散歩奇行文。
はしご 7件目
翠屋は今日シフト入れられてないし、週末まではまだ時間がある。
なのはは学校に行っているためおらず。
ヴィヴィオとなのはさんと、家でゴロゴロしてるとです。
最近、休日がなのはさんと被ることが多い気がする。
因みにシフトは、入っているのではなく入れられている。
ここ重要、テストで20点配点はある。
「しかし雲1つ無い快晴。
これで家の中でグダっているとか世の中の働いている人達に申し訳がない。
という訳で俺は散歩に出てくる」
「それも働いている人にとってはイライラの対象にしかならないと思うけど。
お稲荷さん、ただゴロゴロするのに飽きたんでしょ」
なぜ分かる。
「あ、ヴィヴィオも行くー!」
「折角だし私も行こうかな」
「結局の所君達も暇なんね。
そういや久遠はどうした」
「なのはちゃんの部屋に居るんじゃないかな」
ふむ。
折角だから久遠も声をかけるだけかけてみるか。
後で仲間はずれにされたとかでなのはに泣きつかれても困るし。
2人は出かける準備をするとの事で、部屋に戻っていった。
その間、なのはの部屋に久遠を呼びに行く。
ノック3回。
扉を開ける。
「久遠、今からみんなで散歩行くんだけど一緒にいく……か…………」
「ホント? 行く」
「誰だオメェ」
「……? 久遠」
久遠は子狐であって、決してお前のような幼女ではない。
しかも巫女服に金髪とか誰得。
あ、でも頭から狐耳が。
「人化する狐か。
それなんて我が家のお稲荷さま。
人化してるのがデフォルトな俺とは格が違った」
「……?
お散歩、行く?」
「行くけど……まぁいいか。
みんな着替えてるから玄関で待ってよーな」
久遠を引き連れ、玄関へと向かう。
どうやら久遠は巫女服のまま散歩にいくようで。
歩きにくくないのかね。
そんな疑問を抱いていると、右手に感触が。
見ると久遠が抱きついている。
なんぞ。
「尻尾……9本……
霊格、凄く高い。
名前、何?」
「稲荷と申す。
霊格ってなんぞ」
「稲荷、稲荷。
久遠、つがいにして」
「狐の嫁入りさせろってか。
色々聞きたいがまず、なんでさ」
「霊格高い。
稲荷、強い。
久遠、強い人と、一緒になる」
久遠に辞書を買ってやろうと思った瞬間である。
俺が強かったらなのはさんは何よ。
もはや創造神レベルの強さ。
ランクで言うならEX。
玄関についても同じ問答がしばらく続く。
具体的にはなのはさんとヴィヴィオが来るまで。
稲荷、つがいにして。
あるある……ねーよ。
同じことばっかり言って疲れてきました。
なのはさん、ヘルプ。
「その前に、その子は誰」
「せめてクエスチョンマークがつきそうな言い方で聞いて。
超怖いから。
因みに久遠らしい。
何故幼女フォームなのかは分からない」
「ふーん。
つがいにしてっていうのは?」
「俺の尻尾が9本。
つまり霊格が高い。
霊格高いなら強いんだろお前。
私の中の本能が、強い人を求めている!
要約するとこんな感じらしい」
あ、そうだ。
「久遠。
この人はなのはさん。
今はまだだけど、俺この人と結婚するんだ。
だから久遠とはつがいになれない」
「えっ!?」
「……そう、なの?」
「うっ。
俺がなのはさんに振られれば話は別だけどね」
久遠の上目遣いが心に響きます。
嘘ついてゴメン。
でもここで回避しないと俺の明日は無い気がして。
「お稲荷さん……ホント?
嬉しい……!
式の予約はどこでしよっか!」
「今のを本気にしてる時点で式の予約より精神科に予約入れんとまずいだろ」
「狐パパって、女心を容赦なく粉砕するよね」
悪い、とは、思った、が、俺の、明日の、為、なんだ……!
「なのはママに喉を握りつぶされそうになってる時点で明日は望み薄だと思う」
意識が、飛び、そう。
「じゃあ、稲荷、なのはさんから、奪う」
「だ、ダメ!
お稲荷さんは私のだもん!」
「きゅーん……
分かった」
「あ、あれ、素直だね」
「なのはさん、もっと強い。
強い人の言う事、絶対」
「あ、あはは……」
「そろそろなのはママは手を離さないと、狐パパの命がマッハ」
唇に柔らかい感触。
何かを送り込まれる感じ。
何事かと目をあけてみる。
視界一杯に、なのはさんのドアップ。
ビックリし過ぎて、恐らく人工呼吸していたのだろうなのはさんに息を逆流させてしまった。
ケホ、ケホッと咳き込むなのはさん。
でも、俺が起き上がるのを見るとすぐに抱きついてきた。
「お稲荷さん!
