第28話 水族館
さくらさんの家に行って、水族館のペアチケットを貰い、ついでにジュエルシードをゲット。
そして、イレインとキャッチボールをしながら友達になった。
「タロー君、アリサちゃん。結構遅い時間になっちゃったから、もし良ければこのまま家に泊まって、明日水族館に行ったらどう?」
「んー、僕は多分平気だと思うけど、アリサは大丈夫?」
「ちょっと待ってて。今、鮫島に電話して聞いてみるから」
僕とアリサはお互いに電話で確認をする。
うん、予想通りだけど僕は問題なく了承を得られたよ。
アリサは……ニコニコしているから問題なさそうだね。
「僕は大丈夫だよ。とりあえず着替えをどうするかなーと」
「あたしも平気。鮫島が着替えを持ってきてくれるから、タローのも頼んでおいたわよ」
「ありがとうアリサ」
「べ、別に大したことはないわ」
「じゃあ、2人とも決まりね。今部屋を用意するから、夕飯までのんびりしていてね」
そう言い、さくらさんはイレインを連れて奥に行ってしまう。
僕たちは用意された部屋でノンビリと雑談をする。
ゴールデンウィークでアリサが父親と行った買い物のことを色々と話してくれる。
他にも塾のことも、明後日行く温泉旅行のことも話をする。
僕からは野球の話をしたり、他のスポーツのことを話す。
そんな事をしていると、あっと言う間に時間が過ぎてしまった。
さくらさんが僕達を呼びに来て、一緒に食堂へ移動する。
そこで夕飯を用意されているんだけど、用意しているメイドさんが……!?
「「イレイン?」」
「な、なによ!」
そこにはメイド服を着て給仕するイレインがいた。
さくらさんはそれを笑って見ている。
「さっき、人工知能の感情をONにして、全て元のままにしたのよ」
「そうなんだ。良かったねイレイン」
「あぁ。もう、戦わなくて良いらしい。タローの言うとおり色々と学んでみるよ」
イレインは不器用に笑ってみせる。
「しばらくは綺堂家で教育をして、メイドとして一人前にするわ」
「あ、メイドなのね」
「働かざるもの食うべからずってね。ノエル達よりも性能が良いから、すぐになんでも出来るようになるわよ」
さくらさんは楽しそうだ。
僕とアリサは顔を見合わせて、イレインの方を向く。
イレインは恥ずかしそうにそっぽを向く。
「まぁ、時間はたっぷりあるんだから頑張ってね」
「メイドとして一人前になったらあたしの家で雇ってあげるわよ」
そう言ってみんな笑う。
笑顔のある食卓はご飯が美味しいな〜。
「そう言えばなんでイレインは給仕とか出来るの?」
「うん、忍に頼んでノエルのデータを少し貰ったの」
「「教育って言いながらズルしてる!?」」
意外とさくらさんは効率的に教育しているんだね。
知識だけじゃ駄目だから、ちゃんと経験をつまないとね。
夕飯の後はさくらさん、イレインを混ぜて雑談をする。
僕達の学校生活とかも合わせて話をするんだけど、イレインは興味深そうに聞いている。
「イレイン、学校とか行ってみたい?」
「あたしはイイよ。とりあえず勉強とかは後でダウンロードさせて貰うしな」
「学校は勉強をする場所だけではなく、共同生活とかを学ぶのよ」
「そうそう、アリサも昔はすずかとなのはと喧嘩してたもんね」
「ちょ、ちょっと。なんでそれをタローが知っているの?」
何故かアリサが焦っている。
さくらさんは話を知っているみたいで笑ってる。
「いやぁ、あの場に僕いたからさ」
「そんなの知らないわよ」
「そっか。まぁ、いいじゃない」
「良くないわよ!」
そんな僕とのやり取りをイレインは興味深そうに見ている。
さくらさんは笑いながらイレインに言う。
「ね、あーゆーのは学校でないと経験できないのよ。私も学生時代は色々あったから、今の私がいるのよ」
「そうなの……ですか」
「うん。その辺はまた今度話してあげるね」
「はい」
そんな雑談で夜は更けていく……。
次の日、みんなで朝食を摂り、さくらさん達にお礼を言い水族館へ向かう。
開園前に水族館へ到着。
そんな時間なのに、ゴールデンウィークだけあってかなり混んでいるね。
僕は人ごみに流されそうになるアリサの手を繋ぎ、水族館の中へ進む。
「ちょ、ちょっとタロー」
「あ、ごめん。さすがに人が多いから、はぐれちゃうといけないしね」
「あ、え、そう、そうよね。はぐれたらいけないもんね」
アリサの顔を見ると真っ赤になっている。
人ごみで暑いのかな?
