風呂とフラグと奇行文。
続々・食後のヴィヴィオ
前回に引き続きヴィヴィオの学校探し。
今度は地球の学校に行ってみようということで、前日の夜にお泊りセットを準備することになった。
着替えよし。
ブラッシング用品よし。
貴重品よし。
枕よし。
おっと、これはなんだ?
あぁ、以前飲み会の時に撮ったなのはさんとのツーショット写真か。
あの人も死亡フラグじゃなきゃ全然可愛いんだけどなぁ……
ふむ、折角だし持っていくか。
そしてそれらを入れる袋……無し。
「あるよねこういうこと。
ここで諦めるのは普通の狐。
だが俺は訓練された狐。
すぐに名案が浮かぶ」
押入れをガサ入れ。
取り出す巨大なビニールの袋。
一般的にゴミ袋とも呼ばれているが、今の俺にとってはドラクエの道具袋並の重要性を持つ。
鼻歌混じりで荷物を袋に入れる。
「なのはママ、狐パパは何であんなに楽しそうにゴミを捨ててるの?」
「あるとよっぽど嫌な物なのかな?
あ、あれって私と一緒に撮った写真……
そっか……そうだったんだ……グスッ……ヒック……」
「狐パパァァァァァァアアア!!」
うお!?
いきなりどうしたヴィヴィオ。
「どうした、じゃない!
何をしてるの!!」
「何をしてると聞かれても。
明日の為の荷造りをしているんだが」
「へ?」
「だから荷造り。
それ以外にどう見えるんだ」
「どう見ても別れた恋人との思い出の品を処分してるようにしか見えないよ……」
なんのこっちゃ。
「なのはさんからのお小遣いしか収入がない俺が旅行鞄なんていうブルジョアな物持ってるハズがなかろう。
ゴミ袋はいいね。
ゴミ袋は何でも入る。
リリンが生み出した文化の極みだよ」
時になのはさん。
目が赤いがどうかしたかね。
「……紛らわしいの!!」
久々にグーパンを頂いたものの、本気で訳が分からない。
ヴィヴィオ?
「まぁ、今回は狐パパのせいじゃ無い、のかな?」
ですよね。
とりあえず怒っていたみたいだったので、寝る時になのはさんに尻尾を抱き枕にさせてみた。
怒ったままにすると、後でどんな惨劇が起こるか分からないから。
でも終始笑顔だったので、多分怒りは収まったのだろう。
流石尻尾、今日ほど感謝した日は余り無い。
○ ● ○ ● ○ ●
「で、今はなのはさんち前と。
ヴィヴィオ、もう帰ろう。
ここは来てはいけない場所だった。
家がよく分からないオーラを纏っている。
これはオヤシロ様も逃げ出すぞ」
「いやいや、折角来てくれたんだから上がっていきなよ」
後ろから声が聞こえた。
振り向く。
士郎さんが居た。
なるほど、あなたがオヤシロ様か。
「……てか俺の知ってる士郎さんじゃない……よね?
見た目が変わらないんだけど」
「む?
君と会うのは初めてだと思うのだが」
「だが俺は知っている、士郎さんの体に無数の傷跡があることを。
そして士郎さんの股間のマグナムは永遠のライバルということを」
「それは聞き捨てならないね。
よし、勝負しようか」
「銭湯準備は万全か?」
「もう、お稲荷さん!
出会って最初にする事がお風呂って色々と順序を飛ばしてるよ!」
なのはさんが言うと卑猥に聞こえるのは何故。
俺はノーマルです。
「ふむ、なかなかに面白い子だね。
本当は道場で話を聞かせてもらおうかと思ってたんだけど、その気が無くなってしまったよ」
「なのはさん。
さり気無く人をボコるつもりだったって言ってるこの人を何とかして」
「お父さん。
お稲荷さんは私の大事な人なんだから、いじめちゃダメ」
「おっと。
そこまで言われると道場で話を聞かせてもらいたくなるなぁ」
火に油を注いでどうする。
結局お話は行われる事無く家に上がる。
きっと俺の事を客観的に見れるヤツらが居たら『士郎さんにボコられるんですね分かります』とか言っていただろうが。
死亡フラグを少しでも回避できるようになるとか、俺も成長したもんだ。
そしてヴィヴィオが高町家のみんなにご挨拶。
桃子さんの、ヴィヴィオを見る視線が凄い。
「君がヴィヴィオちゃん?」
「はい!
