シリアル奇行文。
十日酔い。
【ヴィヴィオの修行 その1】
「よォしッ!!
やるぞヴィヴィオ!!
特訓項目その1ッ!!」
「お願いしますッ!」
自称ノーヴェとヴィヴィっ子が特訓する広場の隅っこ。
俺とヴィヴィオも、何かせにゃならんかなぁと思って一緒にやってきた次第。
決して、またなのはさんに追い出された訳ではない。
ないったらない。
なんでもヴィヴィオの方に理由があるらしく。
「未来ヴィヴィオがヴィヴィオに、特訓しないの?しないの?って夜な夜な聞いてくるんだよ……
このまま行くとヴィヴィオのSAN値が削れていく。
イア・イア・ハスタァ……」
「おい馬鹿やめろ。
それを回避するために今ここにいるんじゃないか。
気をしっかりと持て」
しかし特訓といっても。
隣でやってる自称ノーヴェとヴィヴィっ子のような殴り合いしても。
痛いのやだし、なによりヴィヴィオを殴ったらなのはさんから何をされるか分かったものじゃない。
「でも俺の技を教えるのもなぁ……
ヴィヴィオ、カメラ系の技は極めたよな?」
「最優先しました」
「防御力は……刀を弾いて。
攻撃力は言わずもがな。
えっ、何やればいいんだろ」
「あれやってみたい!
ちっさいなのはママがやってた召喚!」
バッカお前。
幻想の郷の人呼んだら何をされるか分かったものじゃない。
一歩間違えば幻想入りシリーズの殿堂入りに認定されるぞ。
というかお前はまだ友人じゃないはず。
……あ。
「別にあいつらを召喚しなくてもいいじゃまいか。
よし、ヴィヴィオ。
俺が手本を見せてやろう。
やってみたいことがあったんだ」
「おぉ?」
ヴィヴィオから少し離れ。
いつも変化とかに使う妖力ちっくなものを、体の中に貯めこむ。
イメージするのはいつも、あたいったらさいきょーね!な自分。
ダランと下げていた手を胸の前で合わせる。
パンッ、と音がなる。
しゃがみ込み、合わせていた両手を地面に。
「狐パパ……
何を錬成するの……?」
「いや、いい格好が思いつかなかっただけで。
これで召喚できたらいいなぁと」
そういって手をついた地面を見てみる。
手を中心に、直径1m程度の黄色い輪っかが広がっていた。
輪っかの内側は、土じゃなく真っ暗になっている。
数歩後に下がる。
その輪っかの中から、何かが飛び出てきた。
大きさは小型犬程度。
けど色は緑。
リスを思わせる顔に。
額には、赤い宝石。
まさにカーバンクル。
「キタコレ。
俺の夢の体現。
『召符「気合い召喚」』って名前でどうよ?」
「カー君だー!」
「聞いてよ」
でも気合いって便利よね。
何かヴィヴィっ子と自称ノーヴェが、見たことのない表情でこっち見てるけど。
何ぞ悪いことしたかね。
「よしヴィヴィオ。
お前にはこの召喚術を教えてやろう」
「え、気合いでやるんじゃないの?」
「お前に教えることはもう何もない」
あ、そうだ。
カー君。
『ルビーの光』やってよ。
お願いすると、バク宙しながら俺とヴィヴィオに淡い緑色の光を纏わせてくれた。
これがあの有名なリフレク……!
「ヴィヴィオ!
今ならお前の居合拳も跳ね返せる気がする!
