八神家の怪談。
はしご 3件目
ヴィヴィオと一晩、親子水入らずで土の中に埋まった翌日。
なのはさんに連行されてヴィータに謝罪に行くことに。
時間稼ぎで勝てると聞いて、時間稼ぎして勝ったのに謝るとか世界の中心で理不尽だと叫びたい。
で、リビングに集合して準備中。
「じゃあヴィヴィオ、ヴィータちゃんに会ったらまずなんて言うか分かる?」
「俺は悪くない、俺は悪くない!
悪いのはヴァン先生なんだ!」
「はいはい、真面目に答えようね」
「そもそも襲ってきた向こうが悪いと思うのは俺だけか」
「お稲荷さん。
どんな理由があろうと、女の子にあんな事をしたら無条件で悪いのは男になるんだよ」
解せぬ。
「ともかく謝りに行くよ。
この時期のはやてちゃんって、足が動かなくて学校に行っていないはずだから。
本当はなのはちゃんも仲良くなれそうだから、連れて行きたかったんだけどなぁ」
「行けばいいじゃないか」
「お稲荷さんみたいなニートと違って、学校があるんだよ?」
憧れてはいるけど、いざ言われると心苦しいこのジレンマ。
「狐パパ、ニートなの……?」
「何コイツ、だっさーい的な視線を向けているがヴィヴィオ。
お前も同類だということを忘れないで貰いたい。
てか俺は自分のお揚げ代だけ稼げればそれでいいんだよ。
本格的な生活費はなのはさんが稼いでくれるから」
「お稲荷さん、それヒモって言うんだよ?」
俺はなのはさんの使い魔という事実が忘れられている気がしてならない。
使い魔って主人が世話してくれるものじゃないのだろうか。
「さて。
じゃあヴィヴィオ、さっき渡したお菓子持った?」
「美味しかったー!」
「何で食べるの!?
あれは謝りに行く時持ってくお菓子って言ったじゃない!?」
最近、お稲荷さんがもう1人増えたみたいな気がするよと呟くなのはさん。
あんまし騒ぐと疲れてハゲるよと注意してみる。
「誰のせいだと思ってるのかな」
気のせいじゃないかな。
ドヤ顔。
ため息をつかれた。
なんでさ。
○ ● ○ ● ○ ●
結局翠屋に立ち寄り、シュークリームを新たに仕入れてから俺達は八神家に向かうことになった。
しかし桃子さんもちゃっかりしているもので、後日シュークリーム分の労働は最低するようにとの事。
食べたのはヴィヴィオなのに何故俺持ちなのだろうか。
シュークリーム6個分とか、半日労働に値する。
「とりあえず俺を巻き込んだヴィヴィオは後で折檻するとして」
「え」
「ここが八神家か。
なるほど、なのはさんちがゆりかごならここはスカさんの研究所に当たるわけですね」
「当たらないよ。
ほら、早くインターホン押して」
合点。
だが普通に押すのでは面白くない。
ここは敢えて、3・3・7拍子で押してみる。
押すとピーン。
離すとポーン。
それを利用して計13回。
最後の7拍子は押した状態で終わってしまった。
「なるほど、これが孔明の罠か」
「普通に狐パパが足し算間違えただけだと思う。
奇数回鳴らしたらそうなるのは当たり前だよ」
「というかお稲荷さんも普通に押してよ……
ほら、インターホンから早く手を離す!」
「何を言う。
今離したらポーンが響き渡って3・3・7が崩れるじゃないか」
「こだわり過ぎなの」
『あの、もうええですか?』
インターホンから聞こえる声。
それはまさしく俺が聞いた八神の物と一致した。
『えと、どちら様でしょうか?』
「昨日ウチのヴィヴィオがヴィータと喧嘩したらしく。
謝罪をさせに来ました。
因みに俺は止めたので罪がないことをここに宣言しておく」
『ダウト』
お前は何を知っている。
『ともかく、立ち話もなんです。
ウチの中に入ってください。
シャマルー!
お客さんを案内したげてー!』
はーい、と小さくインターホンから聞こえた。
しばらくすると、玄関から見知った金髪が。
「リツコさんもいるとか。
なるほど、さっきの八神の言葉から察するにリツコさんが俺にシャマルする訳だな」
「察せてない上に何ですかシャマルするって!?」
「はいはい、お稲荷さんは黙って中に入ろうね」
「だから待て。
今指をインターホンから離すとだな……
あっ」
ポーン。
なるほど、広い。
子供の頃からこんな家に住んでいるとか何とも忌々しいものである。
先導するリツコさんに案内されたのはリビング。
そこには、車椅子に座って待っている八神の姿が。
「ヴィータから色々聞いとるよ。
初めまして、変態さん。
八神はやて言います」
「何で会った瞬間に変態扱いされてる訳?」
「パンツ脱がせて写真撮ったらそら変態以外の何者でもないですやん。
で、今日は何のご予定で?」
「写真を撮ったのは俺じゃない。
そして事の発端であるヴィヴィオに謝罪させに来た。
お前が魔力を持っているのが悪い」
「今度狐パパに、なのはママと一緒に作った虹天剣を特等席で見せてあげる」
やだよ。
絶対それ虹の光が俺に向かって飛んで来るだろ。
特等席と書いてばくしんちとルビが振ってあるに違いない。
「しかしヴィータにリツコさんに、さっきからヤンデレ風味に後ろの扉の隙間から覗いてきているシグナムさん。
怖くて振り向けないのでスルーするけど。
副隊長とよく分からないのが勢揃いじゃないか。
後はザフィーラさんが居たら前に紹介してくれた八神ファミリーが完成する」
「狐パパ、リインさんを忘れてるよ」
「誰それ」
「あの、ちょっとええですか。
私、あなたに家族を紹介した覚えないんですけど……
