街中奇行文。
おかわり 2杯目
目が覚める。
知らない天井だ。
道場で気を失ったはずだが、どうやら部屋に運ばれたらしい。
それは嬉しいが、仰向けにされたせいで尻尾が痛い。
ご丁寧に時計も置かれているので見ると5時半。
早過ぎる起床だ。
寝かされていた布団から起き上がる。
「ん……」
俺の右隣りの布団になのはさんが居た。
おいおい。
何で俺の隣に人型の爆弾が置いてあるんだよ。
起爆数分前って感じだぞこれは。
「あ、狐パパ起きた?」
左隣には今まで気付かなかったが、ヴィヴィオが寝ていたようだ。
「どうしてこうなった」
「シローさんが運んでくれたんだ!」
「あの人外か。
見えない動きは多分感覚的に俺の神速と同じ感じだが、壁とか天井も足場にするとか。
もっと重力仕事しろよ。
右パンチ放つ間もなく終わったし。
まぁ……あの父親にしてこの人ありってのは分かったけど」
まぁいいや。
ヴィヴィオ、俺尻尾が痛いからほぐしついでにちょっと散歩してくる。
「その姿で外に出て大丈夫なの?」
「キョドるからダメなんだ。
堂々としていれば何も問題はない」
「不審者から変態になるだけだと思うな」
「過去の偉人は言った。
変態じゃない。
仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ。
という訳で行ってくる。
30分程で戻るから。
なのはさんが起きたら、30分間トイレで頑張ってる事にしておいて」
「はーい!」
うむ、いい子だ。
なのはさんを起こさないようにそっと部屋を出て、久方ぶりの地球を堪能するために歩き出した。
○ ● ○ ● ○ ●
いい朝だ。
「おや、綺麗な尻尾だねぇ」
おばあちゃんも。
「お、坊主いい尻尾持ってるな!
どうだ、狐なら油揚げ好きだろう?
豆腐と一緒にどうだ!?」
店先のおいちゃんも。
「狐さんだー!」
サッカー少年達も。
「みんなが優しい。
こんなに平穏な時間を送れたのはいつ以来だろうか。
ありがとう、みんな、ありがとう。
そこのサッカー少年、俺の気分は今最高潮だから俺自作の炎のクリスタル花ver.変化をあげよう。
前に頑張って作ったものだから壊さない限り消えないぞ」
「うわ、綺麗……
ありがとうございます!
あ、じゃあお返しにこれあげます。
さっき拾ったんですよ」
おや、ドラゴンボールじゃないか。
結構身近に落ちてるのね。
スカさんが言うには俺が願えばちゃんと叶うらしいし。
折角なのでもらっておく。
サッカー少年は今日試合があるらしく、練習に向かうため走っていった。
「頑張れよ少年!
あ、後おいちゃんも今度は絶対金持ってくるからな。
その時は極上の油揚げを頼む」
「おう!
いつでも来な、狐の兄ちゃん!」
主食の当てもできた。
後は金をどう稼ぐかだが……なんとでもなるだろう。
「いい感じに尻尾もほぐれてきたし、気持ちのいい朝を迎えられた。
そろそろ帰るか……なのはさんも起きてそうだし」
「あ、お稲荷さん。
どうだった?」
「あぁ、気持よかった。
こんなに清々しくなれたのは本当に久方ぶりな気がする」
「そ、そうなんだ……
ひどい便秘だったんだね」
何の話をしている。
「あの、それでね。
ちょっと相談したいことがあるんだけど……」
「なんぞ?」
聞けば、今日はなのはさんのお父さんがコーチをしているサッカーチームの試合があるんだとか。
そしてなのはさんには、この時に良くない思い出があるんだとか。
介入して、その惨劇を回避するべきか悩んでいるらしい。
「具体的にどんな惨劇があったのかにもよる。
なのはさんが初恋相手に告って、振られた腹いせに砲撃をかましたなら相手のためにも止めるべき」
「私を、何だと、思って、いるかなぁ?」
頭が割れそうに痛いです。
離しテ!