高町ヴィヴィオ、6歳です!」
「あなた、ヴィヴィオちゃんが可愛すぎるわ。
むしろ私達が貰えないかしら」
「落ち着け桃子」
「だってぇ……
あ、君がなのはの言ってた稲荷くん?」
「はい!
苗字なしの稲荷、狐です!」
「ダウト」
何が。
「ヴィヴィオちゃんが高町って名乗ってるんだから、稲荷くんも高町の姓になさい。
ヴィヴィオちゃんが可哀想でしょう?」
「だが断る」
「ヴィヴィオちゃんが高町って名乗ってるんだから、稲荷くんも高町の姓になさい。
ヴィヴィオちゃんが可哀想でしょう?」
「拒否します」
「ヴィヴィオちゃんが高町って名乗ってるんだから、稲荷くんも高町の姓になさい。
ヴィヴィオちゃんが可哀想でしょう?」
聞いてよ。
まさかここで無限ループに陥るとは思わなかった。
実は俺をこの姿にしたオッサンって、桃子さんだったりしないよな。
「まぁまぁ桃子、それも重要だが今回なのは達はヴィヴィオちゃんの学校を見る為に来たんだろう?
先にそっちの話を済ませようじゃないか」
「仕方ないわね……
なのは、私達も手伝うから頑張りなさい」
「うん!」
「ヴィヴィオ、過去でも似たような会話無かったか?」
「そろそろ気付いてね」
何に。
○ ● ○ ● ○ ●
今日はもう時間も遅いので、学校見学は明日にすることにした。
連絡は桃子さんが入れてくれたらしい。
流石桃子さん、素晴らしい。
そして夕飯前にお風呂に入ってこいとの事で、今は入浴タイム。
本当は士郎さんと勝負をしたかったのだが、なのはさんちのお風呂は一般家庭の物と変わらなかったため大人2人の入浴は無理っぽそうなので。
今回は見送ることになった次第。
また今度、温泉に行ったときに持ち越しらしい。
「狐パパ!
お風呂どう?」
「お、ヴィヴィオか?
丁度いいぞ。
表示はないけど恐らく41度。
俺にとっては適温」
「ヴィヴィオも入っていい?」
「ん〜……狭いぞ?」
「いいよ! 入るー!」
ゴソゴソとすりガラス越しに服を脱ぐ音が聞こえる。
入ってくるのは幼女確定なのに、この言い知れぬドキドキ感は一体何だろう。
やがて全部脱いだヴィヴィオが、浴室に入ってきた。
「じゃーん!」
「んなマッパを自慢されても嬉しくない。
ほら入れ入れ。
後の人の事は考えるな。
かけ湯なんてしないで豪快に来い」
「サイテーだね」
……あれ、思っていた反応と違う。
「先に体洗うね。
狐パパ、洗いっこしよ!
尻尾はヴィヴィオが洗う!」
「律儀だね。
丁度いい、いつも尻尾洗うの苦労してたんだ」
「いつも1人でどうやって洗ってたの?」
「気合いで腰を回してた。
何度我が骨子が捻れ狂ったか」
タオルにボディーソープを垂らして泡立てる。
ヴィヴィオの背中を優しくこする。
鼻歌を歌っているところを見ると、気持いいのだろう。
しかしいつも小生意気な事を言うのに、その割には小さな背中である。
ヴィヴィオの背中を洗い終えると、今度は俺の尻尾の番になった。
ボディーソープにヴィヴィオが手を伸ばす。
「マテ。
お前ボディーソープで頭洗ったこと無いのか。
カペカペになるんだぞ。
頼むからせめて頭髪用シャンプーを使ってくれ」
「狐パパは洗ったことあるの?」
「昔泊まったホテルに『頭も洗えるボディーソープ』って名前のシャンプーがあった。
むしろこれを作った人の頭がおかしいボディーソープ。
それ以降、泊まりに行くときはシャンプーだけは持参している」
「ふーん。
あ、狐パパの尻尾……細い。
いつもの半分もない。
……ぷふっ」
いつもフカフカですから。
てか我慢しても笑ったのもろ分かりだからな?
