水切り奇行文。
六日酔い。
『今回のおもてなしは過去最高!
レイヤー建造物で組んだ訓練場は陸戦魔導師の練習に!
わたしとガリューの手作りアスレチックフィールドはみんなのフィジカルトレーニングに!
我が家の横に建築した宿泊ロッジも内外ともパワーアップ!
設計わたし!
掘ったら出てきた天然温泉も癒しの空間にノリノリで改造!
完璧!
もと六課のみなさんも、ヴィヴィオ達も!
我が家にどーんとおいでませー!!』
場所はリビング。
俺となのはさんとヴィヴィオ、3人揃ってルーテシアなる人に連絡を取っておこうということに。
まぁぶっちゃけ飛び入り参加な訳だからそれも仕方なし。
だが、高町さんの電話借りて、人数増えたのを先方に伝えようと思ったらこれか。
自分の家の屋根の上に立って叫ぶとか末期。
ヴィヴィオ、おいでませーだって。
「だが断る」
『え、あ、うぇぇぇぇえ!?
あの、あの、どちら様でしょう……?』
「ヴィヴィオと申す」
『それは知ってるから』
「高町なのはです」
『いやそれも知ってますから……』
「稲荷です。
俺達3人が春の大自然ツアーに追加で参加することになりました。
さっきの1人シャウトをみんなの前で再生されたくなかったら、大人しく認めるべき」
『いやどう見ても追加参加はあなた1人だけですよね!?
しかも脅迫されてる!?
ヴィヴィオ、彼は誰!?』
「狐パパなのだー」
『意味が……!
わからない……!
なのはさん、彼は一体!?』
「私のお稲荷さんだよ!」
『おかしい……!
もっと意味が分からない……!』
思わず笑ってしまった俺とヴィヴィオは悪く無いと思う。
で、俺の参加は認めてくれるのでせう?
『……さっきのちゃんと消してくださいね?』
交渉成立。
「あ、思い出した。
お前あれだろ。
道をロストしていた俺をダンゴムシで助けてくれた紫幼女。
まぁまぁすっかりライダーになっちゃって。
何、桜は今でも黒くなってんの?」
「初対面で言われている事が既に理解不能なんですが……
桜はいつでもピンクです」
「あ、あはは……
稲荷さんの言ってることを気にしてちゃ大変だよ?」
「そうそう。
という訳で、お世話になりまーすっ」
人数増加を伝えたら、すぐ現地に向かい始めて4時間くらいしたら到着。
電話してた時から思っていたが、やっと思い出せた。
荷物をここまで乗ってきた車から下ろして、高町さんやフェイトさんがルーテシアなる人に挨拶する。
「若き日の私、参上」
「なんの、幼女時代のヴィヴィオが参上」
「ちょ、なのはさん!
私が2人居るとややこしくなるから、後から来て下さいって言ったじゃないですか!」
「プ。
なのはママ怒られてるー!」
「あなたもだよヴィヴィオちゃん!
ただでさえあなたが絡むと場が無茶苦茶になるんだからね!?」
「心外な」
そんなこんなでちょっと想定外の事もあったみたいだが、無事全員挨拶を終える。
因みに元六課のカラフルちびっ子達もいた。
俺に面識が無いのが何とも寂しかったとです。
そしてルーテシアのオカンなる人も出てきたが、そっちの対応もそつ無くこなした。
だが俺たちを説明する中で、時間移動云々言ったら不審な目を向けられた。
毎回その視線を向けられるのが俺だけなのが納得いかない。
なのはさんもヴィヴィオも結構理不尽な存在だと最近思うんです。
「さて、大人のみんなはトレーニングでしょ。
子供達はどこに遊びに行く?」
予定は既に高町さん達が伝えていたのか、ルーテシアのオカンがそう切り出す。
なるほどなるほど。
ここで大人組に混じったら俺の命はマッハ。
トレーニングとルビの振られた地獄のピクニックが始まる。
それに対し子供組は、川遊びに行くらしい。
「ヴィヴィオ。
アスレチック場で地獄のピクニックと、川辺で至福のピクニックらしいが」
「敷物とお菓子と水着の準備は万全だよ!」
「流石だ。
なのはさんは?
あぁ、その麦わら帽子と上着の下に着た水着で把握。
かわいいね。
似合ってるよ」
「えへへー!」
いつの間に用意したのか大きなバスケットを持つヴィヴィオ。
腕に絡み付いてくるなのはさん。
てか当たってるよ。
「当ててるんだよ?」
麦わら帽子の話だよ。
なのはさんの身長だと帽子のつばが俺を目潰しする罠。
大人組と別れ、水辺に着いた俺達一行。
トレーニング?
