狐呪術奇行文。
おかわり 6杯目
声のした方を見てみると、あらビックリ。
プレシアさんとフェイトがいるではありませんか。
「色々と聞きたいことはあるけど……その浴衣、どうしたの?」
「旅館の浴衣に穴をあけると桃子さんとのリアル鬼ごっこが開催される故。
自腹をはたいて買ってみました。
似合う?」
「あなたの姿に黄色い浴衣、しかも柄が油揚げって……合いすぎてて逆に怖いわよ。
それ売った人絶対狙ってたでしょ」
ヴィヴィオ、この浴衣似合ってるって。
やったね。
「で、プレシアさんとフェイトは何故ここに?」
「あなたに言われたとおり、療養も兼ねて温泉旅行よ。
早く良くならないとアリシアも悲しませちゃうし」
「そうか。
フェイト、旅行は楽しいか?」
「は、はい!
母さん、やっと以前みたいに笑ってくれるようになったんです!
稲荷さんのおかげと聞きました、ありがとうございます!」
うむ、うむ。
プレシアさん、フェイト頂戴。
こんな素直な子、なかなか居ないから癒し系で置いておきたい。
「何言ってるのよ。
あなたに渡したら『大体フェイトのせい』って言われるように育っちゃうじゃない」
「ひどくね?」
「ヴィヴィオは素直だよ?」
「ヴィヴィオ、夢は寝てる時に見るから夢なんだぞ」
分かった分かったから。
尻尾の毛を引っ張るんじゃない。
ハゲるから。
「しっかしプレシアさんの後ろをトコトコと、鴨の親子みたいだな。
……あ、そうだ。
フェイト、実を言うとな。
ちょっと前にプレシアさんってお前のこと、クローンだから娘じゃなくて人形だって言ってたんだぜ?」
「えっ……」
「ちょ、あなた何言ってるの!?」
「いや、フェイトがプレシアさんを見限れば癒し系アイテムとして俺がゲッツできると思って」
「それを暴露しているあなたの株も急落していることに気付きなさい」
そんな訳は無い。
な、フェイト。
「か、母さんを悪く言わないで!」
「やべ、怒った。
選択肢間違えたようだな。
ヴィヴィオ、リセットを頼む。
さっきセーブしたところから別の分岐選ぶから」
「狐パパの人生をリセットしますか?」
なにそれこわい。
「大丈夫よフェイト。
あなたを稲荷には渡さないから。
染まっちゃったら手がつけられないし」
「母さん……!」
何やらハートフルな展開になったがいまいち釈然としないのは何故だろう。
まぁ、とりあえずこの親子は仲が良いようである。
短い邂逅を終え、フェイト親子はその場を後にした。
何でも外を少し散歩してから、温泉に浸かりに行くのだとか。
いつまでもここにいる訳にはいかないし、俺もなのはさんを背負ってヴィヴィオと共に部屋に戻ることにする。
○ ● ○ ● ○ ●
ようこそ、この素晴らしきまったり空間へ。
あれから部屋に戻り、そのままボサッとして過ごしている。
あれだね、最近の俺は働きすぎだと思うんだ。
因みにヴィヴィオは先ほど、なのは達とどこかへ遊びに出かけた。
なのはさんも、部屋の布団に寝かせた10分後には目覚めた。
けれど別段何をする訳でもなく、俺と同じ感じにお茶をすすったりしながらボーッとして時間を潰している。
「あ、お稲荷さん。
通信機に呼び出しがかかってるよ?」
「むぉ?
……あ、プレシアさんからだ」
ちょっとなのはさん。
飲んでたお茶を噴出すのやめてくださるかしら。
「ゲホ……な、何でプレシアさんが……ゲホ……お稲荷さんに!?」
「前に飲み会で連絡先交換したからじゃね?
えっと……飯が終わったら一緒に飲まないかってさ。
フェイトも来るってよ」
「な、何でフェイトちゃんがプレシアさんと!?」
「さっきも見たけど余程仲が良いんだなあの親子」
私の思い出がどんどん崩れ去っていくの……と、白い灰になっているなのはさん。
親子の仲が良いと思い出が崩れ去るとか、どんな状況よ。
さて、返事はOKっと。
飯の後が楽しみである。
「それでね、花火大会に行ったんだけど、建物がバーンって爆発してたんだ!