さぁ、俺に向けて1発撃ってみるがいい!!」
次の瞬間。
俺はヴィヴィオの放った極太の光に撃たれ宙を舞っていた。
あぁ、居合拳は魔法じゃなくて技術だったねそういや。
薄れゆく視界の中、そんなことを思うのだった。
【ヴィヴィオの修行 その2】
「お前……調子に乗るのはいいけどバハムート召喚とかやめろよ。
『我を呼び出したのは汝等か?』って言ってたぞ。
思わず違いますって言って送り返しちゃったじゃねーか」
「てへぺろ」
棒読みで言われると俺の怒りが有頂天。
「まぁいい。
じゃあ次はあれだ。
二の太刀的なヤツ。
拳だからニの拳か。
なんだっけ……斬るものを選ぶ斬撃だっけ。
元々は人間に取り憑いた悪霊のみを切り伏せる技だったんだよな」
「それが、手前にある物体を傷つけずに後にある物だけを斬るという謎の剣術になったんだね!」
「まぁ……筋肉ダルマも気合いで出来てたしなんとかなるっしょ」
「ヴィヴィオ、剣持ってないよ?」
「拳があるだろ。
読み方は一緒だからイケルイケル。
じゃ、俺あの木の後に居るから。
木を傷つけないように撃ってみなー」
そう言って50m程離れた木の後に歩いて行く俺。
幹の太さは直径70センチ程。
そこそこの大きさの木である。
いいぞーと、ヴィヴィオに声をかける。
次の瞬間。
木をすり抜けてきたヴィヴィオの拳に撃たれ俺は宙を舞っていた。
あぁ、気合いで何かするのはあいつの十八番じゃないか。
薄れゆく視界の中、そんな事を思うのだった。
【ヴィヴィオの修行 その3】
「の前にエリクサーを要求する」
草むらに寝転びながら呟く。
俺のHPはもう限りなく0に近い。
「うわぁ……狐パパ、顔がボコボコ……」
「誰のせいだと思っているか」
「狐パパのせいだよね」
……あれ、そうだっけ。
……そうかもしれん。
「というか俺、痛いの嫌って言ったじゃないか。
何でボコボコに殴られてるんだよ。
という訳で、俺に被害の無い技を練習してみるといい」
「どんなー?」
ちょっと待ってな。
草むらから起き上がり。
ヴィヴィオから少し離れて、少し丈夫な布団を創り出す。
それを木の上から吊るして。
準備完了。
「ヴィヴィオ、腕を伸ばした状態であの布団に触れてみな」
「はーい」
トテトテと布団に駆け寄り。
言われたように、手を布団に添える。
「その状態のまま、添えた方の手を布団に貫通させるんだ」
「?」
「名前は忘れた。
大量に読み耽ったSSの中に、そんな修行法があったんだ。
極めれば、ゼロ距離から最大の威力で攻撃が出来るとか。
だから勢いはつけず、そのまま貫いてみろ」
「分かったー!」
……あれ、あの技って内部破壊系の技だっけ?
ヴィヴィオの力で内部破壊されたら……
ふむ、エターナルフォースヴィヴィオパンチとでも名付けるか。
しかしあれだ。
金髪で、破壊系の技を、笑いながら使っている。
さながらフランドールのようだ。
EXボスはすぐ傍に居たんですね分かります。
魔理沙はどこだ。
「……よう稲荷。
ちっこいヴィヴィオがやってるあれはなんの練習だ?」
自称ノーヴェが現れた。
「ゼロ距離からの一撃必殺技」
「……因みに相手は?」
「死ぬ」
次の瞬間。
横から飛んできた強烈な蹴りを受け俺は宙を舞っていた。
なんてもんを教えてるんだてめーは!!
薄れゆく視界の中、そんな言葉を聞いたのだった。
「なのはママ、ただいまー!」
「……」
「あ、ヴィヴィオ、お稲荷さん。
お帰りな……何があったの!?」
壮絶な戦いだった。
家に帰るやいなや、ソファーに倒れこむ俺。
なのはさんは、慌てて救急箱から消毒液を取り出してくる。
うん、顔が怪我してるからいいんだけどね。
目の周りにまで塗らないで。
染みるから。
2つの意味で。
「ヴィヴィオの修行だったのに、何で俺が一番疲れてるんだろう」
「また余計なことしたんじゃないの?」
心外な。
「あ、そういえばヴィヴィっ子ちゃん達はどうしたの?」
「ヴィヴィオの特訓見てたら涙目になって、それからがむしゃらに自称ノーヴェに打ち込みに行ってたな。
何か思う所があったんだろ」
「へぇー……熱血だね!」
ちらりとヴィヴィオを見るなのはさん。
ゲンナリとした表情のヴィヴィオ。
「狐パパ。
ヴィヴィオは学校を決めるためにここにいるのに、何でこんなに熱血を求められてるんだろ……」
「ヴィヴィッドな物語だからじゃね?」
あぁ、そっか。
と頭を抱えるヴィヴィオ。
「というか、ミッドの学校に通ったらこうなるって事だよね?」
「お前がISさんや仲良し3人組の中に入れるかどうかは疑問だが……
俺達がここにいるから、この世界の未来はこういう方向に進んでいるのかもしれないからな。
必ずしもそうとは言えんし、そうじゃないとも言えん。
未来は未定」
「お稲荷さんがまともなこと言ってるような気がする。
どこでそんな知識仕入れたんだろう……
情報源聞くと感動が消えそうだから聞かないけど」
何で消えるのさ。
「そういやヴィヴィオ。
布団貫通はどうだった?
俺最後のほうの記憶が無い」
「んー、やってる時に未来ヴィヴィオと自称ノーヴェさんが模擬戦って言ってきたから。
居合拳ニの太刀(仮)と、カー君召喚して戦ったー!」
「魔法の反射具合はどんな感じ?」
「光を鏡に映すと反射するみたいに、簡単に反転したー」
なるほどなるほど。
もう俺がヴィヴィオに教えることは何もないようだ。
「えっと、2人は何を相手に戦ってるのかな?」
むしろ俺が聞きたい。
「ねぇ……同じ私なのに何でそんなに強いの……?
