第6話 キャッチボール
前回で女の子と公園でキャッチボールを始めたんだけど、何だかまた新たな異常が発覚した様な……。
き、きっと気のせいだよね。
キャッチボールで相手の気持ちが分かるだなんてさ。
そんな事を考えつつ今日も公園に来たよ。
名前の知らない女の子はどこかなー?
「こ、こんにちはなの……」
「お、こんにちは」
公園に入ると嬉しそうに走り寄ってくるあの子がいた。
俺より先に来て俺を待っていたんだろうな。
なんだか小動物っぽいね。
おっと、今日はちゃんと名前を聞かないといけなかったね。
「昨日は名前を名乗らなかったね。俺の名前は一之瀬太郎。タローって呼んでくれ」
「タロー君? 私の名前は高町なのは。なのはって呼んでください」
「なのはちゃんよろしくな」
今日は俺が前まで使っていたグローブも持ってきたから、それをなのはちゃんに貸して、ビニールボールではなく軟球でキャッチボールをする。
俺の投げるボールはなのはちゃんがそこにグローブを出すであろう場所に投げ、上手くグローブに入る様にし、なのはちゃんの投げる球は俺がどこでもキャッチすると言う、若干変則的なキャッチボールをしている。
なのはちゃんが上手くなって行く様に、徐々に投げる球を変えて普通のキャッチボールにして行こう。
ん、なのはちゃんって左利きだな。
俺の貸したグローブは右利き用だから、当然やりにくいだろうに……。
やりにくくても、そんな事を言ったら辞めようって言われるかもしれないから言い出せないのか。
……?
あれ、なんでなのはちゃんの考えてる事が分かるんだ?
いや、これが考えている事だか分からないな。
ちょっと聞いてみるか。
「なのはちゃんは左利きで、そのグローブだとやりにくそうだけど、なんでその事を俺に言って来ないんだ?」
「えっ……」
なのはちゃんは図星を突かれて戸惑った顔をしている。
それでも、おずおずと返事をしてくるんだが…。
「少しやりにくくても、そんな事をタロー君に言ったら辞めようって言われるかも……。キャッチボールがすごい楽しいから……。辞めたくないから言い出せなかったの…」
………。
なんだ今回の能力はー!!
キャッチボールで分かり合えるのか?
メジャーリーガーの能力ってこんなのもあるの!?
ま、まだ慌てる時間じゃない……。
これは、こーゆー物なんだと思おう。
うん、それが良い。
「タロー君…?」
俺が思考の海に沈んでいると、不安気になのはちゃんが名前を呼んで来た。
俺が怒ったとでも思ったのかな?
「ごめんごめん。ちょっとボーッとしてた。ちなみに怒ってる訳でもないよ」
そう言うとなのはちゃんは明らかにホッとした表情になる。
不安にさせちゃったかな。
「グローブは右利き用しか持ってないんだ。なのはちゃんがやりにくくて大変なら、グローブなしで昨日のビニールボールでやるよ」
「大丈夫なの。少しやりにくいけど、元々運動音痴だからどっちでも一緒なの。折角タロー君がグローブを持って来てくれたんだもん。これで頑張りたいの」
「ん、分かった。なのはちゃんがやりやすい様に上手く投げるから、一緒に楽しもうね」
その後は2人で仲良く楽しくキャッチボールを続けたよ。
終わって帰る時にまたなのはちゃんが泣きそうになったけど、また明日ねと言ってお互い笑顔で別れたよ。