布団の中の奇行文。
はしご 9件目
週末。
それは、人に様々なドラマをもたらす。
仕事が休みになったからと、家族サービスに精を出したり。
逆に今日から2日間は客が増えて仕事が忙しくなるのかと脱力したり。
そして、俺の目の前にいる人達も、そんな週末の空気に当てられたようだ。
まぁ、ぶっちゃけスカさんとプレシアさんなのだが。
呼び鈴を毎秒5連打するドアホウは誰かと思って扉を開けたらそこに居た次第。
「今日という日をどれだけ心待ちにしたことか。
あぁ、この言いようもない高揚感をどう表現したらいいのだろう」
「それは分かるけど落ち着きなさい。
心は熱く、頭は冷静にが鉄則よ」
「そしてそんな面白いイベントをこのアリシアが逃すはずもなかった」
1人増えてる。
「確かに週末にお願いとは言ったがまだ4時だ。
闇の書やはやてどころか俺さえまだ寝てたんだぞ。
見ろ、起こされたヴィヴィオのこの死んだ瞳を」
ヴィヴィオの脇に手を入れて持ち上げる。
そのまま、テンションの高い3人に突き出した。
「死ねばいいのに」
「俺はこんなヴィヴィオ初めて見たぞ」
未だブツブツ言ってるヴィヴィオを尻尾にしまう。
十数秒後には何も聞こえなくなったのでモフモフに飲まれたのだろう。
多少落ち着いた3人には5時間後、つまり9時に再び来ることを命じる。
流石に4時起きは辛いので寝直したい。
というか、まだ暗いのか明るいのかよく分からんこんな時間に起こされて怒らなかった俺を誰か褒めてくれ。
渋々とだが3人は帰っていった。
全く迷惑な話である。
修学旅行当日の小学生かと。
さて、後5時間寝てよう。
部屋に戻り、布団に入る。
冷め切っていた。
あの暖かい布団の中でまどろむのが好きなのに。
暖かい場所はないかと探していると、布団の右側がそうではないか。
もぞもぞと移動する。
途中で人型の暖かい何かに当たった。
何だろうこれと思いつつも、今は考えるのが面倒なくらい眠い。
とりあえず暖かいし大きさもちょうどいいので、側に寄って寝ることにする。
おやすみ。
「グェェェェ……」
「お稲荷さん……」
呼ばれてる気がして目が覚めた。
目の前には、熟睡しているなのはさんがドアップ。
何事。
はっ、殺気!
「お稲荷さん……好き……大好き……」
「そう言いながら俺の股間に手を伸ばすのはやめてもらおうか」
なのはさんの左手が、俺の首に回され。
なのはさんの右手が、俺のお稲荷さんに触れている。
瞬時に右手をつかみ、お稲荷さんから離す。
「やぁあ……握るから、握るからぁ……」
「夢の中でどういう脅しをされているのかは知らないが、握られる俺の身にもなれ」
「人が狐パパの尻尾に窒息させられそうになってる所で何いちゃついてるか」
「色々と言いたいことはあるが、とりあえず……
ごめん、ヴィヴィオを収納してたの忘れてた」
そういやさっき、仰向け気味に寝てたかもしれん。
ヴィヴィオには悪いことをした。
「で、なのはママは何してるの?」
「布団の中で見えんだろうが、右手は俺の将来をかけた争いが勃発している。
俺のお稲荷さんが好きらしい」
「へ、へぇ……
狐パパ、ティッシュ置いとくね」
「お前絶対赤ちゃんがどこから来るのか知ってただろ。
後、想像しているようなストロベリーな展開ではない事を明言しておく。
どちらかと言えばトマトがグシャっとなる展開」
「頑張って!」
助けろ。
仕方がない。
そっとなのはさんの耳元に口をもっていく。
これこそ俺の操夢術。
夢符『狐の囁き』
今命名。
「俺の負けだ。
なのはさんの言うことは何でも聞く」
「ん……えへへ……」
「手が緩まった。
これをチャンスと稲荷はなのはさんの破壊の手から逃れます。
さて、まだ予定まで後2時間はあるじゃないか。
何でなのはさんの布団にいたのか知らんが、今度は自分の布団で寝直す」
「なのはママ、どんな夢見てるんだろう?」
俺に言う事を聞かせてる夢じゃない?
流石サディスティック星から来た魔王だ。
とにかく今は寝直したいのでまた後で。
2度目のおやすみ。
○ ● ○ ● ○ ●
洗顔OK。
ブラッシングOK。
貴重品所持。
出かける準備は万全なり。
「で、なのはさんは何してるの?
もうすぐ時間なのだが」
「ん〜……さっきお稲荷さんと一緒に書いた届出がないの。
どこの引き出しに入れたっけ……
お稲荷さん、覚えてない?」
覚えているか否かを問われる前に、身に覚えがない。
「え、だってついさっきだよ?
時計確認したから間違いないもん。
7時くらいだった」
「俺とヴィヴィオは、なのはさんの寝相の被害でその時間に起きてはいたが……なのはさん爆睡してたじゃないか」
「…………え?」
徐々になのはさんの顔に絶望が広がっていく。
あれだね。
夢の中でいいことがあると、現実を受け入れ難いっていう。
俺にも経験がある。
「え、夢だったの……?