狐パパが言うには、文化の違いらしいよ」
「あんたそれ、テロじゃないの?」
「アリサちゃん、お祭りが派手な地域は結構あるんだよ?」
「ハハハ……私もいずれ通る道なの」
「後はね、後はね!」
時は夕食時。
俺達も大人組の部屋で集まって、みんなで食べることになった。
更に運ばれてきた料理を食べ尽くした後には、子ども達の間でヴィヴィオの昔話に華が咲いているようである。
その昔話の1つ1つで、俺が惨劇に巻き込まれたのはいい思い出。
「さ、時間も結構遅くなってきた事だ。
そろそろ子ども達は寝ようか」
ふと時計を見ると9時を回っていた。
平穏な時間は過ぎるのも早いとです。
士郎さんの言葉を皮切りに、布団を敷いて寝る体勢に入るなのは達。
多分ファリンが、お話を聞かせて子ども達の眠気を誘っている。
もう一度言うが、あいつは多分、ファリン。
「さて、それじゃあ俺達も部屋に戻ろうや。
みんなおやすみ。
2人とも、行こうか」
「うん!」
「あ、はい。
じゃあおやすみなさい」
大人組はもうしばらく雑談に興じるようだが、俺は先約があるので軽く挨拶を済ませて部屋を後にする。
と言っても俺達の部屋は隣なのだがね。
「あら、丁度いいタイミングだったみたいね」
「ん……?
おや、プレシアさん。
フェイトも、さっきぶり」
既に俺達の部屋の前でプレシアさんが待ち構えていた。
今の言葉から、丁度来た所みたいなので長時間待たせることにならなくて良かった。
部屋に招き入れ、早速飲み会が開始される。
「と、その前にヴィヴィオはどうするよ。
フェイトいるけど、もし眠かったら先に寝るか?」
「大丈夫! まだまだ起きてられるよ!」
「そうけ。
フェイトも大丈夫?」
「あ、はい」
よろしい。
ならば飲み会だ。
「あの、プレシアさん。
フェイトちゃんの事は、その、えっと……」
「……?
あぁ、あなたが稲荷の言っていた主の高町なのはかしら」
「えっと、はい。
私の記憶じゃ、フェイトちゃんとプレシアさんは、仲が……良く、なかったので」
昔の事を思い出しているのか、なのはさんは少し顔色が良くないようである。
だが、プレシアさんは別に仲は悪くないと主張。
心なしかフェイトの顔も明るい。
「そうですか、良かった。
お稲荷さんが何かやらかしたからどうなっちゃったかと思ったけど、いい方向に進んでるみたいだね」
「道筋を知っていながらあえて違う道を行く。
人はそれを原作ブレイクと呼ぶ。
だが俺は一体何をブレイクしたのか分からない」
「全てをブレイクしてるよ。
…………っ!?」
突然、なのはさんが顔を強ばらせた。
何事かと周りを見ると、どうやらこの場に居た全員が同じ感じになっているようである。
電波でも受信したかね。
「母さん!」
「えぇ」
「なのはママ!」
「うん、間違いない。
お稲荷さん!」
「あぁ、15年ぶりだな……使徒だ」
口の前で手を組むイカリのゲンドウスタイルでキリっと答えたのになのはさんからグーパンを頂きました。
ネタふりかと思ったが違うようである。
「ヴィヴィオ、お稲荷さん!
ジュエルシードが発動しちゃう!
急いで封印しに行くよ!」
「フェイトも行ってらっしゃい」
「はい、母さん!」
「展開についていけない。
ヴィヴィオ、お前はさっき何の電波を受信したんだ?」
「魔法の力!」
全てが魔法の一言で片付く世の中って便利ね。
けど何でヴィヴィオは俺の尻尾に潜り込んでるんだ?
その理由は分からなかったが、俺の首輪にまた鎖がガチャンとされたから俺の行く末だけは分かった。
○ ● ○ ● ○ ●
「あの、稲荷さんがゴミのように後方でブランブランしてるんですが」
「お稲荷さんって飛行が全然上達しないんだよねー
地上の移動は凄い速いのに。
急いでる時はいつもこんな感じだから気にしないでいいよ?」
「ち、地上を走るのが速いなら走らせてあげればいいと思うんですが」
「お稲荷さん頑丈だから大丈夫!
あ、あそこだね目的地」
「はい!
