第12話 プレイボール
防御人格……闇の書の闇との野球対決が始まる。
チーム:闇の書(先攻)
1番 紅の鉄騎(三塁手)
シュワルベフリーゲン
ギガントシュラーク
2番 烈火の将(投手)
炎熱変換
紫電一閃
3番 防御人格(一塁手)
開示魔法なし
4番 蒼き狼(捕手)
鋼の軛……分類は拘束魔法だが直接の拘束ではなく、攻撃としても使えるため使用可。
5番 風の癒し手(外野手)
渦巻く嵐
旅の鏡
静かなる癒し
チーム:夜天の書(後攻)
1番 タロー(外野手)
開示魔法なし
2番 クロノ(投手)
スティンガースナイプ
ブレイズカノン
3番 フェイト(三塁手)
プラズマランサー
4番 アルフ(捕手)
フォトンランサー
バリアブレイク・ストライク
サンダーフォール
5番 リインフォース(一塁手)
ブラッディダガー
「プレイボール!」
シャッハさんの声で試合が開始される。
ピッチャーはクロノで、バッターは紅の鉄騎だ。
クロノは狭いストライクゾーンに苦労しつつインコースを攻めていく。
紅の鉄騎は武器がハンマーなだけにインコースは弱いようで、直ぐに追い込まれる。
「シュワルベフリーゲン!」
クロノの投げた球に合わせて鉄球を打ち出す。
しかしそれはクロノも予想済みのようだ。
「スティンガースナイプ!」
投げた球の周りを魔力弾で守りつつストライクを取る。
これでワンアウト。
続いて烈火の将だが……既にバットが炎に燃えている。
「最初からか……行くぞアルフ!」
「まかせな! どんな球でも取ってみせるよ」
クロノはインコース高めに外す。
烈火の将は迷わず、それすら振ってきてファールになる。
しかし、ファールといってもホームランに近い……。
「攻撃力が高いようだけど……所詮その程度!」
続いてインコースを攻め、またもやファールでカウントを稼ぐ。
3球目に投げるのはアウトコースすれすれのストレート。
「ブレイズカノン!」
烈火の将がバットを合わせるよりも早く、投げた球が砲撃で加速され空振りの三振。
三番手は防御人格。
クロノは初球はインコースを攻め、見逃してワンストライク。
二球目もインコースを強気で攻めるがバットに当てられる。
「タロー!」
「はいはいっと」
落下地点に僕が待っていて、背面キャッチでアウト。
スリーアウトでチェンジして、1番打者は僕だ。
烈火の将は炎熱変換された球を投げてくるが、ゼストさんのたまに比べたらタダの速いストレートだ。
初球打ちで僕は1塁に進む。
続くクロノもストレートに合わせ、ブレイズカノンで加速したバットで打ち返す。
しかし、打球は風の癒し手の旅の鏡によりキャッチされる。
「くそ! あれじゃ、攻撃性の打球でないと全部取られるぞ」
「大丈夫。クロノは魔力を回復していて」
次の打者のフェイトにクロノは慰められている。
烈火の将の豪速球をバントで合わせる。
「ソニックフォーム!」
フェイトは1塁へ走り出すと同時にバリアジャケットを換装する。
装甲を薄くし、邪魔なパーツを外して高速移動。
その隙に僕は3塁を回りホームへ。
まずは1点っと。
僕はアルフとハイタッチしクロノ達の元へ、アルフは打席へ入る。
「ここでもう1点貰うよ!」
アルフの声に烈火の将が投球フォームに入る。
(フェイト)
(うん)
念話でサイン……意外と便利だな。
フェイトが盗塁をし、一気に3塁へ向かう。
「紫電……一閃」
投げた球ごとアルフを切り裂く。
アルフは慌てて防御魔法を発動させるが、ガードしきれず飛ばされる!
「アルフ!?」
フェイトの動きが一瞬遅れる。
その隙に蒼き狼は球を3塁へ投げ、紅の鉄騎がタッチアウトを狙う。
「ギガントシュラーク!」
巨大化したグローブでフェイトを弾き飛ばそうとするが、フェイトも慌てて回避行動に移る。
しかし時既に遅く、直撃は避けたものの回避しきれずふっ飛ばされてしまった。
「フェイトちゃん!?」
はやての叫び声が響く。
ふっ飛ばされた先でフェイトは立ち上がる。
「だ、大丈夫だよ……」
そうは言ってもダメージが大きいようだ。
やはりソニックフォームで装甲を薄くしたのがいけなかったのか?
