第22話 バルディッシュ
昨日は月村家お茶会だけかと思えば、ジュエルシードの発動、黒い魔導師となのはの戦闘、アルフさんとフェイトとの出会い……。
随分と濃厚な1日だったな。
ゴールデンウィーク初日からこれでじゃ、終わる頃にはどうなることやら……。
さて、今日は午前中に家族でお買い物。
まぁ、日用雑貨とか食料品の買い出しなので、母のために父が車を出していると言うだけ。
僕も一緒に荷物持ちをする。
そして買い物途中に、両親は何か欲しい物がないかと何度も聞いてくる。
僕はスポーツ用品だけあれば充分なんだけどな〜。
そう答えると欲がないとか散々言われ、最後は新しいジャージやボールとかを買って渡してくる。
ボールは消耗品だから凄い嬉しいと喜べば、また欲がないとか散々言われる繰り返し。
困ったものだ。
お昼ごはんは外食となったんだけど、僕は相変わらずカレーを食べる。
ここのキーマカレーは美味しいな。
うん、ナンも素晴らしい。
ナンと言うのは、元々はペルシア語なんだよ。
で、インド、パキスタン、イラン、アフガニスタン、ウイグルなどで食べられるパンなんだってさ。
主材料は小麦粉と塩、水、酵母で、他にヨーグルトが入ることが多いんだ。
家で作るとどうしてもお店のような味にできないから、こうやって外食の時に食べるのが一番いいね。
そして、ナンをお持ち帰りで買って貰った。
フェイト達に食べさせてあげなってさ。
さすがは僕の両親、優しいわ。
買い出しより帰宅して、さっそくフェイトの家に行こう。
猫も連れて行ってほしそうにしているけど、マンションって動物禁止が多いからお留守番ね。
……でも、アルフさんって狼だから、動物禁止のマンションじゃ住めないのか!?
いや、人間形態になれるし、使い魔と動物じゃきっと違うんだろう。
良く分からないけど……大体、魔法のせいと言う事にしておこう。
ジャンプひとっ飛びでフェイト達の住むマンションへ到着。
昼間だから人に見られると困るし、ちょっと強めのジャンプにしたけど大丈夫かな?
さて、チャイムを鳴らしてドアの前で待つ。
「……はい」
「こんにちは、タローです」
「どうぞ……」
とっても緊張したフェイトの声が聞こえた。
もしかしてチャイムが鳴るの初めてで、どうすれば良いのか分からず緊張してたんだったりして……。
その通りでした。
うん、ちょっと世間知らず過ぎないか?
でも、ミッドチルダとこっちは違うから、難しいのかな?
そんな事を考えながら部屋に入っていく。
リビングにはフェイト待っており、台所ではアルフさんがカレー鍋をかき混ぜている。
あら、これからお昼なら丁度いいかな?
「もしかして、これからご飯だった?」
「うん、今日は起きるのが遅くって、今ご飯なんです」
「そっか。じゃあ、アルフさんのお手伝いをしてくるね」
「あ、ありがとう……。アルフ、ご飯炊けなくて困ってたから……」
あぁ、昨日説明していくのを失念した!
カレーの温め方ぐらいは簡単だから誰でも出来るけど、ご飯は炊いたことがない人には難しかったよね。
前世で、お米を洗剤で洗ったり、電気釜の釜に入れずにそのままお米を入れたりする人を見たことあるからな〜。
研ぐのが下手で、半分以上排水口に流した人も居たっけ……。
「アルフさんこんにちは」
「や、タロー。こんちは」
「ご飯の炊き方教えて行かなくってごめんね。カレーの温め方は大丈夫?」
「あぁ、うちらの居た場所にはカレーはないけどスープはあったからね。それと同じだから平気さ。でも、ご飯はなかったからさっぱりだよ」
「ごめんごめん。後でちゃんと炊き方教えるね。今日は代わりにナンを持ってきたんだ」
「なんだって?」
「そう、ナンだよ」
「なにがだよ」
……何か齟齬があるな。
あぁ、ミッドチルダにはカレーがないから、ナンもないのかな?