そんな……やっと、やっとゴールインできたと思ったのに……」
「よく分からんが、そのゴールインをするのに必要な条件が俺のお稲荷さんを握りつぶす事だったのかと小一時間問い詰めたい」
まださくらんぼなので。
潰される前に1度くらい使ってみたいんです。
そんなこんなをしているうちに、なのはも出現した。
何でもプレシアさんからフェイト経由で、今日はやての家に行くことがなのはにも伝わったとか。
いつものユーノの定位置だった肩に久遠を乗せて、あちらも外出準備万全のようである。
うむ、うむ。
そういや居たねェ、ユーノって奴。
自分で言ってて思い出した。
さて。
まだなのはさんは床に手をついて項垂れているが、とりあえず玄関を開け放つ。
既にプレシアさん、スカさん、アリシア、フェイトがそこにはいた。
「やっと出てきた。
ほら、早く行くわよ!」
「クックック。
修学旅行前の子どもという表現があるらしいが、なかなかどうして。
1時間前から待っていても全く苦にはならなかったよ」
「お母さん、スカさん、私の分も残しておいてね」
「あ、なのは。
久遠にヴィヴィオ、なのはさんも、おはようございます!」
「スカさんは1時間前からここでクックックックを繰り返していたと……?
そしてフェイトの挨拶に俺の固有名詞が存在していない件。
さては、お前フェイトさんに何か吹きこまれたな」
「なのは、早くはやての家に行こう!」
「あ、フェイトちゃん待ってよー」
聞いてよー。
ぞろぞろと連れ立ってはやての家に到着。
家の前に捨ててある物体Xが何か非情に興味をそそるが、しかしあえて無視してインターホンに手を伸ばす。
ピンポーン。
『合言葉を言え』
「合言葉」
『よし』
何が。
玄関の鍵が開いた。
扉を開けると、そこにはシャマルに車椅子をホールドされたはやてが。
やっと最近、シャマルを覚えました。
すげーだろ。
「詰まること無くあの合言葉を答えるとは思わなかったわ」
「俺って素直なんです」
「そういう問題やないよ……
あ、皆さんお揃いで。
この度は私の為にわざわざ来ていただいて、ホンマにありがとう」
「ご丁寧な闇の書な挨拶ありがとう。
今回は闇の書なはやてさんの闇の書で足を治すで闇の書」
プレシアさんはもうちょっと本音を隠してください。
「何、私達の知的探究心を満たす延長線上に、はやてくんの足を治療するという結果が存在するだけのこと。
君が気に病む必要はないよ」
「ありがとうございます。
すぐに案内しますね。
あ、せやせや。
稲荷さんから聞いたんやけど、なのはちゃんとフェイトちゃんがデバイスにUSBを加えたってホントか?」
「何でそうなるの!?」
「USB?」
フェイトはまだこっちの機械製品には疎いようで。
「USBじゃなくてカートリッジシステム!
スカさんとプレシアさんがつけてくれたんだー!
あのね、あのね、凄いんだよ!
カートリッジを使うと、フェイトちゃんとプレシアさんの攻撃を同時に受けても耐えられるようになったの!」
「単語単語の意味は分からんが、多分強化されとるのに攻撃を受けることが前提になっている事に全私が泣いた」
これもひとえになのはさんの特訓の賜物。
「じゃあなのはさんのスターライトなブレイカーも大丈夫か?」
「あれは別物なの。
バインドされて魔力が収束されてる光景を見るとね。
何もする気が起きず、ただ脳内にはオワタの3文字が走馬灯と一緒に駆け巡るの」
「私を何だと思ってるのかな」
「人ではない事は確か」
「なのはちゃん。
私達は同じなんだからなのはちゃんも頑張ればスターライトブレイカー撃てるようになるよ。
久々に一緒に特訓しようか。
お稲荷さんも、拒否権無しの強制参加ね」
「稲荷さん! 余計なこと言ってくれたの!」
「俺オワタ」
「シグナムさんこれを見てくれ。
過去に俺が開発して作ったカッコイイ妖術。
変化『狐の尻尾太刀』」
「おぉ……
ふむ、いい刀だ。
折角だから私が直々に指南してやろう。
とりあえずは……届く距離まで近づいて、斬れ」
「それは指南とは言わん。
助けてエターナルフォースロリータ」
「ギ・ガ・ン・トォ!」
「エターナルとフォースで死亡フラグだったのか。
まてまて、それが耐えれるのはスバルレベル」
「誰だスバルって。
あたしの魔法に対抗するとかなかなかやるじゃねーか」
「ハンマーぶん回すだけの攻撃をあくまで魔法と言い張りますか。
そうなるとスマブラ登場キャラは全員魔法使い」
「んなこと言ったらシグナムなんて、剣術とか言っておきながら途中でムチみたいになったりするぜ?」
「シュランゲフォルム、だな」
「あまりにも卑怯過ぎるでしょう?」
「勝てば官軍と言う言葉がある」
「俺、シグナムさんと戦うことになったらスカートの中身を撮ってばらまく」
「なっ、卑怯だぞ!」
「撮れば官軍という言葉が」
「無いよ? お稲荷さん」
「何故居るし。
……チロルチョコあげるから許して」
「ダーメ。
後でキュッとしてドカーンね」
イェア゛ァァァ。
お久しぶりです。
社会人になったアメフラシです。
余裕なくて5行書いたら寝て書いたら寝ての繰り返しの日々。
段々何を書いたのか忘れて前話を読んでいたらまた眠くなる悲劇。
週間アクセスがあんまり衰えていない事に驚きを隠せない。
車を売ってます。
でも売れません。
先輩から聞かれました。
「69万のこの車、アメフラシならどう売る?」
「どうですかお客さん、この車シックスナインですよ」
「俺、お前のこと好きになりそうやわ」
マジすか。
兎にも角にも生きています。
執筆速度落ちてますが生きてます。
大学時代には午前4時まで起きていたのに、今では0時には眠くなる体たらく。
感想返せてなくてすみません。
でもちゃんと読ませて頂いています。
返す気力は、充電中。
10件目ってどこ?
ナビで出せって?
『お稲荷様奇行文 10件目』
……海の中が目的地なんですが。