昼食物語。
続・食後のヴィヴィオ
「授業って受けると異様に眠くなるよね」
「何言ってるのお稲荷さん。
授業中は寝ちゃダメだよ?」
「なのはさんって絶対あれだろ。
先生が板書した字が間違ってたら指摘するタイプだろ」
「何で分かるの!?」
クソマジメだから。
俺達の会話が気になるのか、ヴィヴィオが自分の席からチラチラとこちらを見ている。
恥ずかしいのか、借りた教科書で顔を隠した。
因みに何故ヴィヴィオが席に着いているのかというと、空き机があるからと先生が気を効かせて座るよう勧めてくれたのだ。
俺も座れれば堂々と寝れたのに立ちっ放しとか。
忌々しい。
先生が黒板に多分問題を書く。
それを指しながら、この問題が分かる人はいるかな? って聞いてる。
だが問題が難しいらしく、誰も手を上げない。
ヴィヴィオに至っては、既にナンテコッタイ状態。
「誰も分からないのかな?
じゃあ……今日は折角来てもらった、ヴィヴィオちゃんのお父さん!
答えをどうぞ!」
「文字が、読めん」
「……えっと。
お父さんはヴィヴィオちゃんと一緒に授業するのは早かったかな?」
「狐パパ!
恥ずかしいから今は真面目にやってよ!」
「お前、もう一度今のセリフを思い出せ。
この年齢で6歳児より下に見られてるんだぞ俺。
どう考えてもお前の10倍は恥ずかしい。
そして切ない」
「何威張ってるのお稲荷さん……
あ、すみません。
この人出身世界が違うもので、文字がまだ読めないんです」
「あ、そうなんですか?
じゃあ仕方ないですね。
代わりにお母さん、お願いします」
淀みなく問題の答えと思われる言葉を紡ぐなのはさん。
答えのアームドデバイスって何ですか。
てか問題になんて書いてあったのかすら分からない。
俺でも問題さえ言ってくれれば『コロンビア』くらいなら答えられたのだが。
さて、そうこうしているうちに授業が再開。
生徒はまた聞き役に徹することになった。
キーンコーンと鐘の音が響く。
授業終了の合図なのだそうだ。
どこの世界でもこういう所は一緒なのだなと、えらく親近感を覚える。
因みに今のチャイム。
4限目終了を知らすものらしく、今から昼食タイムらしい。
「再び給食を食える日が来るとは。
あの半分食べると飽きた揚げパン。
たまにお前味見してないだろって言うような味を醸し出すおかずという名の化学兵器。
存在がよく分からない牛乳。
デザート予約合戦。
どれもこれも切ない記憶。
さぁ、者共。
胃袋の貯蔵は十分か」
「お稲荷さん、ここの昼食はお弁当だよ?」
なん……だと……?
「あの給食の洗礼を受けないとか、小学校生活の何を楽しめばいいと言うんだ」
「まぁまぁ……お弁当をみんなで食べるのも楽しいよ?
私の学校もそうだったし。
中庭にでも行って食べようよ」
「ヴィヴィオもなのはママのお弁当がいい!」
「ありがとうね、ヴィヴィオ。
あ、お稲荷さんのお弁当はこれね」
黄色い布に包まれた正方形の弁当箱を渡された。
……む。
この弁当箱の隙間から漂ってくる仄かな香り。
これは、まさか!?
「その、過去に戻ったときにお母さんに習ったんだ。
お稲荷さんの好きな揚げ尽くし。
……えっ!?」
なのはさんに、ハグする。
素晴らしい。
実に素晴らしい。
こう考えると弁当も悪くないものである。
「え、あ……その。
お、お稲荷さんがそこまで喜んでくれるなら、また作ってあげるね」
「なのはさん……!」
「お稲荷さん……!」
「……あれ、今日の主役ってヴィヴィオだよね。
何で主役放ったらかしで2人の空間を作ってるの?」
ヴィヴィオよりお揚げの方が優先順位高いのは世界の常識ではないか。
なのはさんから離れながら答える。
さて、お前の弁当はどんなんだ?
「……ヴィヴィオ。
ポテトサラダが入っているのはいい。
肉も冷めててもうまそうだ。
ミニトマトやデザートが弁当を可愛らしく仕上げている。
だがお前のご飯の上にある味付き海苔、てめぇはダメだ。
何でご飯の上で『(´・ω・`)』の顔してんだよ」
「頑張ったの!」
頑張るベクトルが違う。
見ろ、なのはさんの弁当を。
お前が黒いショボンを作ったせいで、余りの海苔を使ったなのはさんの弁当は白いショボンが出来上がってるじゃないか。
こんな感じに3人とも、それぞれの弁当に色々突っ込みを入れながら、昼食タイムを過ごしていった。
なるほど、これはこれでなかなかに楽しい物なのかもしれない。
○ ● ○ ● ○ ●
午後は時間が空いていた先生が学校を案内してくれた。
といっても地球の学校と設備はあまり変わらない。
音楽室とか、体育館とか。
時折何の部屋か分からない所は恐らく魔法関連の部屋だったのだろうと予想。
一通り回った後に、学校のパンフレットを貰って今日の見学は終了。
初めて知ったが、あの学校はSt.ヒルデ魔法学校という名前だったらしい。
「やったなヴィヴィオ、魔法学校だって。
お前が入るクラスはグリフィンドールかスリザリンか。
てかお前魔法使えるのか?」
「うぃんがーでぃあむ・れびおーさ!」
「何で知ってる」
「なのはママが向こうの世界で見せてくれたー!」
なのはさん……
「だ、だって暇だったんだもん!」
「以前は朝の早くから夜まで訓練、そして夜中まで何かちまちまと残りの仕事をやっていたのにこの変わり様。
時の流れとは恐ろしいね。
まぁいいや。
で、ヴィヴィオはこの学校に入りたいか?」
「まだ分かんない。
というかなのはママの学校も行ってみたい」
やっぱりか。
まぁそこはまた後日、なのはさんちに滞在許可がおりたらだな。
因みになのはさん。
ヴィヴィオが地球の学校選んだらマジで一緒に住むの?
