東方稲荷奇行文。
七日酔い。
— ヴィヴィっ子 Team Blue フロントアタッカー LIFE2600 —
「ソニックシューターアサルトシフトッ!」
— アインハルト Team Red フロントアタッカー LIFE2600 —
「覇王流『旋衝破』」
— 稲荷 Team Yellow ポジション無し LIFE3000 —
「稲荷流『傍観』」
「お稲荷さん、戦ってよ」
「阿呆。
ポジション全部揃ってるチームにエキシビジョン的なノリで俺達が参加してるんだぞ。
1人で突っ込んだらフルボッコ確定。
ヴィヴィオ、GO」
「狐パパ、今1人で突っ込んだらフルボッコって言ってたよね?
娘をそんな危険地帯に送り込むとか親のすることか」
朝起きて数時間。
どうやら模擬戦フラグを折ることができなかったようで。
俺とヴィヴィオ、なのはさんでチームイエローを結成することになった。
他のチームにはフルバックとか、センターガードとか、ポジション全部揃ってるのに。
ここは誰がどこに着くか、いまいちよく分からないチーム。
高町さんが言うには、公正に戦闘力を分けるとこうなるとの事だが。
バグとチートはヴィヴィオとなのはさんであって、俺は平凡な狐なんです。
で、あれよあれよという間に模擬戦が開戦。
今ビルの上から周りを見ているのだが。
あっちで弾幕がバンバン出てるわ。
こっちでゴーレムがグルグル回ってるわ。
そっちでドラゴンがギャオスしてるわ。
「おかしい。
メンバーは10人くらいしか居ないはずなのに世界大戦が起こっているように見える」
「みんなライフがガスガス削れていってるー!」
「良い感じに盛り上がってくれてるから、こっちに被害は0だね。
でもお稲荷さん。
メガーヌさんから、戦いなさいって通信が入ってるんだけど」
誰その新キャラ。
でも戦わんとマズイなら仕方ない。
まずはその辺の手頃な石をゲット。
んで、仁王立ちで俺達に背を向けてティアナに弾幕を出し続けてる高町さんにチェンジアップ。
あ、頭に当たった。
「見ろヴィヴィオ。
ライフ判定がマイナス300だってさ。
俺のコントロールテラヤバス」
「むしろ高町さんの表情がテラヤバス。
完全にこっちをロックオンしてる上に、血涙流して鬼の形相なんだけど」
よし、アクロバティック土下座をしてみよう。
「サムズアップしてる。
良かったね、狐パパ!
許してくれるみたい!
……あ、親指が地面向いた」
「死刑宣告か。
よしヴィヴィオ。
時は満ちた。
やっておやり。
てか今を逃すと俺は高町さんという名の貞子に追いかけられる」
尻尾からドラゴンボールを取り出し、ヴィヴィオに放る。
昨日から言ってたなのは召喚の時だ。
急げヴィヴィオ。
高町さんの髪留めがほどけて、どこが顔か分からないくらいマジに貞子になってるから。
「はーい!
なのはーはやくきてーはやくきてー」
光がビルの屋上を包む。
俺が六課神将の宴を使った時よりも小さく、短い時間しか光っていなかったが。
それでもちゃんと光が収まると、そこに小さい人影が居た。
突然の事で驚いたのか、キョロキョロと辺りを見回している。
「メイン盾キタ!
これで勝つるね!」
「いや、せめて避けさせてやれよ」
「……へ?
な、なんなの?
ここどこ……?」
「久しぶりだな、なのは」
「あ、稲荷さん。
なるほど、納得したの」
何が。
「そこはかとなく理不尽さを感じたがまぁいい。
なのはに敵迎撃の任務を与える。
とりあえず、あそこにいる怨霊を何とかしてくれ」
高町さんの方を指さす。
心なしかさっきよりこっち来てる気がする。
その指さす先に、なのはは視線を向けた。
「え?
……ヒッ!?
い、稲荷さん何したの!?」
「石投げた」
「全面的に稲荷さんが悪いとなのはは思うんです」
悪いのはメガーヌさんです。
「私もあれを何とかするのはちょっと難しいんですけど……
というかヴィヴィオちゃんとなのはさんがいるじゃないですか!!」
「えー、だってあれに触るとヴィヴィオも7日後にテレビから出てくる何かに呪われそう。
狐パパのとばっちりで死にたくないー!」
「私もホラー実は苦手なんだ」
軟弱者共め。
後、俺もホラーダメなんです。
なのはタスケテ。
「うぅぅ……ゆらゆら揺れながらこっち来てるよー……
稲荷さん、友達呼んでもいいですか?
