第11話 水着
温水プールにみんなで来てみたけど、初めて見るユーノの人間形態を見れたり、三人娘の家族と出会ったりとイベント盛り沢山。
すずかのメイドさんは意外とお茶目だった……。
「さ、誰かお立ち台で歌わないの?」
「そう言うアリサちゃんが歌ったら?」
アリサの言葉にあっさりとすずかが答える。
そして、みんな頷いてるし……。
「そうですよ、アリサお嬢様が歌った方が良いですよ」
「そうですよぉ〜、最初に言い出した人が歌った方が良いですって〜」
ついにはノエルさんやファリンさんにまで言われてる。
あ、あそこまで言われるとアリサだと……。
「い、良いわよ。あたしの美声に驚きなさいよ! ちゃんとタローも聞いてなさいよね!」
「あぁ、頑張ってね」
随分と勢い良くお立ち台の方へアリサが行く。
そして音楽がかかり始め、アリサが歌いだす。
♪〜♪〜♪〜♪
アリサは歌が上手いね。
でも、お立ち台の上で水着で歌うのって恥ずかしくないのかな?
「おかえり。いい歌だったね」
「そ、そう? あ、当たり前じゃない。歌ったのは、ちょっと気持ち良かったかも」
アリサが帰ってくると、恭也さんと美由希さんが話をしている。
「おい、美由希。遊ぶのは良いけど、ちゃんと頼んだぞ」
「うん、恭ちゃんもしっかりね」
「どうなさったんですか?恭也様、美由希様」
「あぁ、ノエル達にも説明しておこう。このプールで着替えの下着を盗む変質者が出てね。更衣室の覗きとかもあったんだ」
「それを恭ちゃんが昨日捕まえたから、今日はそれのお礼も兼ねての無料招待なの」
「そうなんですか。さすがは恭也様ですね」
「いや、大したことはしていないんだが……。とりあえず捕まえたが、あれで終わりとは限らないから気をつけろよ」
「うん、分かってるよ〜」
「私も気をつけさせて頂きます」
「みんなも気をつけて」
「「「「「「はーい」」」」」」
なんだかなぁ。
しっかし変質者とはいえ、それを捕まえられる恭也さんって一体……。
まぁ、それはともかく楽しまなきゃ。
「アリサ、僕たちは泳ぎの練習をしに行こうか」
「うん」
ここでみんな解散して各自遊ぶ事となった。
なのはとユーノは流れるプールへ。
たまに念話で、なのはのために僕は……とか、ユーノ君のために頑張る! みたいなのが聞こえるんだけど、念話でいちゃついてると僕には筒抜けだから、少し控えたほうが良いとそろそろ言うべきかな?
すずかと美由希さんは泳ぎの勝負をし、ファリンが審判。
えっと、高校生と泳ぎの勝負する小学4年生ってどうなの?
そして、ノエルさんは温泉の方でくつろいでる……。
メイドさんはお仕事大変だから、こういう時に休むのかな?
「さ、まずは水の中で目を開けるところから頑張ろうか」
「分かったわ」
すぐに出来たので、その次はバタ足して……っと、どんどん泳ぎを教えていく。
それにしてもアリサは飲み込みが早い。
これならすぐに1人でちゃんと泳げるね。
「そろそろ休憩しようか」
「そうね、すずか達にも声をかけてジュースでも飲みましょ」
すずかと合流したんだけど、美由希さんとファリンは温泉の方へ行っちゃったみたい。
「後少しで勝てたのに……」
「罰ゲームはどうなったの?」
「お立ち台でアリサちゃんみたいに歌う予定だったんだけど、みんなが集まってからにするって言われた〜」
「ご愁傷様」
すずかがそんな事を言ってるけど、相手は結構鍛えていそうな高校生だよ。
それに後少しでって……この運動能力は野球を勧めるべきかも知れないね。
なのは達は……、ん?この感覚は……。
(なのは! ジュエルシードが発動してる)
(うん、ユーノ君。急いで行こう)
「あ、なのはちゃん達が走ってる」
「もう、呼びに行く前に休憩してるのかしら?」
「それなら私達も、なのはちゃん達の方に行きましょ」
みんなでなのは達の後を追う。
あれ、さっきの感覚ってジュエルシードだよね。
これ、まずいんじゃ……。
「な、なんなのあれ?」
「分からないけど、変なものには違いないよぉ……」
あ、水の化け物だ。
なのはとユーノは……遠くにいるけど、もうバリアジャケットになってるね。
そして、なんだか空間が違う?
(ごめんなのは。封時結界を使ったけど、近くにいた人が何人か結界内に残っちゃってるんだ)
(えぇ〜)
おい、残された人って僕達のことなんじゃ……。
そんな心の中でツッコミをしていると、水の化け物がこっちに襲いかかってくる。
何故か僕はスルーされたけど、襲いかかってきた水に飲まれるアリサとすずか。
「この水、水着を脱がそうとしてる!」
「こら、いやらしい動きをするな!」
すずかとアリサが水に襲われて……と言うか、水着が脱がされそうになってる……。
えっと……このジュエルシードって何?
