プリン奇行文。
十三日酔い。
昨日の一件のせいで廊下で寝ていたために、ガチガチになった体をほぐしつつ。
ゆらりふらりと起き上がり、背伸びして欠伸を1つ。
変な寝方をしたため、疲れが取れず頭がぼんやりするものの。
重い体を引きずって、リビングに戻ってきた俺こと稲荷。
昨夜なのはさんが座っていたソファーには、今でも元気になのはさんが爆睡中。
何かとってもチクショウ。
対面のソファーには、ヴィヴィオが座っていて。
テーブルの上に置かれたプリンを美味しそうに食べていた。
何かとってもチクショウ。
「扱いがおかしい件」
「しかしどこもおかしくはなかった」
何故否定するし。
「廊下で死んでる父ちゃんを放置でプリン中とは、けしからん。
下の黄色い部分を徴収致す」
「ヤダ!
これヴィヴィオの!
茶色いところならちょっとあげるよ」
プリンで最も嫌いな部分です、それ。
なんだかんだ言いながらも、一口分スプーンで掬ってくれたので。
ヴィヴィオのとなりに腰掛け、差し出されたスプーンをパクリ。
うん、甘い。
「そういやさ、変わった夢を見たんだ。
俺がFateなstay nightさんちのギルガメッシュさん達と出会うような。
その場になのはさんやヴィヴィオ、果ては八神まで登場したような。
そして、遥か昔に忘れ去られた俺の名前を思い出すように。
稲荷ではなく、本名で自己紹介をしていたような。
そんな夢を……見ていた……!」
「きっと昨日、フライパンで叩かれた後遺症だねー
記憶の引き出しが開きっぱなしになったんじゃないかな?」
ねえ、それって結構危険な状態だったって事じゃないかな。
「でも狐パパ。
多分ヴィヴィオも同じ夢を見てたんだけど」
マジでか。
「じゃあ問題。
俺の名前は?
夢の中で俺が高らかに宣言してたから覚えているはず」
「しの……りゅ……
狐パパは狐パパだから、そんなこと気にしなくていいの!」
明らかに今、何かを思い出そうとして諦めたよね。
「しかもいいこと言ってるようで、実はそうでもないという。
あれ、何かデジャヴ。
そういや昔、なのはさんにユーノからの電波を受信したら変な夢を見たと聞いたことがある」
「やめてよ。
その考え方だと、ヴィヴィオが狐パパの電波を受信しちゃったことになっちゃう」
発信した俺はもっとヤバイ気がする。
「でも、そうなるとミステリーだよね!
どうして2人揃って同じ夢を見たのか……!」
「魔法があって異世界があってドラゴンボールで時間移動ができる世の中。
もうセカンドインパクトでも起こらないと驚けない俺がいる」
ソファーの上に胡座をかいて、ヒョイと隣のヴィヴィオを持ち上げて俺の足の間に座らせ、抱きしめてみる。
顎をヴィヴィオの頭の上に乗せる。
何かプリンが食べれないと暴れるが気にしない。
「ふむ、親子の絆を夢で感じ取った、という設定はどうだろうか」
「ギップリャー!」
それは暗にクサイセリフと言いたいのか。
「大体その設定なら、なのはママも同じ夢を見るはず」
ちらりと2人揃ってなのはさんに視線を移す。
「……なにこの……カオス……
お稲荷さん……マーボー神父……ウヘヘ……」
ソファーの上で幸せそうに寝ているなのはさん。
その2つの単語のどこに笑える箇所があったのかを教えてもらいたい。
「なのはさんは現在進行形でトリップ中と」
まぁ、放置でよかろ。
「いいの?」
「いいの。
なのはさんの朝飯は俺たちの糧になってもらおう。
……そういや、朝飯は?
ヴィヴィオのプリン以外に食材が見当たらないのだが」
んー、とひと唸りするヴィヴィオ。
持っていたスプーンで、庭を指した。
その先に視線を持っていくと。
『私の邪王真眼にかかれば、全てのモノを見通すことができる。
それが魔力の流れだろうと、気の流れだろうと……』
『ヴィヴィオ!?
昨日は一体なんのアニメ見たの!?』
なるほど。
元々朝飯は無かったようだ。
そりゃあ、高町さんにとっては娘があんな風になっていたら気が気ではあるまい。
「ん?
