第6話 蒐集
そして週末……本当に全員が我が家に集まった。
ちなみに全員の名前を言うと、僕、アリサ、すずか、なのは、ユーノ、フェイト、アルフ、プレシアさん、リニス、イレイン、リンディさん、クロノ、はやて、リインフォース、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラとなる。
総勢18人もいるので、僕らにリビングを丸々貸して、両親はデートに出かけて行った。
そして全員が自己紹介を終える。
クロノとリンディさんが管理局と言ったところでヴォルケンリッターの全員が反応したり、闇の書のことをリインフォースが言うとクロノとリンディさんが反応したりと、ちょっとした事はあったけど、特に問題はなかった。
そこからプレシアさんが代表して話を始める。
「まず、夜天の書オリジナルプログラムは作成依頼済みで、現在50%まで完成しているそうよ。連絡の時に今の闇の書のデータを送りつけておいたから、2週間後には確実に完成させてくるわ」
誰に依頼したのか聞きたそうな人もいたが、特に質問せずに黙って聞いている。
「そしてそのプログラムを書き換えるためには、防御プログラムをどうにかしないといけないわ。本当は完成人格の具現化のため蒐集して、666頁を集めなければいけなかったんだけど……」
全員の視線が僕に向く。
え、なにか悪いことしたのかな?
「タローだから気にしては駄目ね。同じ要領で防御プログラムを出せるとは限らないけど、それに人格はあるのかしら?」
「実は一度も具現化しては居ないが、防御人格も存在する。しかし、アレは蒐集して666頁を集めねば、存在もせず形にならぬほど不安定なもの……」
プレシアさんの質問に答えるリインフォース。
「さすがに形になってないものはタローでも取り出せないわ。やはり蒐集は必要のようね」
「蒐集は人に迷惑をかける行為やないの?」
プレシアさんの言葉にはやてが声を上げる。
しかし、プレシアさんはリンディさんへ視線を移す。
「あら、はやてさん。相手が同意して、強制的ではない蒐集なら問題はないわよ」
「で、でも、誰が同意してくれるんや?」
「はやてさん、周りを見てご覧なさい。ここには、これだけの魔導師が揃っているのよ」
「それに僕の友人にヴェロッサと言う人物がいるんだが、彼は古代ベルカ式の使い手でね。そっちにも協力依頼は出してある。ちょっと聖王教会まで行かないといけないけどね」
不安げなはやての言葉にリンディさんは簡単に答える。
そしてクロノも他に協力者がいることを教えてくれる。
「これで問題はないわね。蒐集って痛いのかしら?」
「いえ、相手の同意と同調があれば、強制的に蒐集よりも効率的で、痛みも少ないです」
「闇の書に改変されてからは、倒した相手から奪ったりするので、非効率でリンカーコアにも負担をかけ、激痛に見舞われているんです」
プレシアさんの質問にシグナムとシャマルが答える。
「それでも多少は痛みがあるし、魔法行使もしばらく控えなきゃならねぇ。それでもあんた達は蒐集させてくれるのかよ!」
「ヴィータ! そんな喧嘩腰に言ったらあかんよ」
「でも、はやて……。今まであたしらに協力的だった主は居ねーし、周りも協力してくれるの初めてだから怖くってよ……」
ヴィータは、はやてに叱られつつも不安げに言う。
「はやて。私達は今まで強制的に蒐集していました。それにより敵も多く作っている。きっと失われた命もあり、その家族は私達を恨んでいるでしょう。ですから、ヴィータの言うことも……」
「ああ、闇の書に恨みはあるさ」
ザフィーラの言葉をクロノが遮る。
みんながクロノを見つめる。
「そうね、私は夫を失ってるわ……」
リンディさんは悲しそうにそう言う。
その言葉ではやてとヴォルケンリッターは顔色が悪くなっていく。
「貴方達は……」
「そうね。私の夫、クライドは11年前の闇の書事件の時、犠牲になった1人よ」
その言葉に知らなかった人達は驚く。
はやては泣きだしてしまう。
「でも、アレはあくまで闇の書の事よ。夜天の魔導書のことは知らないわ」
「そうさ。これ以上の悲劇を出さないために夜天の魔導書に戻し、闇の書を倒す。それが犠牲者に対する供養になるさ」
