みんなの奇行文。
おあいそ
時が過ぎるのは早いもの。
スカさんが意外に早く予定をあけてくれたので、上映会をしてから本当に数日で最後のイベントである飲み会を開催することになった。
暇なのだろうか。
そして未来組も、飲み会を最後に帰ろうという話になったのでなのはさんちに居るのは今日の夕方まで。
時間にして1ヶ月程度しか居なかったものの、なんと翠屋を貸し切ってお別れパーティーをしてくれたのは感動ものだった。
桃子さんや士郎さんを始め、色々な人がなのはさんに頑張れと声をかけていたのは妙に記憶に残っている。
だってみんな声をかける時に俺をジロジロ見たから。
動物園のパンダになった気分である。
「そしてもう夕方になってしまったと。
寂しいが仕方がない。
今度はスカさんやプレシアさんと別れの杯を交わして、潔く帰るとしよう。
チビ達も、最後の交友を深めるがいい」
「あぁ、どこに連れていってくれるのか楽しみにしているよ」
「フェイトとアリシアも今日を楽しみにしていたしね」
丁度いい事に、なのはさんちの近くに臨海公園があったのでそこを集合場所にした。
集合時間5分前集合完了とか、どこの小学生ですかあなた達は。
因みにリアル小学生達は、少し離れた所で和気あいあいと話している。
やっぱりアリシアは少し微妙な顔だが。
「でもお稲荷さん、この辺でこんな大人数入れるお店ってあったっけ?」
「ん?
あぁ、店じゃないよ。
でもまぁ、大勢いるし紛れ込んでも大丈夫でしょ。
なのは達くらいのチビッ子もいるし」
「……? そう?」
「イケルイケル。
おーいチビッ子達よ。
そろそろ行くぞい」
俺の掛け声でワラワラと集まるチルドレン。
では早速、と尻尾からドラゴンボールを取り出す。
何事かとなのはさんは驚くが、無視して高らかに掲げる。
「んじゃドラゴンボール。
シェンロンはもう出ないっぽいからいいけど。
俺達を過去に戻ったその時間に返してくれ。
あ、スカさん達は向こうで飲むから今晩だけ俺達と同じ未来によろしく」
「ちょ、ま、え、お稲荷さん!?」
掲げたドラゴンボールが青白い光を発したかと思ったら、その光が爆発的に広がる。
あっという間に、俺達はその光に包まれた。
○ ● ○ ● ○ ●
「ここはまさしく俺達が旅立った六課裏の林。
だってここに、俺が最後の模擬戦の理不尽さに泣いた涙のシミが残っているから」
「そんな事を覚えてる稲荷さんがキモいの」
……辛いと思うけど、私が一緒に居てあげるから!
「にゃぁぁぁぁああああ!!
それはもう忘れて!!」
「だが断る。
さぁ、今から六課解散の飲み会があるらしいから。
さり気無く登場して、え? お前らいつからそこに? まぁいいや作戦で行くぞ」
「なるほど。
クックック、一部とはいえ未来をこの目で見ることができるとはね。
これほど愉快な事はそうそう起こり得まい」
「むしろホイホイ起こってもらっちゃ困るわよ。
私達科学者に真っ向から喧嘩売ってるような状況よこれ」
こまけぇこたぁ気にするな!
「お稲荷さん……
いつかやらかすと思ってたけど、やっぱりやらかした……」
「何頭抱えてるのさ。
さぁ行くぞチビッ子達。
向こうにはキャロとかエリオって言うカラフルな髪の毛のヤツらがいるぞ」
わーい、と俺の先導についてくるチビッ子達。
ブツブツ言いながらも、なのはさんやスカさん、プレシアさんも来た。
最後の飲み会だ、楽しく行きましょうや。
辿り着いたのは食堂。
ここでやるという情報はなのはさんから。
1ヶ月前にその情報が欲しかった気もするが。
扉を開け放つ。
「飲み会があると聞いて」
「あ、稲荷。
……あれ? なのはが呼びに行かなかった?」
一番近くに居たフェイトさんが俺に気付いた。
フェイトを見た後にすぐフェイトさんを見ると、違和感バリバリである。
「むしろ来なかったら飲み会がどこであるのかすら分からなかった。
それはそうと、俺の友達も参加させたいのだがいい?」
「え?
