第43話 契約
みんなで食事が終わり、今後についての話し合いが始まる。
それもフェイトの持ってきた温泉まんじゅうを食べながらね。
「そう言えば、リニス。僕との契約は終わったかい?」
「え、あぁ、そうですね」
その言葉に残りの3人は首を傾げる。
「タロー。アンタはリニスとどんな契約をしたんだい?」
「んーっと、確かフェイトとプレシアの救済だったかな?」
「何でそこで?が付くんですか……」
「えー。この騒ぎに僕が参加する建前だったから、契約はどうでも良いかなーって」
その言葉にため息をつくリニス。
その後リニスは、首輪につけたジュエルシードにより魔力供給していることを説明する。
契約が終わったので首輪を外すと言うリニスと、外さないでと言うプレシアさんで揉めてるな。
「ですから、私は2人が救われたのでもう充分ですよ。いずれ管理局に返すジュエルシードを、私がいつまでも使っていられません!」
「でも、それが無くなったらリニスはどうするの?」
「役目が終われば消える。それが使い魔ですよ」
「でも……」
本当にプレシアさんが一気に弱々しくなってるな。
ちなみにフェイトとアルフは2人を見てオロオロしているだけ。
こんな勢いじゃ、なかなか話に参加できないんだろうね。
とりあえず僕の意見ぐらいは言うかな。
「あのさ……リニスとプレシアさんでまた契約するってのは駄目なの?」
「「「「それ(だ!・よ!)」」」」
あれよあれよと言う間に、契約の準備が済まされ、リニスとプレシアさんは契約を交わす。
契約内容は、一緒にフェイトを見守ること……だってさ。
みんな喜んでもらえる解決案を出せたみたいで、良かった良かった。
その後は、ジュエルシードをどうするかをみんなで話し合った。
現時点で僕の持ってる5個とフェイトが持っている3個、合計8個をプレシアさんに預けた。
そして、残りのジュエルシードをとりあえず集めようと言うことに。
このまま放置しておくと海鳴市に迷惑かかるからね。
なのはが6個持っているはずなので、残りのジュエルシードは7個だ。
プレシアさんは一応自分の体の検査とかしたいので回収には参加できないけど、探索にはフェイトとアルフだけでなくリニスも参加することになった。
この人数なら随分と楽になるかな?
残りを集めるために時の庭園から地球に移動しようとすると、プレシアさんがおずおずとフェイトに話しかけてくる。
「あの……フェイト」
「なに、母さん?」
「フェイト、あのね……。母さんと、きゃ、キャッチボールをしましょう!」
「……えっ?」
プレシアさんの言葉にフェイトの目が点になる。
当然アルフとリニスも訳がわからないって顔になってるな。
「キャッチボールって、相手と分かり合えるってタローに聞いたわ。だから、フェイトが向こうに行っていて、私が検査でしばらく会えなくなる前に……。えっと、その、一緒にやりたいなと……」
「……うん!」
フェイトの言葉にプレシアさんは喜んでいる。
アルフとリニスは、キャッチボールで相手と分かり合えるってところで凄い頷いていた。
まぁ、それはいいか。
僕のカバンからグローブとボールを出して2人に渡す。
そして2人はキャッチボールを始める。
最初は変な方向に飛んで、それを拾いに行ったり、前に飛ぶけど上手くキャッチできなかったりと、あまりキャッチボールっぽくなかった2人。
だけど、徐々に慣れて行き、十数分後にはちゃんとキャッチボールになっていたね。
その姿を僕たちはのんびりと温泉まんじゅうを食べながら眺めていた。
「何だか夢みたいだね。あの2人があんな風になるなんて……」
「そうですね。タローはどんな魔法を使ったんですか?」
「僕は魔法使いじゃないよ……」
「野球選手だろ」「野球選手でしょ」
「わかってるなら言わないでよ……」
そんなやり取りでアルフとリニスは笑ってる。
感情のリンクでお互いの主人から、凄い幸せな気持ちが流れてくるんだって。
結局キャッチボールがなかなか終わらず、お茶の時間になったので、お茶とおやつを食べてから帰る羽目になった。
転送ギリギリまでフェイトとプレシアさんが抱きついていたのには、さすがにアルフとリニスも呆れていたよ。
そんな訳で、やっと海鳴市に帰ってきました!