と言う事は……ヴィヴィオ。
そのプリンはどこから召喚した」
「冷蔵庫の中にあった。
『ヴィヴィオの!』って張り紙がしてあったから、ヴィヴィオが食べた」
間違っては居ないが。
大いに間違っているぞ。
『問題ないよ、なのはママ。
これで過去の私の攻撃は何とかできるはず。
後は不可視境界線さえ見つけ出せれば……』
『分かった!
ううん、言ってる意味は分からないけど。
稲荷さんとヴィヴィオちゃんのせいって事は分かった。
ちょっとお話してくるね』
そこまで聞いて、ヴィヴィオと目を合わせる。
心に浮かぶ言葉は3文字。
ヤベエ。
「てか俺のせいなのだろうか。
ヴィヴィオのせいではなかろうか」
「娘を売らないでよ。
大丈夫、ちゃんと話せば分かってくれるよ!
だから狐パパ。
掴んでる服を離して欲しい」
だってお前、こうしないと逃げるだろ?
しかも余罪としてプリン窃盗があるとか。
その後の俺の運命はフルボッコしかみえない。
お、運命を見るとか、ちょっとレミリアっぽくね?
「まぁまぁ。
ここは1つ、俺に名案がある」
という訳で、久々に妖力活躍。
作り上げるはDVD。
内容は、中二病な女の子でも恋がしたいかもしれないやつ。
ブルーレイ?
ぜーたくは敵です。
「見ろ、無駄に精錬された無駄のない無駄なパッケージ」
「DVDってミッドチルダでも見れたっけ?」
「知らん」
さて、これをこっそりと寝ているなのはさんの腕の中に、まるで抱えているかのように置いておく。
これから訪れるだろう未来を想像し。
ちょっと不憫になったので、こっそりほっぺにキス。
その後、胸の前で十字を切っておく。
「さらば、なのはさん。
ちょっとした役得も与えておいたので、恨まないでくれると嬉しいです」
「普段ならストロベリーなんだけど、今回は死亡フラグのようだね……
しかも珍しく、なのはママの」
よし。
では、退散だ。
1・2……散!
俺は神速を使い。
ヴィヴィオは瞬動を使い。
共に玄関から外に脱出した後。
『……あぁぁ~~~~~~~』
悲鳴っぽい何かが家の中から聞こえた気がした。
「しかし、今日のヴィヴィっ子は妙に気合いが入ってたな」
「あー。
今日、ヴィヴィオと未来ヴィヴィオが夢の対決をするからじゃないかな?」
初耳なんですが。
家を出てすぐの塀の影に隠れながら聞く事実。
まだ戻るのは危ない。
「というか、今日はISさんとコロナの試合じゃなかったのか」
「その次に、シャンテさんっていう人の試合があってその次らしいよ?」
誰だシャンテって。
新キャラか。
「知らなーい。
昨日なのはママが言ってた」
ふむ。
多分あれだろ。
エターニアなお話で言うネレイドさんのような感じ。
分かりやすく言うと隠しボス。
「予選で隠しボスが出るってどうなんだろ」
「スカさんちのゆりかご事件。
過去に戻りのなのはのリリカルなのは事件。
また戻っての六課集結地獄の宴事件with闇の書。
そして今のVivid事件で4週目プレイみたいなものだから、いいんじゃね?
魔人煉獄殺を使えるやもしれん」
後はクレイジーコメットからのプリンセスオブマーメイド。
あ、ヴィヴィオは本当にできそうだからやっちゃダメよ。
「しかしそうとなるとまた会場に行かねばならんのだろう?
時間は大丈夫なのか」
「うん。
ギリギリになったら2人とも起こそうと思ってた。
未来ヴィヴィオもまだ家にいるくらいだし、時間的には余裕だと思う」
ふむ。
「しかし、こんなに早くヴィヴィっ子に当たっちゃうものなんだな。
こういう場合って話の展開上、予選最終戦とかになるのかとばっかり」
「鮮烈な物語だから、未来ヴィヴィオが主人公だとしたらその展開はありかもねー」
「だねー。
でも、ヴィヴィっ子ちゃんも結構頑張ってるから。
油断しちゃダメだよ?
勝っても負けてもいいけど、ケガには注意するように!」
そーだそーだ。
……ん?
今の声は誰の声。
後ろから聞こえたので、振り向こうとしたら。
ポンっと頭に置かれる手。
グッと力を入れられ。
アッー! と言いそうになったところで。
グルンと頭を回されて、強制的に後ろを向くことに。
「あ、なのはさん、こんちゃっす」
「アハハ、おはようお稲荷さん!」
えと、何でここに居るのが分かったんでせう?
