狐が星になった奇行文。
19話
「時にヴィータさんや。
突入時に俺達が一番重要な役割を果たすとか言ってたけど何するんだ」
「お前って本当に人の話聞かないのな。
あたし達は今分身を消されるとゆりかごが市街地に落ちるから、制御を奪って被害の無い場所へ移動させるんだよ。
フェイト達はスカリエッティの研究所を同時攻略中だ」
「でも、そこに行くまでには敵の妨害があるだろうからね。
出会った場合は撃破するよ。
でもゆりかごの進行方向を変える事が最優先事項だから、今は戦わない事に越したことはないんだけど」
へぇー。
言ってる側からダンゴムシもどきとボムキングと新顔のカマキリもどきが通路の奥に見えるのですが。
「ガジェット!」
「しかもあいつは……なのはを墜としたヤツか!!」
「あ、俺ヴィヴィオを守ってるんで戦術的撤退をしますね」
尻尾に入れたままのヴィヴィオと共に逃げようとしたら鎖をガッされた。
いや、無理だって。
目測で500体はいるもん。
「お前それ乱視じゃねーか?
どう見ても5分の1もいねーよ」
「ついに視力も疑われるとかもうね」
「お喋りは後!
行くよヴィータちゃん! お稲荷さん!」
「おう!」
行ってらっしゃい。
さてヴィヴィオ、どうしようかこの状況。
「ガジェットが攻撃できないようになればいくらいても問題ないんだけどねー」
「その案貰い」
流石ヴィヴィオ、俺の右腕。
爆撃打撃で殲滅をしているなのはさんとヴィータに巻き込まれないように離れて。
レッツ変化。
ダンゴムシ達の前に出る。
えっと、こんな口調だったかね。
「やぁ、私のオモチャ達。
あの2人にそこまで数はいらんだろう?
彼女らは今いるオモチャ達と私で対応しよう。
君たちは、外で遊んできたまえ」
「狐パパ、スカさんのマネ上手だね」
「黙りたまえ」
俺に向かってくるダンゴムシ等々のみ、外に行けと言っておく。
逆らうことなく外に向かうダンゴムシ達。
どこの世界でも製作者の命令は絶対なのね。
「さぁ、ヴィヴィオ。
あの2人のもとへと赴こうか。
クックック。
楽しいことになりそうだ」
「そう?
ヴィヴィオには狐パパの不幸な将来しか見えない」
この口調、なんか癖になりそう。
「お、お前はジェイル・スカリエッティ!?」
「お稲荷さん達をどうしたの!?」
おっと、ヴィータとなのはさんに見つかったようだ。
どうやら2人とも、もうほとんどの敵を倒し終わっているようである。
「フ、どうやらそちらも終わったようだね」
「なのは、こいつに問答なんて無用だ!
ぶちのめした後に聞き出せばいい!」
ハンマーを振りかぶってこちらへ向かってくるヴィータ。
髪をかきあげる。
ヴィータも騙せてるとかちょっと面白い。
つい顔がニヤける。
「あぁ、待ちたまえ」
「俺さ、一生懸命考えてやってるのにさ。
この扱いは本当に酷いと思うんだ」
「紛らわしい事するテメーが悪いんだろうが!」
既に変化は解けて、頭にはでかいたんこぶが出来上がっている。
ヴィータがあのハンマーを俺の脳天目がけてぶちかましたのだ。
文句を言ったところ、先程の切り返しが来た次第。
おら、行くぞ! と言い放ってヴィータとなのはさんは俺達の少し前を歩き始めた。
けど、完全に先に行かない所を見ると俺達を逃がす気はないようである。
「何が非殺傷だ。
ハンマーで脳天ぶち抜かれたら昇天するだろう常識的に考えて。
あぁ、俺の心を癒す物は何か無いものか。
……む、ボムキングは何かを隠し持っていたようだ。
デデーン、稲荷は綺麗な石を手に入れた。
青い菱形の石とは珍しい。
尻尾に収納しておこう」
「狐パパ、これなーに?