それはいいと思うけど……稲荷に友達なんていたっけ?」
「泣くぞフォルァ。
まぁ大丈夫ならいいや。
あ、チビッ子達は?」
「あっちのテーブルで楽しくしてるよ」
フェイトさんが指差す。
そこには部屋の一部分を陣取って、フォアードの面々が山盛りの料理を相手に格闘していた。
テーブルの面積=料理になりそうな勢いである。
「よし。
ヴィヴィオー! なのはー! フェイトー! アリシアー!
お前らはあそこのカラフルチビッ子達と仲良くやってこい」
「わーい!」
「あ、ヴィヴィオちゃん、置いてっちゃいやなの!」
「そういうなのはも私を置いて行かないでよ」
「こらこらー!
周りに迷惑かけないようにしなさいよ?」
4人はすぐさまキャロ達の所へ向かった。
ヴィヴィオがフォアード陣に何やら説明をしているようで、声は聞こえないが大きな身振り手振りが見える。
しばらくすると、響き渡る絶叫。
うむ、うむ。
しかし、アリシアは他の3人の保護者的な立ち回りになってしまっているな。
「アリシ、え?
フェイ……えぇぇ……
母さん、私こういう時どうすればいいか分からないよ」
「笑いしか出ないと思うわよ。
全く、あなたの思いつきは本当に私達の想像を超えるわね」
恐悦至極にございます。
「え、母……さん……?」
「あなたが大人になったフェイトね。
色々言いたいことはあると思うけど。
そうね、大体稲荷のせいって説明で通じる?」
「あ、はい。
大丈夫です」
感謝したらこれだよ。
「しかしあのフェイトが立派になってるわねぇ……
頑張ってるじゃない?
流石私の娘ね」
「母さん……!」
感極まったのか、涙目になりながらプレシアさんに抱きつくフェイトさん。
俺完全に蚊帳の外。
そういやなのはさんはどこに行ったのだろう。
「彼女ならシャマルという人に頭痛薬を貰いに行ったよ。
さて、稲荷くん。
こんな愉快な席だ。
早速飲もうじゃないか」
「おや、スカさん。
そうだな。
お、あそこのテーブルにあるのはまさかのカルピスチューハイでは」
「ふむ、日本酒も置いてあるね。
素晴らしい、なかなかにこの飲み会を企画した人は分かっているじゃないか」
途中のテーブルで、おつまみを少々拝借。
目的の酒があるテーブルでお互いに酌をし合う。
カルピスチューハイをグラスに注いでもらっても、雰囲気出ないのは何故。
「みんな楽しそうだね」
「時折聞こえる絶叫が何とも言えないものだね。
こういうのをカオスと言うんだったか。
まぁ私好みではあるが」
「プレシアさんは未だにフェイトさんに捕まってるな」
「私が彼女の誕生に関わっていたのなら、二つ名に無限の抱擁と名付けたものを」
じゃあ一生プレシアさんは開放されない気がする。
もうちょっとしたら助けてあげよう。
「稲荷さん!」
「むぉ?
あ、キャロじゃないか。
どした?」
「な、なのはさんがフェイトさんで、私達と同じくらいの大きさでなのなの言ってて、アリシアって人がジェイル・スカリエッティな金髪!?」
なるほどなるほど。
日本語でOK。
「なのはくんとフェイトくんが縮んでいる。
アリシアって金髪の人も居た。
そしてお前は何故ここにいる、といった所か。
後、キャロくん、だったかね?
大体は稲荷くんのせいだよ」
「素晴らしい通訳だスカさん、やはり頭にコクがある。
最後の言葉が無ければ」
ここで騒ぎに気付いたのか、みんながこちらに視線を向ける。
人ごみの中から、1人こちらへ近づいてきた。
「ジェ、ジェイル・スカリエッティ!?
何であんたがここにおるんや!