(ユーノ君、このジュエルシードは何なの? アリサちゃん達が大変なことになってるの)
(想像なんだけど、捕まった更衣室荒らしの思念が残っていて、それをジュエルシードが増幅させた……とかかな)
(なんなの〜)
そんな呑気に念話してないで、何とかして欲しいな。
さすがにプールにはバットとか持ってこれないんだから、僕は手ぶらなんだよ。
そして、アリサ達はそろそろ水着脱がされ……。
「タロー、あっち向いてるか、これを何とかしなさい!」
「ちょっと、アリサちゃん。タロー君に頼んでも無理だよぉ〜」
「うん、あっち向いておくよ」
「「え!?」」
それでは後ろを向いて……これは加減が難しいんだが、気合を入れてガッツポーズをする。
グッ
ガッツポーズにより水の化け物は霧散する。
ドッパ〜ン!
化け物がなくなったことにより水は形を失い流れ出し、気を失ったアリサとすずかが開放される。
まぁ、2人の格好は……ノーコメントで。
とりあえずバスタオルをかけておこう。
さて、なのは達と合流しよう。
「なのは、ユーノ。ジュエルシードはどうなった?」
「「タロー(君)」」
「結界内に残されたのは僕とアリサとすずかだけみたいだけど、アリサとすずかは気を失ってるよ」
「え? あ、あぁ……ありがとうタロー。」
なんでユーノはジト目で僕が何かやったんじゃないかって見るかな……。
ちょっと気合の入れたガッツポーズしかしてないのに。
「封印したんだけど、番号が見えなくってちゃんと出来なかったみたいなの」
「そうしたら大量の下着と水着が出てきて……」
「ジュエルシードは出てきたの?」
「いや、出てきてないから封印できてないと思うんだ。……まさか分裂!?」
「それじゃ探さなきゃ!」
まだ封印できてないのか。
それじゃジュエルシードの気配を探れば良いのかな?
「なのは、ユーノ。更衣室の方に大量の気配があるよ」
(もうタローのことで驚くのはやめようと僕は思うんだ……)
(ユーノ君、諦めないで!)
念話が聞こえないと思って酷いこと言ってないかこの2人……。
「なのは、タロー。とりあえずそっちに向かおう」
「分かったの」
更衣室周辺には水の化け物が何匹も居る。
「たくさんいる……これは、分裂して増殖しているんだ」
「で、どうする?」
「1つにまとめて動きを止めないと封印できないんだ」
「やってみるの。イメージを魔力に乗せて……捕獲・固定の魔法……レストリクトロック!」
『Restrict
Lock』
大量の光の輪がすべての水の化け物を捕縛する。
すごいな〜。
あれ、ユーノが驚いてる。
「集束系の上位魔法……。なのはの魔法のセンスってどうなってるんだろう……?」
「いくよ! レイジングハート。リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル17封印」
『Sealing』
水の化け物は光の塵になり、服と水着が戻っていく…。
呪文を唱え終わるとジュエルシードは、なのはの持つ杖に吸い込まれて行く。
『Receipt
No.
XⅦ.』
ジュエルシードの魔法が解けたから服や水着は元の持ち主のところに戻って行ったのかな?
やっぱり魔法って便利だね。
結界が解ける前に、アリサとすずかをプールサイドのチェアベッドに運び寝かす。
これで大丈夫かな?
「あれ?」
「ん〜ん、ここは?」
目を覚ましたみたいだね。
「2人共起きた?」
「タロー、あたし達どうしたの?」
「ん? 30分ぐらい良く寝てたよ。疲れたんじゃない?」
そう言うと2人共、首を傾げつつ顔を赤らめる。
「何やら非常にアレな夢を見ていたような……(ボソ)」
「恥ずかしいし言えないし……(ボソ)」
「どうしたの2人共」
「「ううん、なんでもない」」
「そっか、それならいいんだ」
うん、ガッツポーズでの威力軽減がイマイチだったのか、水の化け物に襲われた前後の記憶が曖昧で夢だと思っているみたいだ。
ある意味良い方に転がったというところか。
水着を脱がされて、僕に見られた記憶なんていらないもんね。
この後、みんなでのんびり水着で入れる温泉で体を休めた。
アリサとすずかは夢だと思ってくれたみたいだね。
とりあえずは一件落着ってところか。
あ、忘れられていた罰ゲームはまた今度の機会にやるって事になったよ。
さすがに疲れて寝ちゃうぐらいのすずかに、今やらせるのは駄目って恭也さんから美由希さんが怒られてた。
ユーノは折角人間モードに戻れたのに、今回の封時結界でまた魔力消費をしちゃったみたいだね。
また今日のからフェレットモードで魔力回復だよってボヤいてたよ。
折角、人型になれたのに残念だよね。
でも、人型のままじゃ泊まる場所とか大変だから、丁度いいのかな?
それにしても嫌な思念体だったな……。
男は襲われないから良かったけどさ。
今後、バットとか持ち歩いてない時にジュエルシードの発動に立ち会うと、ちょっとだけ困ったりするね。
次からなにか備えないといけないかな。
。