第35話 散歩
変な盛り上がりをしている高町家とユーノ……。
それを受け止めている忍さんとノエルさん。
残りのメンバーは、ちょっと呆れているんだけどさ。
その後は高町家が色々と話をしているので、それに参加しない僕とアリサ、すずかとファリンさんの4人で観光に行く。
本当にのんびりした場所だから、あまり観光名所なんてないんだけどね。
足湯に浸かりながら、夜にあったなのはとフェイトの戦闘のことを話す。
みんな、さっきのおかしいなのはの理由がわかったみたいだ。
「タロー。なのはとフェイト、どっちがどれぐらい強いの?」
「地力は互角に近いけど、今は若干フェイトが勝っているかな。後は戦闘経験になるけど、それは現時点ではダントツにフェイトのほうが上」
「そうなんだ……。なのはちゃんがフェイトちゃんに勝つにはどうすれば良いの?」
「うーん、後は工夫とレイジングハートとの連携次第かな。そのためにレイジングハートが日本語をしゃべるようになったし。後は、なのはの戦闘経験が増えれば、差はないようなものだしね」
「じゃあ、次は勝てるの?」
「その辺は本当に分からないよ。ただ、覚悟はフェイトの方が上っぽいから……。そんな事を言ったら精神論になっちゃうかな〜?」
「そうね。でも、覚悟を決めたなのはは強いわよ」
「そうだよね。アリサちゃんが叩かれるぐらいだし」
「もう、すずか! その話はもうしないでよー」
ポカポカとすずかを叩くアリサ。
それを笑いながら見ている僕と、オロオロするファリンさん。
そんな話をしながらのんびり過ごす。
観光が終わり、空いた時間でアリサやすずかとキャッチボールをしたよ。
「そう言えばタロー」
「なに?」
「なのはが小さい頃、公園でキャッチボールをした相手って……」
「さあ、どうだろうね」
「はいはい、そう言う事にしておいてあげる」
「ありがとアリサ」
「べ、別にお礼を言われることなんてしてないわよ」
「それでも、ありがとう」
「……うん」
アリサは運動が得意だからすぐにキャッチボールは出来るようになったし、すずかの身体能力の高さはここでも発揮されていた。
ファリンは……まぁ、自動人形だから性能は良いんだろうけど、なんで投げた方向に飛ばないんだろう。
僕に向かって投げておいて、真後ろに飛んで行くボールには驚いたよ。
そのボールも僕はちゃんとキャッチしたけどね。
アリサとすずかが自分のグローブを持って来ていることには驚いたね。
2人とも野球に興味を持ってくれたんだね。
それは僕にとって、とても嬉しいことだ。
また野球の試合があったら応援しに来てもらおうかな。
今はまだジュエルシードの件でゴタゴタしてるけど、それが落ち着けば野球に力を入れられるしね。
夕方に部屋に帰ると、色々な話し合いは終わったようだ。
とりあえずどんな感じか聞くと、なのはのトレーニングを恭也さんと美由希さんが見る事になり、そしてなぜかユーノに士郎さんが修行をつけることに!?
僕達が居ないうちに、何でこうなった!
でも、折角盛り上がってるので、そっとしておこう……。
温泉に入り、夕飯を食べ、ゆっくり休む。
ユーノと士郎さんは温泉の中でも仲良く話をしている。
内容は若干物騒な修行のことだったので、僕は聞かないことにした。
飛針や鋼糸なんて単語を僕は聞いてませんよ!
旅行最終日の朝、寝ているアリサを優しく揺すって起こす。
「う〜ん、後5分〜。ふにゃ。……タロー?」
「おはよアリサ」
「お、お、お、おはよ」
「声裏返ってるけど平気?」
「だ、大丈夫に決まってるじゃない!朝の散歩よね、直ぐに着替えてくる」
そう言って慌てて着替えを持って部屋から出ていく。
さて、僕も準備しようかな。
まぁ、女性の支度は時間が掛かるから、時間はあえて言わないけど、僕はそこそこ待たされたよ。
着替え終えたアリサと一緒に外を歩く。
昨日の昼間にも歩いているんだけど、アリサは暇してないかな?
