第49話 激戦
時の庭園に突入した6人。
待ち構えるは無限に現れる傀儡兵。
それを薙ぎ払い、先に進む僕達。
「ここで王座の間と魔力炉がある場所が分かれてます。上が母さんのいる王座の間、下が魔力炉のある場所……」
フェイトが時の庭園の案内をしてくれるけど、この螺旋階段の様な場所にも傀儡兵がたくさんいる。
真ん中を飛んで行くには傀儡兵が障害物になり難しそうだ。
そこでクロノが提案を出す。
「ここで二手に別れよう。ジュエルシードが魔力炉に集まってしまったら終わりだ」
「そうだね。でも、魔力炉にいるのは武装局員と、ジュエルシード。戦闘が出来て封印が出来る人が行かないと……」
ユーノの意見に頷くみんな。
でも、封印できないのって僕だけなんじゃ……あ、アルフも封印できないとか?
それはないか……。
「時の庭園の道案内が出来るのはフェイトとアルフだけだ。だから2人には別れて貰い、フェイトとタローでプレシア・テスタロッサの確保。残りのメンバーで魔力炉の方に当たろうと思う」
「分かったよ。くれぐれも無理はしないでね」
「誰に物を言っているんだ。タローこそ民間協力者なんだから、気を付けてくれよ」
そう言ってニヤリと笑うクロノ。
「とりあえず道を先に切り拓くか……。なのはは直上砲撃、僕は直下砲撃をして傀儡兵を薙ぎ払うぞ」
クロノの言葉になのはが頷き魔法を唱え始める。
その間、傀儡兵の攻撃はユーノの防御魔法で防ぐ。
「ブレイズキャノン!」
『Blaze Cannon.』
「ディバインバスター・フルパワー!」
『Divine Buster Full Power.』
ユーノが飛び避け、上に向かってなのはのディバインバスターが撃ち出され、威力を落とさずに放射域が広がって行く。
下には熱量を伴う破壊魔法が撃ち出された。
爆発音が聞こえ傀儡兵が大破していく。
無限増殖だから気休めなのかもしれないけど、湧くまでのタイムラグで先に進める。
「今のうちに僕たちは真ん中の穴を飛んで降りるぞ」
それに対し頷く3人。
「タローはくれぐれも無茶をしないように。フェイトはタローのことを色々な意味で頼んだぞ」
クロノは僕の方を見てそう言うと、まっ先に穴に飛び込んで行く。
「フェイトちゃん、また後でね」
「タロー、フェイトに迷惑かけるんじゃないよ」
「気を付けてね」
3人も一言ずつ残し、その後を追いかける。
僕達も上に行かないといけないんだけど、入口の方からは傀儡兵がどんどん迫ってくる。
「後ろから来るのも減らしてから行こうか」
「うん。タローは飛べないから私が掴んで行くよ」
「分かった、よろしくね」
助走をつけて全力で入口の方へボールを投げる。
「レーザービーム!」
爆音とともに、入口の方から来ていた傀儡兵をほとんど破壊した。
他にいないことを確認し、フェイトの手を握る。
「はい、準備いいよ」
「えっ、あ、う、うん。し、しっかり掴んでいてね」
そう言ってフェイトは螺旋階段の真ん中の穴を飛んでいく。
僕も空が飛べたら便利なんだけどね〜。
それよりも魔法そのものを使えるようになりたいよ。
念話が便利そうだからね。
上に向かって飛んでいる間にも、どんどん壁から傀儡兵が湧き出てくる。
フェイトは片手が僕の手で塞がっているが、もう片方の手にあるバルディッシュを構える。
「バルディッシュ、フォトンランサー・フルオート!」
『Yes sir. Photon lancer Full auto fire.』
バルディッシュの自動詠唱により、フェイトの周囲に生成した発射体から、槍のような魔力弾を連射する。
それによって傀儡兵は湧き出たと同時に破壊されて行く。
「母さんを助けるんだ!こんなので私を止められないよ」
フェイトは凄いやる気だね。
両手が塞がっているから全力は出せないけど……。
これは僕が邪魔しちゃ駄目だな。
「僕はここから走って行くから、フェイトは一直線に行って!」
「でも……」
「プレシアさんを助けるんでしょ。それに、僕の足の速さはフェイトに負けるものじゃないよ」
「……うん」
その言葉に少し悩んだフェイトだけど、しっかり僕を見て頷く。
それを見て僕はフェイトの手を離し、螺旋階段の方へ飛び移る。
さて、大変だけど僕はこの螺旋階段を走って登るか。
