中に当たる気配……まさかC」
「ちゃんと、聞いて、欲しいかなぁ」
グキッて聞こえた気がした。
「お礼を言われるだけで死にかけるとかありえねぇ。
てか数分前の俺の妄想もありえねぇ。
欝だ、死のう」
「何を妄想してたの?」
「言ったらオカンにエロ本を種類別に分類されているのを発見した時と同じくらいの絶望感を味わうことになる」
「持ってるの?」
「ないよ」
「お小遣いを何に使ってるかな。
今度、お稲荷さんの部屋を掃除するの……」
ナンテコッタイ。
「とにかく、お礼を言いたかったんだよ!
みんなの前じゃちょっと恥ずかしかったから言えなかったし!
分かった!?」
「イエス・マム」
あれ、何でお礼言われて怒られてるんだ?
「よろしい。
じゃあ今日は家に帰って明日に備えよっか。
夜も遅いし……っ!?」
言葉の途中で突如響くアラート。
二度目だから驚かない。
何でも海上に敵が出現したとか。
通信も緊急アナウンスがあったわけでも無いのにそう言うなのはさん。
端から見てると電波を受信したようにしか見えない。
なのはさんは即座に現場に向かうらしく、今日はすぐ家に帰って大人しくしていなさいとのご命令を受けた。
任務について行かなくていいとか初めてじゃね?
なんて思いつつ、颯爽とかけ出すなのはさんを見送る。
後には俺と静寂だけが残された。
何という急展開。
さて。
「1人になると少し前の自分の行動を後悔する時ってあるよねー
調子乗ってました自分。
この沈んだ気分を晴らすにはどうしたらいいものか」
トボトボと、家への帰り道を歩き出した。
「……君が、稲荷くんだね?」
○ ● ○ ● ○ ●
「でな、基礎知識のない俺には理解出来ないことがあったり、そもそも説明自体が無いのに意味分からんまま砲撃受ける事もあるんだぜ。
もうトリガーハッピーだよなのはさんは。
何で一瞬でもフラグ立ったとか思っちゃったんだ俺は」
先ほど帰ろうとしていたところ、紫の髪のオッサンに呼び止められ話がしたいと言われた。
紫に最近縁があるようである。
悩んでいると、油揚げ系を奢ってくれるとか。
二つ返事でOKしました。
眠気?
首を落とされて眠いままでいられるか。
てかある意味二度と起きない眠りにつくところだったわ。
という訳で六課から少し離れた飯屋に直行。
色々と話していたら愚痴りタイムに突入した。
もちろん稲荷寿司を片手に。
「それはなんとも……そもそもにおいて知識を蓄えようとは思わないのかい?」
「睡眠学習なら大好きです」
「ふむ……無限の欲望と呼ばれた私と正反対の人物というのは、なかなかに興味深いね」
「どんだけエロイんだあんた」
「欲望のベクトルが違う気がするのだがね……
あぁ、そうだ。
それだけ頑丈な体を持っているのなら、1つ私の所で仕事をしてみないか?」
「働きたくないでござる。
絶対働きたくないでござる」
「おや、どうしてだい?」
「今なら胸を張って言える。
俺の夢は美人の嫁さんを貰って退廃的な生活を送ることだから」
「ハハハ! 断る理由も面白いね稲荷くんは!」
働いたら負けだと思っています。
訓練?
いいえあれは拷問です。
なのはさんとか他の人にアッ————!! されていないときは基本グダグダなので。
使い魔いいよ使い魔。
合法ニート。
主人が優しければ。
その前提条件が俺には無いが。
「む?
すまない稲荷くん。
どうやらそろそろ時間のようだ。
面白い話を色々聞けたよ、ありがとう。
会計は済ませておく、ゆっくりしていくといい」
「むぉ、そうか。
オッサンもまたな」
「あぁ。
そうだ、もし気が変わって仕事を受ける気になったらここに連絡するといい」
そう言って俺に名刺を渡してきた。
日本語じゃなかった。
……何語?
読めん。
しばらく名刺を見つめていたが、いくら見てもミミズがのたうち回っているようにしか見えないので脇に置いた。
「サンキュー」
「クックック。
あぁ、君は本当に面白い。
では、また会おう」
俺が名刺を見て何の反応もしないと、オッサンは笑い出した。
意味が分からない。
とりあえず、おぅ、と返すと、オッサンは満足したのか店の出口へと向かっていった。
俺もその後、少し残った稲荷寿司を食べ終えて帰ることにした。
○ ● ○ ● ○ ●
「って事が昨日あってさ。
いやぁ、初対面なのに飯奢ってくれるとかいい人もいたものだね」
「お稲荷さん、私昨日、すぐ家に帰るように言ったよね?
