不幸電子郵便物
13話
こ、この金髪幼女のせいで、俺の平穏な休日が壊されたというのか……
「バイタルは安定してるわね……危険な反応もないし、心配ないわ。
でも稲荷さん、虚ろな目をしながら藁人形片手にフラフラと寄ってくるのやめてください。
あなたが唯一の心配事です。
どこのC級ホラー映画ですか」
「黙れシャマル。
それだからお前は何時まで経ってもシャマルなのだ」
「意味が分かりません!
というか私がシャマルなのは当たり前です!」
「ほら、休みならまたなのはがくれるから落ち着いて稲荷。
みんなもごめんね、お休みの最中だったのに……」
いえ! と元気に応えるチビッ子達。
そこまで仕事が好きなのかと小一時間問い詰めたい気分である。
「ケースと女の子は、このままヘリで搬送するから。
みんなは、こっちで現場調査ね」
「はい!」
「稲荷さんは、この子をヘリまで抱いて行ってもらえますか?」
「へへへ……了解」
「やっぱりなのはちゃん、お願いできる?」
珍しくやる気を出したのに何故。
そして幼女のヘリへの護送は本当になのはさんが行い俺は下水の調査となった。
今は一刻も早くレリックを確保しなければならないんだとか。
少しでも人員を割くために俺も急遽下水調査班に回された。
でも俺が幼女から離された訳は最後まで分からなかった。
しかし、チビッ子達が向かってからしばらく経っているために現在1人である。
別段臭いとかそういった類のものは無いのだが、暗いトンネルに1人ってなかなかに怖いものだ。
「覚えてて良かった狐火。
幻術でしかまだ使えないが照明になるとは重畳。
しかしチビッ子達はどこへ行った。
なんちゃって地下のダンジョンに1人取り残されるとか死亡フラグ」
……お、何か広い空間に出た。
「しかし暗いし狭いし怖いから独り言が多くなってかなわん。
あ、中央に近代的宝箱発見。
中身は……デデーン!
稲荷は炎のクリスタルちっくな何かを手に入れた!
下水に捨ててあったものだし、貰ってもいいだろ。
一応持ち主が来たとき怒らないようにカモフラで似たようなのを変化で作って入れておこう。
3日くらいで元に戻ると思うけど。
この辺りが小心者なんだろうなぁ……
っと、蓋は閉めておくか」
しかし何かね、このクリスタル。
赤いし、一番大きな結晶の周りに小さな結晶がくっつかず離れずで浮いてるし。
まぁいいや。
尻尾に収納しておこう。
「でもレリックって何なんだろ。
名前的に何か古い物な気がするけど。
一度見てみたいよーな、でも触れると火傷じゃ済まなさそーな……」
興味はあるが、俺のシックスセンスがアラートを鳴らすのでやめておく。
さて、5分は探し回ったしもう十分だろ。
後は地上に上がって、適当に時間潰してからなのはさんの所に行こう。
何か奥から爆発音もたまに聞こえるし……
厄介ごとに巻き込まれそうだから早々に脱出であります。
○ ● ○ ● ○ ●
久々に陽の光を見た。
と言っても10分と経ってないけど。
いいんだよ、孤独は俺の体感時間を数十倍に引き伸ばしてくれるから。
「ん?」
見上げたビルの屋上付近には、先日道をロストしていた俺に進むべき方向を示してくれた紫幼女。
これは挨拶にいかねばなるまい。
以前ならばビルの中の階段を登らねばならなかったが今は違う。
パワーアップした稲荷様はジャンプするだけでビルの屋上へとひとっ飛び。
某忍空アニメの酉忍の藍眺はこういう気分だったに違いない。
そして屋上に着地するものの、紫幼女の姿は何故か無かった。
登っている間に、ダンゴムシもどきで俺とは逆方向に飛んでいったのだろうか。
いつもなら無視する所だが、どの道今は俺は地下にいる設定だ。
時間潰しには丁度いい。
見晴らしもいいし、埋まることも無いだろうからちょっくら力を入れて走りながら紫幼女の捜索を始めることにする。
十数回目の跳躍時だろうか。
何かに足を引っ掛けてビルから落ちそうになった。
同時に、ガッって声みたいなのが聞こえたけど気のせいかね。
でも辺りを見回しても、同じようなビル群の屋上ってだけで違いはない。
何に引っかかったんだろうと疑問に思い足元を探ってみた。
すると、なんということでしょう。
目には見えないのに、触れる事ができる何かがあるじゃありませんか。
「見えるのに触れられないではなく、触れられるのに見えないということから幽霊ではないと判断。
バーロー並の推理力が火を噴くぜ。
とりあえず……ペロッ。
こ、これは青酸カリ!」
な訳がないが、柔らかい何かがそこにある。
「う〜む……
証拠がなさ過ぎる。
……ん? これは?」
グルグル巻の包帯に包まれた、先ほどまでは無かった物。
ホラーを感じずにはいられない。
「だけどそっと封印を解いてみる……な!?