前からは剣を持つ傀儡兵が走ってくる。
それの隙間を潜り抜けながらどんどん登って行く。
フェイトの方を見ると、傀儡兵達は武器を構えて襲い掛かっている。
「バルディッシュ、サイズフォーム。サイズスラッシュ!」
『Scythe Slash.』
傀儡兵の剣が振るわれるよりも速く、フェイトは傀儡兵の首を切り落とす。
そしてその勢いのままバルディッシュを傀儡兵達の方へフルスイングする。
「アークセイバー!」
『Arc Saber.』
それによりバルディッシュにあった魔力の光刃が、ブーメランのように回転しながら飛んで行く。
そして光刃により傀儡兵達を薙ぎ払う。
「セイバーブラスト」
『Saber Blast.』
力ある言葉により、傀儡兵達の真ん中で刃を爆発させる。
それにより連鎖的に傀儡兵達を破壊していく。
すぐに新たな光刃を出し、近づいてくる傀儡兵を切り裂く。
フェイトはけして速度を緩めずに、どんどんと飛翔して行くが、それは隙に繋がる。
完全破壊されていない傀儡兵が機能停止する前に、フェイトの背後から槍を突き出す。
フェイトは破壊したつもりだったせいか反応が遅れ、回避出来ずその攻撃が体をかすめる。
なのはのバリアジャケットだったら防げるであろう攻撃も、フェイトの薄いバリアジャケットでは防げない。
脇腹が裂け出血し、黒いバリアジャケットが赤く染まる。
「くぅ……」
フェイトは痛みに顔を歪め、動きが鈍くなったところ、傀儡兵達は一斉に襲いかかってくる。
絶え間なく繰り返される斬撃がフェイトに傷を増やす。
「フェイト!」
僕は慌ててバットを振り、フェイトの周辺に竜巻を起こす。
それによってフェイトに取り付いていた傀儡兵は弾き飛ばせた。
その竜巻が収まった時、フェイトは既に魔法を唱え終わっている。
「フォトンスフィア展開!」
フェイトの周りに魔力球が複数現れる。
これは……。
「フォトンランサー・ジェノサイドシフト!」
『Photon Lancer Genocide Shift.』
プレシアさんが使ったフォトンランサーの広域拡散射撃魔法だ。
フェイトを中心にフォトンランサーの弾幕が張られる。
それにより傀儡兵が為す術もなく大量破壊されていく。
「はぁ……はぁ……。母さんを……助けるんだ……」
撃ち終えたフェイトは魔力消費が激しかったのか、ダメージが大きいのか息を荒くしている。
しかし、上昇するのは止めない。
ちょっと無茶しすぎだよ……。
ん? 何だか上の方から何か来るな。
嫌な予感……。
ダッシュでフェイトを抱きかかえ、螺旋階段の中心部分から離脱する。
「え? な、なに?」
そこに大きな落雷が起きる。
これは海上決戦の時に撃たれた魔法!?
僕達の前に画面が現れ、エイミィさんが話し始める。
「今の攻撃はシーマ査察官の得意とする、儀式魔法により強化されたサンダーレイジです」
あぁ、だからAAA+なのにS+の魔法を撃てたのね。
「儀式魔法なので連射はできないはずです。今のうちに急げば……」
「ありがとうエイミィさん。ちょっと急いでみるね」
「うん、こっちはアースラの修理と、時の庭園に対してハッキングをしてるからね。修理はともかく、ハッキングは期待しないでね。それじゃ」
そう言い画面が消える。
でも、今がチャンスということが分かった。
「フェイト、しっかり僕に掴まっててくれるかい?」
「え、あ、タロー?」
「行くよー」
フェイトの返事を聞かずにジャンプして螺旋階段を登って行く。
「きゃーーーーー!!!!!」
悲鳴をあげながらもしっかりと僕にしがみ付くフェイト。
これならスピードアップしても落ちないな。
「ちゃんと掴んでくれているなら、まだまだ飛ばすよー」
「えっ、ちょ、タロー? まだまだ飛ばすって……?」
「GO!」
どんどんスピードを上げて、螺旋階段を登って行く。
傀儡兵が居るけど全て避けたり、足場にして進む。
そして螺旋階段を登りきり、廊下に出たところでシーマと武装局員5名がいた。
「なっ……。まだまだ来れる距離じゃなかったはずだぞ!」
こっちを見てシーマ達は驚いているけど、それどころじゃない!
「いい加減プレシアさんを離して貰えませんか?」
「か、母さんを返せ!」