大丈夫だった!?
よかったぁ……ホントに……よかったぁ……」
「死んだらどうする」
「そうだよ久遠ちゃん!」
あーただよあーた。
「最近なのはママも黒い」
「間にいるお前は闇よりもなお深き者と知れ。
ともかく離れてくれなのはさん。
もういいから。
俺としては早く死亡フラグ満載の家から離れて、優雅に散歩を楽しみたいから」
死亡フラグは家というより人物でもあるが、そこについては深く突っ込まないでおく。
危ないから。
で、復活後。
予想外のゴタゴタがあったものの、予定通り散歩と相成った訳でして。
どこに行こうか。
とりあえず商店街をぶらついてみよう。
そういう事になった。
「どこか行きたい店ってあるか?」
「私はどこでもいいよ」
「ヴィヴィオもー!」
「ついてく」
「じゃあ豆腐屋で揚げを買うか」
「あ、私そこの本屋で時間潰すね」
「ヴィヴィオもー!」
「ついてく」
……アルェー。
どこでもいいって言ったのに。
一瞬で俺の周りには人がいなくなった。
本屋に入っていく3人が、妙に楽しそうに見える。
いいもん、俺も豆腐屋のおいちゃんと仲良くやるから。
数軒離れた豆腐屋に走りこむ。
「おいちゃん、揚げを頂戴!」
「お、狐の兄ちゃんか!
いつもありがとな。
今日は可愛いの2匹引き連れて買い物か」
可愛いの2匹?
誰のことを言っている。
振り向く。
2,3歩離れた位置に、ネコが2匹。
並んで座って、こちらをじっと見つめていた。
「はて、さっきまではこんなぬこ達は居なかった気がするが……」
「なー」
「にー」
「よしよし。
ヴィヴィオより可愛げがあるな。
こっちおいでー」
「ふざ」
「けろ」
今ほど綺麗にorzを体現できた時はない。
「ハッハッハ!
狐の兄ちゃん、ネコちゃん達に嫌われたな!」
「折角喋るぬこを見つけたんだから式神にして橙と名付けたかった。
リアル八雲家したかった。
でも口が悪かった」
でもよく考えたら式神にする方法が分からない。
久遠に聞いてみようかしら。
狐の先輩として、何か知っているやもしれん。
因みに勘違いされやすいのだが、俺はまだ狐歴は1年も経っていないのであしからず。
ともかく。
いつまでも地面に手をついて落ち込んでいてはおいちゃんの邪魔になる。
目的の揚げも貰えたし、礼を言ってさっさとこの場を去ろう。
そう思い、視線を上げた。
おいちゃんが消えた。
「よく見たらいっぱい居たはずの客も居ない。
まさかの裏世界に迷いこんでしまったのか俺は。
脱出方法が闇王討伐だったら、俺はこの裏世界でひっそり幕を閉じる事になる」
てかマジ何が起こったのよ。
段々とこう、お化け屋敷に入った時のような感じになってきたのですが。
つまり、足がガクブル。
「こいつぁ俺自身も知覚できないスピードで全力疾走して、海にダイヴするしかないな。
クラウチングスタート、セット」
「待て」
「ホラー映画ではここで振り向いて失敗する。
そう、振り向かなければ恐怖を知ることはない。
故に俺は待たずに走りだす」
「させん」
灰色のような藍色のような、よく分からない色の輪が俺を幾十にも縛り付けた。
は、離せショッカー!!
「貴様は結界に閉じ込められている。
何をしようと無駄だ。
この中には、魔力を持ったものか、我らが結界内に取り込むよう念じた者しか入れぬ」
体を縛られているのではなく、体を空間に縫い付けられている感じ。
故に、走りだすことができないでござる。
こうなったのなら仕方がない。
覚悟を決めて、顔だけ後ろを振り向くことにする。
そこには、仮面で顔をほとんど覆った男が2人。
地面から少し浮かんで、俺を見つめている。
多分。
だって仮面の目の部分もガラスが埋め込まれた感じになってるから、視線がどこを向いているのか分からないんだもの。
「闇の書は、完成させなければならない」
「その為には、貴様のようなイレギュラーには消えてもらわねばならん」
ぬ、ぬ〜ん。
意味が……分からん……。
「守護騎士達には、蒐集をしてもらわねばならんのでな」
「悪いが始末させてもらう」
蒐集……どこかで聞いたことがあるようなないような。
でもとりあえず、こいつらが俺に何かしようとしているのは分かる。
始末とか言ってるし。
「よく分からんが不穏な空気を感じるので、逃げるでござる」
「ふはは!
