第12話 襲撃!?
プールは面白かったな〜。
遊んだついでにジュエルシードが手に入るなんてお得だよね。
僕は更衣室で着替えながらそんな事を思っていた。
「タロー、僕はここからフェレットモードで魔力を回復させるから、ここから出たらなのはのカバンに入るよ。うまくみんなに伝えてね」
「ああ、構わないよ」
(なのは、僕はフェレットに戻ってるから。帰りはなのはのカバンに入るから、カバンを開けておいてね)
(ユーノ君、わかったの)
更衣室から出ると……今回は流石に僕達が一番早かったか。
しばらく待つとみんなが出てくる。
「今度は先に出て待ってたわね」
「まあね。あ、ユーノは用事があるから先に帰ったから」
「そうなの? 用事があるなら仕方がないね〜」
僕がアリサとすずかと話をしている隙に、ユーノはなのはのカバンに入り込む。
「そういえば美由希さんは?」
「あ、お姉ちゃんはお兄ちゃんを待って、一緒に帰るって」
「そっか、じゃあこれで全員揃ってるんだね」
行きと同じでノエルさんの運転する車で帰宅する。
みんなの家を順番に回ってくれていて、僕が最後に残った。
「太郎様のご自宅はどちらなのでしょう?」
ノエルさんが運転しながら聞いてくる。
んー、今日のジョギングをしていないから、少し走って帰りたいな。
「あ、普通にすずかの家に行っちゃってください。僕はそこからジョギングして帰りますから」
「「「え?」」」
なんだかみんな驚いてるな。
「太郎様、さすがに月村のお屋敷からジョギングでは、家に帰る頃には日が暮れてしまいますよ」
「そーですよー、タロー様ー。月村の屋敷からなのはお嬢様のおウチまででも直線距離で40キロあるんですよ〜」
ふむ、40キロか。
軽目のジョギングだね。
「大丈夫ですよ。丁度いい距離ですから」
「タロー君、本当に遠いけど平気なの?」
「うん、問題無よ。心配してくれてありがとう」
「それならいいけど……。あんまり無茶な運動は良くないよ」
なんだか無茶とか無理とか言われてる気がするけど、きっとプールで遊んだ後だから心配してくれてるんだね。
みんな優しいな〜。
車の中で色々話をしていると、ノエルさんの話になった。
内容は、ノエルさんのフルネームがノエル・K・エーアリヒカイトと言うんだけど、Kってなんの略?と聞くと綺堂の略らしい。
だから正確にはノエル・綺堂・エーアリヒカイトと、ファリン・綺堂・エーアリヒカイトだそうだ。
で、綺堂って? となるけど、月村家と同様の由緒正しい家で、綺堂家と氷村家がある。
要するに従姉妹みたいな関係なのか?
何でも綺堂さくらさんと言う叔母がいて、とても良くしてくれると言う。
で、ノエルさん達は元々そっちの家に居たんだそうだ。
そこから両親が亡くなった月村家へ、すずかのお姉さんである忍さんにノエルさん、すずかにファリンさんが担当メイドとして務めている。
今では家族として過ごしているんだって。
血の繋がりよりも強い絆ってことだね。
しばらく車で走りすずかの家に着いたけど、なぜだか門が壊れてる。
なんだか屋敷の方で煙が出てるような……?
「すずか。すずかの家って、門とか壊れてたの?」
「そんなことありません!」
「お二人とも、降りるのはしばらくお待ちください」
ノエルさんがそう言い、アクセルを踏み敷地内に車を進める。
車の窓から外を見ると、敷地内にある監視システムとかが壊されてるね。
……なんで監視システムと一緒にマシンガンみたいなのがあるんだろ?
まぁ、それも壊れてるんですけどね。
屋敷の前に車を着けると、すずかが車を降りて1人で屋敷に走って行ってしまう。
「「すずかお嬢様!?」」
慌ててそれを追いかけるノエルさんとファリンさん。
気配は……屋敷の中に1つだけか。
とりあえず僕も追いかけよう。
屋敷の中では血を流し倒れている忍さん。
そして、それに付き添うすずか達3人。
「お姉ちゃん、しっかりして!」
「「忍お嬢様!」」
焦らず忍さんに近付き、負傷を確認しなきゃ。
……左足が切られてる。
まずは止血しなければいけないな。
前世の消防職員時代の知識を引き出し、応急処置をしなければ……。
「ちょっと3人とも離れてください。止血しないと出血量が多くなりすぎてショックになってしまいます。あと、救急車を呼んでください」
「「分かりました」」
ノエルさんとファリンさんは屋敷の奥へ走って行く。
ついでにガーゼとか色々持ってきてくれるとありがたいんだけど……。
お、意識を戻した。
「う、うぅん。あ、あなたは?」
「はじめまして、すずかのクラスメイトで一之瀬太郎です。忍さんですよね。これから止血処置をしますので、動かないでくださいね」
そう言いながら傷口を良く見る。
これ、切り口が綺麗すぎるんだけど、一体何で切られたんだ?