というかその姿であまり1人で街中に出歩かないで欲しいんだけど」
「稲荷寿司の前では全ての障害が紙になる。
ごめんなさい」
何でも、昨日敵は撃退したものの、その後に俺の姿がないということでひと騒動あったらしい。
今日、六課に来たらすぐに隊長室に呼び出されて3人に説教されています。
「てか何で俺が居なかったこと知ってるの?
監視カメラ!?
まさか監視カメラがついてるのか!?」
「まぁ、何事も無かったようで一安心だよ」
流さないでよフェイトさん……!!
監視カメラがあるとか、夜の営みができないじゃないか……
ん?
「いや、まてよ……まさか今までの営みも既に……
オワタ。
時既に時間切れ」
「で、誰やったんやそのいい人は」
「傷心の俺を放置する心意気はないのか。
名前は聞いたけど横文字って覚えにくいよね。
車の名前だった気がするけど。
あ、私は無限に欲望があるとかエロイこと言ってた」
「あんたは誰でも2回以上会わんと名前覚えんやろ。
……ん? 無限の欲望?」
あ、そういや名刺貰ってたんだ。
八神に渡す。
てかそれ、文字だよね?
「あ、あ、あ、あ、あ、あんたこれ!!
ジェイル・スカリエッティって書いてあるやないか!?
しかもメルアドまで書いたる……」
「ジェイル・スカリエッティ!?」
なんぞ問題あるんかね。
「お稲荷さん……
ホテルの任務の時にはやてちゃんが言ってたの忘れたの?
ジェイル・スカリエッティは私達が追っている広域次元犯罪者だよ?
お稲荷さん風に言うとラスボス」
「俺の記憶が正しければ全てはシャマルのせいだったと思う」
「大いに間違ってるよ稲荷」
「しかも! 一緒に! 飯食うて来たやと!?
あんたはなんでそんなに私らの追う黒幕に簡単に出会えるんやぁぁあああ!!!」
何か俺と話すと叫んでばっかだね八神。
血管切れるよ?
「誰のせいや誰の……
はぁ、いいわもう。
フェイトちゃん、このアドレス一応確認しといてや。
後、なのはちゃん。
今後は出来る限りこいつと行動一緒にしてもらえん?
一緒におったらなんや簡単に見つけれそうやし」
「分かったよ、はやて」
「了解、はやてちゃん」
「えっ、俺のプライベートな時間は?」
「1人でいるよりも一緒に居たほうが楽しいよ!
今度からはお稲荷さんも任務にちゃんと連れて行ってあげるからねっ」
働きたくないでござる。
てかそれは絶対楽しくないでござる。
フェイトさんちのアルフさんとチェンジを要求する。
「だが断るなの」
「私も稲荷はちょっと……」
「何故私には言わない」
八神、てめぇはダメだ。
「なのは、はやて。
やっぱりこのアドレスはダミーだったみたいだよ」
「連絡してこいと言ってダミーとかスカさん酷過ぎる。
アドレス携帯に登録して今度会ったらこれをネタにゆすろう。
後フェイトさんの固有名詞に俺の名前が無いのは何故」
「その前に私らの前に連れてきぃや」
「フェイトちゃん、お稲荷さんの扱いが上手だね」
どうやら俺の扱いが酷くなるほど、周りからは上達したと思われるらしい。
……ん? ということは。
「最近周りの反応が酷いのはまさかのなのはさんのせいか。
諸君、これを許せるか? 答えは否。
よろしい、ならば戦争だ。
昇華技 『神技「取り払われた秘境」』 の完成披露会といこうか」
その日、俺の右手に白が握られた瞬間。
訓練室に、最大級のピンクの光の矢が放たれた。
気づいたらPV数が20000を突破してました。
ユニークも累計2000超えました。
わーい。
念話って、アニメで見てると普通のセリフなのか思ってることなのか判別がつかないとです。
そしてきっと隣でやられたらシュール。
そしてスカさんってあんなに悪役キャラだったんですね。
SSしか読んだことなかったからもっと軽いキャラだと思ってた次第。
という訳で11話。
ご来場ありがとうございました。