この事態、何とか出来ると思うんで」
友達……
フェイトかはやて?
まさかの幽霊経験ありのアリシア?
「ううん。
久遠ちゃんと遊びに出かけた先で仲良くなった人たちなの!
これがその人達の名前だよー」
そう言いながら、出席簿みたいな何かを後ろから取り出すなのは。
どこに持っていた。
いつも服の中に隠し持ってる?
わぉ。
「なるほどなるほど、人肌に暖かい。
そして妖怪に連れられてどこに行くのか小一時間問い詰めたいが。
なになに。
『なのは友人帳』
マジデカ」
「名前を呼んだら来てくれるんだって!
じゃ早速」
なのはは友人帳を手に、何かを唱えだす。
俺とヴィヴィオとなのはさんは、体育座りでそれを眺める。
高町さんは、未だに揺れながらゆっくりとこちらに近づく。
色んな意味でドキドキである。
「我を護りし者よ、我が元へ来たれ。
汝の名。
八雲藍。
伊吹萃香」
吹き出した俺とヴィヴィオは悪く無いと思う。
一瞬後。
霧が集まり人の形となり。
空中に亀裂が入って、いわゆるスキマから人が出てきた。
「えーと。
どこから突っ込めばいいんだ。
確かに妖怪だけど。
間違っちゃいないんだけど。
とりあえず……何故そのチョイス」
「だってあっちで戦ってる人たち、近接戦闘してるの。
萃香ちゃん、格闘すっごく強いんだよー!」
そりゃあね。
鬼だからね。
「因みに藍さんは、橙ちゃんと遊んでる時に名前を教えてもらったんだ!
誰か呼ぶ時には絶対私も呼びなさいって!
君は橙みたいでとっても可愛いね、ハァハァって言ってくれたのー!」
そこはかとなく危ない発言だった気がするが。
さて。
「お前かー!
紫の言ってた藍もどきは!
尻尾凄いね!
飲む?」
「そのがんもどきみたいなのやめてくれませんかね。
で、萃香。
いや、鬼の幼女よ。
何でなのはに名前を渡した?
後飲まん」
「何で言い直した!?
名前渡したのは、面白そうだったから!
ちぇ、つまんないのー」
よし、スルー。
視線を隣に向けて改めて。
元祖モフモフですね、尊敬してます。
藍さん初めまして。
稲荷です。
「おお、君が紫様が言っていた……
ふむ。
もう知っていると思うが、八雲藍だ。
我が主、紫様の式をさせてもらっている」
で、藍さんは何で名前を?
「なのはって、橙みたいだろ?
時々にゃーとか言う口癖とか。
何処か橙と被ってな。
私が守らないと、と思ったんだ」
さいで。
「2人とも、お願いします!」
「友人の頼みとあっちゃあ、仕方ないね。
丁度面白そうなのが目の前にいるし。
いっちょうやってやろうじゃないか!」
「私の橙2号を傷つけようとするものは誰であっても許さない。
そして稲荷、この戦いが終わったらなのはをこんな状況に巻き込んだお前と話がしたい」
「だが断る」
とりあえず高町さんが向かってきてるんで軽く状況説明。
なのはじゃどうにもならんからヘルプを頼む。
戦闘後にも、俺の戦いはまだまだこれからだ!な展開になりそうなのが怖いが。
萃香が前に出て、高町さんと向き合う。
「それじゃ、時間も無いようだし始めよっかー!
これで月でもあればまた雅なんだけどね」
ヘラヘラとしていた萃香の雰囲気が、一拍置いてガラリと変わる。
辺りの空気が、ピンと張り詰めた。
「……さて。
古来より人の記憶に刻まれし鬼退治。
かの源頼光が果たしたそれを、童子切を持たぬお前が成せるかな?」
「五月蝿いの。
月だろうと星だろうと鬼だろうとなんでもいい。
後ろの狐もろとも、吹き飛ばす。
スターライトブレイカー・マルチレイド」
石投げただけで、どうしてこうなった。
「ははっ!