リンディさんとクロノは優しくみんなに語りかける。
「でも、私達は……」
「それで納得行かないなら、被害者の家族全員に謝りに行け! それとも自分が消滅するという逃げと自己満足で、残されたはやてに心の傷を作り、一生悲しませておきたいなら話は別だがな」
「な!?」
リインフォースの言葉をクロノが強い口調で遮る。
被害者の家族全員って……誰が把握してるんだよ。
「謝る覚悟があるなら僕も付き合おう。けして楽ではないし、簡単に終わるものでもないけどな」
「それなら、調べるのは僕の仕事だね。これでも無限書庫で夜天の魔導書の情報を調べ出せたんだよ。だからそれぐらいなら手伝えるさ」
クロノとユーノが言葉を付け足す。
相変わらず優しい2人だね。
その言葉にはやては涙を拭い、ヴォルケンリッターの顔を見渡す。
「もう私は主やないと言った。だから家族としてみんなに提案や。一緒に全員に謝ってまわろ。もう家族を失うのは嫌や……」
「「「「「はやて(ちゃん)……」」」」」
はやての言葉にヴォルケンリッターの瞳に強い意志が宿る。
「クロノ執務官、全てを終わらせた後に、全員に謝りに行かせていただきたい」
「まずはあんたら2人からだけどな」
「1人1人、しっかりと謝りに行きます」
「恨まれ、許して貰えない人も居るだろう。だが、私達ははやてと共に生きたい」
「夜天の魔導書の管制人格として……。そして防御人格も叩き起こし、一緒に謝らせて貰おう」
その言葉にみんなが頷く。
そして、プレシアさんとリンディさんによる、我が家を丸々覆うほどの結界が張られる。
大気中の魔力素濃度を上げるものと、身体に循環する魔力素を多くする結界らしい。
正直魔導師でない僕らには良く分からない効果だからね。
そして蒐集が始まる。
シャマルがリンカーコアを安定させ、リインフォースが同期する。
そしてゆっくり時間をかけて、リンカーコアから魔力を抜いていく……。
ユーノとリニスも回復結界を張り、痛みを軽減させて行く。
それらにより痛みは殆どないようで、違和感ぐらいで済んでいるようだ。
僕を含む一般人以外の蒐集行為が終わった頃には、夕飯の時間になってしまった。
まぁ、暇だったイレインとアリサ、すずかによって夕飯を作ってました。
勿論大人数で食べる料理といえば……カレーだよね。
蒐集行為で疲れきったみんなにカレーで回復だ!
「この料理、ギガうめぇな。なんて名前だ?」
「それはカレーっていうんだよ。おかわりも沢山あるから、いっぱい食べてね」
「おう! ありがとな、タロー」
ヴィータはそう言って一気に食べてお皿を僕に渡す。
おかわりを乗せて渡してあげると、喜んで食べている。
うん、良い事だ。
「タローのカレーは久し振りだね〜」
「そうだねアルフ。ミッドにも広まると良いのに……」
「とりあえず、アースラの料理長にお願いしたら?」
そんな会話をしつつ、カレーと食べ続けるアルフとフェイト。
さすがに香辛料がなきゃ作れないんじゃないかな〜?
「それにしても、1日で半分以上埋まるというのは初めてだな」
「そうね。これならタロー君が闇の書からリインフォースを出さなくても、直ぐに会話が出来てそうよね」
「シャマル、まずタローが闇の書からリインフォースを出した経緯について疑問を持て」
シグナムとシャマルの会話に、ボソッとザフィーラがツッコむ。
結局スルーされているので可哀想だな……。
「タローってカレーを作れるのかー。美味しいから僕も作り方を教わろうかな」
「ユーノ君、その時は……」
「当然、なのはに食べてもらうために教わるんじゃないか」
「もう……。その前に私が作ってあげるね」
「じゃあ、なのはに教わろうかな?」
……あっちは放置しておこう。
「タローと一緒に料理作るのは楽しかったわ。
「ぐぬぬぬぬ。今度は私が一緒に作ったる!」
「2人とも……私が一緒に料理したことをスルーしないで……」
相変わらず見えない火花を散らしてるけど……別に料理ぐらいで……。
「「料理ぐらいやない!」」
僕、言葉を口に出してないよね……。
まぁ、みんなで楽しいカレーパーティーになったから良いか。
さ、僕もおかわりしよーっと。