ついにここまでやって来ました。
蛇足気味と言われてもしかたがないけど、今回も文字数が多いよー。
そして最後は完全に趣味。
どうやって切れば良いのか訳が分からなくなりました。
最後までダメダメな作者ですいません。
第15話 エピローグ
変則的な三角ベースとはいえ初の次元野球は僕達、夜天の書の勝利となった。
そして闇の書は見事に夜天の魔導書に戻り、呪いは解けたように見える。
しかし、守護騎士システムは夜天の魔導書より分離、管制プログラムと防御プログラムも離断。
これにより旅をする機能と復元機能がなくなってしまった。
ロストロギアとされていたのに、融合するためのシステムが分離してしまい、ただの収集蓄積型の巨大ストレージデバイスになったようだ。
あれ? ある意味大失敗なんじゃ……。
その後、カリムさんの意見により聖王教会の病院で八神家全員の検査と、次元野球に参加した僕達全員の精密検査が行われた。
それによりはやてに蒐集行使と言うレアスキルがあることが分かった。
これは今まで夜天の魔導書と闇の書により蒐集修得したミッド・ベルカ両式の魔法を、フルパフォーマンスで使用できると言うもの。
まさに夜天の主に相応しきレアスキルだ。
そしてリイン、クロイツ、シグナム、シャマル、ヴィータだが……人体構造は人間と同じようなものになってしまっているとのこと。
当然年も取るので寿命が存在するし、致命的な傷を負っても今までのように夜天の魔導書からによる魔力供給で回復することはなくなってしまった。
これにより戸惑っている本人たち5人と、ヴィータと一緒に学校に行けるんじゃないかと喜ぶはやて。
このサイズからヴィータは成長するんだろうか……?
「おい、タロー。おめー、なんだかあたしの事バカにしてないか?」
思い切りヴィータにジト目で見られている。
なんで僕の心は読まれるんだろうね。
まぁ、良いや。
そして一番重要な今回の罪に関してなんだけど……。
今期は蒐集はあくまで話し合いにより、相手の同意を得て実施したので罪にならない。
クロイツが起こした騒ぎだが、あくまで次元野球の死合だから負傷者が出るのは普通の事。
非殺傷の魔力ダメージなので、負傷という負傷ではないみたいなんだけどさ。
今回の唯一の無断蒐集されたのはゼストさんだ。
それについてどうしようとみんなで考えていると、突然大きな音を立てて僕達が休んでいる部屋の扉が開く。
そして厳つい顔をした大男と、メガネをしたキャリアウーマン風の若い女性が入ってくる。
「貴様ら動くな! 儂は時空管理局、首都防衛隊代表、レジアス・ゲイツだ!」
首都防衛代表……つまりゼストさんの上司?
あと、少将って偉い階級の人だよね。
「れ、レジアス少将……なぜここに?」
驚くクロノの言葉をレジアスさんは鼻で笑う。
「ふん、知れたこと。我が部隊の隊長が負傷したと知れば、原因を突き止める。そんな当たり前の事も分からんのか執務官の坊主よ」
「なっ……僕はもう14歳だ!」
「14ならまだ尻の青い坊主だろうが。まぁ、親の敵でも取れば一人前と認めてやっても良いが……」
そう言ってレジアスさんは、はやての手の中にある夜天の魔導書へ視線を移す。
はやては強面の視線が来たのでビクッと体が震えるが、それに気が付き守護騎士6名がはやての周りに立つ。
「ふん、どうやら儂の勘違いか? 闇の書とか言う古本にウチのゼストが負傷させられたと聞いたが、そんな古本はここに無いようだな」
「A級ロストロギアを古本って……」
ユーノが思わず小声でつぶやくと、レジアスさんが軽く睨みつける。
近くにいたなのはは、思わずユーノの後ろに隠れてしまった。
それを見て笑うと、奥のベッドに座っているゼストに視線を合わす。
「レジアス……」
「そう言えばオーリスよ。ゼストの有給消化率はどうなっておる」
ゼストさんの呼びかけを無視し、オーリスさんに話を振るレジアスさん。
「は、今年に入ってから有給の消化は0となっています。なお、去年の消化率は首都防衛隊で閣下に続いての少なさです」
「そうか……。ゼストよ、儂からの命令だ。有給を連続し10日間取得せよ」
そしてその答えを聞き、満足そうに頷くとゼストさんを無視してさらに話を進めている。
「なっ!……しかし」
「しかしもカカシもない。疲労で倒れて首都防衛に穴が開き、困るのは市民だ。だから好きな
ゼストさんが蒐集されていることに気が付いている。
しかし、あえて口には出さない。
そして回復するまで休めと……。
「儂はゼストが休む分忙しくなるので、これにて失礼させてもらう。休みが明けるまで本部に顔を出すなよ」
「それでは失礼します」
レジアスさんがそう言い扉から出て行くと、オーリスさんは皆に頭を下げて後を追う。
残された部屋にいる僕達は、嵐みたいな人物だと心の中で思っている……。
「相変わらず不器用な男だ」
ゼストさんの笑いながら言うその言葉がとても印象的だった……。
そしてここからが本題になるのかな?