「それにしても、朝は少し冷え込むわね」
「そうだね。でも、ちょっと寒いほうが身体が締まるというか、目が覚めるからいいんじゃない?」
「そうね」
「昨日の昼間歩いたけど、朝だと少し違うかな?」
「うん、あたしは今の方が好きよ」
「それは良かった」
そこで会話が止まり、無言で歩く。
たまにポツリポツリと話をするんだけど、長くは続かない。
でも、こんなのんびりとしたのも悪くないな。
散歩を終えて、朝食をみんなで済ませ帰り支度になる。
その隙間を見つけ士郎さんと桃子さんが僕を呼び出す。
「タロー君、わざわざ申し訳ないね」
「いえ」
「君に聞きたいことが色々あってね。恭也達から概要は聞いているんだけど、その辺を詳しくさ」
「はい、分かりました。それでは……」
魔法のこと、ユーノのこと、ジュエルシードのこと……。
廃ビルの件、木の化け物の件、月村家の件も説明する。
そして、フェイトのことも。
話が終わるまで士郎さんと桃子さんは黙って聞いてくれた。
「そうか……。君に聞くのもおかしな話なんだが、2人の戦闘スタイルとか分かるかい?」
「はい。なのはは重装高火力型、フェイトは軽装高機動型って感じですね」
「それなら相性は悪いわけではないが、逆にどっちに転ぶかわからないのか」
「そうですね。現時点では互角に近いですが、なのはには経験が圧倒的に足りませんから……」
「ふむ、恭也と美由希のトレーニングでその辺はカバーさせよう」
「ユーノ君はフェレットに戻らなくても平気なの?」
「はい、本人も魔力を回復し終わってるようですので、人型で生活しても問題はないようです。ただ、住む場所とかを考えるとどうしても……」
「う〜ん、住む場所があれば良いのね」
「多分ですが、そうだと思いますよ」
「それならウチに住ませれば良いのよ。内弟子みたいにね」
「おぉ、その手があるな。部屋を分けさせる建前となる」
「じゃあ、ユーノ君に後で話をしましょう」
そう言う感じで話はまとまった様だ。
ついでだから、なのはをお姫様抱っこしているユーノの写真を見せたら、桃子さんは「お赤飯炊かなきゃ」と喜んでいたけど、士郎さんからは黒いオーラが見えた。
うん、気のせいってことにしておこう。
帰りの車の中で士郎さん達は話をしたようで、そのあたりからユーノとなのはの念話が駄々漏れだ。
(な、な、な、なのは。ど、ど、ど、どうしよう?)
(ユーノ君落ち着いてなの。とりあえず深呼吸、深呼吸)
(すーはー、すーはー)
いや、念話で深呼吸しても意味なくないか?
(うん、少し落ち着いたよ。ありがとう、なのは)
あ、落ち着いたんだ。
(僕を内弟子で住み込みの修行って本格的だよね。なのははどう思う?)
(ユーノ君と一緒に住めるから、わたしは賛成なの)
(僕もなのはと普通の姿で住めるのは嬉しいけど……)
(ユーノ君……)
(なのは……)
うん、仲良き事は良い事かな。
「恭也さん。向こうの車の中で、ユーノを高町家に住み込ませる話が出てますけど、聞いてますか?」
「あぁ、父さんに言われたよ。内弟子という建前で、人型で住み込ませ、同じ部屋にさせないって。俺も賛成だな」
あぁ、ここにはシスコンが居たのね。
じゃあ、この写真をみんなで見てみよう。
「「「「「うぁ〜、ユーノ(君)大胆!」」」」」
「ユーノとは、あとでゆっくり話をする必要があるな」
女性陣は大喜びで見ている。
恭也さんは不機嫌になったけど、忍さんとノエルさんからフォローされ、今度2人をお姫様抱っこすることになったようだ。
結局その後はその3人でイチャついてるし……。
それで機嫌が戻るのは男の性か。
何だかアリサからの羨ましそうな視線が僕に飛んできていたけど、きっと気のせいだろう。
高町家に到着して、ここでみんな解散。
ユーノはこのまま高町家に住み込み、修行の開始だそうだ。
妙に笑顔の士郎さんと恭也さんが怖かったな。
どうせやり過ぎたら女性陣に怒られるだろうし、2人とも本気で怒ってる訳じゃないもんな。
どっちかって言うと、嬉しい反面複雑ってところか。
みんなと別れ、自宅へ帰る。
「ただいまー」
「「おかえり〜」」
(おかえりなさい)
家では両親とリニスが出迎えてくれた。
そしてそのまま両親とリニスと一緒に夕飯。
ご飯を食べながら、旅行であったことを3人に話す。
なのはとフェイトの戦闘のところで、リニスが複雑そうにしていたな。
とりあえず、後でお部屋でゆっくり話すとしよう。