花火大会物語
16話
『そういう事があったのさ。
俺に戦闘を求めるとか竹串1本でラスボスに挑むようなものだ』
『なかなかに波乱な毎日を送っているようだね。
やはり稲荷くんと話していると退屈しないよ。
そうだ、そんな君にプレゼントをしよう。
今夜、とある場所で盛大な花火が上がる。
君には是非見てもらいたいものだ』
『花火か。
そういやずっと花火大会なんて行ってなかったな。
ここじゃこの時期に行われるのか……』
『あぁ、綺麗だと思うよ。
きっと稲荷くんも気に入るさ。
クックック。
ハーッハッハッハッハッハ!!!』
『高笑いしたいのは分かるけど、メールでそれやってもキモイだけだから』
「狐パパ何やってるの?」
「ん? 友達……じゃないな。
知り合いが花火大会を見に来ないかって」
「花火?」
「あー、空に打ち上がった火がこう、バーンって言って色とりどりの火が舞い踊る夜空の芸術。
ヴィヴィオも見たいか?」
「うん!」
訓練終了後、みんなで昼食になったのだが。
いざ食べようと思ったら、スカさんから携帯にメールの着信。
今の流れになった訳である。
「なのはさんなのはさん、午後の予定は?」
「ん?
六課のフォアード達と一緒に、警備の任務があるんだけど……
今回はちょっと事情が複雑で、正式に隊員じゃないお稲荷さんを連れていくことはできないんだ。
ごめんね? 任務には連れて行くって言ったのに……」
「むしろ諸手を上げて喜びたい所存。
じゃあさ、夜に花火大会を見に来ないかって知り合いに誘われてるから行っていい?」
「知り合い?」
「友達ではないと思っている」
「花火大会なんてあったっけ……
まぁいっか。
いいよ、行ってきて。
後、友達じゃないなんて言っちゃダメ。
ちゃんと仲良くならないとだよ?」
スカさんはガジェットがレリックでドローンな広域なんたらだから六課が追ってるんじゃなかったっけ?
未だに理解が追いつかないスーパーフォックス頭脳が恨めしい。
スカさんの名前がでたときにシャマルの名前も一緒に出たのが原因である。
おのれシャマル。
……まぁいいや、お咎め無いなら。
「なのはママ、ヴィヴィオも!」
「俺がパパでなのはさんがママとか人類が踏み込んではいけない領域な気がする。
まぁ、いつまでもあの呼び方だと俺の命がヴィヴィオの呼び声1つで1個減るからいいか」
「私が直したんだよ!!
大変だったんだから……
ヴィヴィオは……お稲荷さんがいるなら大丈夫かな。
いつも無傷で済んでるし。
ちゃんと守ってあげてね?」
無傷なのは受けたものが素晴らしい回復力で治っているからです。
因みにその傷の全部が味方から受けたものです。
敵はこの中にいた!!
「うい、了解。
んじゃ先方にも行けるって言っとく。
ヴィヴィオ、夜までに出かける準備すませとけよ」
「うん!」
うむ、うむ。
『という訳でスカさん。
なのはさんからの了承取れたから行くことにする』
『どういう訳か分からないが、了解したよ。
場所は六課からでも見える細長い建物が何本も建っている所だ。
迎えを出そうか?』
『あそこか。
いいよ、別に。
特等席を探しとく。
それを探すのも醍醐味だから』
『あぁ、楽しみにしているよ。
クックック』
メールでクックックなんて書く人を俺は他に知らない。
それはともかく、どうやら結構近くで行われるようだ。
花火大会とか久々過ぎてワクテカが止まらない。
俺も準備に取り掛かるとしよう。
「そういやお稲荷さん、ミッド語読めるようになったっけ?」
「んにゃ。
相手が日本語で書いてきてくれてる。
もはや天才だね」
あんなに頭いいとか本当に何してる人なんだろうね、スカさん。
あ、ダンゴムシもどき作ってる人か。
○ ● ○ ● ○ ●
そして今は目的地付近。
街からなるたけ離れた場所で空がよく見える位置を探しています。
「狐パパ、何でこんな所にいるの?」
「街の光があると花火が綺麗に見えないからな。
スカさんの言い方だと結構大きなモノらしいし、最高のコンディションで見たい」
「ふ〜ん」
とかいいつつ歩いているとちょっと開けた場所に出た。
建物もよく見えるし、周りも明かりがほとんどないベストポジションである。
『そろそろ開幕と行こうか。
稲荷くん、堪能してくれたまえ』
そのメールが届いたと同時に、空に一条の赤い矢が走った。
「うおおおぉぉお」
「わあああぁぁあ」
その光が細長い建物に当たった。
赤い炎が爆発と共に舞い上がる。
「あれが花火〜?」
「世間一般にあれは砲撃と呼ぶ」
上空では、何かがいくつも連鎖的に爆発していた。
「あれは〜?」
「爆撃と呼ぶ」
「むぅ〜、花火は?」
「世界が違うと花火の概念も違うのかもしれん。
とすると、最初のヤツは景気付けの二尺玉で次のはナイヤガラ的な何かか。
ダンゴムシもどきを量産してるスカさんの美的センスがまともな訳無かった」
しかし、花火好きの俺がこんな物で納得出来るはずがない。
……はっ。
「もしや俺の幻術ならばなんちゃって花火が作れるのではないか……!?