「そうじゃなくて、ジュエルシードが発動しちゃうんだよ。
サッカーチームの子が持っててね……
私、気付いてたんだけどそのまま放置しちゃったんだ。
そのせいで周りみんなに迷惑をかけることになって……
結果的にジュエルシードを集める覚悟がついたんだけど、どうしても忘れられなくて」
「ジュエルシード?
どっかで聞いたことあるが思い出せん。
まぁサッカー少年が被害に会うというのは見過ごせぬ。
何とか介入して止めようか」
「何で覚えられないかな……
ジュエルシードはほら、お稲荷さんがドラゴンボールって呼んでるやつだよ。
やっぱり、被害に会うのは見過ごせないよね!
じゃあ先回りして、貰っちゃおうか!」
「あ、ドラゴンボールなら今朝貰ったわ」
「お話聞かせて?」
助けテ!
「あ〜あ、お稲荷さんから目を離すとすぐそういう事するからなぁ。
もういっその事、四六時中一緒にいようか。
あ、それだと、お、お風呂も一緒に入ることに……」
俺の関与しないところで勝手に俺の死亡フラグ立てるのやめてくれませんかね。
しかしこれでなのはさんの言う惨劇は回避されたと。
時になのはさん。
「どうしたの?」
こう、昔の記憶に俺が入ってきたりしてない?
後はこの後起きる予定だった惨劇がもう記憶には無いとか。
「あ、そう言えば全然そんな事はないね……
なんでだろ?」
「スカさんから聞いた。
何でも過去に起こった事はそのまま未来に反映されるんじゃなく、俺達が居た未来とは別のパラレルワールドが出来るだけなんだと。
だから、既にここはなのはさんの過去であり過去じゃない。
俺達が未来に戻っても、そこは今日起きるはずだった惨劇が起きた世界らしい。
つまりここは過去というよりもう1つの世界。
この言い方厨二っぽいね。
嘆かわしい」
「ちょ、な、何でお稲荷さんがそんな事覚えていられるの!?
スカリエッティの件は後で問い詰めるとして」
「テイルズのマクスウェルもなりきりダンジョンの小説で同じ事言ってたから理解できた。
30分は同じ場所読み返さないと分からなかったけど。
凄いねスカさん、もはやマクスウェルレベル。
エターナルソード無くてもあの人単体で時間移動できるんじゃなかろうか」
後、スカさんとメル友になってるのは許してください。
「という訳だ。
未来に影響は出ないし、なのはさんの黒歴史を一通り堪能したら帰ろう。
ここのなのはにネタを仕込んでもどうやら俺に恩恵は来そうにないし」
「動機が不純だよ……」
元々それが望みだったしね。
俺が願わないと帰れないから、黒歴史見るまでは帰らん。
泣いて許しを乞うがいい。
……そういやヴィヴィオは?
「ご飯食べてるんじゃないかな?
さっき、狐パパはトイレで頑張ってるから狐パパの分のおかず貰うね! って言ってたし」
ちょ、待てよ。
俺のおかずが無いとか死活問題。
すぐにリビングへと駆け出す。
ドアを開ける。
なのはが着替えをしていた。
「お邪魔しましたー」
何か騒いでいるが無視。
次のドアを開ける。
なのはのお兄様が居た。
「なのはが、覗きが出たと騒いでいるのだが?」
「人違いです。
失礼しましたー」
ドアを閉めて駆け出す。
てかリビングどこよ。
再び彷徨いだしたら廊下でヴィヴィオとばったり。
「あ、狐パパ!」
「ヴィヴィオ!
俺の飯は無事か!」
「はい!」
「はいって、これゆでたまごやないか。
坂東にでもなれと?」
せめて塩か醤油持ってきてよ。
てか、飯はこれだけ?
