喫茶『お稲荷』
おかわり 3杯目
「平凡な……小学3年生だったハズの私……高町なのはに訪れた突然の事態……
受け取ったのは……勇気の心……
手にしたのは……魔法の力……
魔法少女……リリカル……なのは……始まります……
んふふ……」
「すげえ寝言だなおい。
過去の自分を見て何か思うものがあったのだろうか。
ヴィヴィオ、録音は完璧か?」
「うん!
映像付きー!」
「素晴らしい。
まさかなのはじゃなくなのはさんが黒歴史を掘り返してくれるとは。
これをネタに今度ゆすろう。
決して昨日の処刑の腹いせではない。
てか何で昨日はあんな事になったんだ」
「狐パパはそれが分かってないからああなったんだと思う」
マジでか。
「まぁ考えても分からないから今はいいや。
ところでさ、昨日はスルーしたんだけど何でなのはさんとヴィヴィオがこの部屋にいるのさ?」
「なのはママがみんな一緒って言ってくれたんだ!
だから3人同じ部屋なんだよー」
「また余計なことをしてくれたな。
ギャルゲーの主人公なら起き抜けに胸揉んでポッ、略してモミポが発生するが俺が同じことをしても悲惨な未来しか見えない。
知ってるか、昨日の昼になのはさん、木刀で素振りしてたんだぜ?
フラグじゃねーよな、あれ」
因みになのはに教えるのが終わったら、士郎さんと手合わせみたいなのをしてたのも見たけど。
決して射撃砲撃グーパンアイアンクローに飽きたのではないと切に願いたい。
そうこうしているうちに朝食の時間となった。
なのはさんは幸せそうな夢を見ていたので放置することに。
今日は清々しい朝の散歩に行くことが出来なかったが、それ以上の収穫があったのでよしとする。
ヴィヴィオと共にリビングに行くと、テーブルを拭いている桃子さん。
鼻歌混じりで上機嫌である。
「あら、稲荷くん丁度良かった。
料理を運ぶから、布巾でテーブル拭いておいてもらえない?
稲荷くん専用の机もお願いね」
「ダンボールに水分とか正気の沙汰とは思えない。
てかこれ、俺のマイデスクで決定なの?
いや確かに六課に居た時もこれがマイデスクだったけどさ」
文句を言いつつもテーブルを拭く。
マイデスクは拭くとフニャフニャになるので、炎のクリスタル花ver.変化をインテリアとして設置して準備完了。
料理を並べ終え、いざ茶碗にご飯をというところで続々と高町家が集まりだす。
みんな席に着いたところで、頂きます。
「そういえば、君の主のなのははどうしたんだい?」
居ないことに気付いたのか、士郎さんが問いかけてくる。
「魔法少女だった頃の自分を夢見てニヤニヤしてたんで放置してきました。
時の流れとは残酷ですね。
しっかりと寝言を録音してきた次第」
「うぅ、他人事とは思えないから笑えないの……」
そりゃそうでしょう、あなたの未来の姿なのですから。
「そういや、母さん。
俺となのはは今日出掛けてくるよ」
「あら、どこに?」
「月村家まで、な。
なのはがすずかちゃんにお誘いいただいてるらしくて」
「お茶会しようって誘われたの!
ユーノ君も一緒だよ!」
「狐パパ、お茶会ってなーに?」
「そんな卑猥な言葉を覚えちゃいけません」
お兄様にガッされた。
「ヴィヴィオとお茶会はどう考えても水と油の関係だから。
どっちかっていうとお前は屋台でラーメンかっ食らってる方だから」
あ、油で思い出した。
桃子さん、この姿でも出来るアルバイトってないかな?
「どうしたの? 突然……」
「油揚げを買いたいのです。
文無し故に1枚も買えない」
桃子さんはう〜ん、と悩む。
時折士郎さんと相談もしている。
やはりこの姿で受けれるバイトなんてそうそうないのだろう。
3分はそんな状態だったが、やがて顔をあげてこちらを見てきた。
「じゃあ、稲荷くんには私達が働いている喫茶『翠屋』でウェイターをやってもらっちゃおうかな」
「ペット入店禁止からなんという格上げ。
素晴らしい、流石桃子さん素晴らしい」
「ヴィヴィオもー!」
「ふふ。
じゃあヴィヴィオちゃんも雇っちゃおうかしら」
「やったー!」
えぇ、やりましたとも。
これでお揚げは確保できたも同然。
人類にとっては小さな一歩だが、俺にとっては偉大な飛躍。
じゃあ飯も済んだし、店の方へ行こうかという士郎さんの声を皮切りに、リビングにいたメンバーが各々の行動を開始する。
俺達は士郎さんと桃子さんを先導に、高町家を後にした。
「あ、そういえば眠り姫はどうするんだい?」
「なのはさん?