「ナンと言う名のパンだよ。カレーにすごく合うんだ」
「あっはっは。なるほど、ナンね。こりゃ参ったよ」
アルフさんは理解したようで笑ってる。
向こうでフェイトは僕達の話を聞き、首を傾げてる。
「笑ったついでに、あたしの名前にさん付けは不要だよ。アルフって呼んどくれ」
「うん、分かったよアルフ」
暖めたカレーを持って行き、フェイトとアルフはご飯にする。
「「いただきます」」
そう言いナンとカレーを食べる2人。
1日おいたカレーは美味しそうだね。
カレーは時間が経つと、肉や野菜に含まれる糖質やたんぱく質、アミノ酸などの甘みや旨みの成分がソースに溶け出して、独特のコクが生まれる。
ブイヨンも冷却と加熱を繰り返すことで、旨み成分がよく混ざり合い熟成感が増してくる。
スパイスのシャープで強い香りが減少して、まろやかな香りになりコクが増す。
つまりカレー最高!
「そう言えば、いただきますってそっちの世界でもあるんだ」
「うん。食材となった動物に対しての感謝の言葉ですよね。リニスに教わりました」
はて、また出てきたリニスと言う名前。
ま、いっか。
「それがちゃんと分かって教えられるのは凄いね」
「うん、リニスは凄いんだよ。ね、バルディッシュ」
『Yes,
sir.』
おや、テーブルの上に三角形の金色の金属プレートが返事をした。
この間の形とは違うんだね。
そう言えばレイジングハートも杖だったり宝石だったりしたっけな。
これはちゃんと挨拶しなきゃな。
「こんにちは。君の名前はバルディッシュって言うのかい? 僕の名前は一之瀬太郎だよ。よろしく」
『……Hello.』
「ごめん、Helloぐらいはわかるけど、僕はまだ英語を勉強中だから、日本語で話しが出来るならお願いしてもいいかい?」
『……よろしくタロー』
「「バルディッシュが言語を変えた!?」」
うん、これで話しやすくなった。
なかなかいい人だね。
今度レイジングハートに会ったら、言語変更お願いしてみよう。
フェイトとアルフは驚きつつも、カレーを食べ続ける。
僕はその間、バルディッシュにカレーについての知識を話している。
『……カレーについて、メモリーに登録しました』
「うん、カレーは素晴らしい食べ物だからね。何で他の世界にないんだろう?」
『……ミッドチルダには第97管理外世界の住人も数人居ますので、もしかすると伝わってるかも知れません』
「んー、伝わっててもミッドチルダにはカレーのルーがない。つまりスパイスから作れるぐらい、カレーに詳しくないと駄目なのかもしれないね」
『……では、タローが作りに来ては如何でしょう』
「そうだね、機会があったらやってみたいね」
「「バルディッシュが饒舌だ!」」
そんな会話をしているとフェイトとアルフが食事を終える。
「「ご馳走様でした」」
ちゃんと挨拶できる子は偉いね。
片付けるついでに鍋を覗くと、もう大半なくなってる……。
よっぽど気に入ったのかな?
今度は牛タンとか食べさせてあげようかな。
さて、片付けを終えて、リビングに全員が揃う。
なんとなく、フェイトとアルフは緊張している感じがするね。
「んじゃ、約束のジュエルシードだったよね。はい、これあげる」
僕は自分のポケットの中からジュエルシードを取り出し、フェイトの方に投げ渡す。
フェイトとアルフはワタワタしながらそれをキャッチする。
あら、投げて渡したのは意地悪だったかな?
「ふぇ、フェイト。これ、本物のジュエルシードだよ!」
「あ、アルフ。は、早く封印しなきゃ。バルディッシュ!」
『Sealing.』
バルディッシュも心なしか点滅が激しいな。
そしてバルディッシュの中にジュエルシードが入っていく。
『Receipt
No.Ⅱ.』
フェイトは少し呆然とそれを見つめるが、ハッとなって顔を上げて僕を見つめる。
「あ、ありがとう。本当に、本当に……」
「タロー、ホントにありがとよ〜」
「別に良いよ。これで明日は一緒に野球観戦に行こうね。もちろんバルディッシュもだよ」
「うん、うん、うん」
「あぁ、分かったよ」
『Ok.』
これで明日はみんなで行けるぞ。
フェイト達に野球のことを教えることも出来るし、ジュエルシードを1個処分できたから一件落着っとね。