こ、これはまさか……レールガン?」
マガジンもリボルバーも無い、何か平らな部分がある銃を俺はレールガン以外知らない。
個人で扱えるようになってたんだね。
少し重いが、使えない事はない。
空に向けてみる。
カッコイイ。
気分がノッてきた。
口ずさむのは某超電磁砲なOP曲。
トリガーを引いた。
極太のビーム砲がでた。
呆然とした。
「…………またつまらぬものを撃ってしまったようだな」
「人の作戦無茶苦茶にして何を言ってるんですか」
突然声が聞こえた。
振り向く。
変態が居た。
「俺さ、眼鏡にいい思い出無いんだ。
具体的に言うと食堂で空気にされるから。
なのに眼鏡に青タイツに白マントってヤバイよ。
お前もう病院行けよ。
いやむしろ病院が来い」
「ひ、酷い言いようですわね。
ディエチちゃんもなんでこんなヤツに気絶させられちゃうんですかねぇ……」
DHCが何だって?
「ん? その尻尾……
もしかしてあなたが、ドクターが言っていた稲荷さんですか?」
「違います」
「悲しがってましたわよ
メルアドまで教えたのに迷惑メールしか来ないって」
「違うと言っているだろうダラズ。
てかドクターって……スカさんか?
むしろアドレスが偽物だったことに俺のほうが深い悲しみを背負ったのだが」
「あれ、ドクター言ってませんでした?
そのアドレスは稲荷さんの携帯からしか連絡出来ないようになっているんですわよ」
「なん……だと……」
≪このメールが届いたあなたは、メールを送ってきた人を含めて13人に『ぬるぽ』というメールを送らないと3日後に死にます≫
そーしん。
ちゃくしん。
≪ぬるぽ≫
本当だ。
「てか私の所にも来たんですが……
ま、いいですわ。
暇が出来たら連絡してくださいね、ドクターが心待ちにしております。
さて、目的の1つは完了したみたいですし……
もう1つの方はもう無理でしょうから、私たちは早々にお暇させて頂きますわ」
そして青タイツは去っていった。
結局名乗らなかったが覚えられないので無問題。
なにやら焦っている風味でもあったが何故だろう。
あ、右手上空にフェイトさん発見。
「おーいフェイトさーん」
黄色い弾幕で撃ち抜かれました。
○ ● ○ ● ○ ●
「ごめん、稲荷だとは思わなくて」
「また誤射か。
10円ハゲ出来たらマジで呪うぞ」
何でも高ランクな砲撃が空に向かって放たれたから、危険なヤツがいると思われたらしい。
とりあえず鎮圧して拘束、事情聴取の流れだったとか。
普通は説得が先じゃなかろうか。
「で、なのはさんは?」
「海上に現れたガジェットを殲滅して今帰還中。
別段危険は無さそうだったし、私はあの砲撃が見えたから先に戻ってきたんだ」
「おい待て。
あの砲撃俺が放ったなんて言ったらなのはさんの事だ。
紛らわしい行動するのは良くないよ?
