第44話 時空管理局
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ! ……詳しい事情を聞かせてもらおうか?」
「管理局!?」
クロノさん?がそう言うと、アルフが驚いてる。
時空管理局ってなんだっけ?
随分前に聞いた気がするんだけどね。
僕の腕の中にいるフェイトに聞いてみようかな。
「ねえ、フェイト。時空管理局ってなに?」
「はぅ〜」
返事が無いな。
仕方がない、前に教えてくれたユーノに聞こう。
「ユーノ。前に教えて貰ったような気がするんだけど、時空管理局ってなんだっけ?」
「次元世界を管理・維持するための機関だよ。警察と裁判所が一緒になった様なところね」
「へー、ありがと」
そんな話をしながらユーノとアルフが集まってきた。
その間クロノさんは周りを警戒している。
「まずは武装解除して欲しい。このままではゆっくり話をすることも出来ない」
「そう言うクロノさんはそのままなんですか?」
「君達が解除したら僕もそうするさ。さすがにこの人数差だと、最後に解除せざるを得ない。そのかわりにデバイスはしまうよ」
そう言うと持っていた杖をカード状にしてポケットにしまう。
それを見てなのははバリアジャケットを解除する。
フェイトは……。
「あ、あの……タロー。そろそろ降ろしてもらえるかな……」
「あ、軽いからすっかり忘れてた。ごめんね」
そう言ってフェイトを降ろすと、フェイトもバリアジャケットを解除する。
ユーノとアルフは私服に戻った。
あ、あれもバリアジャケットなんだ。
それを見てクロノさんもバリアジャケットを解除した。
「すまないね。それとこれは預からせてもらうよ」
「あ……」
そう言ってジュエルシードを拾うけど、なのはが恨めしそうな顔をしている。
別に誰が持っていても良い気がするんだけどな。
クロノさんは空中で何か操作すると、空中に画面が現れる。
その画面には緑色の髪をした女性が写っている。
「艦長、無事に武装解除及びジュエルシードの確保をしました」
「ご苦労様、クロノ執務官。詳しい話が聞きたいわ、その子達をアースラまでご案内して」
「分かりました。君達、申し訳ないけど次元空間航行艦船アースラまで同行願えないか?」
「断ったら何かありますか?」
「タロー!?」
僕の言葉にユーノが反応する。
強制的なのかどうなのか聞きたいだけだったんだけどな。
「強制権はないから断っても構わないよ。だけど、話が聞きたいことは確かだから、連絡先を教えてもらえると助かる。後日こちらから連絡し、そちらの都合のいい時にお邪魔して話を聞かせてもらうよ」
「はい、わかりました。特に断る理由もないので行きますよ」
「タロー……。じゃあ、何で聞いたんだい?」
アルフが呆れてる。
「いや、そのアースラってところに行くにしても、家に連絡したいなーって」
そう言って母に連絡を取る。
当然のごとく行ってらっしゃいで済んだよ。
何だか放任過ぎる気もするんだけど、僕を信じてくれているんだろうな。
「他に連絡する人がいれば早めに頼むよ。あまり艦長を待たせるのも申し訳ないからね」
「あ、私も家に電話するの」
なのはがユーノと揃って連絡してる。
今あったことはちゃんと士郎さんにメールしておいたけどね。
魔法のことを隠して説明は難しいでしょうに……。
なのは達の電話が終わったところで、クロノさんが空中に画面を出して連絡を取る。
「エイミィ、転送を頼む」
「はいは〜い」
「それじゃ集まって……。転送!」
光りに包まれ、気が付くと近未来っぽい場所に出る。
思わずキョロキョロしちゃうよね。
フェイトは不安なのか、僕の服の裾を摘んでいる。
廊下をクロノさんの案内で進み、ひとつの部屋に通される。
部屋の中は……和風モドキ?