その格好で何が出来るというのだ!」
「叫ぶ。
魔力持ちはこの中に居ると聞いたので。
なのはさーん! 助けてー!!」
ドガーン。
文字に表すならそんな感じだろうか。
先程みんなが入っていった本屋が、爆発した。
飛来する本。
縛られて逃げれない俺。
今まさに、向かってきているのは広辞苑。
ヤバス。
「あぅん」
目から火が出るという言葉がよく分かった。
なるほど、これは痛い。
頭にたんこぶが出来ているのではなかろうか。
そして、本屋からもうもうと立ち込める煙。
その中から出てきたのは、我らがなのはさんである。
「お稲荷さん、大丈夫?
っ! ……誰、お稲荷さんに傷を負わせたのは」
「……広辞苑が」
「そっか、あいつらの仕業だね」
「いや、だから広辞苑が……」
「ちょっと、おはなししてくる」
聞いてよ。
広辞苑がね、降ってきたの。
聞いてくれないなのはさん。
俺を放置して仮面の男2人の下へと、文字通り飛んでいった。
冤罪で砲撃される2人組、乙である。
「狐パパー!」
「おぅ。
どうした」
「その言葉、熨斗つけて返すね。
どういう状況なの?」
「分からん。
広辞苑が原因でなのはさんがあいつらをボコる気でいるのは分かるが。
相も変わらず傷を負うのは仲間からの攻撃な罠」
「むしろその説明が分かんない。
そして何で狐パパが縛られてるのかも分かんない」
ふむ。
確かにずっと縛られているのも疲れるので。
ふんっ、と力いっぱい腕を広げてみた。
大した抵抗もなく、俺を縛っていた輪っかは引きちぎられる。
素晴らしきストロングボディー。
初めて役に立った気がする。
「な、バインドが!?」
「引きちぎられた!?」
なのはさんに追われながらも驚きの表情を向ける仮面の2人。
いや、表情分かんないけどさ。
声で何となく。
「どうしよっか。
てか久遠はどうした」
「魔力持ってないから結界に弾かれたみたい」
そういや結界がどうのこうの言ってたな、あいつら。
じゃあ、あいつらを倒せば結界が無くなるということか。
クックック、腕がなるぜ。
「狐パパ、倒せるの?」
「常識的に考えて無理に決まっているだろう。
腕がなるのはなのはさんだ。
というか見てみろ。
この商店街、一本道だったのに十字路が至る所に出来ているのは何故だと思う」
「なのはママ超頑張った」
「頑張りすぎだ」
見上げれば、空には2人の片割れがピンクの輪に縛られていて。
遙か彼方から、凄まじいスピードで迫る男の3倍はありそうな大きさの光の奔流があって。
あ、飲み込まれた。
「一体、広辞苑の何がなのはママをあそこまで怒らせたのか」
その重さが怒らせたんじゃね。
嘘は言っていないと思う。
軽かったら、たんこぶ出来なかったからね。
「なぁヴィヴィオ」
「なーに?」
「俺達がなのはさんを怒らせても、こうなる可能性があるって事だよな」
「夫婦喧嘩と親子喧嘩だね」
「あの人を相手にしたら喧嘩というよりもはや処刑」
「そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、問題だ」
「なのはママは怒らせないようにしようね」
「あぁ。
仮に結婚したら尻に敷かれないと明日は無い感じだな」
「え、結婚したいの?」
「したくなくはない。
元々の夢が美人の嫁さん貰って退廃的な生活を送ることだし。
でもなのはさんは、退廃的な生活というよりも死亡フラグ満載な生活が送れそうなので今のところイーブン。
いつになったらアルフさんみたいな生活が送れるのだろう」
「無理だと思う」
「諦めたらそこで試合終了ですよ」
「むしろ狐パパは諦めるべきじゃないかな」
「おみゃーに言われたくない。
ヴィヴィオの将来の夢は?」
「カッコイイ婿さんの所行って、退廃的な生活を送りたい」
「まんま俺じゃないか。
てかヴィヴィオを嫁にはやらん」
「じゃあ婿を貰う」
「ならよし」
言ってみたかっただけだったりする。
PVが100万突破してました。
週間アクセスが18000超えでした。
投稿ペース落ちているのに何故。
でも、ありがとうございます。
明日をもって、アメフラシは大学を卒業します。
色んなことを勉強しました。
この教科はカンペで。
この教科は教科書持ち込みで。
この教科はコピペで。
え、経済学? 何それ美味しいの?
今では手つきの速さ、周囲への警戒は入学前に比べて格段によくなっています。
これが将来何の役に立つのかは分かりませんが。
だから言ったじゃん、気持ち悪いって。
ムリムリ、もう無理。
え、8件目には稲荷寿司がある?
なら……ちょっと行こうかな……