独房で捕まっとるはずやろが!」
「ふむ。
君が話に聞く八神くんかね。
ここにいる理由は君たちの言葉を借りるなら、大体稲荷くんのせいと言ったところか」
「納得してしまった自分が嫌や……」
納得したお前が嫌だ。
てかもう3回は俺のせいにされてるんだが。
「流石にこれはやり過ぎだと思うよ、お稲荷さん?」
「あ、なのはさん。
まぁ確かに事前連絡無しの飛び入り参加は迷惑だったか。
でも何だかんだ言いつつみんな楽しんでるから無問題でござる。
ほら、なのはを見てみろ。
スバルにアホ毛を弄られてるから」
そういう意味で言ったんじゃないんだけど、と項垂れるなのはさん。
「なのはちゃん、状況報告してんか……」
「あはは……
まぁ詳しくは後で言うけど、このジェイルさんは私達が捕まえたのとは別人だから。
結構いい人だよ」
「そこまで嫌われる未来の私というのも興味が沸くものだね」
八神は既に燃え尽きた感じになっている。
そしてスカさんはやはりスカさん。
何にでも興味を持つお年頃らしい。
あの後、プレシアさんから事情を聞いたフェイトさんも合流。
流れに任せてチビッ子達も参入。
途中ヴィータとかシグナムさんとかに見つかってまた波乱が起きかけたが、みんなで楽しくワイワイ飲みました。
なのはとフェイトとヴィヴィオはキャロとエリオがお気に入りらしく。
アリシアはティアナとスバルがお気に入りらしい。
後、何でこういう状況になったのか聞かれたから過去から連れてきたと言った。
全員からガッされた。
みんな頭を叩いてくるものだから、士郎さんの時のように大仏頭になった次第。
スカさんは、八神にどれだけ苦労したか愚痴をネチネチ言われていた、と思う。
絡み酒とは面倒な。
けど途中からスカさんが『私はヴィータなのだが……ジェイル・スカリエッティはそこの小さい子だよ』と言ったら標的がスカさんからヴィータに移った。
でも内容はスカさんを怒る内容だったので、八神の中ではスカさんに説教したことになっているはず。
プレシアさんは、なのはさんとフェイトさんを交えつつ談笑。
フェイトさんは過去に戻っている間にどんな事が起こったのかを聞いて呆然としていた。
何でも、あの幻で作った目がイッてるプレシアさんが、フェイトさんのオカンだったとか。
折角なので例の上映会IN六課を開催してみた。
なのはが半泣きになったので、3回リピートさせてみた。
なのはさんとティアナにグーパンされた。
ティアナもそっち側の人だったのを忘れていたよ。
ついでに以前撮ったなのはさんの寝言も放映してみた。
『魔法少女リリカルなのは』って部分で全員が爆笑した。
仕返しだったのか、なのはさんにいつ撮ったのかも分からない俺の楽しみにしていた稲荷寿司が無残になったシーンも流された。
何人かの人が優しくしてくれた。
そんなこんなで宴もたけなわ。
そろそろお別れの時間のようである。
「おや、体が半透明になってきたのだが。
物語にはよくあるが、自分がこういう体験をすると何だか不思議なものだね」
「稲荷がここに来るときに、『今晩だけ』って言ったからじゃない?
そろそろ時間だから、過去に戻されるんだと思うわ」
「そうですか。
2人とも本当に、お稲荷さんがご迷惑かけてすみませんでした」
俺がいつ迷惑かけたし。
「ちっちゃいなのはママとフェイトママ……元気でね!」
「ママじゃないの。
まだ9歳だよ私。
ヴィヴィオちゃんも、元気でね!」
「私もママじゃない。
けど元気で」
「うん。
2人の勇姿はあの映像と一緒にヴィヴィオの脳裏に焼き付けておくね」
「もう忘れて欲しいの……」
何を言う。
後10回は爆笑できる。
「短かったけど、楽しかったね」
「私もよ。
でも精神年齢大人とか。
その姿じゃ辛いものがあるわね……」
「アリシアが大人になる頃には中身はおばさんだね。
長生き出来てお得と考えるべきなのかな」
姿に合わない哀愁を背負ってティアナやスバルと別れを交わすアリシア。
強く生きて欲しいものである。
「それじゃあ、ドラゴンボールを発動させると怒られるのでもう会うことはないと思うけど」
「あぁ、楽しかったよ。
八神くん、君も稲荷くん程ではないがなかなかに面白い人物だった。
君と出会うために、管理局を襲撃するのもいいかもしれないね」
「ヤメテや。
大体はやてのせいとか言われるようになってまうから」
「フェイト、厳密には違うけどあなたも私の娘なのだから頑張って。
仕事に熱中するのもいいけど、いい人探しなさいよ?」
「か、母さん!!」
「こっちのフェイトって暗そうだからなー
お姉ちゃんも心配だなー」
「もう、アリシアまで!!」
「ヴィヴィオちゃん、なのはさんと稲荷さんの事よろしくね?