リンディさんにより時空管理局提督であるギル・グレアムさんと、その使い魔のリーゼアリアとリーゼロッテが聖王教会に集まりました。
リンディさんが闇の書が夜天の魔導書に戻ったことをグレアムさんに説明する。
最初は半信半疑だったが、夜天の魔導書を直接見せ、プレシアさんによるデータ解析などを見せることにより納得したようだ。
「提督……僕らは提督の計画を知っています。はやての家をリーゼ姉妹に監視させていたことや、闇の書を主ごと封印しようと、氷結の機能のみに特化したデバイスを作っていることも……」
「……そうか」
そんなデバイス作っているのなんていつ調べたんだろう?
最近エイミィさんを見かけなかったけど……クロノはクロノで動いていたんだな。
「僕も母さんも闇の書には恨みがある。だけど、それはあくまで11年前の闇の書だ。今はそんなものはどこにもないし、犯罪者もいない……」
クロノはそう言ってはやての手元にある夜天の魔導書を見る。
「もう、悲しみの連鎖は終わらせましょう。提督も闇の書に囚われ続けず、開放されて良いんです」
「「お父様……」」
クロノの言葉に俯くグレアムさん。
そしてそれを心配そうに左右から猫姉妹が支える。
「私は……もう、許されて良いのか?」
「許すも許さないもないですよ。父さんは立派に逝きました。それは誰のせいでもありません」
「そうですよ提督。ですから、クライドの死を理由に犯罪行為をしないでください!」
クロノとリンディさんの言葉が届いたのか、グレアムさんは涙を見せる。
そんなグレアムさんにはやてが前に出て話しかける。
「結局未遂で済んだんやから気にせんでええよ。私は私の王子様に救ってもらったんや」
僕の方を見てウインクするはやて。
グレアムさんの視線も僕の方へ向く。
「タローの非常識はクロノくんから聞いたらええ。だけどその前にギル・グレアムさん、リンディ・ハラオウンさん、クロノ・ハラオウンさん。3人に対して謝らせてください」
その3人の表情が驚きに変わる。
そしてはやて左右3人づつ、6名が跪く。
「11年前、闇の書の暴走に巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした」
はやてが頭を下げると、守護騎士6名も頭を深く下げる。
「今はもう闇の書は存在しませんし、先代の主も居ません。ですが、闇の書の最後の主となった私、八神はやてが全てを代表して謝罪させて頂きたいのです」
「はやて君……」
「これは所詮私の自己満足なのかも知れません。転生する毎の記憶をリセットさせられる守護騎士、自らの意志ではなく、改変されたデータにより狂わされた管制人格と防御人格……」
はやては今やデータではなくなった守護騎士を見回す。
「失ったものの悲しみは計り知れません。そして、失ったものは二度と戻りません。それを私達が償って行けるものでもありません……」
「はやてさん……」
「すべての関係者に謝罪が済んだら、最後の夜天の主として、この力を役立てて行きたいんです!」
謝罪を受けている3人だけでなく、部屋にいる他の人達も口を開くことが出来ない。
沈黙が続くが、クロノが口を開く。
「管理局員では救いきれないものもある。だけど、それでも救えるものがあるんだ。だから僕らと一緒に救って行こう」
「私達、聖王教会も協力を惜しまないわ。だから一緒に頑張りましょ」
クロノの言葉にカリムさんも続く。
「私も協力させてもらおう。贖罪などではなく、はやて君のおじさんとしてね」
そう言ってグレアムさんは笑う。
ほんとうに嬉しそうに笑うグレアムさんを見て、はやても笑い出す。
そして皆も笑い、協力を約束してくれる……。
そんな助け合いが嬉しいね。
夜にはみんなの検査も全て結果が出て、地球に帰ることとなった。
まだフェイトとアルフは研修期間が終わっていないので帰れないし、リンディさんとクロノは事件の事後処理があるので来れなかったが……。
八神家に到着すると今後のことをグレアムさんが話し始める。
「まず、キミ達6人の処遇についてなんだが……」
ザフィーラははやての守護獣だからいいとして、他の人達は生活していくためには戸籍取得が必要となる。
つまり嘱託魔導師として登録して活動するか、管理局の職員となって仕事をするかしなければならない。
勿論全員というわけではない。
フェイトの時はフェイト1人でプレシアさんのも手に入れているわけだし……。
ただ、それは元となる戸籍があるからであって、今回はみんなの戸籍そのものがどこにも存在しない。
「そこで、キミ達5名は次元漂流者として発見されたことにしようと思う」
「次元漂流者?」
「そうだ。それなら上手くやれば問題ない」
そう言う訳ではやては嘱託魔導師として登録することとなり、併せてなのはも登録することとなった。
今回の闇の書事件解決の功労として、多少のテストの免除や研修期間の短縮などがあるそうだ。
シグナム、シャマル、ヴィータの3名は管理局員として入職することとなった。
家の生活費も稼がないと……なんてシャマルが言っていたよ。
なのはが嘱託魔導師になるので、ユーノは無限書庫の司書を引き受けた。
いろいろな裏取引があった結果、プレシアさんとリニス、アルフも併せて無限書庫の司書として働くこととなった。
どんな裏取引なのか僕は知りません。
ただ、レジアスさんが大喜びしていたようです。
そして、ついに僕の荷物入れデバイスも完成した!