俺達は旅行に来たんです。
さて、子供達は川の中でキャッキャウフフ。
俺達は敷物を広げ、お菓子をモリモリ食べつつその光景を見ている。
「お稲荷さん、せっかく水着作ったのに泳がないの?」
「シャチ型浮き輪を忘れてしまった。
浅瀬でチャプチャプなら出来るが、深いところは尻尾という重心がズレるものが付いているせいでどうもうまく泳げない」
「あ、だから前、船と一緒に沈んでたんだ」
何故知ってるし。
てかなのはさんは泳がんの?
「お稲荷さんの隣が私の居場所だよー」
「さいで。
ヴィヴィオは?
子供組に混じってくるとか」
「うーん。
それよりあそこにいるISさんと話してくるー」
ヴィヴィオはそう言って、ヴィヴィっ子達についていけず陸に上がって一休みしているISさんに向かって走っていく。
流石にヴィヴィっ子とその仲間の中に入っていくのは勇気がいるか。
「そして俺らのヴィヴィオが地球の学校に行ったら、あいつらとも友達になることはない、か。
難しいね。
どっちがいいとも言えないし。
普通に子供を育てる上ではぶつかることのない悩みだ」
「そうだね。
普通の子育てに時間移動なんて要素は入らないから。
でもこうやって見ちゃうと、ミッドの学校もいいと思っちゃうなぁ。
私としては、地球でのんびり過ごしたいけど」
「まぁ、そこら辺に関してはヴィヴィオに決めてもらうしか無いわな。
誰に似たのか知らんが、年齢は小1なのに精神年齢は成熟してるし」
「ホント、誰に似たんだろうねー」
なのはさん、何でそこで俺を見るかな。
俺はそこまで図々しくありません。
「何言ってるんだか。
……あれ、お稲荷さん。
ヴィヴィっ子ちゃんとアインハルトちゃんが何かするみたいだよ?」
言われてなのはさんが見ている川へと視線を向ける。
そこでは、ヴィヴィっ子とISさんが川の中で横に並び、他の人がそれを見守る形をとっていた。
2人が腰まで手を引く。
一呼吸。
そして、お前水の中でなんでそんな速く動けるの?と言いたくなるような正拳突きを繰り出す。
すると、ヴィヴィっ子の前にあった水が割れ。
ISさんの周囲にあった水が吹っ飛んだ。
「おいおいマジかよ。
ヴィヴィっ子ってモーゼだったのか。
リアル旧約聖書がここにいた」
「アインハルトちゃんは、まだうまく割れないみたいだねー」
「川を割る変態は1人で十分。
……ん?」
どーだ、と言わんばかりの姿勢でヴィヴィっ子がヴィヴィオを指さして何か言っていた。
恐らくあの年代によくある自慢をしているんだろう。
そしてそのヴィヴィオは、やれやれだぜのポーズを取った後、着ていた上着を脱いで川に入る。
川を割ればいいんでしょ? と言っているようだ。
川の中に入り。
ヴィヴィっ子とISさんを横切り。
更に奥、川の真ん中にまで移動した。
真ん中は深かったのか、途中で歩きから泳ぎに変わったが。
何しているんだ? と疑惑の目。
そんな視線をものともせず、ヴィヴィオは行っきまーす! と手を上げた。
瞬間。
川の真ん中に居たはずのヴィヴィオは、先程ISさんと話していた付近。
つまり陸の上にJOJO立ちで立っていた。
少しの間を置いて、ヴィヴィオの背後の川が、さっきまで居た川の真ん中まで勢いよく割れる。
「マジかよ。
残像も残さずに川を割りやがった。
カッコイイじゃねーかヴィヴィオのヤツ。
ちと厨二くさいが」
「……あれ、何?」
「瞬動術で移動したんじゃね?