室内なのに桜は咲いているし、鹿威しはあるし、畳に毛氈(もうせん)もある。
あ、毛氈ってのはお寺や神社・和風家屋の座敷や、廊下・お茶席・式場などで下にひいてある獣毛を原料としたフェルトのことだよ。
良く見る色は赤だね。
要するに外国人に良く見る、間違った日本みたいだ。
室内には緑髪の女性と、金髪の男性がいる。
女性は抹茶と羊羹をこちらに出し、自分の抹茶には角砂糖を何個か入れる。
……甘そうだな。
「皆さん、わざわざ来ていただいてありがとうございます。私はこのアースラの艦長でリンディ・ハラオウンです」
「自分の名は時空管理局特別査察官シーマ・エルグランドだ」
「まずは、抹茶と羊羹をどうぞ」
2人が自己紹介するので、僕達も自己紹介をする。
ん?フェイトの自己紹介の時に、微妙にシーマさんが反応した気がするな。
その後はジュエルシードの経緯をユーノが話す。
それに合わせてフェイトの事を僕が追加して話をする。
なのはとユーノはビックリしているけど、とりあえず放置。
話をすべて聞き終わるとリンディさんが口を開く。
「なるほど、ジュエルシードを発掘したのはユーノさんだったんですね」
「はい」
「そして責任を感じなのはさんと回収していると。そしてフェイトさんはお母様のプレシア・テスタロッサさんが偶然それを知り、危険だから誰にも悪用されないよう回収を命じられたと」
「は、はい」
「緊張しなくてもいいわ。貴方達はとても立派なことをしているのよ」
リンディさんがフェイトを気遣って言ってくれるが、クロノさんは強い口調で言ってくる。
「だけど、同時に無謀だ。君達は民間人で、安全も確保できていない中、ロストロギアを集めるなんて危険過ぎる」
その言葉にうつむくなのはとユーノ。
そこにシーマさんが口を挟む。
「まぁ、クロノ執務官。そこまで強く言う必要もないでしょう。それよりも見つけたジュエルシードはどこにあるのかね?」
「あ、はい。レイジングハート」
『put out.』
それにより6個のジュエルシードが出てくる。
シーマさんはフェイトを見ている。
「君の回収したものは?」
「あ、あの、母さんが持ってます……」
「プレシア氏が持っていると。どこにいて、何個持っているんだ?」
「と、時の庭園にいます。数は8個です……」
それを聞き、頷くシーマさん。
「それでは時の庭園の座標を教えて欲しい。そこまで取りに行かないといけないからな」
「は、はい」
その後、時の庭園の座標を教えたり、なのはに次元震の恐ろしさを教えたりと説明が続く。
説明が終わると、今後についてリンディさんが話し始める。
「これよりジュエルシードの回収は、時空管理局が全権を持ちます」
「「え!?」」
リンディさんの言葉になのはとユーノは困惑している。
ちゃんとやってくれるなら僕はどうでも良いんだけどさ。
フェイトとアルフも特に気にしてないね。
「キミ達は今回の事は忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい」
「でも、そんなの……」
「次元干渉に関わる事件だ。民間人が簡単に介入するレベルの話じゃない!」
その言葉になのはとユーノは黙ってしまう。
「だが、無理強いしても納得は行かないだろう。だから、キミ達で1回ちゃんと話し合ってくれ」
「クロノ執務官の言うとおりよ。勝手に介入される方が私達には脅威なの。もし、危険をちゃんと理解して、それでも覚悟を持って協力をしたいなら、私達はそれを受け入れるわよ」
「本当はこのまま諦めてくれるのが嬉しいんだが……」
クロノさんとリンディさんはこちらの事を心配してくれているね。
なのはとユーノの責任感の強さだと、勝手に残りを探しに行きそうだし……。
「自分としてはキミ達の協力は嬉しいがね」
「シーマ査察官、今のは迂闊な発言ですよ」
「それはすまないな。しかし、この魔力の高い魔導師の協力があると、こちらが助かるのは事実だ」
「ですが……」
リンディさんとシーマさんが意見の相違で揉めている。
そんな中、クロノさんが僕達を部屋から連れ出す。
「ごめん。今の艦長とシーマ査察官の話は聞かなかったことにして欲しい」
そう言い、僕達に頭を下げる。
そして優しい顔になり、僕達を最初に転送されて来た部屋に案内する。
「送って行くよ。元の場所で良いかな?」
「はい」
転送され元の場所に戻る。
「キミ達でしっかり話し合ってくれ」
そしてメモ紙を僕に渡す。
「これが僕の連絡先だ。何かあったらここに連絡してくれ。僕で良ければ力になる」
「はい。でも僕はこの連絡先の意味がわかりませんけど……」
「え、キミは魔導師じゃないのかい?じゃあ、そこのキミに頼むよ」
「は、はい」
ユーノがそれを受け取りクロノさんは転送して帰る。
僕たちは顔を見合わせ今後どうするかと言う話になる。
「とりあえずここで話をしても仕方がないから、僕の家で話をしようか。なのはとユーノは自宅に連絡しておいてね」
「うん、わかったの。……フェイトちゃんも来てくれるの?」
「うん。タローの家は初めてだから……」
「フェイト、それは今関係ないよ……」
「むぅ……」
「じゃ、行こうか」
そう言ってみんなで僕の家へ向かう。
到着する前に電話で母に知らせておかないとな。