呪怨ハザード奇行文。
と
ヴィータェ
はしご 4件目
さて。
シグナムさんが扉から離れないので俺達もなかなか帰ることが出来ず。
気が付いたら窓から見える空はもう陽がほぼ沈み、段々と暗くなってきている訳で。
どうしたものかと対策を練っている次第。
「私ちょっとお手洗いに行ってくるわ。
シャマル、ちょっと手伝ってくれんか?」
「待て待て待て。
はやて、お前のその行為は俺達という餌が居るこの部屋の中に野獣を解き放とうとしているのと同じだぞ。
俺はまだ死にたくないので考え直すべき。
じゃなければ俺がはやての小便に付き合う」
はやてに無言で殴られた。
まぁ、今のは俺が悪かった。
「まぁまぁはやてちゃん。
シグナムに出ていく時に釘をさせばいいじゃない。
お客様に乱暴したらダメですよって」
「ここで話しているのも聞こえているはずなのにシグナムさんの手には今も抜身の剣が握られていることから恐らく聞く耳はないと思われる。
……む?」
視線を扉に移してシグナムさんの病み具合を眺めていたところで着信が。
今回はこの携帯を持って初めての電話である。
失礼、と断りワクテカしながら画面を見てみる。
そこには、なのはの文字が。
確かに連絡先交換はしたが、まさか電話の第一号がヤツとは思わなかった。
通話ボタンをプッシュ。
「いいところに。
助けを求む。
シグナムさんが病んでいて帰れない」
『むしろ私を助けてー!!
学校から帰ってる途中で赤い服と帽子被った女の子に襲われたの!』
「事件は会議室じゃなく現場で起きていると言っても、そんなにあちこちで起きてたら室井さんも対処できないぞ。
てか赤い服だって? ……あぁ、分かった。
多分そいつは妖怪ヴィータだ。
ムラサキババアの孫に当たる。
ザムディン、と呪文を唱えれば逃げ出すはずだ」
誰がムラサキババアやー!!
と後ろから怒声が聞こえるがスルー。
『わ、分かった!
……ザムディン、ザムディン、ザムディン!!
にゃ————!?
状況が悪化したの—————!!』
手に取るようにあちらの様子が妄想できるのは俺だけではあるまい。
『何か、あの狐野郎の知り合いかって言ってるんだけど!?』
「うーん、ハルヒロって言っといて。
多分それで通じるから」
『うん!
……ちょ、ハンマー振り回さないで!
何でそのハンマー、ロケット噴射してるの!?
稲荷さんどういう事!?』
「なのはをいじめたくなったんじゃね?
俺も反応が可愛い時のなのはさんならいじめたくなる時がある。
反応が鬼の時は即握られるが」
何がって?
ナニが。
「にゃ!?」
何故なのはさんが反応するし。
「なーなー、何喋ってるん?」
「ヴィータがなのはに喧嘩売ってるらしい。
ちょっと待ってな、スピーカー機能をオンにしてみるから」
ポチっと。
これで先程まで俺の耳にしか届かなかった携帯からの声が、辺りにも聞こえるようになる。
『昨日は狐野郎のせいで、あの金髪チビの魔力を蒐集出来なかったんだ!
テメーの魔力はぜってー奪ってやる!!
ラケーテン……ハンマァァァァアア!!!』
『にゃぁぁぁああ!?
痛い痛い、やめてよぅ!』
『痛いで済むかぁぁぁぁぁああ!!
何だよアイゼンの全力の一撃を脳天に食らってたんこぶだけって!!』
『そ、それは……
壮絶な訓練の日々があったんだよ……』
『……チッ。
だが多少でもダメージを与えられるんならこっちのもんだ。
シャマル、こっちにこい!
でけぇ魔力持ったヤツ見つけたから、ぶっこ抜くぞ!
これで闇の書のページも大量に埋まるぜ』
電話の向こう側は何か楽しそう。
でもこっちはシグナムさんに加え、はやての目もヤンデレ化。
例えるなら向こうはバイオハザード。
こっちは呪怨。
激しい動きが無い分、恐ろしいとです。
「……シャマル?」
「は、はひ!?」
「蒐集は、せんようにって、言ったやんなぁ?」
「……はい」
「シグナムも、知っとったんか?」
ガタッ。
「……家族会議や。
ヴィータを今すぐ呼び戻しぃ。
シグナム、行ってきてな。
もちろんなのはちゃんも連れてくるんやで?
ちゃんと謝らなあかん」
「しかし、主」
「そっかぁ……
シグナムは1ヶ月間、シャマルの手料理が食べたいんやぁ……」
「可及的速やかにヴィータを連行して参ります」
その言葉を最後に、窓を開け放ちシグナムさんが文字通り飛んでいった。
シャマルの手料理ってなんだろうか。
シグナムさんが顔を青くするものには違いないが。
てか玄関から出ろよ。
廊下からこの部屋横切って窓から出るより、廊下と隣接してる玄関の方が近いだろうが。
「やはりシャマルが絡むと状況が分からない。
ヴィヴィオ、どういう事だ?」
「ヴィータさんの吊るし上げ祭りが開催されるみたい」
「把握。
スレ立てとく」
「お稲荷さん」
「なんぞ?」
「私って可愛いかな?」
…………なんぞ?
「ヴィータ、そこに座り!」
「……はい」
「怪我までさせてしまい申し訳ない。
ヴォルケンリッターの将として、謝罪させて頂きたい」
「本当に、ごめんなさいね。
ヴィータちゃんも悪気があったわけじゃ無いんだけど……」
「にゃあ、そんな、全然気にしないで下さい!」
「なのはさんは可愛いと思うよー
黙っていて、かつ俺に危害を加えなければ」
「えへへー!
