優柔不断ストーリー。
終・食後のヴィヴィオ
なのはさんは俺の尻尾を無茶苦茶にするし。
騒ぎを聞きつけて桃子さんと士郎さんと眼鏡は来るし。
どさくさに紛れて士郎さんは真剣持ってきてたし。
阿鼻叫喚になって結局俺は道場で簀巻きにされて放置プレイ。
もう二度となのはさんにあんな事を聞くまいと固く心に誓った次第。
「ヴィヴィオ、まだこっちの学校見てないけど魔法学校の方にしない?
ここに居たら比喩表現抜きで死んでしまうかもしれん。
お前が例え崇拝されても、俺には影響ないから。
な、な?」
「ここまで真っ黒な人初めて見た。
狐パパ、私の目を見てもう一度言ってみて」
「死んだ魚の目をしている」
「それはヴィヴィオの目に映った狐パパの目だよ」
バカな。
「まぁそれは置いといて。
ヴィヴィオは何故道場に来たんだ。
というか俺と話す前に、この簀巻きをほどいてくれ。
俺の力でもちぎれないと思ったら、鎖が編み込まれていた。
士郎さんの俺に対する準備が万全過ぎて涙が出ちゃう」
「朝御飯だって。
それを伝えにきたよ。
ほどくのは拒否」
「何故。
そんな事実を伝えられても俺の腹は満たされない。
ほどいてーほどいてー」
「ニヤリ。
じゃあ狐パパ、バイバイ。
ゆでたまごは残しておいてあげる」
「ニヤリは口で言うセリフではない。
というか俺の分を食べる気か。
食べるんだな。
太るぞやめておけ」
「ゆでたまごも食べとくね」
やぶ蛇だった。
しかし最近のヴィヴィオはもう反抗期に入ったのだろうか。
何か冷たい。
朝食が食べれそうにないので腹の虫がギャースカ叫んでいるが、すまない。
俺にはどうすることも出来ないんだ。
結局3時間後になのはさんが道場に来るまで、俺は簀巻きのまま放置された。
○ ● ○ ● ○ ●
なのはさんがやってきた頃には、もう学校に向かわないといけない時間でして。
何とパンを持ってきてくれたので飢えることはなかったのだが、ほとんど間を置かずに家を出発した次第。
尻尾の手入れが出来なかったのが心残りである。
「しかし朝食が霞になるかと思った。
ありがとうなのはさん、ありがとう。
揚げはないけどパンを用意してくれていたことに俺の感激が有頂天。
でも何で都合よく準備できたの?」
「お稲荷さんならこうなるかなって思って」
なら先に助けてよ。
「しかしヴィヴィオも、仮にもオトンに対する仕打ちとは思えない。
待遇改善を要求する」
「狐パパも女性に太るなんて言っちゃダメだよ。
ついカッとしてやった。
反省はしていない」
「まぁまぁお稲荷さん。
ヴィヴィオも、もう許してあげて。
ほら、学校着いたよ?」
「ここか。
最寄りのバス停からバスに乗ってすぐとか楽でいいな。
そういや魔法学校の方は遠かったから車だったし。
ヴィヴィオ、どうよ?」
「気分は日本昔ばなしのエンディングテーマ」
「帰りたいんですね分かります。
てか懐かしすぎて涙が出そうだよ。
題名思い出せないし。
俺そんなの教えたっけ」
「なのはママと前に見たの!」
あの人、俺より堕落し始めているんではなかろうか。
「だが帰るのは却下。
行くぞヴィヴィオ。
なのはさん、手続きを」
「嫌でござるー!」
「分かった!」
嫌がるヴィヴィオを羽交い絞めにして校舎へと向かう。
ヴィヴィオを学校に入れるのはなかなかに重労働のようだ。
「私が子供の頃にいた先生が、丁度1年生を持ってるから授業見に来ていいって!」
「へぇ、それでここか。
1年は組。
嘘だと言ってバーニィ」
「あ、誰かのいたずらだね。
私の頃にもあったなぁ」
「俺には身に覚えがござらん。
この小学校だけのローカルな遊びのようだ」
しかしビックリした。
ここを開けたら山田先生か土井先生が居るとか勘弁願いたいものである。
いや、土井先生は少し居て欲しいけど。
今回は注意されること無く教室に入る。
どうやら授業の真っ最中。
壇上に立つ先生になのはさんが軽く会釈をする。
授業中に入ってきた人に興味津々なのか、子ども達の視線が凄い。
でもほとんどはヴィヴィオを見ていない気がする。
試しに俺だけ、教室の隅に寄ってみた。
全員の視線がついてきた。
「何故見る」
「むしろ何故分からないの?」
どういう事だなのはさん。
「はいはい、みんな!