何でザフィーラまで知ってるんです?」
お前が覚えていなくても、俺は死ぬまで覚えている。
なのはさんの訓練という名の拷問から解放されてようやく家に帰れると思った時に。
残業の休憩に入っていたお前に捕まり、ヴィータがどれだけ可愛いかとか。
巨乳がどれほど素晴らしいかとか。
ザフィーラさんが暇を持て余しているようで時々殺意が芽生えるとか。
気晴らしかは知らんが軽く数時間語ってきて俺の怒りも有頂天だったからな。
「しかもそれを3回はループするんだぜ。
思わず携帯で映像付き録音をしてしまった俺は悪くない」
「普通に撮影したって言えばいいと思う。
狐パパ、それ聞きたい!」
「私としては聞きとうない。
てかそんな愚痴をあなたにした覚えもない」
「当たり前だ。
10年後の八神が話していたのにお前が知っている訳なかろう」
信じないはやてに携帯で映像を見せてみる。
するとはやてやヴィヴィオだけでなく、横に居たリツコさんまで覗き込んできた。
画面には、俺が撮影している事にも気づかず巨乳がどれほど良いものかを、身振り手振りで大仰に語っている八神の姿が。
しばらく聞き入っていた3人だが、区切りのいいところで顔を上げた。
「うん、うん。
これは間違いなく私やな。
言っとることが素晴らしすぎる。
というか立っとる……私の足って治るん?」
「知らん。
そもそもはやての足が悪い理由すら知らん。
八神は気持ち悪いくらいに歩いていたが」
「もしかしてこれがなのはママの言っていた闇の書事件?」
……え、何。
じゃあ俺って自ら死亡フラグと厨二フラグに足を突っ込んでいる訳?
もしかして俺が歩く事件フラグなバーローだったのか。
「そっかぁ……
治るんや、私の足……」
知らんと言っているだろうダラズ。
そして何か映像見ながら感極まったのか涙を流すはやて。
どうでもいいからせめて映像は消してくれ。
巨乳談義の映像見ながら涙流すのとか。
ふむ、なかなかにシュールだからこれも撮っておこう。
ヴィヴィオ撮影よろしく、帰ったら八神に見せる。
後、話を戻すけど当初の目的であるヴィータが居ないんだがどこだ。
「ヴィータなら昨日の出来事がショックで、しばらく散歩してくるって30分程前に出て行ったわ」
マジか。
どうするなのはさん。
……なのはさん?
「お稲荷さん、どうしてそんなに普通で居られるの?
後ろからのプレッシャーが凄くて緊張しっぱなしなんだけど」
振り向いてみる。
扉から顔を半分出して、かつ添えられた手によって扉がガタガタ揺れてて。
目が死んでいて髪の毛が数本口に入っている。
シグナムさんってあんなキャラだっけ。
「ヴィータから昨日話を聞いて、犯人見つけたら叩っ斬るって言っとったんや。
謝罪に来たって言ってたから、待ったをかけたらああなった」
「ヴィヴィオでいいならいくらでも斬ってください」
ガタッ……
「ヴィヴィオより俺がいいと申すか」
ガタガタガタガタガタガタガタガタッ!!
「今の俺は前原圭一の気分がよく分かる」
「どんだけホラーなんや」
「知っているのか」
「鬼隠し編を夜に1人で見て泣きかけたわ」
うむ、分かるぞ。
俺も夜トイレに行くのが怖くなったからな。
時に、シグナムさんの居る位置は玄関に続く道でして。
あんな門番が居ると帰るときに通るに通れないのですが。
「狐パパは犠牲になったのだ」
何言ってるかなこの子は。
「で、なのはさん。
結局はやての足の悪いのって原因は何?」
「ヴィヴィオが言ってたでしょ?
闇の書が原因だよ」
「なるほど、つまりはやても厨二病ということか。
こらこらはやて、尻尾を引っ張るな」
「なのはさん。
私の足が動かない原因が闇の書ってどういうことなんです?」
「だからあれだろ。
はやての足に何かが封じられてて、解かれたときに動くようになるけど封印されてた者との死闘を繰り広げなければならない設定。
シャブラニグドゥのようだ」
「あんたは黙っとき」
「えっと、闇の書にバグがあって、はやてちゃんから魔力を過剰に吸い上げてるのが原因だったかな……
当時は私も9歳だし、あんまり理解出来なかったんだけど……」
「良かったらスカさんに診てもらうか?
闇の書を見てみたいとも言ってたし、頼んだら即飛んでくると思われる。
無限の欲望なる二つ名があるから何も分からん事はないでしょ」
「何やそのエロイ二つ名」
「その突っ込みは俺が未来で過去にしました」
「な、何か私達に関する物凄い重大な話をしているのに話に入れない……」
「シャマルさん。
未来ではやてさんはこう言ったんだよ。
『大体は狐パパのせい』」
「会って十数分ですけど、よく分かる気がします」
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ。
まず最初に、生きてます。
少し、大変な人もいるのにこんなの書いて上げていいのかなぁと思いましたが。
きっと見知らぬ被災者が、気晴らしに読んで笑ってくれる事を祈って。
はしご3件目に突入してみました。
なんてカッコつけつつ今回は難産だった罠。
ホラーに挑戦してみたかったんです。
その結果がこれだよ。
さて、原作をまた数話見ていたので遅くなったのも1つの理由。
あの家、1階が駐車場になってはいないだろうか。
そんなこんなで3件目も回ってしまいましたねー
4件目はどこでやろうか。
あ、感想はまた帰ってから書かせていただきます。
時間なくてすみません。