第21話 みんなの味方
3人でカレーを食べ終える。
食べてる途中でカレーの説明をしたんだけど、この情熱が伝わったかな?
そして、僕が作る料理は男料理と言う目分量、どんぶり勘定な料理になっちゃうんだけど、カレーは男料理だから問題なかったね。
「「「ご馳走様でした」」」
さて、チャチャッと食器を洗ってしまおう。
そんな風に僕が片づけをしていると、フェイトの視線を感じる。
「あの……タローは何でこんなことをしてくれるの?」
「ん、なにが?」
「だって……アルフに聞いたけど、タローはあの白い魔導師の友達なんでしょ。つまり私達とジュエルシードを奪い合う仲……」
「ん〜、別に僕はジュエルシードなんてどうでも良いんだよ」
「え!?」
「ちょっとだけ自分から首を突っ込んで、それによって色々と巻き込まれたりしてるだけ。後はなのは……白い魔導師の子、ユーノ……フェレットが集めてるから手伝ってるだけさ」
フェイトはその言葉を聞くと首を傾げ悩んでいる。
アルフさんは……もう僕に対して呆れて放置している。
むしろお腹がいっぱいになったから、眠くなっているんだろうな。
「まぁ、僕は誰の敵でもないよ。強いて言うならみんなの味方かな。そして、何をしているわけでもなく、普通に野球をしているだけなんだよ」
「野球……?」
「そう、野球さ。僕はフェイトたち魔導師と違って、あくまで野球選手だからね」
「野球選手って?」
「野球というのは、フィールドと呼ばれる球技場で行われる集団球技のスポーツで、野球選手とはそれをする人のことだよ。ミッドチルダで1番人気で有名なスポーツは野球って言われてるらしいけど、フェイトは知らないのかい?」
「私、そう言うの全くわからないの……。ずっと母さんに言われて、リニスと魔法の練習をしていたから……」
そうなのか……。
この家はテレビもないし、そんな生活をしていたら分からないか。
ん〜、僕もテレビはニュースとスポーツ以外みないから娯楽には疎いけど、これはちょっと寂しいな。
「よし、分かった。野球を見に行こう!」
「「え!?」」
フェイトはびっくりし、ウトウトしていたアルフさんも思わず声を上げる。
僕は携帯電話で母に連絡を取る。
明後日の家族で野球観戦にこの2人を連れて行って良いか……うん、あっさりと了承してくれた。
チケットとか大丈夫なのかな?
ゴールデンウィーク真っ盛りなのに……。
自分でお願いしておいて変なこと言ってるよね。
「そういう訳で、明後日4月30日の月曜日。一緒に野球観戦だからね。2人とも準備しておいてね」
「ちょっちょっと待っとくれよ。あたし達はジュエルシードを集めなきゃならないんだ」
「そうだよタロー。母さんに頼まれてるジュエルシードを探さないで、野球観戦だなんて……」
2人が動揺している。
でも、2人とも興味がない訳ではなさそうだね。
ジュエルシードを集めなければいけないから……か。
それならば……。
「じゃあ、一緒に野球観戦に行ってくれたら、ジュエルシードを1個あげるよ」
「「え!?」」
うん、これで完璧。
僕の持ってるジュエルシードだけど、2個あるから1個は特に必要ないんだよね。
1個あれば充分だし。
あれ、フェイトとアルフさんが頭を抱えて唸ってる。
頭痛でもしてるのかな?
「どうしたの2人して頭抱えて。頭痛でもしてるのかい?」
「いや、タローには色々驚かされつつ、何を言っても無駄だと思っていたんだけど、さすがに今のはあたしの想像の斜め上を遥かに飛んで行ったよ……」
「タロー、本当にジュエルシード持ってるの?」
「ん? 家においてあるよ」
「やっぱりタローは魔導師なのかい?」
「いや、何度も言ってるように僕は普通の野球選手だよ」
「でも、ジュエルシードを封印して持ってるんだろ」
「ん? 封印なんてしてないよ。普通に家に置いてあるだけだよ」
「「いや、それはおかしい」」
2人して声を揃えてそんな事を言う。
何がおかしいんだろうね。
あぁ、僕が持ってるってのを信じられないのかな?
そうだよね、実物を持ってないと駄目か〜。
「分かった、今日は遅いから明日ジュエルシードを持ってくるよ。それなら信じてもらえるかい?」
「えっと、タロー。私たちはそんな事言ってないんだけど……」
「駄目だよフェイト。タローはあまり人の話を聞いてないから……」
酷いな。
聴力は超力ぐらい聞こえてるんだぞ。
念話だって聞こえるんだから、人の話を聞かないなんてないのに。
「それじゃ、また明日ここに来ればいいよね。何時ぐらいから平気?」
(どうしようアルフ……。私、タローが良く分からない……)
(フェイトしっかりしておくれよ。でも、あたしもタローのことは良く分からないんだけどさ……)
何だか酷いこと言われてるね。
まぁ、今日会って信用してもらうのは難しいか。
とりあえず、明日次第ってことか。
「それじゃ、そろそろ帰るね。明日はお昼ごろに来るから〜」
さて、早く帰ってシャワーとか浴びなきゃな。
そんな事を思いながら玄関に向かう。
(まぁ、明日タローが何を持ってくるかで考えようか)
(そうだねアルフ。封印していないジュエルシードを持ってたら、もっと前に発動してるはず……)
(明日白い魔導師を連れて来られたら困るから、サーチャーを張って警戒しとくよ)
(アルフお願いね)
「それじゃ、お邪魔しました。また明日ね」
「う、うん。また明日」
「おやすみなさい」
「「おやすみ」」
玄関から出て、ドアを閉める。
マンションの廊下から僕の家の方を向く。
うん、この距離なら余裕だ。
廊下の柵の上に立ち、家の方に向かってジャンプする。
ギューン……ズシャー
ナイス着地。
余裕の距離だね。
さて、家に入ろっと。
「ただいまー」
「「おかえり〜」」
僕の帰宅に両親が声を揃えて迎えてくれる。
夕飯は一緒に食べられなかったけど、今日のお話でもしようかな。
猫を膝の上に置き、頭を優しく撫でながら、両親とのんびり話をする。
………
……
…
「タロー、その子は魔法関係者なんだね」
「うん、そうだけど……」
「心配そうな顔をするな。私は変に口を出したりはしないさ。ただ、生活するのが大変なんじゃないかと思ってな」
「そうよ〜。女の子と狼さんだけじゃ色々と大変でしょ〜」
「うん……。食べ物と言って買ってたのはカ○リーメ○トやS○YJ○Yでしたから……」
「う〜ん、育ち盛りの子供がそういうものを食べるのは感心しないな」
「そうね〜。ご飯とかちゃんと出してくれる場所に住んでくれれば良いんだけど〜」
そう言って両親は悩んでいる。
こうなったらついでにユーノのことも言ってみるか。
………
……
…
「ユーちゃんも大変そうね〜」
「フェレットで居られるのは便利そうだが、人が違う姿でいるのはストレスになるだろうしな……」
「よし、父さんが色々当たっておこう」
「あなた、素敵〜」
「「あっはっは」」
何だか両親が勝手に盛り上がって笑ってるけど、ほんとうに大丈夫なんだろうか?
母は誰でもちゃん付けで呼ぶんだけど、ユーノがユーちゃんか……。
他の人はどんな呼び名になるんだろ?
それはともかく、フェイトとアルフさんを2人で住ませておくのも心配だし、ユーノもいつまでもフェレット姿じゃ大変だもんな。
しかし、どうなることやら……。