あと、屋敷の壁とかに銃痕とかあるんだけど、これは突っ込んだら負けなのかな。
「すずか……ごめんなさいね。あなたのお友達なのに……」
「お姉ちゃん……まさか……?」
ん? なにを話してるんだこの2人…。
2人共深刻な顔をしているけど。
「タロー君、ちょっと動かないで貰えるかな?」
「タロー君、お姉ちゃんの言うことを聞いて!」
「良いよ。けど、止血はさせて欲しいんだけど」
「大丈夫。ちょっと血を貰うわね」
そう言うと忍さんは僕に抱きつき首筋に噛み付いて……噛み付く!?
血を貰うとか言ってたけど、なんだか首筋から血を吸われているような……。
とりあえず深く気にしちゃ駄目だよね。
あれ、僕の血を吸い始めると忍さんの出血が止まって行く?
「タロー君、事情は後で話すから、もう少し血をお姉ちゃんに分けてあげて」
「別に良いけどさ。出血も止まったみたいだし、僕のやることはそれぐらいしかないかな」
忍さんが血を吸ってるけど、血液量は体重の約8%、僕だと約3200ccで、20%の血液、約640ccが一気になくなるとショック症状になるんだけど……。
一体どれぐらい飲んでるんだ?
あれ、意識が遠くなってきた……。
最後に見た景色は、泣いているすずかと屋敷の奥から走ってくるノエルさんとファリンさんだった。
みんな揃ったなら、僕がいなくても大丈夫だろう……。
ゆっくりと目を閉じ、意識を手放す……。
「ここはどこだ……?」
なんだか高級そうなベッドの上で目が覚める。
周りを見渡すと、すずかがベッドに突っ伏して寝ている!?
あれ、確か忍さんに血を吸われて、意識を失ったんだっけかな。
僕の身体は……点滴処置をされているから体内の血液量は平気だ。
他にバイタル……安定、負傷部位なし。
よし、問題無い無いな。
状況と身体の確認をしていると、この部屋のドアが空き車椅子に座った忍さんと、それを押すノエルさんが入ってくる。
ん、切られていた左足が生えてるぞ?
良く見てみても、本人の足だな。
「太郎様、目がお覚めになられたのですね」
「良かった……。本当に昨日はごめんなさいね」
「いや、別に血液ぐらい大したことないですし、死んでなければなんとでもなりますから」
妙に心配されているね。
それよりも忍さんの足のほうが心配なんだけど。
僕が忍さんの足を見ていると2人共それに気が付いたようで話し始める。
「タロー君には申し訳ないんだけど、ウチの事情に巻き込んじゃたね」
「あぁ、そんなのはどうでも良いんですけど、気を失って夜が明けちゃってるんですけど、自宅に連絡しなきゃなと」
「「………」」
あれ、なんだか呆れてるな。
だって無断外泊を小学生がやっちゃ駄目でしょ。
あれで意外と父は怒ると怖いらしいんだよね。
怒らせたことがないから、どこまで怖いか分からないけどさ。
「えっと、太郎様のご自宅には連絡を入れさせて頂きました。プールで遊び疲れて寝てしまったので、月村の家に泊まると言ってあります」
「ありがとうございます。それじゃ、学校に行く前に家に寄ってかないとだめかな?」
「うん、その前に巻き込んでしまったから、ちゃんと説明とかしたいんだけど良いかしら?」
そう忍さんが言うとノエルさんがすずかを起こし始める。
すずかは昨日の格好のまま寝てるけど、大丈夫なのかな?
そんな格好で寝ていても疲れは取れないだろうに。
「う、う〜ん。おはよ〜。あ、タロー君は大丈夫!?」
「ん、何がどう大丈夫かわからないけど、いつもと同じで元気だよ」
「良かった〜」
起きていきなり僕の心配をして、僕の返事でホッとするすずか。
優しいな〜。
「すずか、それより着替えて食堂に来なさい。昨日のことを含めて全てタロー君に説明するわ」
「……うん。じゃあ、後でね」
忍さんの言葉に返事をして部屋から出ていくすずか。
廊下でファリンさんを呼ぶすずかの声が聞こえたな。
「タロー君にもお話ししたいから、このまま食堂に移動しましょう」
「はい」