流石幻術万能過ぎる。
ヴィヴィオ、スニーキングミッションスタートだ。
これより花火大会の中心地に赴き、日本式花火の素晴らしさを見せてやる」
「わーい!」
「よし、ならば尻尾に入るがいい。
少し力を入れて跳ぶから振り落とされないようにするんだぞ」
「警備厳重すぎね?」
辺りにはダンゴムシもどきが徘徊している。
動き方を見るに、不審者を探す感じ。
ロボットが警備もするようになるとは、世も末である。
「狐パパ、ちょっと怖い」
「安心しろ。
俺はもっと怖いから。
何かこう、進んではいけない方向に足を向けている気がヒシヒシとするんだ」
ヴィヴィオはイン・マイ・テール。
俺は幻術をかけて周りから見えなくすると同時に、自分の前に俺とヴィヴィオの幻を出している。
誰かに見つかったら前の幻が逃げ出して、俺様素通り作戦。
因みにこの幻、触れられるんだぜ?
製作時間10分。
妖力は汎用性高いけど扱いがやっぱり難しい。
某紅魔館にいる妹吸血鬼はよく一瞬で4人になれるよね。
この技の練習はしてたけど、模擬戦では時間がかかり過ぎるため陽の目を見なかったのだが、ここにきてようやく使える機会に巡り会えた。
幻に模擬戦させりゃ砲撃受けなくてすむんじゃね? なんて思ったこともあったが過度の攻撃を受けても消えるから、一度この幻に模擬戦させてた時余裕でバレた。
本体はティータイムしてたら後にみっくみくにされたのはいい思い出。
そんなこんなで建物の中を徘徊中。
気分はリアルメタルギア。
敵の上に『!』とか『?』が出ないようにしなければ。
「お前たちは……ドクターの言っていた稲荷と聖王の器か」
思ってたそばから見つかった。
T字路に差し掛かったときに敵とエンカウント。
恐怖の青タイツの頭上に『!』が出現した模様。
なお、今回は白髪という新キャラである。
だが片目に眼帯をしているから多分厨二病患者。
「ほう、我らを見つけるとは大した奴だな」
「ママァ———————!!」
「普段なら問答無用でやりあう所なのだが、こちらにも少々都合があってな。
今回は逃げさせてもらうよ」
「ママァ———————!!」
「何!?
逃がすと思うか。
別働隊でお前らを探しているようだが、私が捕まえれば済む話だからな」
「フッ、ならば追ってくるがいい。
追いつけるものならな」
「ママァ———————!!」
「クッ、待て!!
こちらチンク、聖王の器と稲荷を発見した!
ルーテシア、六課に目標は居ない!
すぐにこちらへ来るんだ!」
ひと通り会話を終えた後、幻と白髪タイツはT字路を左へと曲がって走って行った。
「……あぁ、そういやあの幻も厨二発言するから使用をやめてたんだっけ。
忘れてたなー」
「ヴィヴィオ、あんなにママーって叫んだこと無いよ?」
「知らんがな。
あんなにスネちゃまチックに叫ぶ奴リアルで見たことがない」
幻が行ってしまったので仕方なく姿を隠すだけで移動を開始。
T字路を抜けるくらいで進行方向から誰か来た。
あれは……ギンガだっけ。
「クッ……AMFが濃すぎる……!!