○ ● ○ ● ○ ●
色々あったもののグダグダと1日を過ごし、夜になった。
試合観戦から帰ってきたなのはの様子と、別段騒動が起きなかった事からやはり惨劇は完全に回避されていたようである。
俺の飯がゆでたまごのみという惨劇は回避できなかったが。
そして今は晩ご飯。
みんなでテーブルを囲んでワイワイ。
俺は床で青森りんごのダンボールを逆さにして1人食べてます。
「六課に居た時も思ったんだけどさ、何でみんなとご飯食べに来て1人で食べてるんだ俺」
「そこに席が無いからかな」
黙れ眼鏡。
何ティアナと同じこと言ってやがる。
てかいつの間にそこにいた。
前に俺の席を奪ったのも眼鏡だったんだよ。
眼鏡素手で触って指紋でギトギトにしてやろうか。
「眼鏡じゃなくて美由紀だよ!?
そして指紋は勘弁してください」
「狐パパ、ヴィヴィオもそっちで食べていーい?」
「あ、じゃあ私もお稲荷さんとヴィヴィオと一緒に食べようかな。
なんか、本当に家族になったみたいだね!」
「ハッハッハ。
なぁ恭也、なのはは将来幸せになりそうだなぁ」
「そうだな父さん。
稲荷くんには感謝しないとな」
本当にそう思っているのなら今すぐに手から力を抜いてください。
箸がミシミシ言ってるので。
あ、ヴィヴィオとなのはさん。
流石にダンボール1つじゃ3人は厳しいのでまた今度ね。
「ぶー」
「ぶーじゃねーよ。
お前が俺をパパと呼び、なのはさんをママと呼ぶ限り俺の平穏はなのはさんのママさんが居る時じゃないと訪れない」
「あらあら、桃子でいいわよ?」
にこやかに笑ってはいるがこの人がヒエラルキーの頂点に君臨しているのだから油断できない。
「だがイタチがそっちで食べてるのは気に入らんな。
こっちこいや」
「フェレットだ!」
何人前で喋ってる訳?
動物が喋るとかお前化け物と思われるぜ?
「妖怪の権化とも言えるお稲荷さんが何を言ってるの。
というか私の事を説明したら、魔法の事を話すのは仕方ないでしょ?」
なるほど。
だがそれはイタチがそっちで食べている理由にはならん。
こっちこいや。
「稲荷さん、不快な思いをさせてしまってごめんなさい。
でも、ユーノ君は私がこっちで食べさせてあげたかったから……」
「ユーノ君?
あぁ、なのはさんがホの字の人か。
あの人って人間じゃなかったっけ。
てか、こんないい子があんな風になっちゃうのかぁ……」
ちらっ。
「お稲荷さん、後で訓練しようか」
「久々過ぎて俺の絶望感がハンパない。
だが残念、ここには訓練室はないのだー」
「けど残念、封時結界っていうので魔法を使っても大丈夫な空間を作れるからいくらでも本気出せるんだ」
「わぉ」
それなんて封絶。
「じゃあお稲荷さんは久々なので耐久訓練を。
なのはちゃんは魔法訓練を開始します。
なのはちゃん、お空にバインドで縛ったお稲荷さんが浮いてるの見える?」
「はい!」
「何故なのはがいるし。
そして俺が縛られてるし。
耐久訓練って響きが地獄からの呼び声に聞こえてならない」
「私が教導官してるって教えたら、指導して欲しいって言ってきたんだ。
じゃあお稲荷さんを標的に、魔法を放ってみるよ!
まずは私がお手本を見せるから」
「くそ、やめろ、離せショッカー!!」
「ディバイーン……バスター!!!」
アッ————————————!!
「じゃあなのはちゃん、やってみて」
「はい!
ディバイーン……バスター!!」
アッ————————————!!
書きためていた部分を少し訂正と追記して投下。
なんかサザエさんみたいな感じでほとんどが家の中の話な罠。
無印にした意味が無い。
その内多分外に出ます。
しかしStSより無印って書きにくいんですね。
シリアス度合いが低いから?
ぬ〜ん、分からん。
てか無印時代の高町家で六課の話をするとシュールに感じるのは俺だけでしょうか。
後、登場人物が3人超えると難しいなんてものじゃない。
飯時なんて6人と1匹。
書いてる自分は分かりますが、読んでくれている方々は分かるのだろうか。
なのはさんとなのはがややこしすぎる。
まぁそれはともかく。
おかわり2杯目です。
ご賞味頂きありがとうございました。