人の身でありながら砕月を語るか!
それもまた一興!
来い、人の子よ!
豪語したその力、百鬼夜行と謳われたこの私、伊吹萃香と!
ただの稲荷に届かせてみろ!!」
「間違っちゃいないが何か心に響く。
精神的ダメージな意味合いで。
俺には届かせなくていいからね。
てか萃香って厨二病だよね。
そっちでも精神削れるんで普通に喋って貰えませんかね」
「では私は、その他の者たちを相手にするとしよう。
なに、紫様の式を名乗っているんだ。
例え負けても、こんな状況に引っ張り出される原因になった同胞くらいは道連れにするさ」
負けるな藍さん。
頑張れ。
超頑張れ。
「あのー。
なのはは何をすればいいのでしょう?」
「なのははここにいなさい。
そして危なくなったらすぐ私を呼ぶんだぞ。
紫様のスキマを使ってでも駆けつけるから」
「ヴィヴィオはー?」
「君は誰だい」
「えと、私は……」
「成長過程を飛ばして大きくなったなのはなど、なのはじゃない」
燃え尽きたなのはさんとヴィヴィオ。
そして特にすることがない俺となのは。
4人仲良く、屋上に体育座りをして眺めることにしました。
藍さんは、どっか飛んでった。
「なのは、戦闘終わったら助けてよ。
藍さん相手とか勝てる気がしない。
何で味方を召喚して、ラスボスが現れるのだろうか。
あ、生スペカ。
あれがリアル十二神将の宴だろうか。
現実で見ても丸が襲ってくるようにしか見えない。
てか安置はやはり上から見ないと分からんな」
「ああなった藍さんってなのはも手に負えないの。
あ、萃香ちゃんスターライトブレイカーを素手で殴り飛ばした。
ヴィヴィオちゃんみたいなの」
「ヴィヴィオが鬼と申すか」
「ねぇお稲荷さん。
あそこにいるのって覇王さんじゃない?
今ヴィヴィっ子ちゃんと戦ってるの」
ん?
……おぉ、マジだ。
どっから現れたあいつ。
でも今はヴィヴィっ子と一緒に藍さんの弾幕避けるのにてんやわんやだな。
あれ、ボム以外じゃ防ぎようがないからなぁ。
弾幕って障壁効かないみたいだし、あいつらにとったら必死だろうね。
そしてどうでもいいが、もうまともな建物が俺達が立っているこのビルしか残っていない悲劇。
藍さん弾幕多すぎです。
『赤組・青組一同!』
突如、模擬戦場の上空にモニターが出現。
そこには、右半分にティアナ。
左半分にルーテシアが映っていた。
『黄組の攻撃が危険すぎる!
まともに相手していたら赤組・青組そろって仲良く全滅よ!
今、青組のルーテシアとも話して一時的にアライアンスを組む事にしたわ!』
『幸い、今攻撃している狐さんとなのはさんが戦ってる鬼の人は強いけど、黄組の召喚した人だからライフには関係ない!
つまり、後ろに控えている稲荷さん・幼女ヴィヴィオ・過去なのはさんを倒せば狐さんの攻撃も終わる!
今通信をフルオープンにしたから、両陣営とも状況・情報を共有しつつ一気に攻めるわよ!』
『あの狐は私の獲物なのぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!』
『訂正、なのはさんの回線だけクローズします!』
『ナイス判断よルーテシア。
ついでに黄組は全員固まってるみたいだから、現場の状況をサーチャーで映し出します!
目標はビル屋上!