水族館に入ってすぐの通路では、色とりどりの魚たちが大きな水槽の中を泳いでいる。
「わぁ〜、綺麗ね〜」
「うん、熱帯魚はカラフルで綺麗だね」
「あたしの家でも飼ってるけど、この量はいないわ」
「さすがにこの量を飼っていたら世話が大変でしょ」
「熱帯魚ってちゃんと世話すれば飼うのはとても簡単なのよ」
「へー、そうなんだー」
「タローは、今度うちに見に来なさいよ」
「うん、楽しみにしてるね」
そう言えばアリサの家はまだ行ったことがないや。
やっぱりすずかの家みたいに大きいのかな?
アーチ型の水槽の下を通る。
「水に囲まれるってのは不思議な気分だね」
「うん、まるで海の中にいるみたい」
「アリサは泳げるようになったんだから、今度はスキューバダイビングとかやってみたら?」
「それならタローも付き合いなさいよ」
「それは楽しそうだね。僕は素潜りでいい?」
「ダメに決まってるじゃない!」
何で駄目なんだろ?
道具がある方が邪魔なのに。
イルカショーのステージで最前列の椅子が不自然に空いていたので、あまり気にせずアリサと2人で座る。
そしてショーが始まる。
「なんでこんないい場所が開いてたのかしら?」
「んー、良く見えるから別に良いんじゃない?」
「そうなんだけど……」
イルカがジャンプの曲芸を始める。
水中で速度をつけて水面から飛び上がり、空中にぶら下げたボールを嘴でつついたり、尾で叩いたりする。
それを見て観客はテンションが上がっている。
「すごい、すごい」
「ホントだね。僕もやってみたいな」
「さすがに止しておきなさい」
あっさり流された……。
まぁ、いいか。
ショーを続けて見ていると、イルカが跳ねてこっちに水が飛んでくる。
「きゃ……」
水がかからないようにアリサを片手で抱き、空いている片手で水を全て弾き返す。
「だからこの席が空いていたのか〜。ね、アリサ」
あれ、アリサから返事が来ない。
どうしたのかな?
腕の中にいるアリサを見ると、真っ赤になってカチコチに固まってる。
「アリサ、大丈夫?」
「…………」
「アリサ?」
「え、あ、う……」
「う?」
「タローのばかぁ」
蚊の鳴くような小さな声でアリサが言うけど、なにか馬鹿なことしたっけな?
あ、もしかして今の姿勢が辛いのかな?
「この姿勢が辛いなら離すけど、また水が飛んでくるかもよ」
「う、ううん。大丈夫。このままが良い。このままで居て」
「うん、分かったよ」
その後、イルカショーが終わって、アシカショーが終わるまでアリサは僕の腕の中で固まったままでいた。
アシカショーなら水は飛んでこないから離してあげようと思ったんだけど、アリサは僕の腕にしがみついているので、そのままにして最期まで見たよ。
「アリサ、ショーは終わったよ」
「う、うん。そ、そう」
「じゃあ、次にいこうか」
「……うん」
その後、アリサは僕の腕に自分の腕を回して移動する。
顔は真っ赤なのにご機嫌そうだから良いのかな?
ちょっと動きにくいけど、アリサが喜んでるからいいけどさ。
屋外の特設会場へたどり着くと、ペンギンのショーが始まっていた。
すごい混雑してるから、アリサと余計にくっつく。
「あぅ〜」
「アリサ、平気? 人混みが辛いなら移動するけど」
「このままでいい……」
「そっか、じゃあペンギンでも見ようか。あの眉毛ペンギンってなんだっけ?」
「イワトビペンギンね」
「じゃあ、あれは?」
「うん……」
アリサと2人でペンギンの散歩を見た。
係員の人が写真を撮ってくれるというけど、カメラなんて無いからなー。
そう思ってるとアリサは携帯電話を渡し、僕と一緒にペンギンと写真を撮ってもらう。
アリサはご満悦だ。
その後も水族館を回る。
1日があっと言う間に過ぎて行く。
明日から温泉旅行なので、あまり遅くないうちに帰らないとね。
「あっという間だったね」
「うん」
「水族館って面白いね〜」
「うん」
「今日はもう帰らないと」
「……うん」
「また明日から一緒に旅行だから、いっぱい遊べるね」
「うん!」
迎えに来てくれた鮫島さんの車に乗って家へ帰る。
家まで送って貰って申し訳ないな。
「今日はありがとうね」
「うん。タロー、また明日ね」
そう言って別れる。
さー、両親とリニスと夕飯を食べながら今日のことを話さなきゃ。