あ、でも低空飛行すると稲荷さんが……」
「狐パパの体が絶賛摩耗中。
気分は陸上サーフィン!」
俺の背中でヴィヴィオが何か言っているが、聞き取る前に意識がブラックアウトした。
「なのはさん、介入しないって自分で言ってたじゃないか。
何勇んで飛んできてんの? バカなの? 死ぬの? 俺が」
「ここまで変わっちゃったらもう介入してもしなくても変わらないと思うの。
放置してたらフェイトちゃんがジュエルシード集めやめちゃいそうだし」
「だからと言って転身の仕方が異常。
今まで凄い考えてるように見えてたけど実は何も考えてないだろ。
で、ドラゴンボールは?」
「封印したよ?
暴走すると危険だし」
俺が文字通り飛んできた理由を聞かせて頂きたい。
体をすり減らして来たのだから。
「そ、それをどうするつもり!?」
突如聞こえた叫び声。
何事かと視線を向けると、封印したドラゴンボールを右手に持つフェイト。
それを見てなのはが焦っている。
いつの間に現れたのだろうか。
「どうするって、封印?」
「それは危険な物なんだよ!」
「……?
君だったら、どうするの?」
「話し合いで、何とかできるってこと、ない?」
「それは、どうにもならない」
「……そういう事を簡単に決めつけない為に、話し合いって必要なんだと思う!」
「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらない。
そもそも、話の流れが分からない」
ふむ。
修羅場ですな。
ところでなのはさん。
「どうしたの?」
フェイトは、ドラゴンボールを封印しなかったら君はどうするのって聞いてるんだよね?
なのはは何故にドラゴンボールそっちのけでフェイトと話したがっているのだろうか。
「なのはちゃんは封印後のジュエルシードをどうするのかって聞いてるんだろうね……
この頃の私って、国語の成績悪かったから気付いてないんだろうなぁ……」
「日本語って難しいね、なのはママ」
「そうだね、ヴィヴィオ」
むぅ、不運な行き違いってヤツか。
仕方ない。
喧嘩両成敗。
「だからって……っ!?」
「どうし……っ!?」
空高く飛び上がってヒートアップしていた2人がゆっくりと地上に降りてくる。
「お稲荷さん、何したの?」
「最近開発した、喋ると絶対口角が切れる呪いをかけた。
口の両脇が常にプツプツ切れるからな。
いてぇぞ、あれ」
「それ、お願いだから私には絶対しないでね……」
えー、元々なのはさん対策の呪いなのに。
「まぁいいや。
おら2人共。
この9本の尻尾が目に入らぬか。
そこに直れ」
「そんな大きいの入らないの……いたっ」
「稲荷さん、何するん……うっ」
口答えは許しまへんで。
「ねぇ、お稲荷さん」
「ん?」
「さっき地面に寝転んだのに、何でその浴衣、汚れてないの?」
「ほほう、なのはさんにはあれが寝転んでいたように見えたと。
俺は江戸時代の拷問を受けた気分でしたよ。
それはともかく、気を込めると物が丈夫になるって描写を漫画で見たことがあったので。
妖力を込めてみました」
「これ……バリアジャケットよりも丈夫なんじゃ……」
「バリアジャケットって何ぞ。
……何でそんな目で見つめてくるかな」
「いや、結構長い間一緒にいるけど、まだ知らない事あったんだね。
そういや前にデバイスって何って聞いてたっけ」
「聞くに聞けない雰囲気を醸し出されたので。
知らなくても生きてこれました」
「アハハ……それはある意味凄いけど。
デバイスってこれの事だよ。
レイジングハート」
≪Nice to meet you INARI≫
「なのはさんの胸が喋ってる。
ふん!
いつもと変わらない、柔らかないい弾力。
何故この胸が喋ったのだろう……」
「…………ふん!」
「ちょ、待てなのはさん、それは洒落にならん。
分かった、俺も胸から手を離すから。
なのはさんも俺のお稲荷さんから手を離してくれ!」
「一握必殺……」
「ノゥ」
今日卒論の発表なのに現実逃避に書いているとです。
最後の数行を書いているときにBGMがトイレの神様になった。
ある意味泣けた。
みんな多分疑問に思うこと。
自分自身が疑問に思ったこと。
アルフどこよ。
きっと玄関先に繋がれているにちまいない。
旅行編が終わらない。
でも次は間違いなく終わる。
というか次の話にも食い込むはず。
妄想爆発させすぎて次の話を見ていないので、さっさと視聴しなければ。
おかわり6杯目でした。
そろそろお腹が膨れてきませんか……?
まだまだいけるようでしたら、もう1杯入れますね。