私と何が違うの……?」
「知らんがな。
てか今、夜中の2時だから。
何夜這い来てますかあなたは。
ヴィヴィオは眠いんですー」
「私は強くなりたいんだ……!!」
「ヴィヴィオは夢の中に入りたい」
「教えてよ、ねぇ……」
「SAN値が削られる……」
「魔法だって頑張ってるんだよ?」
「魔法行使のプログラムっていうの?
そんなのは考えるな、感じろ。
チンカラホイで魔法を使う青ダヌキ付きのメガネ小学生もいるんだから」
「体術だって、ノーヴェの言うこと聞いて……」
「ヴィヴィオの体術の師匠は数多の漫画やゲーム達」
「ねぇ……私、あなたに勝てないよ……」
「別に勝ちたくないよ……
てか寝かせてー」
「どうすればいいの……?」
「漫画読みなさい。
ゲームしなさい。
面白かったら重畳。
後はそれを実践するだけ」
「えっ……」
「漫画とかゲームでさ。
カッコイイ技とか使うとスカッとするよね?
ヴィヴィオは自分が現実にやってみたくてやってるだけ。
せっかく、魔力とか気とかそういう不思議能力のある世界なんだし」
「……」
「強い強くないなんて関係ない。
自分がしたいからしてるだけ。
だからよく言う、戦う覚悟も無ければ、やりあう気も無い。
当然、その辺の考えがしっかりしてそうな未来ヴィヴィオが同じ考え、同じ土俵に立てば、ヴィヴィオが勝てるなんて全く思えない」
「……ぁ」
「別になのはママみたいに、管理局で命をかけてる訳じゃない。
狐パパみたいに、平穏な日常の中で命をすり減らす訳じゃない。
負けても次があるんだから。
必死になるのもいいけど、何より楽しまないと。
『好きこそ物の上手なれ』
なのはママの世界の言葉だよ」
「まずは……楽しむ……」
「最近、ヴィヴィオを見てて切羽詰まってたでしょ。
そんなんじゃ楽しめないよ?
周りを見て。
世界はヴィヴィオだけじゃない。
他の人もいっぱいいるんだから。
自分のペースで、自分の信じたやり方で。
好きにやってくのがいいと思うよ」
「……うん、うん!
そうだ……!!
それにこんなところで迷ってたら、なのはママの娘を名乗れないもんね!
よしッ! 過去の自分になんか負けないんだから!
いつか、もっと強くなって、勝ってみせる!!
少し先に居るみたいだけど、漫画やゲームでもしながらのんびり待っててよ、過去の私!!」
「……まぁ、ヒッキー目指してるヴィヴィオくらい倒せないと、今度のトーナメントでも優勝なんて夢のまた夢でしょ。
食っちゃ寝してるから、早く追い抜くといいよー」
「いや、普通に現時点で全年齢全世界最強だと思うんだけど……」
「こまけーこたぁ気にすんな!
てか寝る。
ヴィヴィオは眠い」
「え、あ、うん。
じゃ、また明日ね?」
「知らんー」
ピッ。
「……いつも見てるはずなのに知らん所で成長しちゃって、まぁまぁ。
カッコイイこと言うようになったじゃないの。
さっきの会話、バッチリ録音したから。
いつかヴィヴィオの黒歴史暴露大会のネタその1確保だな」
「お稲荷さん。
その音声データ、後で私にも頂戴ね?」
「…………!!??」
「気付かないとでも思ったか?
3人同じ部屋で寝てるのに、あんだけ騒げば起きるって」
「ヴィヴィオ、カッコ良かったよー!」
「……ぬあぁぁぁ……いっそ殺してぇぇぇ……」
「ファッファッファ。
真っ赤なヴィヴィオは珍しいものだな。
というかなのはさん、命削られてる俺の生活って平穏だったのか?」
「戦場でないことは確かかも」
「マジデカ。
命をすり減らさない平穏な日々を所望する」
「難易度高いね、狐パパ」
「え、そうなの?」
活動報告から数日。
やっとこさの十日酔いでした。
アメフラシ自身も読み返してて、ティアナの回まで行って思いました。
最近シリアル成分足りてないのでは、と。
アメフラシは、シリアルも書ける筈だったのではないか、と。
十日酔いを読み終えて。
画面から顔を上げれば、そこにはドヤ顔をしたアメフラシが見えるはずです。
ドヤァァァ。
……普通に難産だっただけというのはアメフラシと紳士淑女の皆との秘密です。
だんだん単行本に追いついてきてしまいました。
そろそろ番外編入れる時期か。
それともドラゴンボールのように、敵を前に回想シーンを1話分設ける……?
夢は広がりング。
方向性は見失いまくりング。
メッセージや感想などで、奇行文の紹介を受けた、または奇行文を紹介する!といったものを最近よく見かけるようになりました。
嬉しい半面、ガクブルです。
そんな紹介されるようなモノダッケナーと思いながら今回も投下です。
たまにはこんな時もある。
そんな奇行文です。
1ヶ月空いても十日酔い。
そこに突っ込んじゃいけません。
生暖かい目で見ていただきありがとうございました。