第18話 お茶会
月村家でのお茶会。
そして、急なジュエルシード発動の気配!
なのはとユーノは下手な誤魔化しで、僕達3人を置いてそこへ向かう。
魔法のことを知っている僕達は顔を見合わせて苦笑いしてしまった……。
「タロー、これって魔法関係?」
「そうだよ。ジュエルシードの発動の気配がしたから間違いないよ」
「それってこの近くなの?」
「うん、この家の敷地内ってところかな」
「え、私の家?」
アリサとすずかは僕の方を見ている。
「「タロー(君)お願いがあるんだけど」」
「いいよ」
「ありがと。じゃあ、なのはをよろしくね」
「はい、タロー君。バットをどうぞ」
「え? すずか、いつそんなものを用意したのよ!」
「だって今度キャッチボールとかやるって言ってたから用意したんだよ」
「あー、ズルイ! あたしも早く用意しなきゃ!」
アリサはそう言って電話をし始めてしまう。
僕が言うセリフじゃないだろうけど緊張感ないな。
「とりあえず行って来るね〜」
「「いってらっしゃーい」」
すずかからバットを借り、カバンからグローブとボールを出す。
バットは持ち運びにくいから、今日は持ってきていないので助かるな。
さて、テラスから飛び出してなのは達の気配を追うぞ。
それにしてもジュエルシードの気配だけでなく、他にもう1人気配を感じるんだけど、一体誰の気配だろう?
「にゃお〜ん」
ドシンドシンと大きな足音を鳴らし歩く巨大な猫がいた。
あ、その足元になのはにユーノもいるね。
「あ、アレは……?」
「多分、あの猫の大きくなりたいっていう願いが、ある意味正しく叶えられたんじゃないかな?」
「でも、このままじゃ危険だから……」
「や、ユーノ、なのは。今回は最初から僕も参加できたかな?」
「「タロー(君)」」
あら、驚かれてる?
僕が近づいたぐらい気がついて欲しかったな〜。
(僕、封時結界張ったのに、なんでタローが入れたんだろ……)
(ユーノ君……)
あぁ、そういう意味での驚きなのね。
結界を張ったと言われても、普通に僕は来ただけだからな〜。
「とりあえず、このサイズだと飼うの大変だよね」
「タロー君、そう言う問題じゃないと思うの」
「襲ってくる様子はなさそうだし、さっさと封印をしよう」
そうだね、さっさと終わらせてお茶会の続きをしたいな。
ん、この気配は……?
「フォトンランサー電撃」
知らない女の声が聞こえると、猫に向かって電撃が飛んでくる!
とりあえずバットでバントする。
カン!
僕のバントで弾かれた電撃は地面を焦がす。
猫に当たってたら大変だな〜。
「魔法の光!?」
「レイジングハートお願い」
『Stanby
ready. Set
up.』
なのはが変身すると、上空に1人の女の子が飛んできた。
黒のレオタード(?)に黒のマントを羽織った……変態!?
いや、なのはのバリアジャケットもスカートで丸見えで飛んでるぐらいだし……魔導師って露出癖があるのか!?
更にユーノはフェレットモードは服を着ていないから……全裸!?
そんな事で考え込んでいると、黒い魔導師は無数の金色の光弾を出し、猫に向けて発射する。
『Photon
lancer.』
なのはは慌ててレイジングハートを使い飛行し、猫の前へ行き光弾に向けレイジングハートを向ける。
『Wide
area
Protection.』
複数の光弾をなのはのシールドが全て弾く。
そのままレイジングハートを相手に向け砲撃を放つ!
「ディバイン……バスター!」
『Divine
Buster.』
桃色の光が向かい飛んで行くが、黒い魔導師は回避する。
2人共油断せず、お互いにデバイスを向けて対峙する。
黒い魔導師が話し始める。
「同系の魔導師、ロストロギアの探索者か」
「僕と同じ世界の住人!?」
「ロストロギア……ジュエルシード。申し訳ないけど頂いていきます」
「それは、こっちの台詞。どうしてジュエルシードが必要なの?」
「答えても多分意味はない……」
眼中に無いとばかりに、なのはの後方にいる猫に対し黒い魔導師は視線を向けた。
それに対しなのははレイジングハートを構え、猫を背中に隠すように黒い魔導師に視線を向ける。
ゴクリ、ユーノの喉が鳴る音に合わせ、2人は戦闘を開始する。
「バルディッシュ、フォトンランサー連撃」
『Photon
lancer. Full auto fire』
「全て撃ち落として、レイジングハート!」
『Divine
Shooter』
黒い魔導師が突き出した手のひらから、電撃の弾を連射して撃ち出す。
それに対してなのはは桃色の弾を撃ち、誘導制御して撃ち落とす。
立ち止まっての撃ち合いは互角!?