というかお稲荷さん、今下水の調査なはずじゃなかった?
とか言って俺も殲滅の対象にされる。
是非とも事実の隠蔽を要求する」
「あ、私の言いたいこと、ちゃんと分かってるんだね」
「大丈夫、私の口からはなのはに言わないから」
「助かります」
……ん?
「じゃ、お稲荷さん。
ちょっとだけお話しよっか」
…………何故いるし
アッ———————!!
「俺、今日悪いことしたっけ」
「うっせーよ、今気が立ってんだ!」
任務が終了したらしく、なのはさんにしっぽり砲撃を受けた後にチビッ子達やヴィータと合流した。
だが何か空気がピリピリしている。
「そういえばお稲荷さん、何であんな砲撃したの?
結構危険な攻撃だよあれ」
「面倒だから3行で説明しよう。
・透明な何かを発見。
・足元に超電磁砲が出現。
・よろしい、ならば砲撃だ。」
「なるほど、全然分からないよ稲荷」
「考えるな、感じろ。
しかしこの空気は耐え難い。
キャロ、何があった?」
「えっと、レリックを見つけて確保したのはいいんですが……
わざわざ一工夫加えて取られないように中身を箱から出して私が保管してたのに、それ自体が偽物で……
後、犯人らしき人物も捕まえたんですが、その人の仲間がまるでプールから出てくるみたいにこう……じゃぽんって地面から現れて、逃げられてしまいまして」
そーいう夢を見たのか?
「じゃあ何か、そいつは地面をまるでプールで泳ぐかのように移動できると。
どこの未来的青狸だよ。
そのひみつ道具の名前忘れちまったよ」
「ドラえ……」
なのはさんは知っているようである。
未来的青狸。
「まぁ、でも今日はとりあえず、女の子とレリックの1つは回収できたからよしとしよう?
さ、帰って報告書だよ」
「俺は残りの休日を謳歌するわ」
「お稲荷さんも報告書、今日中にちゃんと提出してね」
「なーぜー」
「今回は緊急事態で一緒に居られなかったから、何をしていたか知る必要があるの。
というか、何気に重要な事やってそうだし」
「俺の休日は?」
「明日からは訓練再開だよ!」
目の前が 真っ暗になった。
「フンフンフ〜ン」
「お稲荷さん、ご機嫌だね?」
「あぁ、綺麗な拾い物してさ。
形が何となく花にも似てるから、鉢植えに植えてデスクに飾ろうと思って」
「へぇ、どんなものなの?」
「これ。
命名するなら、炎のクリスタル花。
いやぁ、みんなしっかりした机なのに俺だけみかん箱って寂しかったから。
これでようやく、文字通り華ができたよ。
てか俺とみんなの机の格差、おかしくね?」
「……これ、どうしたの?」
「この間の任務の時に、下水ダンジョンの大広間っぽいとこの宝箱に入ってた。
捨ててあるんだから大丈夫だろうと思ったけど、ちょっと怖かったから変化で似たような物を入れて元通りにしておいたけどね」
「……うん、やっぱりお稲荷さんからは目を離さない方がいいみたいだね。
私達がどれだけの量の報告書を書いたと思ってるのかな。
ちょっと訓練室行こうか…………」
「え、ちょ、ま、なんで!?」
その日、スターズ隊とライトニング隊 vs 俺 が行われた。
後、俺の力作の炎のクリスタル花も没収された。
本気で泣いた。
スランプじゃー
戦闘描写が苦手なのでしない方向に走ったらこうなった。
シリアスを書いた時よりしっくりこない。
でも投下。
多分不人気。
今後に期待。
PV数とユニーク数が素晴らしいことになっていました。
いくつか忘れましたがありがとう、ありがとう。
という訳で13話。
ネタが無いので普通にありがとうございました。