なのはさんと鬼の人が2人戦争をしてる激戦区だから流れ弾には十分注意して!』
空中に別枠で映し出される映像。
お、ヴィヴィオとなのはさん。
見てみろ、俺達が映ってるぜ。
手を振ってみる。
映像の中の俺も手を振った。
こう、ハイテク映像の中に自分が居るとテンション上がるよね。
『正直、リミッターのかかってないチートな過去なのはさんと、バグレベルで強い幼女ヴィヴィオは同時に相手するのは無理がある。
だから、最初にあの体操座りでお気楽に手を振ってるデタラメ狐を最初に集中攻撃で沈めるわよ!』
ティアナさん。
俺何か悪いことしましたか。
そして誰がデタラメか。
『あの、ティア。
私の目がおかしくなってないなら、ちっちゃいなのはさんもいるんだけど……』
『ん?……なるほど。
けどスバル、それは幻覚よ。
私の視界はセルフエコノミーだから何も映ってないわ』
『本音は?』
『ムリゲーね。
せめて全員敗北覚悟の同時攻撃でアタックして、お気楽狐くらい葬るわよ』
「狐パパ……
灰になってもちゃんと過去に連れて帰るからね……」
「お稲荷さん……
普通に戦ってれば、被害は少なかったと思うの」
俺もちょっと想定外。
どうする。
どうする、俺。
手持ちのライフカードを見てみる。
逃げる。
戦う。
アイテム。
……アイテムだと?
ふと横を見てみる。
なのはが居る。
ニヤリ。
なのはの背後に回り、抱える。
「人質」
「えぇぇぇぇえええ!?」
「あー!
そこはヴィヴィオの場所ー!」
なのはを押しのけて、ヴィヴィオが俺の腕の中に入ってくる。
全く。
なのはを使ったイージスの盾のつもりだったのに。
「時たまヴィヴィオってホント可愛らしいよなー」
「子供は気まぐれなんです」
「うん、それ自分で言うことじゃないよな」
しょうがないので目の前にある頭をなでりこなでりこ。
うむ、ヴィヴィオがいい笑顔である。
なのはさん、そんなに羨ましそうな顔しない。
「稲荷さん、藍さんに見つからなくて良かったの。
それにしても……
ほのぼのしてるけど、周りの音に気を向ければドカンドカン言ってるんだけど。
あっちこっち火の手上がってて、もう本当に世紀末覇者な世界なの」
「いやね。
俺もなのはを召喚したら普通に戦おうと思ってたんです。
まさか、なのはが友人帳持ってるなんて思わないでしょう?
にゃんこ先生も居ないし。
しかも呼び出すのが藍さんと萃香って」
「ティアナ。
1枚追加」
「はい、なのはさん」
正座してる俺のモモに、ビルの瓦礫が1枚追加された。
テライタス。
「じゃあ私に石を投げたのはどう弁解するの?」
「メガーヌさんって人に攻撃しろって言われたから」
「だからって普通石投げる!?
状況から言って魔法でしょ!!
石とか一種の質量兵器だよ!?
見てよこのたんこぶ!!」
「いや、なのはなら豪殺居合い拳を受けてもケロリとしてそうなもんだが。
てかそれ以外だと、この念のために撮っておいた高町さんとティアナのローアングル写真を脅しに使うことしかできない」
ティアナと高町さんのグーパンが両サイドからこめかみに炸裂。
悶絶する間もなく足の上に置かれた岩に座るなのはさん。
「死ぬかもしれん。
てかあれか。
高町さんはパーフェクト負けしたのが悔しいのか」
「そりゃ悔しいけど、どう考えても勝てるわけがないよ……
藍さんの方は見てなかったから分からないけど、萃香ちゃん。
私の魔法ほとんど素手で撃ち落とすんだよ?
バインドで縛ってブレイカーしたと思ったら霧になって消えるし。
魔力自体が収束しなくなるし」
いやいや、あんたも大したもんだよ! と萃香。
持参したひょうたんに口をつけ、顔を赤く染めながら言う。
あの中身は酒っぽい。
「この私に能力を使わせたんだ。
疎と密を操る程度の能力をね。
人間がたった1人で挑んできて、この結果とは。
久々に血が沸き踊ったよ!」
「逆に言うと鬼についていけた高町さんはもはや人外レベル」
「萃香ちゃん。
稲荷さんの足に乗ってる石を、徐々に密にしていってもらえないかな?」
「おっ、なかなかエゲツナイ事考えるね、大人なのは。
よし分かった!」
よし分かった! じゃねーよエターナルロリータ2号。
ヤメテー。
「なのはをこの場に連れ出したときはどうしてやろうかと思ったが。
中々に面白いヤツじゃないか。
しかも同族。
うん、今度時間があったらじっくり話してみたいものだ。
勿論、一瞬なのはを人質にしようとした件を含めてな」
オウフ。
バレテーラ。
「あ、藍さん。
面白いのはわかるけど、お稲荷さんは私のだから。
取っちゃヤダよ?」
藍さんはなのはさんをちらりと見た後、椅子になっている俺に視線を移す。
「ふむ……なるほど。
良い感じに尻に敷かれているようだな、稲荷。
物理的にも敷かれているが」
全然うまくないとです。
さて、結局赤組と青組は後2戦するらしいが、チーム全員がノーバトル・ノーダメージで勝利を果たした俺達は戦闘後の疲労により参戦できず。
いやできてもする気は無かったけど。
チームはそのままに、俺達の介入が無い第2戦。
高町さんとティアナのスターライトブレイカーで戦場がドラグスレイブ跡地のように。
なのはが目を輝かせてヴィヴィオと楽しく談笑していたのが印象的であった。
3戦目の時には、隣に居た鬼の幼女にスピリタスレベルの酒を飲まされてK.O.
