白昼のぶら下がり奇行文。
18話
スカさんから通信があったあの時に、八神は壊れた六課の代わりの本部を用意していたらしい。
六課周辺に人が少なかったのは移動していたからだそうだ。
病院に居た主要人物も、スカさんの通信後すぐにその仮説本部に招集。
仮説本部はなんと、見た目巨大な航宙艦だった。
「ソードブレイカー……だと?
まさかロストシップが実在していたとは。
キャナルはどこだ」
「また意味不明なこと言ってるね。
これは私達が昔お世話になった船、アースラだよ。
こんな状況じゃなかったらお稲荷さんと一緒にもう一度アースラに来れたことを素直に喜べたんだけどなぁ」
「どんな状況であろうと俺は素直に喜べない。
今まで完全に空気だった俺の首輪に何故鎖をつける。
そういう趣味か」
あぁ、このなのはさんの片手が繰り出す割れるような頭の痛みもなんか久々だ。
「こうでもしないとお稲荷さん逃げるでしょ?
ちゃんと鎖の先は私に繋げておくからね!」
「何嬉しそうに言っちゃってるのこの子。
発信機ついてるって言ってたんだからそれ使えばいいじゃん。
てかヴィヴィオ助けて」
「なのはママ、狐パパの事好きなんだね〜」
「ちょ、何言ってるのヴィヴィオ!?」
助けてくれたのは嬉しいがヴィヴィオ、それは逆効果だ。
何を動揺しているのかは知らないが、首が絞まるので急な動きはやめて下さい。
そして発信機は、何でも俺が何かをやらかすときは大抵なのはさん達も切羽詰ってる状況なので調べる余裕が無いのだとか。
意味無いじゃん、外してよこれ。
で、俺がここに連れてこられている理由をそろそろお聞かせ願いたい。
「ある意味最大の主要人物がお稲荷さんとヴィヴィオだから。
2人も加えて、緊急会議を開くんだ。
と言ってもメンバーの役割を割り振るだけですぐに出動だけど」
「村人Aのポジションな俺が主要人物だと?
普通に考えて俺とヴィヴィオはお留守番だろう。
大丈夫、ゆりかごとか言うあの物体の被害が届かない世界の果てまで逃げるから。
あ、ヴィヴィオ。
非常用リュック、俺の分も用意しておいて」
「はーい!」
「何逃げる前提で話をしてるの。
とりあえず会議室に行くよ。
もうみんな集まってるんだから」
「ぐぇ」
飼い主と一緒に散歩してる犬の気持ちになったとです。
○ ● ○ ● ○ ●
「床が光っててテラマブシス」
「お稲荷さん、黙ってて」
みなさん椅子に座ってテーブルに体乗り出してるから大丈夫でしょうが。
この会議室、床が光ってる上に俺は床に座らされているので光がダイレクト。
照明は普通に天井からにしろよ。
「とりあえず現状なんやけど、地上部隊が自分らのみでの調査を固く主張してるもんやから、今回の件に関して本局からの戦力投入は無い。
そして、本局に所属する機動六課にも、捜査情報は公開されん。
そやけどな、私らが追ってるのはテロ事件でも、その主犯格としてのジェイル・スカリエッティでもない。
ロストロギア・レリック。
その捜査線上に、スカリエッティとその一味がおるだけ。
機動六課の方針は、一応はそういう方向や」
喋ってるのは多分八神。
テーブル高くて床からじゃ見えない悲劇。
「てか何でヴィヴィオは椅子に座っている。
ほらヴィヴィオ、そんな椅子より俺の尻尾の方が気持ちいいぞ」
「わーい!」
「重要な事やで頼むから聞いてや。
六課に地上部隊から捜査情報は公開されんものの、私らはそれ以上の情報を得てる。
原因は大体こいつのせい。
で、後2〜3時間もしたらあのゆりかごは鍵を失い、起動停止する。
あんな巨大なもんが街中に落ちたら、死傷者がどれだけ出るか予想できん。
だから出来る限り迅速に、ゆりかごの進路を街から遠ざけること。
これが最大の目標や」
「狐パパ、分かる?」
「つまりあれだろ、今からラストダンジョンに突入するんだろ?
熱いね〜主人公達は。
俺とヴィヴィオはアイスでも食べながらみんなの活躍をテレビ中継で見てようぜ」
「ホント? バニラがいい!」
「お稲荷さんとヴィヴィオも来るんだよ?」
なん……
「だと……」
「2人とも凄い驚いてるみたいだけど。
残念だけどアースラはもう老朽化が激しいんだ。
この間の青い子達がもう一度攻めて来たら、防ぎきれない可能性が高い。
なら、ヴィヴィオはお稲荷さんと一緒に居させたほうが安全じゃないかって。
ぶっちゃけ、お稲荷さんなら無傷で帰って来れそうだし」
「ヴィヴィオの命は俺次第って事か」
「私の冒険はここで終わってしまった」
うむ、ヴィヴィオは俺のことよく分かってるじゃないの。
「そしてお稲荷さんは私とチームを組んでもらうよ!
