夕食醤油奇行文。
おかわり 8杯目
「…………」
「お稲荷さん。
今度一緒にそのお寿司屋さんに食べに行こ?
奢ってあげるから」
「なぁ、なのは。
一体何があったんだ?
稲荷くんがいつもと違いすぎてて怖いんだが」
「お父さんが思ってる以上に、稲荷さんは稲荷寿司が好きだったって事なの」
「なるほどなるほど。
さっぱり分からないんだが」
胸に北斗七星の傷を持つ男も涙するくらいの深い悲しみを背負った俺は、あの後なのはさんに連れられて帰宅した。
食卓についても、今目の前にあるご飯が本当は稲荷寿司だったのだと思うと涙が出ちゃう。
だって狐だもの。
そして、その間なのはさんに慰められている。
「なのはも大変ねぇ……
ねぇ稲荷くん、そろそろ元気出さない?
じゃないと桃子さん、稲荷くんの買ってきた油揚げをみんなにあげちゃうわよ?」
「ねぇ、なのはさん。
実は桃子さんって次元犯罪者じゃないの?
スカさんの犯罪が霞んで見えるくらいの悪に見えるんだけど」
「あ、あはは……」
笑って誤魔化すなし。
「でも、稲荷寿司がダメになって泣くなんて……
稲荷くんって、結構可愛いところあるのね。
大きいなのはは、どうだった?」
「いつもと違うそのギャップにキュンときたの」
「あらあら。
あなた、恭也、美由紀も協力してね?」
「ヴィヴィオもー!」
「あら、ありがとうねヴィヴィオちゃん。
なのははどうする?」
「ん〜……いいけど、なのはさんが夢中になる理由を聞かせて欲しいの」
「えっ!?」
そういう真っ黒な会話は本人が居ないところでしてくれませんか。
俺これからどうされるのよ。
明日になったらスッパテンコーで街中に放り出されるんじゃなかろうか。
俺を他所に、テーブルでは何か話が盛り上がりつつあるみなさん。
あんな悲劇があった後なのに俺のマイデスクは未だにダンボールなので、ひどく村八分を食らっている気がします。
慰めるならせめてそっちで飯を食わせてよ。
「だが最大の悲しみを味わった俺にもうこれ以上辛い悲劇は訪れない。
一度スターライトなブレイカーを食らうと、ディバインバスターがあまり怖くなくなる様に。
な、ユーノ」
「そういえばなのはがそんな事言っていたような……」
「なのはも食らったのか、スターライト」
「僕も隣で見てたけど、あれはスターライトというよりニュークリアって言葉が合ってると思う」
うまいな。
『核砲撃「スターライトブレイカー」』って感じか。
誰が対抗できるんだよ。
個人で撃てるとかアメリカも真っ青だな。
「しかしまだ、使ったことはないけどブラスターモードってのがあるって聞いた。
負担がでかいけど、普通にブレイカーするよりも格段に威力が上がるらしい。
受けたら脳汁出る」
「脳汁じゃ済まないでしょ。
というか受けた瞬間に蒸発してそう」
「確かに海鳴市が軽く地図から消えそうだな。
その後草木1本生えなさそうだし」
「僕達はなんて人に魔法を教えてしまったんだ」
「勝手に人をカウントしないでもらおうか。
教えたのはお前だお前」
魔法の魔の字すら使えんよ俺は。
しかしユーノと話すのが何気に面白い。
向こうは向こうで盛り上がっているけど、こっちはこっちで楽しかったとです。
○ ● ○ ● ○ ●
翌日。
いつものように翠屋での勤務を終え、家に帰宅。
部屋に戻って風呂に入って、尻尾の手入れに今日は40分かけてみた。
素晴らしいフカフカ具合である。
ただ根本がうまくブラッシングできないので、後でなのはさんに手伝ってもらおうと思う次第。
「ヴィヴィオがやろうか?」
「だが断る。
前に櫛に毛が引っかかった時、力任せに引っ張って尻尾がハゲかけたのを忘れたか」
「むー」
むーじゃねーべさ。
鼻を摘まんで言ってみる。
さ、飯の時間だぞ。
尻尾の手入れに時間をかけ過ぎると、どうも飯に遅れそうになるから困る。
渋々ながらに俺の尻尾の手入れを諦めたヴィヴィオを引き連れて、リビングへと向かう。
そこでは、髪を下ろしたなのはさんと桃子さんが料理を運んでいた。
しっかりと、俺の分はマイデスクに運ばれている。
「桃子さん、そろそろ俺もテーブルデビューしちゃだめ?」
「私とお母さんを間違えてるからダーメ!」
理不尽である。
容姿だけで2人を判別するのって無理じゃね?