スっと俺の首を指差すなのはさん。
見えないので手で触ってみる。
首輪があった。
ふぁー。
「さて、問題です。
私はこの世界のなのはでしょーか?
お稲荷さん達の世界のなのはでしょーか?」
いやー、勿論僕たちのなのはさんじゃないっすか。
間違えるわけ無いでしょー!
だから、そのタンコブの上に張り付いてる怒りの四つ角を消してください。
高町さんに何をやられたんですか。
「やだなー怒ってないよ?
ほら、今の私の心は地獄のマグマのように赤く澄み渡っている……」
「わはー
なのはさんが危ない。
むしろなのはさんで危ない。
ヴィヴィオヘルプ」
返事がない。
視線を向ける。
誰もいない。
あ、横に書置きが。
『旅に出ます。
探さないでくだちい』
「おのれ謀ったなヴィヴィオ!」
「よく分からない事で怒られた理不尽さをお稲荷さんにもぶつけてやる———!!」
「ぬあぁぁぁぁああ……」
その場しのぎはロクなことにならない。
六課時代に学んだはずなのに、まだまだ勉強不足を感じたとです。
そんなイベントを乗り越えて。
ヴィヴィオとなのはさん、3人で家に帰り時計を見れば、出発するのに丁度いい時間。
ヴィヴィオは何気にもう出発する準備が整っているので、後は俺となのはさん待ちという状態。
然程時間はかからないと思うので、ヴィヴィオは玄関に待たせてさっさと済ませてくることに。
「お稲荷さん、忘れ物は無い?」
「わっちの朝食を忘れてきた」
「大丈夫、私も食べてないから!
ダイエットに丁度いいよー」
笑いながら言ってくる。
知ってるかなのはさん。
相撲取りは、1日2食しか食べないんだぜ……?
「さーて。
持ち歩いて食べれる何か無いかなー」
俺の言葉を聞き、速攻で冷蔵庫を漁るなのはさん。
というかそもそもいいスタイルなんだから、ダイエットしたら骨しか残らない気がするのは俺だけだろうか。
「何かあったー?」
「んー……あ、『なのはママの!』って書いてある紙が貼ってあるプリンがあった。
私のなら貰っとこっと」
お前らやっぱり親子だわ。
「『稲荷の!』ってのは?」
「フェイトちゃん用のはあるけど……お稲荷さんのは無いみたい」
マジでか。
フラフラとソファーに座り込み。
真っ白に燃え尽きる俺こと稲荷。
「ほらほら、ヴィヴィオも待ってるんだし座り込まない!
私の半分あげるから」
「ほほう、間接キスを所望とな?
なかなかに可愛いことを言ってくれるのぅ」
立ち上がり、ニヤニヤしながらなのはさんに言う。
「何言ってるのお稲荷さん?
そんなのでドキドキするのは中学生までだよ」
座り込み、再び真っ白に燃え尽きた俺こと稲荷。
どうやら俺の精神年齢は中学生のようです。
でも厨二病ではないんです。
「さっ、お稲荷さん!
ヴィヴィオ待ってるし行くよ?」
うーい。
あ、因みにプリンは貰えるのですか?
「カラメルの部分をあげるよ!
あそこあんまし好きじゃないんだー」
いや、だから俺もそこは拒否したいとです。
3人揃って家を出て。
数歩進んだ所でプリン関係の悲鳴が2人分聞こえたので、ダッシュで目的地に向かう事約1時間。
再びやってきましたトーナメント会場。
「ヴィヴィたんインしたお!」
そう叫びながら観客席へ通じる扉をバーンと開け放つ我が娘。
恥ずかしいのでやめてもらえませんかね。
「あはは……
あ、ほらヴィヴィオ、お稲荷さん!
コロナちゃんとISちゃんの試合だよ!」
遅れて観客席に入ってきたなのはさんが、ほらほらと指をさす。
その先には、満身創痍のISさんと。
「蘇れ巨神!
叩いて砕け、ゴライアスッ!」
ドラクエに出てきそうなゴーレムを召喚するコロナがいた。
あれ……これ格闘……?
ゴーレムに格闘させるっていうのは有りなのだろうか。
「狐パパ。
ゴライアスだって」
「うむ、ファイバードのようだ」
「……それってドライアスじゃなかったかな」
なのはさん、本当にあなた年齢偽ってませんよね?