早くスバル達と合流しないと……!!」
そう言いながら俺たちの通ってきた道を駆け抜けて行った。
幻が曲がった方に行って、姿を見られても面倒なのでよしとする。
「因みにヴィヴィオ。
AMFとはなんぞや」
「ん〜……
前から2文字読んでも後ろから2文字読んでもラジオ局」
「お前天才じゃね?」
ヴィヴィオの頭の良さに感心しつつ、再び屋上を目指すのであった。
○ ● ○ ● ○ ●
「ナンテコッタイ」
「なんてこったーい」
階段を見つけたら後は屋上に登るだけなので楽ではあったのだが。
いざ屋上に出るとあら不思議。
ダンゴムシもどきとボムキングが上空を占領しているではありませんか。
「いくら俺でもこれが花火大会ではない事が理解できたぜ。
てか空にダンゴムシとボムキングとかなんてデジャヴ」
「ふぇ、これ花火じゃないの?」
「スカさんの美的感覚じゃ花火かもしれんが俺には地獄の宴にしか見えん」
燃えてるし。
建物崩壊してるし。
海上から何か出てきてるし。
てか何あれ。
「わー龍さんだー!」
「いやいや待て待て。
凄い可愛く聞こえるけどおかしいから。
よしんば龍さんだとしても頭に汎用人型決戦兵器がつくよ。
どう見ても暴走モード突入してるし」
一度咆哮したかと思うと、エネルギー的な物を集めだす龍さん。
しかも体がこっち向いてます。
顔の前、両肩付近に集められた紅い弾が、今砲撃として放たれた……!!
「ヴィヴィオ、こっち来て座ろうぜ。
多分二度と見れない何かが来そうな気がする」
「うん」
3点の砲撃は1点で交わり、極太の砲撃となって上空に居たダンゴムシ達を薙ぎ払った。
つまり、俺達の上空100m付近を通過していった訳である。
姿は隠したままだから、絶対ダンゴムシがここにいたら焼き払われてた。
「凄いねー!」
「あぁ、オメガが放つ波動砲を至近距離で見れた気分。
発射角度が数センチずれてたら、俺ら塵も残らなかったけど」
「でも花火じゃないんでしょ?」
「ん〜……ある意味花火よりも迫力はあるが。
まぁ本当の花火は俺が今度手持ちのやつ買ってやるから我慢しれ」
渋るヴィヴィオだがそこは譲れない。
ここで俺が幻術たーまやーとかやったら、俺が花火にされそう。
「ともかく、今日は帰ろうか。
何が楽しくて爆破現場を花火として見なければならんのか。
スカさんには感謝のメールを送ろうかと思っていたが、これは無視するしかねぇ」
「帰るの?」
「うむ。
折角の外出なんだし、帰りにコンビニでもあったらアイスでも奢ってやるから。
コンビニあるか知らんけど」
「やったー!!」
このままいても不法侵入で何か面倒事になりそうだし、そのまま現場を後にした俺らだった。
「六課が……崩壊している……だと……?」
「狐パパ、どうしたの?」
「うむ、俺とヴィヴィオの寝る場所が無くなってしまった。
このままでは寝不足→心が荒む→顔に出る→一生童貞→いくえ不明」
「みんな無事なのかな?」
「見た感じ壊れてるのは入り口付近だけ。
後は火が回っててんてこ舞いって感じだな。
怪我人はそんなに居なさそうだし、消火活動も終わりそう。
俺に手伝える事はないな。
寝床はずぶ濡れか燃えてるか……無事かもしれんが望み薄だなぁ」
「行かないの?」
「面倒事に巻き込まれるのが目に見えている。
持ってて良かった多めの現金。
今日はビジネスホテルか24時間営業のファミレスで夜を明かすぞ。
俺が今行っても邪魔にしかならんだろうから明日早めに行けばいいさ」
「……うん」
「……あ、なのはさんに連絡入れてないや。
まぁいいか、明日で。
しかし使い魔なのになのはさんのアドレス知らないとはこれいかに」
16話・17話・18話を続けて見ないと内容が全く把握出来んかった罠。
時間が無いのに90分拘束で後に書き出したから今までかかったよママン。
てかギンガが死んでた。
ひぐらしを見てる感じだったとです。
3話続けて一夜の話なのにこいつが動くと1話で終わる。
そして次回の始まりが多分みんな予測できる。
そんな感じ。
という訳で16話でした。
もうアニメは重すぎてみてられないと思いつつ、ありがとうございました。