その勢いで、川を割ったと。
あ、今足場が無かったからもしかして虚空瞬動の水中バージョンか。
最後のJOJO立ちが何とも香ばしい」
「香ばしすぎるよ……
瞬動術とか虚空瞬動とか、知らない単語が出てくるし」
六課に始めて来た頃の俺がそんな感じだったんだ。
俺の苦しみを味わうがいい。
勿論、あの時と今との知識の差はあまり無いが。
未だにデバイスって何か把握しきれてないし、聞くと皆の目が極限まで開かれるから聞くに聞けないのである。
さて、問題のヴィヴィオはというと。
JOJO立ちのまま、ヴィヴィっ子に視線を向けて不敵な笑みを浮かべる。
ヴィヴィっ子は悔しそうに表情を歪めるが、すぐにやり方が違うとか、どうやったらあんな動きが出来るんだとか騒いでいた。
ならば拳で割ればいいのかとヴィヴィオが問えば、そうだとヴィヴィっ子が頷く。
ヴィヴィオは何も言わず、川に入る前に近くに脱ぎ捨てた上着を羽織る。
胸の前で両手を1回合わせ、手をポケットに。
「なのはさん。
傘を作ってみた。
中に入るべし」
「夢にまで見た相合傘だー!
お邪魔しまーす」
ゴウッ!!
そんな音と共に、川が横にではなく縦に。
つまり、下流から上流に向けて大きく長く裂けた。
舞い上がった水は大雨の様に空から降り注ぐ。
傘を作っておいて正解である。
「毎回思うけど、ヴィヴィオのあれって反則だよねー」
「まぁ、物理的な攻撃であるのに加えて、ネギでさえ一瞬だけ10トンの衝撃を耐えれる障壁を駆使してやっと防いだくらいだからな」
因みにヴィヴィオのアレに非殺傷はない。
「へぇー。
最近のネギって障壁張れるんだね」
「いやいや。
今じゃ雷系最強呪文を内に取り込んで、光の速度で移動できるレベル」
「うわぁ。
凄いけど、農家の人が困りそうなネギだなー」
おまいは一体何の話をしている。
「狐パパー!」
「おぉ、ヴィヴィオ。
何か色々やってたみたいだな」
「まだみんな固まってるよ。
ノーヴェさんは、あたしの今までの努力は一体なんだったんだろうとかブツブツ言ってたし」
聞いちゃいけません。
お前は出鱈目が服着て歩いているようなもんなんだから。
「非常識が尻尾と狐耳生やして歩いてる狐パパに言われたくないー!」
俺のは自前じゃないの。
全部商店街の路地裏にいたオッサンのせいなの。
「で、あのモーゼは一体なんだ」
「水切りだって。
狐パパはできる?」
水切りか。
懐かしいな。
その辺に落ちている平べったく丸い石を手に取り。
できる限り水平になるように、そぉい! と川に投げ込む。
跳ねる。
跳ねる跳ねる。
跳ねる跳ねる跳ねる。
「うーん、合計15段はできたかなー」
「流石、狐パパはいつでも無駄に精錬された無駄のない無駄な動きだね!
川を割るよりすごーい!」
それは褒めているのだろうか。
その後はなのはさんも一緒にヴィヴィオと水の中に入って遊び、昼時となった。
ヴィヴィっ子は涙目になり、ずっと正拳突きの練習。
ISさんはそれに付き合う形で。
自称ノーヴェはヴィヴィオの豪殺居合拳を見て、思う所があったのか上流に向けて蹴りの練習をしていた。
そんな彼女らは疲労困憊。
昼飯もプルプルしながら食べていたとです。
昼食が終わった後は、なのはさんとヴィヴィオを連れてブラリその辺を散歩してみる。
子供組は解散したが、大人組はまたすぐにトレーニングらしい。
大変なこって。
「あ、お稲荷さん。
あれって大人組の訓練所なんじゃないかな?」
先ほどの川と逆方向へ歩いていたら、突如見えてきた大きな建物。
例えるなら高層ビル。
その外壁を、フェイトさんやティアナが縄を伝って登っていく。
更に上空では、何の嫌がらせか高町さんとキャロが弾幕の雨を降らせている。
「消防士のようだな。
高町さんとキャロの妨害工作が無ければ。
あいつらドSか」
「管理局に居る以上、色んな場面に遭遇する可能性があるからね。
お稲荷さんも1度登ってみたら?」
「俺に何のメリットがある」
そう言うとなのはさんは手を後ろに回す。
出てきたのはタッパー。
中には出汁に浸った超絶美味そうなお揚げ。
くれるの?