「そのつもり、かな。
少なくとも教導官はやめるかも。
外部協力者としてはやてちゃんとかの手伝いに行くことはあるかもしれないけど」
くいくいっと服を引っ張られる。
どうしたヴィヴィオ。
ん……何?
それをなのはさんに聞いてみてってか。
「なのはさん。
管理局なんて危ないところに行くのはもうやめて、翠屋継いで一緒に平穏に暮らそうって言ったら?」
「管理局やめる!」
「何がなのはさんをこんなに仕事嫌いにさせたんだろう」
「何が狐パパをこんなに鈍感にさせたんだろう。
まぁ……原因はなのはママなんだけど。
ヴィヴィオが来る前の狐パパの扱い、酷かったみたいだし」
何が言いたいのだ。
「何でもなーい。
なのはママ、一緒に頑張ろうね!」
「ヴィヴィオ……うん!」
何その含みのある言い方。
てかお前、やっぱり絶対6歳じゃないだろ。
リアルバーローと言っても通じるレベル。
「ヴィヴィオは6歳だもん!
ただ前世の記憶が少し残ってるから、他の人より頭が良いだけだもん!」
「前世……プッ。
お早い厨二病、おめでとう。
後、自分で頭が良いとか言ったら可哀想な人になるぞ」
分かった蹴るな蹴るな。
で、前世は何だったのよ?
「詳しくは覚えてなーい。
聖王様って呼ばれてたのは何となく覚えてるけど」
「え、ちょ、それって本当なのヴィヴィオ!?」
「本当だよー!
見て見て! えいっ!
ほら、狐パパに教えてもらった魔力で作った弾幕っていうの!
虹色でしょ。
虹の魔力光って聖王の証らしいよ!」
「魔力で作るなんて言っていない、気合いで作ると言ったんだ。
てか王様で虹を使うとかお前絶対メリヒムだろ。
やめてよヴィヴィオにまで虹天剣っていう死亡フラグできるとか。
炎髪灼眼も涙目だから」
「やって欲しいの?」
「勘弁して下さい」
土下座。
恥も外聞も死亡フラグの前では意味を成さない。
「……ヴィヴィオ、お稲荷さん。
魔法学校に入れるのはちょっとマズイかも」
「どうしたいきなり」
「あそこは教会の系列だから。
分かりやすく言うと聖王教会って、聖王を崇拝してるの。
だから、聖王と同じ虹の魔力光を持つヴィヴィオを信仰の対象とするかもしれない」
また突拍子も無い話が出てきたな。
何、ヴィヴィオは神にでもなるのか。
この神はワシが育てた。
……いいかもしんね。
「てかなのはさんはそんな状況なのに何でニヤニヤしてるの?」
「あ、ぜ、全然地球の学校に行く可能性が高くなったから喜んでる訳じゃないんだよ!?
地球で暮らすいい口実になるとか思ってないよ!?」
「なのはママも黒くなっていくの。
私の周りに綺麗な人はいない」
お前も人の事言えんがな。
「じゃあお母さんに、泊まれるか聞いてみるね」
「どうやって」
「次元世界間で使える通信機を1つ家に置いてあるから、連絡はいつでも出来るんだ」
「へぇ……グローバル携帯みたいな感じか」
「狐パパの携帯は?」
「使えれば満足だからどんな機能があるかまでは調べてない」
「それは使えてるって言わないと思う」
「メールと電話が出来ればいいんだよ。
電話番号、なのはさんのしか知らないけど」
「あ、お稲荷さん!
お母さんいつ来てもいいって!」
「流石桃子さん、太っ腹」
「後、行くのは私の家族だから1部屋でいいって言ったら隣に居たお父さんがお稲荷さんとお話したいって言ってたよ」
なんてことをしてくれたんだ。
他にも筆者の小学校の頃は、牛乳瓶の文字が濃いといい。
こんにゃくゼリーの容器の裏に書いてあるナンバーが1に近いといい。
なんてのもありました。
何がいいんだ、何が。
クラスに1人は居た、間違い指摘する人。
何故スルー出来ないのか聞いてみた。
間違いは正す、それが俺の使命とか言ってた。
多分あいつも厨二病だったにちまいない。
単発で終わる予定だったのが、続いてしまった食後のヴィヴィオ。
ノッているので地球編も書いてみたい。
海鳴出張編はいつ投下するのかと。
多分筆者はヴィヴィオを好きになったのかもしれない。
では、続・食後のヴィヴィオでした。
満腹顔のヴィヴィオは可愛かったですか?
もうしばらくヴィヴィオを一緒に眺めましょう。
あ、ロリコンじゃないですよ。
当たり前じゃないですか。
ハハハ。