何か数字が書いてあるけど」
「ボムキングの残骸らしき中にあった。
俺の心を癒す予定の一品だ、しまっといて」
「はーい!」
さて、あんまし待たせるとまたなのはさんに鎖を引っ張られそうだし行きますか。
○ ● ○ ● ○ ●
「いらっしゃーい、お待ちしてましたぁ」
「ママァ————————!!」
なのはさんとヴィータが撃ち抜いた巨大な扉跡を潜ると、椅子に座ったヴィヴィオと横に簀巻きの俺。
そして前にビルの屋上で出会った眼鏡の青タイツがいた。
あえて言おう。
また眼鏡か。
「こんなとこまで無駄足ご苦労様。
あなた達のお仲間の、フェイトさんでしたっけ。
そちらも丁度、いい頃合のようですわよ?」
「ママァ————————!!」
そう言って眼鏡が指を鳴らすと、椅子の後ろに巨大な通信画面が現れた。
フェイトさんが捕まっていて、それをスカさんがニヤニヤして見ている。
周りには、側近らしき2人の青タイツも居た。
しかもまたスカさんが何やら演説をしているようである。
『君と私は、よく似ているのだよ。
私は自分で造り出した生体兵器達。
君は、自分で見付け出した、自分に反抗することのできない子供たち。
それを自分の思うように作り上げ、自分の目的のために使っている』
「そうか、その手があった。
流石スカさんいい事を言う。
ヴィヴィオ、今からお前は俺に反抗してはならない。
何故ならお前は俺の目的の為に動く事になるからだ」
「狐パパ、頭大丈夫?」
「少なくとも今の突っ込みでクラッシュしそう」
「ママァ————————!!」
「うるせーよ」
今のやりとりで俺の存在に気付いたのだろうか。
スカさんの視線は、目の前のフェイトさんではなく画面越しの俺に向けられる。
『おや君は、稲荷くんではないか。
君もなかなかに面白い人物だと思っていたのだが、いざこういう状況に立たされると常人と同じ反応なんだね、少々がっかりしたよ。
しかしよくあの拘束から抜け出せたものだね』
「もっと下を見ろ下を。
カメラワークが悪すぎる。
今も絶賛拘束され中だ。
俺の形をした何かが」
『……む?
そう言えば口調も少々違うようだね。
クックック、なるほど、偽物が潜り込んでいたという訳か。
あぁ、やはり君は素晴らしいよ稲荷くん。
まさか私を騙す者がいるとはね……』
「褒められた。
凄いだろ俺。
そこに座ってるヴィヴィオも偽物なんだぜ」
『なるほど、それは凄い。
ハッハッハ、アッハッハッハッハッハ!!
……は?』
大笑いしていたかと思ったら次の瞬間、見たこともない顔でポカンとするスカさん。
表情の移り変わりが激しい人である。
「や、言わないのは悪いかなーとは思ったんだけどさ。
あんな死亡フラグ満載の花火大会に無垢な俺を招待した腹いせに黙ってようかと。
それがまさかこんな大事になるとは誰も夢にも思うまい」
『……まさか稲荷くんもプロジェクトFを?』
「プロジェクトはXしか知らん。
挑戦者たちのヤツ。
もう終わってしまったが、NHK再放送しないかね」
「お稲荷さん、それ……テレビ番組じゃ……」
知っているのかなのはさん。
てか違うのか。
「因みにあのヴィヴィオと俺は、俺が10分間めっちゃ頑張って作ったただの幻。
なのに能力は本人と変わらないって凄いね。
というか、話す言葉がママァ—————!! しか無いことに疑問を抱いて欲しかった」
『そんな……まさか……全ては稲荷くんの手の上で……?