高町家全員の願いです」
「任せて!」
「キャロ、エリオ。
私達もほんの数時間しか話せなかったけど、楽しかった」
「私もです、フェイトちゃん!」
「僕も楽しかった!
そっちの世界に戻っても、頑張ってね」
もう残すところ10秒も無いだろう。
過去組の体は、ほとんど消えてしまっている。
最後に、これだけは言っておかないといけないことを思い出した。
「なのは」
「何ですか?」
「ユーノはどうした?」
「えっ?」
過去組が、完全に消えた。
今頃、あの公園に再び戻っているのだろう。
後に残るのは、俺とヴィヴィオ、隊長・副隊長陣とチビッ子達。
しかしこの胸に残る寂しさ。
言うなれば、小学生の頃に祭りの後とかに感じたあの寂しさに似ている。
……ん?
「ヴィヴィオ、おいで」
「狐パパ……」
「なのは達と一緒にいるのは、楽しかったか?」
「うん……」
「そっか、良かったな」
我慢していたのか、若干涙目になっているヴィヴィオを抱きしめる。
こうやって別れを経験して大人になっていくのだよ。
かつて俺が、稲荷寿司と別れを迎えたように。
俺を見るみんなの視線が、生暖かいものになった。
「稲荷、少し変わった?」
「何を言うフェイトさん。
俺は理不尽な仕打ちが無ければ基本優しいぞ」
「その理不尽な仕打ちを受ける原因になってるのはあんたやあんた」
マジでか。
「何はともあれ、終わったね。
明日から管理局でまた仕事かぁ。
……管理局やめて翠屋継ぐのもいいなぁ」
「フェイトちゃん、シャマル呼んできぃ!
なのはちゃんが手遅れになる前に!」
「分かったよはやて!」
「何で私には変わったの?って聞いてくれないの……」
人徳です。
「さてヴィヴィオ。
俺達は今夜からどこで寝ればいいと思う?」
「ヴィヴィオは狐パパの尻尾でいいよ!」
「だから俺は冷たい地面の上で寝ろってか」
「お稲荷さん、今日はとりあえずまだ六課を使えばいいと思うから。
次の配属先が決まるまでに私も部屋を探さないとだから、一緒に探そ?
あ、また3人で一緒に暮らす?」
「それもいいかもね」
「わーい、また狐パパとなのはママと一緒に寝れる!」
この子が、パパは私の部屋に勝手に入らないでって言う日はいつくるんだろうね。
「またってなんや」
「なのは、稲荷ともうそこまで……」
「ティア、なのはさんってもしかして稲荷さんを?」
「あんた知らなかったの?」
「エリオくん、なのはさん何か可愛くなったと思わない?」
「うん、何か雰囲気柔らかくなったね」
何やら色々と囁かれているが。
ようやく過去の物語は終わり、次は舞い戻ってのここでの物語が再開される。
願わくばこれからは、より平凡な毎日を送れる事を。
「後、向こうじゃのんびりしてたから、お稲荷さんもまた訓練を再開しようか」
「砲撃の的になっていたのにのんびりとかありえん」
平凡な日は、遠い。
終わってしまった。
文字数が一番多い話になったとです。
この展開は書き始めてから書きたかった私の夢ですが、いざ書くと登場人物の多さに半泣きになりました。
ここどうよって思う部分は、皆さんの妄想力でカバーしてください。
祭りの後という言葉を作った人は天才。
自分自身、小学生と言わずこうした催し事の後には寂しさを覚えます。
さて、しばらくは書きたかった外伝のような本編のような物をちまちまあげていこうかなと思っています。
海鳴出張編、まだ眠ったままですし。
A'sどうしよっかな。
リクエストを結構聞くものの、ネタが思い浮かばない。
まぁ、無印もネタが無いまま書き始めてこういう形になっているので、何とかなるのかもですが。
では、おあいそでした。
こちらが合計金額になります。
閉店までまだ時間がありますので、お茶をお持ちしますからごゆっくりどうぞ。。