なのはさんが目を輝かせて俺の介抱をしていたのが印象的であった。
んで模擬戦後、なのはにはお帰り願う。
だってあいつが居ると、萃香と藍さんもいる=俺が被害を受ける。
藍さんから、いつか幻想郷においでと言われた。
あんな人外魔境に行ったら俺の明日がない。
あ、それと。
何でもあのなのはは、闇の書から少し経った時系列のなのはだったらしい。
久遠と一緒に遊んでて、変な空間の亀裂に入ったら幻想郷というところにいたのだとか。
あの友人帳を持っている限り、なのはに生涯負けはないと思った瞬間である。
後で見せてもらったら、『Remilia Scarlet』と『ふらんどぉる』ってのもあった。
どうやって書いてもらったのだろうか。
ガクブルである。
「あーあ、帰っちゃった」
「落ち込むなヴィヴィオ。
もっとプラスに考えるんだ。
そう、俺に危害を加える人が居なくなったと思えばいい」
「あーあ、帰っちゃった」
「聞いてよ」
何て事を話しながら、宿舎に帰る。
若干気落ちしたヴィヴィオだが、今生の別れでもないというとすぐ元気になった。
というか、さっきのなのははお前が望むなのはであってそうじゃないことを理解して欲しい。
なのはさんはニコニコしてるだけで、フォローに入ろうとしないし。
世界はこんな筈じゃなかったことばかりだ。
ため息を吐きつつ宿舎のドアを開ける。
大広間には既に全員が集結し、かつヴィヴィっ子と自称ノーヴェが喋っていた。
「さて、インターミドル・チャンピオンシップに出るにあたってヴィヴィオに必要なこと。
それは、特技の徹底強化だ。
まず、お前の欠点はなんだ?」
「防御が脆くて、攻撃も出力がいまいち。
全般的にパワー不足」
ふむ。
取り込み中のようだ。
インターミドル・チャンピオンシップとな。
なんのこっちゃ。
ヴィヴィオ、お前の欠点はなんだ?
「根性が脆くて、熱血も出力がいまいち。
全般的にやる気不足」
流石俺の娘。
「じゃあ美点は?」
続けて自称ノーヴェが問う。
ヴィヴィっ子は答えあぐねているようだったが、少し間を置いて自称ノーヴェが『目』だと教える。
何でもヴィヴィっ子は、視野が広く距離を掴むのが上手いらしい。
ヴィヴィオ、お前って目いいんか?
「狐パパが神速を使っても、見失わない程度の動体視力ならあるかも」
十分だ。
「攻撃力は言うまでもないもんね。
防御力も、あの両手パンの状態だと私のディバインバスターでも正面から受けて無傷だったし。
というか何もしてない状態でも、私のシューターを受けて無事だったのはなんでかな」
「なのはママ、両手パンってやめてよ。
咸卦法って言って。
後、気をいっぱい使ってたら何か体が丈夫になったみたい」
「お前やっぱラカンだろ。
その内『あの幼女刃物刺さらないんだけどマジで』の二つ名がつくぞ」
「適当に右パンチ使いまくってる狐パパに言われたくないー!」
ええい騒ぐな。
自称ノーヴェ達がこっち見てるじゃないか。
「お、幼女ヴィヴィオ。
いいところに来た。
お前もチャンピオンシップに登録したからな。
10歳って事にして。
名前はコギツネ=ヘレンだ。
ヴィヴィオが2人居るとややこしいからな」
「狐パパ。
ノーヴェさんが何を言っているのか分からないよ。
とりあえず、ヴィヴィオは映画の題材になったって事でいいのかな」
「じゃあ俺は主題歌を歌うわ」
さて、おふざけはこの辺りにして。
説明を聞く限り、どうやらヴィヴィオが勝手に魔法戦競技のチャンピオンシップに登録されたらしい。
その事を理解したヴィヴィオは、梅干しを噛み締めたような顔をして嫌がっている。
「お稲荷さん。
その……魔法戦トーナメントなんだよね?