これで荷物が少なくなるから嬉しいな。
なんでもベルカ式カートリッジシステムを利用したものらしくて、意外と高性能っぽいよ。
そして月曜日に学校へ登校する。
みんな忙しいので、いつものメンバーは僕とアリサ、すずかしかいない。
昼休みに2日間にあったことを2人に話す。
「はぁ……相変わらず訳の分からない事をやってきたのね……」
アリサは深い溜息を付き、すずかはニコニコ笑っている。
はて、何が分けわからないのかな?
「だいたい次元野球って何よ!」
「えっとね……」
簡単に次元野球の説明をすると、さすがにすずかも呆れている。
「タロー君……良く生きてたね」
「??」
「すずか、タローにそんな事言っても意味ないわよ」
「アリサちゃん……そうだよね」
そして二人は顔を合わせて溜め息をつく。
「で、管理外世界だとそれに登録できないから、いずれはミッドに戸籍を用意しないと駄目かな?」
「タロー君、引っ越しちゃうの?」
「んー、どうなんだろ? 管理外世界にもそんな野球チームがあればいいんだけどさ。でも、最低でも氷村遊とかじゃないと、生き延びれないんじゃない?」
「うわぁ……」
僕の言葉を聞いてすずかは呆れている。
それに対してアリサは考え事をしている。
「タロー……グレアムさんって人は、まだはやての家にいるのかしら?」
「ん? たしかしばらく有給を使ってるからいるとか言ってたな」
「そ、ありがと」
そう言ってアリサは携帯電話のメールをポチポチと打ち始めた。
凄い速さですごい量を打ってる気がするけど、僕には良くわからないや。
すずかは横目でそれを見るとアリサと僕の顔を見比べニコニコしている。
一体何なんだろうね?
そして放課後、すずかは用事があって学校に残るというので、アリサと2人で帰る。
「鮫島……うん、そう……うん、ありがとね」
何だか電話してるけど……?
「タロー、鮫島が迎えに来れなくなったみたいだから、一緒に歩いて帰りましょ」
「ん? 別にイイよ。それじゃ、普通に帰らずに散歩して行こうか」
「うん!」
アリサは嬉しそうに頷くと、僕と手を繋ぎ先に歩き出す。
「さー、行くわよー」
「はいはい」
一緒に散歩して帰るといっても、小学生の行動範囲は狭い。
特に徒歩じゃ余計だよね。
そう言う訳で手近で良い場所な海鳴臨海公園へやって来ました。
「アリサ、結構なペースで僕を引っ張っていたけど大丈夫?」
「はぁはぁ……だ、大丈夫よ」
思い切り息切れしてるし……。
ずっと引っ張られていたわけじゃないけど、真横を歩くペースにするとアリサが早足になるので、少しゆっくり目に歩いてたんだよね。
「ちょっとベンチに座っててよ。今飲み物買ってくるから」
「はぁはぁ……う、うん」
そんな訳で自販機に到着。
500mlのペットボトルを1本買ってベンチにすぐ戻る。
「お待たせ」
「お待たせって、30秒ぐらいしか待ってないわよ」
「そう? まぁ、それより一緒に来れを飲も」
そう言ってペットボトルの飲み物を差し出す。
「え……っと、これ1本?」
「そうだよ。僕はそんなに飲まないから少し貰えればいいなーって。あ、足りないなら追加で買ってくるよ」
「ううん、良いの。これを2人で飲みたいな」
「そ? ならいいけどさ」
アリサは真っ赤になりながら僕を引き止める。
僕が先に一口飲んで、ペットボトルをアリサに渡す。
「はい、どーぞ。
「あ、ありがと……」
そう言って真っ赤になってペットボトルを見つめるアリサ。
味が気に入らないのかな?
