第17話 一之瀬家
月村家お家騒動と言う名の長い夜は終わった。
色々と説明したり協力関係を築き、本日はこれにて解散。
次の日はこの事件の事後処理で夜の一族の会議に忍さんが出席したり、恭也さんと美由希さんが士郎さんに弛んでいると怒られ、タップリと稽古を受けさせられたそうです。
そしてその夜、我が家に来客。
母が対応するんですけど……。
「は〜い、どなたですか〜?」
「私、月村と言います。先日そちらのお宅に妹のすずかを泊めていただきお礼をと思い……」
「あ、は〜い。今、玄関を開けますね〜」
家に来たのは忍さんとノエルさんです。
リビングに通し両親と僕で対応します。
みんなに飲み物が渡ったところで忍さんが話し始める。
「まずは先日のお礼と謝罪をさせていただきたいと思いまして、夜分申し訳ありませんがこちらにお邪魔させて頂きました」
「いえいえ〜。お礼だなんてとんでもないです〜。それと謝罪とは〜?」
母の返事により、忍さんはゆっくりと話をはじめる。
今回の月村家お家騒動のことを夜の一族の話を抜かして全部。
それに僕を巻き込んでしまった……謝罪で済まされるものではないと忍さんは言う。
随分と長く重い説明の後、父が話し始める。
「ふむ、分かりました。ご迷惑でなければ、タローとは引き続き仲の良い関係を続けてもらいたいものです」
「え!?こんな突拍子もない話を信じるのですか?」
「あなたは嘘を付いている様に見えませんし、タローから既に魔法の話も聞いてますからね」
「そうなのタロー君?」
「はい、魔法の話とかジュエルシードを探している話は両親にしてありますよ」
「そして、タローの話とは別に姉の義理の娘には猫又、姉の息子の管理するさざなみ寮にはHGS、幽霊、退魔師、漫画家などいますからね」
「「「え!?」」」
ちょっと、僕もその話初耳なんですけど!
「さざなみ寮って那美が住んでるところですね」
「あぁ、神咲さんのお知り合いなんですね」
僕も忍さんもその話を詳しく!と言うことで父が話し始めてくれる。
すごい長い説明になりました。
簡単にまとめると……。
まず、一之瀬家は1男2女で長男は父、結婚して苗字が変わった姉が2人で長女が槙原彰子、次女が陣内神奈。
彰子さんの次男が耕介さんで、現在さざなみ寮の三代目管理人。
その妻の愛さんがさざなみ寮のオーナーで、この間ガス爆発事故が近くで起き少し壊れた槇原動物医院の院長。
ちなみにさざなみ寮の初代管理人が、神奈さんの夫になった陣内啓吾さんで、二代目管理人が結婚していない時代の神奈さん。
そして陣内さんの娘には猫又の美緒さんが居ると言う。
さざなみ寮は霊的に安定度が高いので人外が集まってくる様だ……。
要するに両親に魔法の話をした時、驚かずに受け入れてくれた上に、僕のトレーニングを気にしないのはこの環境のせいだったのか。
僕のトレーニング場所の国守山にはさざなみ寮があるので、僕を見ていた人もいるらしい。
更にそこにある八束神社の巫女兼管理人が、忍さんの友達でさざなみ寮に住んでいる神咲那美さんとの事。
世間は広いようで狭いな〜。
それと、ウチの両親は特殊な能力は一切ないらしい。
両親と忍さんはなんだか打ち解けてしまって、僕の知らない人の話をしたりしている。
「それでは夜も遅いので、失礼します」
「いえいえ、わざわざ来ていただいてありがとうございました。大したおもてなしも出来ずすいません」
そんなこんなで随分と長く話していました。
忍さん達はまだ若いのだから、いつでもウチを頼ると良いとまで両親が言ってましたね。
そして、明日お茶会をするので僕をご招待したいとの事。
特に予定もないので参加することになりました。
次の日、月村家に来ました。
この間の戦闘で荒れた場所は全て直ってますね。
突貫工事で直したのかな?
「こんにちはー」
「太郎様、いらっしゃいませ」
玄関でノエルさんが出迎えてくれる。
テラスまで案内してもらうと、忍さんとすずか、それにアリサがいる。
「タロー君いらっしゃい」
「「え?た、タロー(君)?」」
忍さんは普通に迎えてくれたけど、すずかとアリサは驚いてる。
僕が来ること言ってないのかな?