とりあえず、立ち見も何なので手近な席に3人揃って腰を下ろす。
試合はというと、コロナはゴーレムさんを召喚したものの。
様子見のためか、コロナとISさんは双方動かない。
緊迫した空気が会場内に広がる。
瞬間。
コロナの乗っているゴーレムの右手がギュインギュイン音を立てながら回りだした。
その手を大きく振りかぶる。
ISさんはそれを迎え撃つ為に、少し腰を落とした体勢になった。
「なのはさん、あれは非殺傷?」
「当たり前だよー」
欠片もそうは見えないのだが。
今更何言ってるの? みたいな視線を向けるのはやめてもらえませんか。
「ゴライアスって凄いんだね、狐パパ」
「俺にはゴライアスという二つ名を持ったエクゾディアにしか見えん。
さながらあれはエグゾードフレイム」
相手は死ぬ。
2人の均衡が崩れた。
ゴーレムの回転している右腕が、ISさんに迫る。
今まさに当たると思ったその時。
ISさんは右手の掌底を、ゴーレムの回転している右手の中心部に叩きつけた。
ゴーレムの攻撃が止まる。
なんでさ。
「よくなのはさんはアレに勝ったね」
「んー?
相手が近接が得意なら、接近戦にならないように自分のフィールドに持ち込むのも戦闘の基本だよ?」
なるほど。
確かに如何に近接が得意であろうと、マスタースパークを発射5秒前で構えているゆうかりんに特攻できないのと同じ感じか。
「良くわからないけど、多分そんな感じ。
因みにゆうかりんって人は、ゲームの人?」
「東方さん。
何で?」
「いや、本当に存在してる女の人の話をしてるんだったら……握ろっかなと思って」
やめてんか。
あ、いつの間にやらISさんが勝ってる。
ヴィヴィオ、何があった。
「爆流波」
把握した。
「ヴィヴィオ。
次の試合はどーでもいいからウォーミングアップだ。
思いっきり打ち込んでこいやー!」
「あいあいさー!
めーりーこーみーパーンチ!」
ズパァァァァァァァン!!
「ふっ……甘いぞヴィヴィオ。
そんなものであのヴィヴィっ子に通用すると思うのか」
「氷を創り出して、ヴィヴィオの攻撃を防いだ手を冷やしながら言っても説得力がないよ狐パパ」
「ま、まだまだ遊びはこれからよ!
ヴィヴィオ、お前の奥義を使ってみろ!」
「うーん……それじゃあ遠慮なくー!
めりこみパーンチ、二の太刀風味—!」
ズパァァァァァァァン!! ドグゥッ!! バタッ。
「ゲブォァ!
……ま、まだまだ……そんなもんじゃ……
というか……防いだのに……」
「こないだの特訓の成果!
ヴィヴィオの拳は殴るものを選ぶ!
……大丈夫? 狐パパ……内臓系逝ってない?
さっき「く」の字に体が曲がってたけど……」
「大丈夫……ちょっと盛大に吐いて……意識が朦朧として……視界が揺れて……
受けた手が……1.5倍に膨らんでるだけだ……」
「ちょ、それ手が折れてない!?
後狐パパ痙攣してるよ!?
また顔から液体全部出てる!
ごめんなさい! ホントごめんなさい!」
「いしゃ……きゅーきゅーしゃ……」
「呼ぶの!?
救急車———!!!」
「叫んで……どーする……」
『見せられないよ!』な為、音声のみでお送りしました。 奇行文編集部。
お久しぶりです、アメフラシです。
大まかな筋書きはできていたのですが、1話分の〆をどうするか。
そのアイディアが浮かばずに今の今までかかったとです。
強いて言うなら難産でした。
冒頭の会話で何となく匂わせていたのですが。
同じHPで投稿されている861様の作品にコラボさせて頂きました。
861様が手掛ける稲荷も、いい具合に暴走しているようです。
よろしければ一度ご覧下さいませ。
兄者よりVividの7巻を入手することに成功したアメフラシ。
勇んで開いた目次のページ。
幼女たちがビキニを来て戯れていました。
ビキニって、胸が無いとずり落ちるって聞いた気がするのですが。
この子達は大丈夫なのでしょうか。
魔法的な何かでひっついているのかもしれません。
魔法便利です。
次話で原作(単行本)追いついてしまうのではと心配されている方。
大丈夫です。
アメフラシも心配しています。
兄者情報ですと、魔法少女リリカルなのはGODなるものもあるとか……?
時代遅れですがあえていいます。
どんだけー。
では、13日酔いでした。
次回は番外編か14日酔いか。
そして投稿はいつになるのか。
謎が謎を呼ぶ難事件。
今その現場に、一匹のアメフラシが紫の這った跡を付ける……!!