ねぇねぇお稲荷さん、もう1回可愛いって言ってー!」
「……うん、カオスだね!」
お叱りの空間。
謝罪の空間。
そして俺が居る空間。
3種類の空間が1つの部屋に渦巻いている。
ヴィヴィオの言う通り、この部屋を一言で表すならカオスだろう。
今俺がアッパーカットしたら飛竜昇天破だってできそうな気もする。
てか、なのはさんが腰にしがみついて離れないので怖い。
「ヘルプ」
「役得って言うんだよ、狐パパ」
「前はそれでキュッとしてドカーンされかけたのを忘れたか」
「そう言いながら両手はなのはママをしっかりホールドしてるよ?」
男の性が憎い。
だってなのはさんがやわっこくていー匂いがするんだもん。
「まぁ……でも準備は万端だからな。
俺が家に帰れなくなったら、俺の枕の中を調べてくれ。
俺が死んだ後の、揚げの相続について書き記した遺書がある」
「食べてもいいの?」
「アホか。
俺の墓前に添えろ。
じゃないとアリシアみたいに化けて出る」
理不尽過ぎるー! と騒ぐヴィヴィオは放置して。
周りを見てみる。
どうやらはやての方も、なのはの方も一段落したようだ。
今ははやてとヴィータも加わり、なのはに謝罪している。
なのはも、気にしないで! と、ちょっと困り気味で答えていた。
なのはへの謝罪が終わると、今度はこちらに向かって歩いて来る八神家一行。
ヴィータを先頭に、頭を下げた。
それに続いて、ごめんという言葉が耳に届く。
ヴィータの表情が優れないのと、声が若干震えているのは、はやてのお叱りが相当堪えたからに違いない。
「でも、その……あ、あたしの写真を撮ったのは、嫌、だった」
「人間命の危機に瀕したら結構何でもやってみようと思うものなんです。
あ、俺ってまだ人間にカテゴライズされるのかな。
まぁいいや。
てか空飛ぶのにスカート履いてる格上の対処法ってあれ以外に思い浮かばない。
でもやり過ぎたかもしれない、反省してます」
「そう言えば私の時にもやったよね。
お願いだから、今後は私以外には絶対にやらないでね、お稲荷さん」
うい。
……ん?
なんだって?
「ともかくや!
私の足が治るにせよ治らんにせよ、人様に迷惑かけたらあかん!
二度目や、ちゃんと覚えてやみんな」
「は、はい!」
「了解しました!」
「お、おう!」
はやての凄みに、他のメンバーが頷く。
でも、と続けるのはヴィータ。
聞けば、黙って蒐集していたのは足の件もあるが、はやての命がかかっているのだとか。
このままだと、1年もしないうちに足の麻痺が全身に広まってしまうんだそうだ。
それを救う手立てが闇の書を完成させることだったらしく、今回の騒動に発展したらしい。
ここまで理解できた俺を誰か褒めてくれ。
「そういや、誰かに見せてみるー言うてなかったっけ?」
「あぁ、スカさん?
あの人なら何か出来るんじゃね。
今なら特典でプレシアさんもついてくるー」
「よぅ分からんけど、物騒な事にならんのやったら一度お願いしてみてもええかな?
スカさんもプレシアさんも誰なんか知らんけど」
「いいよ、じゃあ連絡しとく。
また日時決まったら連絡するから、アドレス教えてくれ」
「了解や」
携帯の赤外線をお互い向かい合わせ、送受信。
稲荷って名前なんや、と呟くはやて。
そういや、自己紹介をしていなかった気がする。
だからあんたとか代名詞で呼ばれていたのか。
「俺の名を知った今なら俺をなんて呼ぶか分かるだろう?
さぁ、please call my name」
「だがあんたはダメや」
未来と立場が逆転した。
「とりあえずシグナムさんのフラグが無くなったので今日は一旦帰ります。
ほら、なのは帰るぞ」
「はーい!
はやてちゃん、また来るね!」
「いつでも来てや!」
「ほらなのはさんも。
腰から離れて。
帰りますぞ」
「じゃあお稲荷さん。
手を繋いで帰ろうよ!」
「なんでさ」
「繋ぎたいから!」
「お前なのはさんじゃねーだろ。
あの人はそんな可愛いキャラじゃない」
「泣くよ?」
「ヴィヴィオもー!」
「はいはい分かったから引っ張るな」
「……あれ、なのはは邪魔な子?」
「そういやはやて。
ザフィーラさんは?」
「さっき庭でフェレットの人形くわえて遊んどったで。
よくできとるなーあの人形」
「ふーん。
この世界じゃなのはさんが惚れてるユーノは生き残れないかもしれないな」
「え? 私が好きなのはユーノくんじゃないよ?」
「さらばーユーノくーん
旅だーつ人はー
宇宙ー戦艦ー
なーのーはー」
「何それ」
「俺の知ってる別れの歌」
「違うと思う」
「マジでか」
時空の彼方、ミッドチルダへ
フェイトを背負い、今旅立つ
後は思いつかなかったとです。
夜に書いていると、人恋しくなる時があります。
そんな時は奇行文に反映される気がします。
花粉が飛び交っています。
鼻水が止まらず。
涙とかゆみが止まらず。
かつ常に眠い。
春先の悪夢です。
今鼻をかんだら、鼻血でました。
かみすぎたみたいです。
はしご4件目制覇。
え、何?
次の店どこか決めてない?
探せ、稲荷の全てをそこに置いてきた。