「あたしも平気だよ……」
土煙の中、アルフが現れるがダメージが大きくヨロめいている。
それでも必死に打席に立つが、バットを振る力もなく見逃しの三振となる。
ここでチェンジとなったが、ウチは負傷者2名か……。
アルフのダメージが大きいため、守備交代でリインフォースが捕手へ、アルフが一塁手となる。
次の打者は蒼き狼、クロノは初球内角低めを選択する。
しかし、カットされファールとなる。
続いてカーブ、そしてストレートと攻めるが全てカットされてしまう。
蒼き狼に対して球数が増えていく。
普通の野球なら初回で球数が増えてもすぐには問題ないが、これは次元野球だ。
全員が魔力で身体能力を上げているし、緊張感も戦闘中と同じ……いや、それ以上のものとなる。
要するに倒さねばいけない相手に自分の攻撃が全く通らない……そんな状態を延々と続けさせられている訳だ。
さすがのクロノも決め球としてブレイズカノンで加速したストレートを投げるが、それを待っていたように蒼き狼は合わせてくる。
「フェイト!」
3塁線を強襲する打球にフェイトは飛びついてグローブに収めるが、威力があり弾いてしまう。
それによってノーアウトでランナーが出てしまった。
「ごめんねクロノ」
「いや、僕も迂闊な球を投げたのがいけない。次はしっかり集中していくよ」
次の打者は風の癒し手。
クロノは先程の事が頭にチラつき、慎重に投げていく。
三振としたが、無駄球を投げてしまった。
そして打順は一周し、紅の鉄騎となる。
クロノは慎重に相手を見て球を投げる。
「アイゼンゲホイル!」
突如、閃光と音が広がる。
スタン効果を目的とした空間攻撃!?
相手を慎重に見ていたクロノはもろに食らっている。
内野手のアルフとフェイトもだ。
それによりしっかりヒットを打ち、フルベースとされてしまった。
「く、登録魔法でなかったから警戒が甘かったか」
悔しそうにリインフォースが言う。
一応魔法などは何を使えるか知っているんだもんな。
でも、これで紅の鉄騎は隠し技はなくなった。
次の打者は烈火の将。
クロノはまだ回復しきれていないので、力で押し切ろうとブレイズカノンで加速した球を使う。
「紫電一閃!」
しかしそれごと切り裂かれるクロノ。
慌てて僕がフォローに入るが、3塁ランナーはホームインし同点とされてしまった。
フルベースで防御人格に回ってしまった。
クロノは負傷したものの、スタンから回復したのでリインフォースと守備交代し捕手となる。
「さて、お前を撃ち倒せば残りは奴だけだ」
「防御人格……お前に出来るかな?」
「やれやれ、お前が蒐集して使える魔法は俺も全て使えるのだぞ。しかも闇の書を通し主の魔力を使ってな」
防御人格ははやてを見てニヤリと笑う。
それを見て悔しそうにするリインフォース。
「さあ、早く投げてこい」
「お前はここで潰させてもらう!!」
リインフォースは投げると同時に魔法行使をする。
「ブラッディダガー!」
血の色をした鋼の短剣が飛んでいく。
球に接触し変化としながらも、防御人格へ襲いかかる。
「ふん、その程度か」
バットを構えている防御人格の周りにフォトンスフィアが現れる。
あれってまさか……。
フェイトとアルフは気が付いた様で、リインフォースの前に立ち防御魔法を展開する。
「砕け散れ! フォトンランサー・ジェノサイドシフト!!」
広域拡散型のフォトンランサーが飛び散る。
僕はそれを回避しつつ前へ進むが、フェイトとアルフ、リインフォースは防御魔法ごと弾き飛ばされた。
助けに行きたいがまずは捕球する!
紅の鉄騎は既にホームインしているが、烈火の将は3塁ベースを回ってホームへ向かっている所だ。
「レーザービーム」
僕の投げた送球が滑りこむ烈火の将よりも早くクロノのグローブに収まる。
1点は失ったものの、タッチアウトでツーアウト目だ。
これには防御人格も驚いている。
「あれを避けつつ捕球するとはな……。しかし、そのメンバーで戦い切れるのか?」
僕以外全員が負傷している。
ただでさえ防御力の低いフェイトを守るために、アルフはフェイトの前に出てダメージを多く負っていて、もう動けなそうだ。
「それでもお前達だって魔力消費が激しいだろう」
クロノの言葉に防御人格は笑い出した。
「な、何がおかしい!」
「いやはや、相手の魔法は勉強しておけよ。いや、ベルカ式の魔法を勉強しろというべきか……」
そう言って防御人格は風の癒し手を見る。
風の癒し手はうなずき、魔法を使う。
「静かなる癒し」
それにより紅の鉄騎と烈火の将の負傷治療、体力魔力回復、防護服修復が行われる。
唖然とするみんな。
これでは相手がほぼ無限に魔法行使が出来るようなものだからね。
こっちはまた負傷の少ないリインフォースが捕手へ行き、クロノが投手となる。
「クロノ、平気なのかい?」
「いや、僕の魔力は残り少ない。だからこそここで全力を出させてもらうよ」
蒼き狼に対しクロノは投球を開始する。
しかし、前回と同じくカットしファールとして行く。
今回も球数を増やされたらクロノは……。
「カットしてくれてありがたい。これで追い込んだ訳だ……」
クロノの魔法により100以上のスティンガーブレイドが現れる。
「僕の魔力をすべて持って行け! スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!」
「鋼の軛!!」
地面から鋼の拘束条が現れ、壁としてスティンガーブレイドを防ぐ。
しかし、大量の攻撃により壁は破壊され蒼き狼に襲いかかる。
壁とした分は破壊されたが、クロノに迫る鋼の拘束条は破壊しきれない。
爆煙が晴れた先には肩膝をつく蒼き狼と、鋼の軛に刺され負傷したクロノがいた……。
「スリーアウト……チェンジだ!」
そう言って倒れるクロノ。
僕は負傷者を担ぎ、ファウルラインの外へ出て行く。