「僕、お邪魔だったかな?」
「ううん、そんなことないよ」
「そうよ、ちょっとびっくりしただけよ」
「そう、それなら良かったけど……。お邪魔なら帰るから良いよ」
「別にそんなこと言ってないでしょ!ほら、早くここに座りなさいよ!」
そう言い、アリサは自分の隣の椅子を叩く。
僕はそう言われたのでそこに居る猫をどかして座る。
それにしても、この部屋は猫がたくさんいるな。
「タロー様、お茶をご用意いたしますが、何かご希望はありますか?」
「紅茶とか良く分からないからおまかせします」
「かしこまりましたー」
その後、ファリンさんが飲み物を持ってきてくれたので、すずかとアリサと話をする。
月村家お家騒動の件ですずかからまたお礼を言われたり、アリサからも感謝されたりした。
お礼を遠慮すると延々とその話が終わらないので素直に受け取ることにする。
「でも、アリサからお願いされたことなんだから、出来ることなんでもするのは当たり前だよ」
「ちょ、え、その……。ありがと……。……ばか(ボソ)」
あれ、なんか感謝されつつバカとか言われたぞ。
まぁ、いっか。
その後、魔法のことについてはなのはから言ってこなければ、こちらからは言わないことにしようと再度約束した。
自主性って大事だよね。
ただし、出来る範囲で協力をして行こうとはなったけどさ。
しばらくすると恭也さんとなのは、ユーノが来た。
2人して僕がいることに驚いていたけどね。
「私と恭也は部屋にいるから、みんなはごゆっくり」
そう言い忍さんと恭也さんはテラスから出ていく。
2人は仲が良いね。
「ラブラブだよね」
「うん」
「お姉ちゃん、恭也さんと知り合ってから、ずっと幸せそうだよ」
「うちのお兄ちゃんはどうかな…?でも、昔に比べて優しくなったし、良く笑うようになった」
なんだか出て行った2人を見て、三人娘は羨ましそうにしている。
小学生が何やってるんだか……。
「タローは仲の良い人っているの?」
「ん?アリサにすずか、なのはがそうなんじゃないのかな?」
「そう……それなら良いのよ」
アリサが急に質問してきたけどなんだろ?
普通に返したが、それで納得してるみたいだから良いかな。
ユーノがカバンからやっと出してもらえた。
そのユーノを見て複雑そうな表情をするアリサと、苦笑いを浮かべているすずか。
まぁ、省エネのフェレットモードで、本来は人間なんだよって教えちゃってるからな。
そんな2人の表情に気が付かないなのはは、お礼を言ってくる。
「今日は誘ってくれてありがとう」
「うぅん、なのはちゃん、最近少し元気がなかったから……」
「もし、心配事があったら話してくれないかなって」
「すずかちゃん……アリサちゃん……」
状況を知ってる人には「魔法のことを言いなよ」って言ってるようにしか聞こえないんだけど……。
他意はないんだろうけどさ。
そんな事を考えてると、ファリンさんが紅茶のおかわりとお菓子を持って来てくれた。
そのファリンさんの足元を猫に追われるユーノが逃げまわる。
ファリンさんはユーノと猫によってバランスを崩してしまう。
「ファリン、危ない!」
「あ、あ、はぅ〜」
ファリンさんが紅茶とお菓子を乗せたお盆を放り投げ、転んでしまう!?
僕はファリンさんに向けて風を送るように手を振る。
ファリンさんとお盆がふわっと浮いた隙に、駆け寄りファリンさんが倒れないように抱き寄せる。
すずかはお盆をキャッチする。
「セーフ」
「ファインプレーかな?」
「むぅ」
「はわわわ〜。すいませ〜ん」
ファリンの大声での謝罪が屋敷に響き渡る。
まぁ、問題なくって良かったよ。
それにしても人騒がせな猫だね。
猫は僕に摘み上げられると「なぁ〜」と鳴いてこっちを見ている。
とりあえず降ろしてあげるか。
「しっかし、相変わらずすずかの家は猫天国ね」
「うん、でも里親が決まっている子もいるから、お別れがあったりもするんだよ」
「寂しいね」
「でも、子猫が大きくなっていくのは嬉しいよ」
猫談義に花が咲く。
「猫もいいけど、あたしのウチの犬も可愛いわよ」
「あー、そうだねー。アリサちゃん家は犬さんたくさんいるものね」
「タロー君の家は動物いないの?」
「僕の家は猫が一人いるよ」
「へぇ〜、この間行った時には見なかったわね」
「あぁ、気を使って部屋に来なかったみたい」
「この間行ったって……アリサちゃん、タロー君の家に行ったことあるの?」
「「あ……」」
こら、アリサはともかく、すずかもそんな反応したら2人が行ったのバレちゃうよ。
ほら、なのはが2人の顔を交互に見てるし〜。
なのはが何か言おうとした瞬間……。
(なのは!)
ん?この気配……。
(ジュエルシードの発動、すぐ近くだ!)
(えー、どうしよう?)
(……そうだ!)
ユーノがテラスから外に走りだす。
「ユーノ君?」
「何か見つけたのかも?ちょっと探してくるね。すぐに戻ってくるから待ってて!」
そう言ってなのはは外に走って行く。
残された3人は顔を見合わせて苦笑いしちゃったよ。