珍しい生き物とは思うけど授業に集中しましょうね!」
「狐パパ、ヴィヴィオより目立ってるね」
珍獣扱いされても嬉しくない。
ざわめく生徒たちを先生が宥めて、授業が再開。
科目は社会のようで。
海鳴市の郷土を教えているようだった。
因みに今回も、事前に連絡を受けていた為ヴィヴィオは着席することができた。
羨ましい限りである。
授業の終わりには、折角だからとヴィヴィオの自己紹介タイムということに。
ヴィヴィオが壇上に上がる。
若干緊張しているようにも見えたが、すぐに大きな声を張り上げた。
「ミッド出身、高町ヴィヴィオ。
ただの人間には興味ありません。
この中に、宇宙人・未来人・異世界人・超能力者が居たら、私のところに来なさい。
以上!」
……これ、笑うとこ?
「お稲荷さん……」
「どうしたなのはさん。
俺は今、キョンさんの突っ込みが出来たことに感動しているのだが。
ほら見ろあそこ。
ヴィヴィオの隣のヤツの名前、谷口だぞ。
素晴らしい、俺もここに入っていいかな」
「お稲荷さんにはまだ早いよ」
……えっ?
「ヴィヴィオちゃん!
ミッドってなーに?」
「そういうのは聞かないのが大人のエチケットなんだよ」
「へー、そーなのかー」
「ヴィヴィオちゃんのお父さんって狐さん?」
「そうだよー!
狐パパ、変化してみて!」
合点。
ボフンと、煙に包まれる。
「アルフさんの姿をリスペクト。
本邦初公開。
稲荷子狐フォーム。
ただし尻尾は9本のまま」
「わぁ! 子狐さんになった!」
「すげー! 変身だ変身!」
「可愛い!」
「ハッハッハ。
落ち着きたまえ君たち。
おい誰だ尻尾引っ張ったやつ。
股を広げるなどう見ても俺は男だから。
わいせつ物陳列にしかならないから。
見た目子狐でも中の人はお兄さんだからね。
ちょ、耳は触らないで!
尻尾の付け根も触っちゃダメ!!
アッ——————!!!」
「ひでぇ」
「元気だしなよお稲荷さん」
「股を大開きにされた俺の姿を一番凝視していたのは誰だよ。
昼休みも体中弄られるし。
もうお婿に行けない。
ヴィヴィオ、大きくなったら俺を貰ってくれないか」
「いいよー!
ペットショップに売ったら5万円くらいになるかな」
親を売る子って今まで居ただろうか。
「あはは……
でも本当にあの姿可愛かったね。
今度私にも抱かせて?」
「今度な。
で、ヴィヴィオ。
肝心の学校はどうだったよ。
俺としては谷口もルーミアも居たここを勧めたい」
「狐パパの意見が朝と180度違う」
人の考えとは移ろいやすいものである。
「ん〜……すぐに答え出さないとダメ?」
「すぐって訳じゃないけど、私も後数日したら仕事に戻らないとだから……
今週中には決めて欲しいかな」
「あなたは一体何日休みを貰ったんだ」
「10日間」
なのはさんに休みを許可した方は、恐らく血涙を流したに違いない。
で、後3〜4日は余裕があるからその間は実家に泊まるんだとか。
全ては計画通りと言うことか。
ともかく、学校を見て回るという行事は終わったので後はヴィヴィオの答えを待つばかり。
もう少しだけは、肉体的平穏な日々は続きそうである。
「狐パパ、そういや何でルーミアちゃんの名前知ってたの?」
「マジでルーミアって言うのか」
「うん。
本当は伸ばさないけど、あだ名らしいよ。
本名は門音 流美亜」
「苗字がくっつけたらどう見ても闇系。
昨今の名付け方は凄いの一言に尽きる。
『月』と書いて『ムーン』と呼ばせるご時世だからなぁ……
あ、それと谷口の名前が気になるのだが」
「谷 口さんだったよ」
「まさかの谷口で姓名兼ね備えていたのか。
どこの国の人だ谷口」
「お稲荷さん、ルーミアって?」
「東方Projectをするか、ニコニコしてしまうコメントが流れる動画サイトの手書き劇場見れば分かるよ」
「見てみる」
「見終わったら弾幕ごっこしてみようぜ。
あれは格上の相手でも勝てるゲームらしいから、なのはさんに戦闘で一矢報いたい」
「戦闘なら負けられないね。
最近訓練もしてないし、お稲荷さんが負けたら私がみっちり教導してあげるね!」
……え。
「ヴィヴィオもするー!
頑張って虹天剣覚えるから!」
…………え。
週間ユニーク1位って何さ。
少し自重しよう、5位辺りで1位の方を眺めてるのがベストポジションだから。
でもありがとう、ありがとう。
子どもは何でも凄いで片付くのが凄い。
だから多分無邪気さも残酷になる。
バイト先でオッサンと呼ばれた。
まだお兄さんです。
最近の子どもの名前って本当に凄いと思う。
キララとクララって姉妹も居た。
大人になったらなんて呼ばれるんだろう。
ちょっと見てみたい気もする。
さて、食後のヴィヴィオ鑑賞会もこれにて閉幕。
結局行くところ決まっていないのは奇行文クォリティー。
そのうち決めます。
ヴィヴィオをねっとり見てくれてありがとうございました。
あ、バイト遅刻が濃厚なので感想返信は帰ってからします。
働きたくないでござる。
2011.9.13
歌詞で運営にフルボッコされるのが怖くて修正。