一緒にゆりかご止めようね!」
「つまり一番の死亡フラグ満載な地域に行くことになると。
生きて帰れたらもう怖い物なんて無さそうだ。
ヴィヴィオ、俺この戦いが終わったらなのはさんの胸を揉みしだくんだ」
「狐パパ……!!
どうして二重の意味でそんなに死を急ぐの……!!」
チビッ子達や副隊長陣の立ち回りも説明されていたが今の俺には馬に念仏状態。
気が付いたら解散になっていましたとさ。
で、なのはさん。
もう出陣ですか?
「後3時間もないんでしょ?
急がないと。
帰ったら揚げ尽くしをご馳走するから頑張ってね」
「対価が足りん。
帰ったらチューくらいしてくれ。
俺のファーストだぜ?」
「ヴィヴィオ、私達は生きて帰ろうね!」
「狐パパはゆりかご内で事故に見せかけて殺されるんですね分かります」
えっ
○ ● ○ ● ○ ●
「なのはとレイジングハートのリミットブレイク・ブラスターモード。
なのはは言っても聞かないだろうから、使っちゃダメとは言わないけど。
お願いだから、無理だけはしないで」
「あたしはフェイトちゃんの方が心配」
「ヴィヴィオはそれ以上に狐パパの事が心配」
「ん? ヴィヴィオの声……
……なのは、左手のそれ何?」
「これ?
お稲荷さん用の首輪に繋いである鎖。
すぐ逃げ出そうとするから、こうしちゃった」
「じゃあ、もしかして、少し後方でプランプランしてるのって……」
「お稲荷さん、空飛べても私達みたいに高速で移動できるわけじゃないから。
ヴィヴィオはお稲荷さんの尻尾に入ってもらって、引っ張ってあげてるんだ」
「そ、そうなの?
大丈夫、稲荷?」
「…………」
「ほら、お稲荷さんも大丈夫って言ってるし。
急いだ分向こうでの時間に余裕が持てるんだから、頑張っていくよ!」
「青白い顔して無言だった気がするけど……
まぁ稲荷だし、いいか」
「狐パパ……今度ヴィヴィオのアイスあげるからね……」
「…………」
俺は風になった。
「九死に一生スペシャル。
あの河の渡し守が緑髪の子に居眠りで怒られてなかったらやばかった。
俺の幻想入りも近い。
てか俺の死亡フラグは戦地ではなくなのはさんではないかという疑惑が浮上」
「生きてるんだから文句言わないの。
さ、ゆりかごの突入口も六課のみんなが見つけてくれたし。
ヴィータちゃんと私達は突入するよ!」
俺は意識を取り戻したらもうゆりかごの上にいた。
超スピードとか空間移動とかそんなチャチなもんじゃねぇ。
もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ。
「生きているから文句を言うんだ。
死人に口なしという名セリフを知らないのか」
「うるせーよ稲荷。
あたしらが一番重要な役割を果たしに行くんだ。
話してる暇があるならさっさと行くぞ」
いつの間に現れたヴィータ。
え? 俺が倒れてヴィヴィオにつつかれてる時?
助けてよ。
「ヴィヴィオ、俺の味方はお前だけだ。
俺の癒しの為にずっと一緒にいてくれ」
「あ、お稲荷さん。
ヴィヴィオに傷1つでも付けたら任務終了後にお話しようね」
「何故俺はお前という危険物を抱えてないといけないのだ」
この世の不条理を嘆いていたら有無を言わさず鎖を引っ張られて突入口へ入っていった。
誰か俺に優しさを下さい。
「なぁヴィヴィオ。
ゆりかごを止めるって事は、俺の作った幻達のもとへ行くのか?」
「そうじゃないの?」
「自ら黒歴史のもとへ赴くとか苦痛以外の何者でもない。
ここで消しちゃダメかね」
「分身が消える→ゆりかごが落ちる→街破壊の犯罪者になる→顔に出る→いくえ不明」
「その発想は無かった。
じゃあさ、私が本物のヴィヴィオだー! って敵に名乗り出て幻と交代するとか」
「あの幻でもうゆりかごが動いてるんだから、偽物にしか見られない気がする」
「クソッ! Lめ! こんな屈辱は初めてだ!
というかどうしてこんなことになってしまったんだ!」
「花火のせいじゃない?」
「それでも花火に罪はない」
書いてる途中で「O」のキーを押しながら寝ていたので今朝起きたら「お」がゲシュタルト崩壊を起こしていました。
ソードブレイカー分かるかなー
結構古いような気がするからなー
でもリツコさんの時と同様に筆者の熱きパトスを止めることができませんでした。
ともかく遅れましたが18話を投下。
昨日の遅れを取り戻す余裕があったら22時〜2時頃に次話を。
やる気が無かったら明日になります。
確率は60%
では、またお会いしましょう。
お越しいただきありがとうございました。