ではゆりかごは……』
「何か盛大に勘違いしてるみたいだけど、俺のせいじゃないかんね。
でももう少ししたら幻消えちゃうのでゆりかごは墜落しやんす。
許してくりゃれ?」
「どう考えてもお前のせいじゃねーか」
ヴィータ、黙らっしゃい。
落ち込み気味のスカさんを他所に、いつの間にやら拘束から抜け出したフェイトさんがスカさんの隣に居た青タイツ2人を倒していた。
みんな通信に集中してる時に攻撃するとか、なかなかに鬼だねフェイトさん。
てかあの青タイツ、結局何人いるんだ。
と、突然ここまで聞いていた目の前の眼鏡が騒ぎ出した。
「う、嘘ですわ!
ゆりかごは予定通り、2つの月の魔力を受けられる軌道上へ向かっています!
陛下が偽物な訳ありませんわ!」
「陛下だって。
お前も凄いのな、そりゃググッても出てこないわ」
「狐パパ、本当にやったの?」
「グーグレってパチもん臭いサイトがあったから検索してみた。
ヴィヴィオで軽自動車っぽいのが出てきたから実は凄くないんだと思ってた。
反省してます」
『スカリエッティ、話はそこまでです。
あなたを、逮捕、します!!』
ゆりかごが……私の計画が……とブツブツ呟いていたスカさんの後ろから、フェイトさんが巨大な剣の腹でスカさんを吹き飛ばした。
あれは痛い。
てか無抵抗な人を次々と倒していくフェイトさんに乾杯。
そしてその光景を見ていた眼鏡は、何かに取り憑かれたように笑い出した。
「アッハッハッハッハッハッハッハッハ!!
まぁいいですの。
仮にドクターが捕まり、他の子達やゆりかごがダメになったとしても。
ドクターのコピーは私も持っていますし、逃げきればいくらでも挽回は出来ますわ!」
「っ!?
ヴィヴィオ、こっちに来て!
ヴィータちゃん、ヴィヴィオを守って!
お稲荷さん、神速を使ってあいつを羽交い絞めにして!」
「はーい!」
「お、おう!」
「何故に」
疑問を抱きつつ、けど言われたことに体が反応してしまうのはチキンの習性。
数秒あれば十分に届く距離なので、即座に眼鏡の後ろにまわり羽交い締めにする。
「クッ、放しなさい!」
「お稲荷さん、そのままで!
ヴィータちゃん、撃ち抜くからヴィヴィオをお願いね!」
「どゆこと?」
「任せろ!」
「スターライトォ…………」
「なるほどな。
やはり犯人は味方の中に紛れ込んでいたか。
おい眼鏡。
この状況を脱する術を俺に提示してくれ」
「あぁぁぁあ……ああぁぁあ……」
完全にトラウマってるので無理だなこれは。
そうこうしている間に、なのはさんの姿は既に自身の前に収束しつつあるピンクの光の玉に隠れて見えなくなっている。
「狐パパー!
骨は拾うよー!」
「残らないと思うんだ」
「ブレイカァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
『稲荷……!!
クッ、スカリエッティ、貴様……!!』
『君もいい具合に壊れてきているようだね、ますます私に似ているよ。
因みに私のせいではないと思うのだがね』
『黙れ!!
なのはがどれだけ稲荷の事を大切に思っていたか分かるか!?』
『……いや素直に全く分からないんだが』
「フェイトちゃん、いいんだ。
お稲荷さんも分かってくれてるよ……」
『なのは……』
「クッ、あたしはまた守れなかったのか!!」
「狐パパ……あんなにフラグを乱立させるからだよ……」
『ふむ。
こういう毎日を送っていたのなら、やはり私のところへ来たほうが良かったのではないかね、稲荷くん』
…………。
ミッションコンプリート。
2時までに投稿出来た。
なのはさんのエクセリオンなスターライトブレイカーは魔力ダメージでノックダウンとかいうレベルじゃない気がします。
ヴィヴィオとかクアットロが消滅していくフリーザーのように……
今回1つ伏線張っちゃいました。
まぁもちろん見ればすぐに分かるモノですが、後に話を続けようと思うと欲しくて。
続けるかはノリ次第ですが。
そんな事よりゼストカッコイイよゼスト。
という訳で19話でした。
StSは後僅かですね、感慨深いものです。
では、来てくれてありがとうございました。