間違えた罰として夕食後の皿洗いを命じられた次第。
「口は災いの元とはよく言ったものだ。
あ、なのはさん。
後でブラッシング手伝ってもらえませんか」
「ん? お稲荷さんの尻尾の?
いいよ!」
良かった。
これでヴィヴィオに任せずに済む。
程なくして高町家全員集合。
夕食開始となった。
「ねぇ、みんな。
ちょっとお話があるの……」
突然切り出すなのは。
その場に居た全員が耳を傾ける。
「実は今日、ジュエルシードの探索の時にフェイトちゃんと会ってね。
一緒に見つけ出すことはできたんだけど、その時になのはさんの言ってたような木のお化けが出たの」
「なのはー!
醤油取ってくれー!
ダンボールとテーブルの高低差に俺は手が出せない」
「今大事な話をしてるから後で!
それでね、そのお化けは退治できたんだけど……その時に時空管理局のクロノくんって人達と会ったんだ」
醤油ェ。
「時空管理局っていうのはもうみんな知ってると思うけど。
で、その人にジュエルシードを集めることをもう一度考えてみてって言われたんだ」
「なのはさん、醤油を」
「はい」
いや、はいって。
ペットボトルで渡されても。
「私は、やっぱりジュエルシード集めを続けたい!
ユーノくんのお手伝いで始めたことだもん、最後までやり遂げたい!
お父さん、お母さん、いいかな?」
なのはの問いにしばらく黙る士郎さんと桃子さん。
無事な例が隣にいるものの、やはり危ないことには変わりないので心配なのだろう。
「……ん?
そういやフェイトはどうしたんだ。
一緒にいたんだろ?」
「あ、フェイトちゃんはいつもみたいに封印のお手伝いしてくれた後にすぐ帰ったよ!
前の旅行の時に会ってから、友達になったんだ!
それで、フェイトちゃんはもうジュエルシードを集める必要がないから、手伝ってくれることになって」
「何故目の前に居た俺がその事実を知らない。
いつ話したよ」
「え、旅館に帰る途中に念話で」
ふむ、電話か。
しかしフェイトは電話に出てた記憶は無いのだが。
てかいつの間に番号交換したよ。
「……正直、心配ではある」
今までずっと黙っていた士郎さんが、口を開いた。
桃子さんがそれに続く。
「でも、なのははもう決めちゃってるんでしょう?
迷ってるんだったら、やっぱりやめたら? って言っちゃうんだけど……」
「あぁ。
自分の中で既に結論が出ているのなら、俺達が何を言っても曲げないだろうしな。
だから、気が済むまでやっておいで」
「お父さん、お母さん……!
ありがとう!!」
「まぁでもお稲荷さんのおかげで、本来会うはずだった危険よりは全然危なくないものになってるんだけど、ね?」
話しかけるな。
今真剣に醤油かけてるから。
ペットボトルでかける醤油は、油断するとドバっといくから。
…………あ。
「あ〜あ、私の子供の頃にもお稲荷さんが居たらもっといい結果になったかもなのになぁ」
「子ども時代からなのはさんの砲撃に悩ませられたら10円ハゲどころじゃなくなる」
「あの頃の私は、お稲荷さんと戦っても負けそうなくらいだよ?
戦闘経験なんて無いし、運動神経もからっきしだったからね。
……あ、枝毛」
「マジでか」
夕食後、部屋に戻りなのはさんに尻尾を梳いてもらっている。
なかなかに上手なのこの人。
流石、普段から使っている人は違うね。
「ヴィヴィオも髪長いんだから自分で梳けばいいんじゃね?
そうすれば、引っかかった時に力任せにされる俺の苦痛が理解できる」
「ヴィヴィオはまだやってもらいたいー!」
「あ、じゃあ俺がやろうか」
「なんてこったい」
何故頭を抱えるし。
少なくとも毎日使っているからお前よりは上手いぞ。
「……はい、終わり!
でもお稲荷さんの尻尾って、本当にフカフカしてて気持ちいいよね。
……えい!」
「こらこら、何尻尾に抱きついているんだ。
それは俺がやってみたかったのに。
何故自分に尻尾をつけてしまったのだろう」
「あ、ヴィヴィオもー!」
「気持ちいいね〜」
「うん!」
「全く……」
その日は寝るまで、2人にモフモフされてました。
最近ユニーク数が異常。
気付いたら来週の週間アクセス7000行きそうなんだもん。
PV数は260000突破。
何か記念をしたいものの。
ぬ〜ん。
なのはさんのSLBの検証動画を見ました。
何でも威力はペタジュールになるとか。
阪神淡路大震災が起きてお釣りが来る威力なんだそうです。
下手な土着神より強そう。
さて、おかわり8杯目でした。
ありがとうございます。
ただ、土日がちょっと遠出をするのでまだご飯が炊きあがっていません。
日曜はうまくいけばお茶碗に盛れますが、はてさて。