携帯電話が圏外から圏内になった途端、大量のメールが受信された。
えっと……三人娘からと両親からだね。
両親からは各一通で、気を付けてとか、ちゃんと帰って来いとかだった。
なのはからは次元震を起こしちゃった謝罪と、学校を休んで心配してるって内容。
アリサとすずかからは、結構な量送られてきているね。
内容はどうしたの? から、連絡しなさい! に流れて行ってる感じ。
2人とも競うように1時間置きに送ってる。
大丈夫だよメールを全員に送信するかな。
メール作業が終わったので僕は自宅に1回帰ると言うと、フェイトとアルフは2人でしばらくジュエルシードを探してくるって。
僕とリニスでとりあえず帰宅。
そして母に詳しい話をしておく。
全部話し終わると抱きしめられて「お疲れ様」って言われたよ。
ちょっとだけ恥ずかしいな。
少しゆっくりしようと思っていたら、ジュエルシードの発動の気配を感じる。
「タロー!」
「うん、わかってる。母さん行ってくるね」
「は〜い、気を付けてね〜」
猫になったリニスを頭に乗せて、カバンを持って高速移動をする。
一瞬で到着っと。
封時結界の中ではジュエルシードが樹を取り込み、周辺への無差別攻撃を始める。
おっ、縄跳びみたいな感じで、この攻撃は面白いな〜。
「た、タロー。揺れてます!揺れてますって!」
「あ、ごめんごめん。つい面白くって」
僕の頭に必死にしがみつくリニスに謝罪をして、攻撃範囲から間合いを取る。
そこにフェイトとなのはの攻撃が始まる。
でも、フェイトのフォトンランサーも、なのはのディバインシューターも樹が張ったシールドに防がれてしまう。
「生意気にバリアまで張るのかい」
「今までのより強いよ。なのは!」
アルフは樹からの攻撃を防ぎ、ユーノは結界を維持している。
そしてなのはとフェイトは同時に魔法を唱える。
「行くよバルディッシュ!貫け轟雷!」
「行くよレイジングハート!撃ちぬいて……」
「サンダースマッシャー!」
「ディバインバスター」
『Thunder smasher!』
『Divine Buster.』
「「封印!」」
2人の攻撃がシールドを打ち破り、ジュエルシードを封印する。
そのジュエルシードの前に4人が揃う。
「ジュエルシードは衝撃を与えちゃいけない」
「うん、昨夜みたいなことになったら、レイジングハートとバルディッシュが可哀想だものね」
2人は視線を合わせる。
「だけど譲れないから……。私はフェイトちゃんと話がしたいだけ。私が勝ったらお話聞いてくれる?」
「……え?」
「行くよフェイトちゃん!」
「ちょ、ちょっと!えっと、な、な、名前なんだっけ……?」
フェイトはなのはを止めようと思って名前を呼びたかったんだろうけど……。
あれじゃ逆に感情を逆なでしてるよね。
なのははレイジングハートを構え、魔法を発動させる。
「ディバインバスター・フルバースト」
『Divine Buster Full Burst.』
ディバインバスターと同じ発射シークエンスだけど、ディバインバスターが拡散してくる!?
回避しようとしたフェイトに、拡散した砲撃がまさに壁のように迫り、回避不能の攻撃となる。
もぉ、仕方がないね。
とりあえず移動してフェイトを抱き、砲撃の隙間を抜けてなのはの後ろに到着する。
「殺(や)った!?」
「いや、その漢字は怖いから……」
「え!?」
なのはの後ろから声をかけると、驚いた顔で振り向く。
「な、なんでタロー君が?」
「んーっと……とりあえずレイジングハートを向けるの止めて欲しいんだけど」
なのはは、まだ警戒していてレイジングハートを構えたままだ。
フェイトは僕の腕の中で真っ赤になってアワアワ言ってるけど、とりあえず後回し。
なのはになんて説明すれば良いのかな?
「ストップだ! ここでの戦闘は危険過ぎる!」
いきなり上空から人が現れ、レイジングハートを掴む。
なんだろうこの黒髪の男の子は?
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ! ……詳しい事情を聞かせてもらおうか?」