第5話 出会い
5歳になったので母親の許可を得て公園ソロデビューです!
これでトレーニングがはかどるよ。
完全にトレーニング中毒だな〜。
でも、やっぱり自分の成長が分かるのは面白いのかね?
幼稚園が終わって公園に行き日課のトレーニングをしていると、1人でブランコに座り寂しそうに佇んでいる女の子がいた。
年齢は俺とあまり変わりがなさそうだから、4〜6歳ってところかな?
公園でこんな年齢で1人で居るなんて珍しいなーと思いつつ、俺は1人でトレーニングを続ける。
あぁ、俺もこんな年齢で1人で公園に居る珍しい人だった!
と、とりあえず今日はトレーニングを続けて満足して帰宅。
次の日だけど、また1人でブランコに座り佇んでいる。
この公園で友達とも遊ばず、親とも一緒に居ないで何をするわけでもなく1人で居ると目立つと言うか、自然と目がそっちに行くよね。
トレーニングに集中しちゃうと気にならなくなるけど、トレーニングの合間に気になり見てしまう。
なんだか寂しそうで……。
うーん、気になるから話しかけてみようかな?
あ、良い方法があるな。
野球ボールをその子の足元に転がせてみる。
「おーい、そのボール取ってもらえるかーい?」
「??」
その子はボールを拾い、トテトテとこっちに持って来てくれる。
あら、投げないんだ?
「はい、どうぞなの……」
「ありがとう」
お礼を言うと少し嬉しそうな顔をして、またブランコの方へ戻って行く。
その後、その子はチラチラとこちらを気にして見ている。
俺は偶然を装って、またボールをその子の足元へ転がせてみる。
そうすると、その子はボールを拾うと嬉しそうな表情でこちらに向かってくる。
「はいなの……」
これは……。
うん、ちょっとだけお節介を焼いてみようかな?
「ありがとう。もし良かったら一緒にやらないかい?」
「!?」
そう言うと凄く驚いた顔でこっちを見てくる。
いや……そこまで驚かれると対処に困るんだけど……。
「キャッチボールって言って、ボールを投げ合うんだ。1人じゃ出来ないから一緒にやってくれると嬉しいな」
「でも……なのは運動音痴って言われてるし…。迷惑掛けちゃうかも……」
「大丈夫だよ。さっきも言ったけどキャッチボールは1人では出来ないんだ。一緒に楽しもうよ」
そう言ってビニールボールを優しく取りやすく投げて渡す。
丁度その子の手の中に入るように回転をかけて……。
まぁ、練習の成果でこんな事も簡単に出来るようになってしまったよ。
流石はメジャーリーガーだね。
「はわわ。」
「お、ナイスキャッチ」
「にゃはは……」
「はい、今度はこっちに投げてみよう。大丈夫、ちゃんと取るからさ」
そう言うとおずおずと投げ返す。
まぁ、とんでもない方向に飛ぶんだけど、難なくキャッチする。
「うん、上手い上手い。ちゃんと前に飛んでるよ。それじゃ続けるよ〜」
「うん!」
陽がくれるまで一緒にキャッチボールを続けた。
ボールを受け取る毎に、女の子の不安な気持ちや寂しい気持ちが伝わってくる気がする。
これがキャッチボールで分かり合うって事かな?
「もう時間だね」
「うん……」
「そんな顔しないでよ。また明日も一緒にキャッチボールをしようよ」
「うん!」
「それじゃ、また明日ね」
「うん! うん!」
なんだか嬉しそうに帰って行く女の子の後姿を眺めつつ……あ、名前聞き忘れた……。
なのはとか言っていたけどあれが名前かな?
また明日も会うし、その時には話とかすればイイか。
とりあえず喜んで貰えたから今日は良し!