なのはちゃんの魔法を見る機会は少なかったけど、最初の頃に比べて段違いの成長度だ。
2人は空中へ移動しお互いに魔法を撃ち合い始める。
花火みたいで綺麗だな〜。
さて、そんな戦闘をのんびり見ていても良いんだけど、猫に当たったら可哀想なので、ジュエルシードを取り出すか。
僕はバットを構え猫に向かって素振りをする。
グォン!
一陣の風が起き、猫からジュエルシードだけ弾きだす。
「え!?」
黒い魔導師がそれを見て動きを止める。
「今!レイジングハート、レストリクトロック!」
『Restrict
Lock.』
光の輪で黒い魔導師を動けないように四肢を捕縛する。
そのままなのははレイジングハートを構え集中する。
『Divine
Buster. Stand
by.』
黒い魔導師が光の輪を外そうともがくが、全く外れる気配がない。
レイジングハートの先に光が集まり……。
「ディバイン……バスターッ!」
『Divine
Buster.』
桃色の極光が黒い魔導師を包み込む。
しかしその極光に飲まれる前に、狼のような気配を持った女性が乱入して来て、黒い魔導師を抱きかかえギリギリ逃げた。
消えたから転移する魔法なのかね?
「やった!」
「いや、結界内に転移術式の痕がある。離脱したんだ」
ユーノは気が付いたみたいだね。
しかし、乱入者がいたってことは、相手が2人以上いることになるな。
まぁ、そんな事はどうでも良いから、ジュエルシードを何とかしようよ。
「とりあえず、近くにいないなら封印したら?」
「え? あ、わ、分かったの」
僕の言葉に我に返ったなのはが、杖をジュエルシードに向け呪文を唱える。
「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル14、封印!」
『Sealing』
呪文を唱え終わるとジュエルシードはなのはの持つ杖に吸い込まれて行く。
『Receipt
No.
XIV.』
これで終わりかな?
なのはとユーノもこっちに戻ってきた。
「何とか追い返せたけど、さっきの女の子は何なのかな?」
「ミッドの魔導師だと思うけど、それを撃退できるなのはって……。そろそろ驚かなくなってきたけど、僕からなのはに教えることは何もないのかも」
「そんな事無いの。毎日のユーノ君とレイジングハートの特訓とアドバイスのお陰なの」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
『Thank
you! My
master.』
「ジュエルシード集めをしているとあの子とまたぶつかっちゃうのかな?」
「きっとそうだね。あの子も集める理由があるのかも知れないからね」
「じゃあ、今度はお話できるように、毎日の特訓をもっと頑張るよ!」
『All'
right! My
master.』
いや……お話のために戦闘特訓とかって違うんじゃないか?
でも、レイジングハートはやる気になってる感じだから良いか……。
高町家のみなさんはこういう教育を受けているんでしょうかね。
「さ、みんなのところに戻ろう」
「「うん」」
さてさて、なのははみんなになんて言い訳するのかな?
そんな事を思いながらテラスに向かう。
結局なのはの言い訳は特になく、アリサとすずかが誤魔化されてあげた感じだね。
また、紅茶のおかわりを貰い、雑談を続ける。
「そう言えばタロー君、GWの最後の3日間は予定空いてる?」
「ん? 特に家族で出かけるのは明後日だから、最終日付近は大丈夫だったはずだよ。今、電話して聞いてみようか?」
「うん。もし空いていたら、みんなで温泉旅行に行くんだけど一緒にどうかな?」
「そうよ、タローも一緒に来なさいよ。友達のユーノも連れてきて良いから。こっちのユーノは動物だから温泉に入れないだろうし……ね」
ユーノの方をチラ見してアリサも言う。
(え、僕も?)
(ユーノ君、フェレットだと温泉入れないんだ……)
(さすがに動物では禁止だろうね)
(タロー君が大丈夫だったら、人間モードで来れるね)
(いや……人間モードって……。僕、通常が人間なんだけど……)
動物でプール入れないんだから、温泉も普通は駄目でしょ。
ミッドはユーノみたいな動物形態の人が多くて、温泉とか動物で入れるのかな?
まぁ、とりあえず自宅に電話で予定を確認っと。
あっさりと母から了承を貰えました。
「大丈夫だから、あとでユーノにも連絡とっておくよ。あいつまだ携帯電話を持ってないから不便なんだよね」
「そうなんだ〜」
そう言いつつも視線を何気にユーノに向けるアリサとすずか。
さすがにバラしてあるからって、ユーノにバレて良い訳でもないんだよ。
(あ、あとでタローに連絡しなきゃね)
(タロー君が念話を使えれば良いんだけど……)
(魔力がなくても念話が出来るデバイスでもあれば良いんだけど、ミッドに行かないと難しいかな)
(へー、そういうのが渡せたら便利なの。ユーノ君はこっちで携帯電話を買ったほうが便利なの)
(人型になって生活する環境を整えられるなら良いんだけどさ。あとで色々考えてみるよ)
(うん)
ユーノの生活環境か……。
後で両親に相談してみようかな。
身内経営のさざなみ寮があるから、もしかしたらなんとかなるかもしれないしね。