と問うた所、いい笑顔でなのはさんはお揚げを建物の屋上に向けて投げた。
「なんて事を」
「あれ取れたら、中のお揚げもあげるよ」
「うっひはー!!」
そうと聞いたら一目散。
建物に向かって駆け出す。
俺にはもう、お揚げしか見えない。
「オ・ア・ゲ・オ・ア・ゲ・オ・ア・ゲ・オ・ア・ゲ」
「なのはママ。
狐パパが目をお揚げにして壁を走ってるんだけど」
「うーん。
縄を凄い勢いで登るのかと思ってたんだけど。
これはちょっと予想外かな。
わ、壁を走ってるのにジャンプした」
「重力仕事しろよ」
やがて屋上にたどり着く。
辺りを見回す。
丁度真ん中に、タッパー発見。
お揚げゲット。
ミッションコンプリート。
「そっかー。
縄で必死に登るより、壁を走ったほうが確実だし両手空くし安全だものねー。
頑張ってた私達、バカみたいよねー」
「……ティアナ。
私たちの訓練、無意味じゃないんだよ?
無意味じゃ、ないはずなんだ……」
「分かりますよ……フェイトさん。
分かって、います……
彼が、理不尽な存在って事くらい……」
何か屋上の縁に腰掛けて2人並んでいるフェイトさんとティアナが居たが、気にしないでおく。
お揚げを咥えつつ、ビルから降りてなのはさん達に合流。
もう一度屋上を見上げると、虚ろな目をして縁に腰掛けていたティアナをフェイトに声をかけている高町さんとキャロが見えた。
「うむ、うむ。
あんだけ訓練してれば何があっても大丈夫なんじゃね」
「狐パパって無自覚に場を引っ掻き回していくよねー」
「あ、ごめん。
でも今回は私のせいかもしれない」
「いや誰がどう見てもなのはママのせいでしょ」
というか、今更ながらによくあのタッパーを屋上まで届かせることができたね。
今度グーパンされたら頭がザクロになるんじゃなかろうか。
なんて事を話しつつ、まったりとした時間が過ぎていく。
春の大自然ツアー、中々にいいものである。
「んあ?」
「だから、ヴィヴィオがさっきお風呂に行ったら明日の模擬戦の話をしてたんだけど。
狐パパとなのはママとヴィヴィオも明日の訓練に組み込まれてた」
「お前、春の大自然ツアー1日目が後就寝で終わるという時に何言っちゃってるの?
参加しない方向でって高町さんに言ったじゃん」
「ヴィヴィオも参加者に数えられてるんだよ?
オワタ。
なのはママはリミッターついてないから無双出来るとして」
「……えっ、2人とも私が守らなくても大丈夫なんじゃないかな」
「なのはさんの中で戦闘における俺達の位置づけが知りたい。
てかヴィヴィオはともかく俺は無理」
「どういう意味か。
でも召喚も有りらしいよ。
最悪狐パパの六課神将スペカを」
「却下で。
お前、あいつらが捨て台詞残した内容思い出せ。
俺に対する呪詛や怨念が篭ってたから。
……あ、ならなのはを呼ぶか」
「ホント!?」
「おう、そうすりゃヴィヴィオも楽しいだろ?」
「うん!」
「なのはさんは俺を守ってくれ。
主に味方から」
「お稲荷さんをヴィヴィオとなのはちゃんから守るの?
おかしくないかな」
「俺は敵からダメージを貰ったことがほぼない」
「う〜ん……しっくりこないけど、分かったよ」
「頼んます。
じゃあ寝るか。
すこぶるねみぃ」
「はーい」
「あ、お稲荷さん。
お休みのキスを……」
「夜はそのまま最後まで行ってしまいそうだから却下で」
「むー……」
「狐パパとなのはママって、下手なカップルよりラブラブだと思うのはヴィヴィオだけかな。
早く付き合っちゃえよ」
「はいはい、そのうちね」
「……え、お稲荷さん、いいの!?」
「はいはい、そのうちね」
「やった……やった!
ヴィヴィオ、寝よ!
今日はいい夢見れそうだー」
「言質は取った。
録音も完璧。
ニヤリ。
おやすみー」
「うん、おやすみヴィヴィオ。
お稲荷さんも、おやすみ」
「……あれ、適当に流してたら後戻りできない事になってるキガス」
スマートフォンを買ってみました。
説明書を読んで。
いろいろ触ってみました。
結果。
アメフラシはスマートフォンに振り回されている事がわかりました。
よく分からんので、後輩に聞いてみようと思い。
お前はスマートフォンか? と聞いてみました。
ガラパゴスです、と返ってきました。
驚いてローソンでファミチキ頼んだアメフラシは悪くありません。
さて。
今回は早く上げれました。
月刊奇行文なら、次に上がるのは恐らくクリスマス……
なにそれ美味しいの?
という訳で六日酔いでした。
ここまで行くともうギネス乗るんじゃないだろうか。
そんな現実逃避をしないと酔いを回避できない今日この頃。