ヴィヴィオにはまだ早いんじゃないかな……。
何だかんだ言っても、まだ6歳だよ?
怪我とかしたら大変だし……」
「なのはさん。
なのはさんはヴィヴィオに勝てる?」
「え、無理に決まってるじゃない。
攻撃が通らないんだよ?」
何を心配する必要があるのか教えてくれ。
「因みに、ヴィヴィオちゃんが拒否したら、家に置いてある漫画を全部リサイクルに出します」
「謹んでその大会、出場させて頂きます」
家長・高町さんからのありがたい御言葉。
片膝をついて、高町さんに頭を垂れるヴィヴィオ。
いつ買ったんだ。
むしろどこに置いている。
お前、俺となのはさんと同じ部屋だろうが。
てか今度俺にも見せなさい。
「狐パパ。
チャンピオンシップに出るにあたって、CLASS3以上のデバイスを装備って言われたんだけど。
CLASS3て何かな?」
「記憶容量じゃね?
8・16・32・64GBとあるから……32GB以上のUSBか。
今度用意しとく。
この辺に電気屋ってあったかね」
「ヴィヴィオならデバイス無くても大丈夫だと思うなー
この間、私との模擬戦でなんちゃって雷の暴風とか何とかって言うの使ってたよね」
「お前……
普通、そんな凄い力使うのって狐にされた俺じゃね?
二次創作によくある展開として。
そして厨二になっていく」
「属性を操らなくて何が魔法か。
そう思っていたヴィヴィオの気合いの結晶。
確かにヤバスな気はしてる。
でも、いつか雷速瞬動するのが夢なんだー!
それと、なのはママのは魔法じゃなくて弾幕だと思う」
「時既に時間切れ」
「こらこら。
私の魔導師生活10年を否定しないの。
まだ6歳なのに……」
「培養液から出てから1年経っていないと思うから、実際は1歳未満!」
「なのはさん、世界最強の0歳児がここにいた」
「ホントだねー。
お稲荷さん、ヴィヴィオの妹か弟が出来た時は、私が教育するからね?」
「俺のせいと申すか。
……。
うん、ヴィヴィオはワシが育てた。
……妹か弟?」
「狐パパ、なのはママ。
向こうに戻ったら、ヴィヴィオはたまに1人で寝るからね。
なのはママ、頑張って!
ヴィヴィオ、妹がいい!」
「ふふ、ありがと、ヴィヴィオ」
「マジデカ」
お久しぶりです。
お稲荷様奇行文、12月号です。
冬ですね。
雪も降って寒くなって来ました。
シャツは重ね着。
モコモコのダウンジャケットを着て。
マフラー巻いて。
でもまだ寒い。
何が原因だと、探ってみる。
視線を下げたら裸足にクロックス。
世界はこんな筈じゃなかったことばかりである。
PlayStation Vitaが発売だそうですね。
読み方はヴィータだそうです。
スティックがアイゼンに当たるのでしょうか。
そしてその波に置いていかれまいと、アメフラシも意気揚々と、最新型PSPとFF零式を買って来ました。
早速プレイ。
壁に隠れて敵を撃つ。
攻撃を避けて敵を撃つ。
ふ、このスネークを簡単に倒せると思うなよ?
……俺やってるの、FFだよな。
あ、後TSUTAYAでTV出力コードも買って来ました。
札にしっかり『3000型専用』と書いてあるのを見て、かつ自分のPSPも3000型であるのを確認して購入。
家に帰ったら謎変化が起こって、1000・2000型専用コードになっていました。
世界はこんな筈じゃなかったことばかりである。
さて、酔いも7日目に突入。
気分はヘブン。
韻を踏んでも嬉しくないとです。