あぁ、メール送っとくか」
『俺とヴィヴィオ、職を得た。
ご飯はテーブルの中央に、ゆでたまご。
ネ兄! 脱ニート!』
そーしん。
ちゃくしん。
『……………………………………えっ?』
○ ● ○ ● ○ ●
初めてとはいえ結局は飲食店。
注文を取って、料理を運び、皿洗い。
主な仕事はそれくらいである。
溶け込み力EXな俺にとっては別段難しいことではない。
午前中の業務を難なくこなし、昼食休憩を挟んで後半戦スタート。
「ヴィヴィオちゃん、3番テーブルにチョコケーキと紅茶をお願いね」
「はーい!」
桃子さんの指示にしっかりと従うヴィヴィオ。
元気いっぱいなあの子は周りから、特にお姉さんやおばあちゃん、おじいちゃんに大人気。
「おい狐、なんか化けてみろよー!」
「これ、コスプレって言うんだろ?
すげー、本物みてーだ!」
「フォルァ!
何勝手に尻尾に触ってるんだ!」
俺は悪ガキ共に大人気。
お姉さんにモテたいです。
「でも平和だから何でも許しちゃう気分になるのは、きっと俺の日頃の行いがいいおかげ。
あ、客……いらっしゃいませー」
……ん?
「フェイトさん、フェイトさんじゃないか」
「えっ?」
店に入ってきたのは何と金髪をツインテールにした幼女。
つまり幼女フェイトさん。
なのはさんの過去なんだから、フェイトさんの子供時代であってもおかしくない。
同じ学校通ってたとか言ってたし。
意外にエンカウントが早かった。
しかし、フェイトさんって子供の頃からそんなきわどい服着てたのね。
スカさんと戦った時も似たようなの着てたけど。
なんて言うんだっけ……レオタード?
でもそれにマントは合いません。
「あ、あの……どこかでお会いしましたっけ?」
「なのはさんと友人のフェイトさんなら会ったけど君とは初対面。
初めまして稲荷です。
今の夢はアルフさんと同じ扱いをなのはさんから受けること」
「ア、アルフの事も知ってるんですか!?
まさか魔導師……!
さっきの子の仲間か!!」
どの子よ。
「狐パパーまたサボってるの?
あ、フェイトママ」
「おぉ、ヴィヴィオ。
何勝手にサボり魔にしてる訳?
それはそうと、何か幼女フェイトさんが盛大な勘違いをしているようなんだ。
ん、まてよ?
ヴィヴィオ、お前今核爆弾並の発言をしなかったか?」
「稲荷くーん、この子もママってどういうことだい?」
振り向くと士郎という名の修羅が居た。
流石に飲食店だから木刀は無かったが、元祖アイアンクローを食らいました。
やはりこの父にしてあの子あり。
でも握力がなのはさんの比じゃねぇ。
「へぇ、オカンの頼みで捜し物してるんだ」
「は、はい。
母さん、最近元気無くて……
頑張ってジュエルシードを母さんに届けて、また以前みたいに笑ってもらいたいんです」
騒ぎは起こったものの、何とか幼女フェイトさんと士郎さんを宥めることに成功。
俺の頭もパーンとならなくて済んだ。
立ち話もなんだと、テーブル席へ案内した次第。
なお、昼時を過ぎてお客もまばらになってきたので俺も休憩を貰うことができ、じっくり話を伺うことに。
桃子さんの気遣いか、幼女フェイトさんにはイチゴショートと紅茶が置かれる。
俺には無いのですね分かります。
「へー。
捜し物届けると笑顔になる方程式が俺にはよく分からんが。
頑張れ幼女」
「フェイトでいいですよ?
あ、後……稲荷さん、でしたっけ」
なのはに続いてフェイトも呼び捨てでいいとな?
ムフフ。
優越感がウナギ登りですのぅ。
ニヤニヤが止まらない。
「母さんがその、知り合い伝で稲荷さんの事を聞いたらしくて。
一度会ってみたいって言ってたのを思い出したんですが……」
「俺の事を話せる知り合いなんてここにはスカさんくらいしか居ないぞ。
フェイトのオカンとも知り合いとか交友関係広すぎる。
今度スカさんと飲もうって言ってあるから、その時に声かけるって伝えておいて」
はい! と元気よく応えるフェイト。
どうしてこの子も将来あんな風になってしまうんだろうか。
その後、母さんへのお土産をとシュークリームをいくつか包んでテイクアウトしていった。
この世界のフェイトは是非ともあのまま大きくなってほしいものである。
「稲荷くん」
「桃子さん……どした?」
「はい」
なんぞコレ。
シュークリーム×3
イチゴショート
ダージリンティー
小計 1130円
「ホワッツ?」
「今日のバイト代から引いておくわね」
……ホワッツ?