「さて、俺の尻尾は9式まであるから洗うのは大変だぜ?
ヴィヴィオ、シャンプーの貯蔵は十分か」
「洗うのはいいが、毛を毟ってしまっても構わんのだろう?」
「構うわどアホウ」
その後、3本目でヴィヴィオが疲れ始めたので俺も自分で洗いはじめたり。
泡だらけになった尻尾にヴィヴィオがダイヴしてきたり。
何とも賑やかな入浴タイムになったとです。
「あ、お稲荷さん上がった?
ヴィヴィオも一緒に入ってたんだ」
「うん!
狐パパの尻尾洗ったの!
楽しかった!」
「何ともいい湯加減だった。
なのはさんは今から?」
「うん。
……お稲荷さん、今度は私と一緒に入らない?」
「また俺のお稲荷さんを握りつぶすつもりか」
「ちょ、人聞きの悪いこと言うのやめてよ!」
一握必殺とか呟いてたヤツが何を言っている。
そう言うと、グーパンを残して去っていった。
顔が赤かったから多分照れ隠しなのだろうが、物理的攻撃は勘弁願いたいものである。
「しかしヴィヴィオ。
なのはさんは何故俺と風呂に入りたがったんだ?
もしかしてどこかでフラグ立てていたのか」
「おぉ!
狐パパ、今日は褒めてあげるー!」
「恐悦至極。
6歳児に褒められても全然嬉しくない。
さ、それはともかく俺は尻尾を乾かすぞ。
なのはさんが上がってくるまでに粗方乾かさないと、ブラッシングしてくれる前に寝てしまう可能性があるからな」
「ヴィヴィオがしようか?」
「拒否」
「ぶー。
じゃあドライヤーする!」
「任す」
嬉々としてドライヤー片手に俺の尻尾をいじりだすヴィヴィオ。
中々乾かないのは分かるけど、1点集中はやめてね。
熱いから。
「なのはさん、いつもブラッシングしてもらってすまんね。
特に今日は風呂上りなのに」
「全然いいよ。
私が好きでやってることでもあるし」
「それは重畳。
しかしヴィヴィオにはドライヤーの使い方も教えねばならんな。
いい顔で寝やがって。
尻尾が焦げるかと思ったぞ」
「あはは、仕方ないよそれは」
「ぬう。
あ、時になのはさん」
「何?」
「俺の事って好きか?
あ、嫌いでもいいから尻尾から手を離してね。
毛を引っ張らないでイタイイタイ」
「なななななな、何言ってるの!?」
「いや、普通男と一緒に風呂入ろうなんて言わないでしょ。
そうなのかなって思って。
だから毛を引っ張らないで」
「あぅ……その……
嫌いじゃ、ないよ?」
「可愛らしく言ってるけど今なのはさんが花占い的にプチプチしてるの尻尾の毛だから。
ヤメテ!
もう尻尾のライフは0よ!」
「お稲荷さんは、私の事、好き?」
「付け根握っちゃらめぇぇぇ!
ヴィヴィオー!
助けてー!」
「ヴィヴィオは今寝てるの。
だからなのはママともっと仲良くなってね。
後、これは寝言だから」
「嘘だ!!」
「ねぇ、お稲荷さん、どうかな?」
だから尻尾から手を離し……
アッ——————————!!
『おい、〇〇にひぐらしのスロットがあるってよ』
『ヒャッハー! そいつはマジか!
ひぐらし好きな俺としては、スロットしたこと無くても行くしかない』
梨花ちゃんが5万円くらいくれました。
何でそれで惨劇回避なんだと突込みどころもありましたが。
だから今回のはそれの影響を受けたのでしょう。
終わる時に、東京へ帰れって言われました。
私の地元は福井です。
君は結構何でもできる。
でも恋愛に関しては不器用。
知人の評価です。
みんなは『俺のこと、好きだろ?』なんて本人に言っちゃいけません。
惨劇が起きます。
さて、学校編なのに学校が絡まないという。
お風呂大好き。
心も裸になる。
そして次回でヴィヴィオ編多分ラスト。
乞うご期待。
デデーン。