「……タローは気にしてない、タローは気にしてない(ぶつぶつ)」
「どうしたの?」
「ううん、何でもないの。い、いただきます」
そう言ってアリサは一気に飲む。
あーあ、そんな飲み方してると……。
「ケホケホ……」
気管に入っちゃったみたいだね。
しかも服まで少し濡れてるし……。
「もう、大丈夫かい?」
とりあえずハンカチを出して、濡れてしまったアリサの顔や服を拭いてあげる。
ほんと、仕方がないなー。
「え、あ、その……だ、大丈夫よ」
「ほらほら、そんな事言っても濡れちゃってるよ。大人しく僕に拭かれなさい」
「……はい」
真っ赤になりながら僕に拭かれ終わるまで大人しくしていた。
「よし、もう大丈夫だね」
「う、うん。あ、ありがと……」
「いえいえ。今度はゆっくり飲みなよ」
僕の言葉にうなずきゆっくりと飲み始める。
息切れしていたぐらいだから、喉が渇いていたんだろうなー。
その後ゆっくりと雑談をした。
普通に家のこととか、野球のこととか。
アリサのバイオリンが上手くなったので今度聞かせてくれるって約束もしたよ。
結構いい時間になったので、また歩いてアリサの家まで送る。
今度はアリサもゆっくり歩いているから大丈夫だよね。
「タロー」
「ん?」
「あのね……」
「うん」
「今度……向こうとかに行く時は、あたしも連れて行きなさいよ……」
唐突にそんな事をアリサが言う。
少し弱気な言葉だね。
「どうしたの?」
「……不安なの。いつも1人で引っ掻き回して、色々やらかして……。でも、あたしはそれの話を聞くだけ。毎回あたしは部外者なの?」
「そんな事はないと思うけど……」
「なのは、フェイト、はやては魔導師、すずかも夜の一族で身体能力は凄く高い。だから一緒に危険な場所に行っても平気なんだと思う。でも、何も無いあたしは? 何も出来ないあたしは?」
そう言われても、僕からすずかを連れて行って事ないんだけど……。
まぁ、夜の一族の事件で巻き込まれたか。
「連れて行ってと言うけど、結局あたしは足手まといになると思う。でも、一緒の場所に立ちたいの」
僕のことを不安気に見ている。
さすがに、そんな顔をされたら断れないよ。
「分かったよ。今度何かあったら誘うよ」
「ほんと!?」
「うん。僕が嘘ついたことある?」
「んー、嘘みたいなことを現実にしたことはあるけど、嘘はないはずよ」
何だか変な納得のされようだな。
まぁ、いいか。
「その代わり、何も無いとか、出来ないとか言わないで。アリサが応援してくれればそれだけで心強いんだよ」
「…………ばか」
アリサは真っ赤になって照れている。
応援って凄い力になるんだよね。
「今度から直接いっぱい応援してあげるから楽しみにしてるのよ!」
「うん、ありがとう」
「……本当に分かってるのかしら?」
「何が?」
「なんでもないわよ!」
そんな会話をして僕はアリサを家に送り届けた。
見えなくなるまで手を振るって……明日も学校で会うのにね。
そう言えばこれから夏になるんだよな。
フェイトも月末には戻ってくるし、みんなと過ごす夏休みはどうなることやら。
期待に胸を膨らませ、今日は家に帰ろーっと。
魔法少女リリカルなのは A's
闇の書事件 完
次はどんなことが起きるか、それは新しい場所でのお楽しみ。
守護騎士達の戸籍上年齢一覧
リインフォース・八神(25)
シュベルトクロイツ・八神(25)
シャマル・八神(23)
シグナム・八神(19)
ヴィータ・八神(8)
守護獣だからザフィーラは年齢関係ないし、戸籍もないんだよ。
だからリニスもアルフも戸籍無いんだよ!
思い切りアリサを贔屓しました。
だって、だんだん出番が少なくなるんだもん。
やっぱり魔導師じゃないのは痛いのね。
そして、これが最終話だと思ってますね。
実はおまけを1話だけ投下します。
ちょっとタローの一人称では語れな部分なので、番外編ですよね。