○ ● ○ ● ○ ●
「今日、私と同い年くらいの女の子にジュエルシードを封印しようとしたら襲われたの……
金髪の可愛い子だったけど、とっても強くて。
ジュエルシードを取られちゃったの……」
「今日、私と同じだと思っていたお稲荷さんがヴィヴィオと一緒にニートを脱出したの……
何とかしなきゃって思ってたけど、みんなもう家に居なくて。
六課の時と立場が逆転しちゃったの……」
「今日、私が働き始めた喫茶店になのはと同い年くらいの幼女フェイトさんが来たの……
お母さんにお土産も買っていったけど、支払いしてなくて。
請求書が私の所にきちゃったの……」
「狐パパ、キモイ」
流れ的に前の2人と同じ感じに言ったのに何故。
結局フェイトの代金1130円を俺が払った。
つまりその日のバイトの約4分の1を無駄にさせられた。
意気消沈で帰宅し晩ご飯と相成った。
今度見つけたらきっちり請求してやる。
「うぅ、お稲荷さん働くことを嫌ってたハズなのに……」
「油揚げの誘惑には勝てなかった。
今度桃子さんに頼んで揚げ尽くし作ってもらう」
時に桃子さん。
その炎のクリスタル花ver.変化はマイデスクのインテリアなのですが。
何でそちらのテーブルを彩るかのように中央に配置されているのですか。
「いいでしょ。
ダンボールよりやっぱりテーブルの方が栄えるかなって思って」
涙が、止まらない。
「なのはさん。
私をもっと強くして欲しいの。
あの子が何でジュエルシードを集めるのか、理由を聞きたい。
だって、何だか悲しい目をしていたんだもん」
「なのはちゃん……
うん、ニートがどうのこうの言ってる場合じゃないよね!
よーし、私がビシビシ鍛えちゃうから覚悟してね!」
「なのは、それフェイトだろ?
何で俺に支払いさせたのかその理由も聞いてくれ。
俺の目が悲しくなる」
そしてなのはさんは少しはニートを気にしましょう。
というか、直接介入はしないの?
「私が解決しちゃったら、なのはちゃんがフェイトちゃんと仲良くなれないでしょ?」
さいで。
考えてはいるんですね。
「稲荷……」
「どうしたユーノ。
貴様に呼び捨てを許可した覚えはないのだが」
「今日戦ったのは、間違いなく僕達の世界の魔導師なんだ。
いくら魔力量があると言っても、なのははまだ小さい。
大丈夫かな……」
「そうだな、『神技「取り払われた秘境」』とまでは言わないが、その基本形くらい出来れば多少は勝機が見い出せるのだが。
いや待てよ?
セクシーコマンドーでマサルさんがズボンおろして小股で走り寄り攻撃する技があったな。
これだ。
なのは、特訓だ。
これが出来ればフェイトに勝てる。
だが習得した後は俺に近寄ることを禁ずる」
「何を、教えようと、してるの、かなぁ」
ギブ、ギブ!
首が、締まってます!
「む、背中に当たるこの感触。
貴様、つけていないな!」
力が強まっ…………
「…………」
「きゅ〜…………」
「なのは……さん」
「どうしたの、ユーノ君?」
「あの、ちょっとやり過ぎなんじゃ……
稲荷はいつものことだけど、なのはもボロボロになってるんですが……
もっと基本的な事から教えたほうがいいのでは」
「あはは、確かに厳しいとは思うよ。
でも、細かい事をあれこれ言うよりも、模擬戦できっちり叩きのめした方が、教えられる側も学ぶことが多いって。
教導隊では、よく言われてるんだ」
何度も言うが叩きのめされる度に記憶が飛ぶ時もある俺に学ぶものなど何も無い。
因みにこの教導は、もっと強くなりたいって意思と熱意を持った魔導師に、ハイレベルな戦技を教えていくものらしい。
「もっとニートになりたいって意思と熱意は大いにあるのですが。
帰っていい?」
「へ、へぇ……教導官って言うのも、大変そうなんだね」
「でもユーノ君も、ちゃーんとなのはちゃんのフォロー出来てるよ! 立派立派!
私は大っぴらには助けられないから、なのはちゃんの事、よろしくね?」
「そ、そうかな……えへへ。
任せて下さい!」
「ふふふ」
聞いてよ。
あれ、何かこの流れデジャヴ。
超難産。
StS時と同じくアニメ見ながら進めているのですが。
グダグダ具合に拍車がかかってきました。
もはや完全に別の物語へと進化を遂げていそう。
この話も不人気だろうなぁ〜と思いつつ。
さっさと次へ進むために敢えて投下。
でもこの後どうしようか。
士郎が恭也に見えます。
桃子がなのはさんに見えます。
そんな高町家。
だが美由紀、てめーはダメだ。
おかわり3杯目でした。
もう1杯いかがですか?