第3話 下着売り場
プレシアさんとリニスを連れてショッピングモールで買い物。
そうしたらアリサと出会った。
しかも下着売り場で……。
「じゃ、タローは私の選んできたのをチェックしてね」
「わ、私のもお願いします。デザインが分からなければ色だけでもイイので……」
そう言って2人は下着を選び始める。
残された僕とアリサ……。
思わず顔を見合わせてしまったよ。
「た、タローは今日はずっとあの2人の買い物の付き合いだったの?」
「うん。朝の10時より服から始まって、やっと最後の下着コーナーだよ」
「そ、そうなんだ……」
アリサも女性だから、買い物にかかる時間はこれぐらいなのかな?
それにしてもキョロキョロとアリサは落ち着かないね。
「た、タロー!」
「ん、なんだい?」
「あ、あ、あたしの選ぶ物もチェックしなさい!」
いきなり何を言いますかこの子は……。
「どうしてそうなるんだい?」
「べ、別に良いでしょ! あたしのお願いを、聞いてくれないの?」
「良いよ。アリサのお願いならなんでも聞くさ」
「そ、それなら良いのよ。さ、行くわよ!」
そう言って僕の手を引き、お店の奥に入って行く。
アリサは真っ赤だけど、気にしちゃいけないかな?
前世から思うけど、女性の下着って色々あるよね。
ブラジャーは大概12歳ぐらいからだから、今のアリサには必要ないんだろうけど……。
「た、タロー。これはどう?」
そう言えば下着という枠組みに、ベビードールが入ってるとは失念していたな。
勿論試着して見せているわけではなく、普通に持って来て見せているだけだからね。
「金色の髪には黒が似合うね。でも、ピンクも可愛いね」
「そ、そう? じゃあ、これとこれにしようかしら……」
そう言って、また他のを見に戻るアリサ。
その間にプレシアさんとリニスが下着を持って現れた。
「タロー、どうかしら? まだまだ私はこれぐらい平気だと思うんだけど」
プレシアさんは何となく予想通り、黒色の布面積の少ない下着を持って来た。
でも、小学生に見せるものじゃないと思いますが……。
「プレシアさんには髪の毛の色に近い黒とか、薄めの紫とか似合いますよね。デザインは流石に僕にはなんとも……」
「あら、そう? じゃあ、この色で探してこよーっと」
そう言って奥に行ってしまった。
これで後は……。
「た、タロー。私にもこれ似合いますかね?」
恥ずかしそうに持って来た下着を見せるリニスがいた。
大人しめの物を持ってくるかと思いきや、ベビードールを持って来た。
子供が付けるのと、大人が付けるのじゃ随分と違うだろうに……。
「色はそう言う薄いのがリニスには似合いますね。デザインの意見は勘弁して下さい」
「タローがそう言うならこれに決めました。同じ色系のものを他に選んできますね」
そしてリニスも店の奥に行った。
もう、いくら僕でも精神的に良くないよ……。
みんながいない内にお店の外へ退避っと。
店の出入口の見えるベンチに座り休憩。
なんでこんなことになったんだかな〜。
洋服までは良いけど、さすがに小学生とは言え下着を選ばせるって……。
まぁ、いいか。
缶コーヒーを飲みながらノンビリと待つ。
とりあえず1時間経ったから、そろそろ出てくるかな?
それからしばらく待っていると、3人がお店から出てきた。
しかもプレシアさんとリニスは大量に持っているし……。
「もぅ、タロー。先にお店から出るなんて駄目よ」
「そうよ! ちゃ、ちゃんと最後まであたしが選ぶのを手伝いなさい」
「まぁまぁ、2人とも。最初選んでくれただけでも十分でしょ」
プレシアさんとアリサを宥めるリニス。
なんだこの状態……。
その後、さっきまで周った各店舗に行き、買った荷物を回収してきた。
まさかの両手に紙袋と山積みの荷物……と行くわけにもいかないので、台車を借りてショッピングモールの出口まで移動する。
「タロー達はどうやってその荷物を抱えて帰るのよ?」
「普通にタクシーになりそうだけど……」
「そ、それならもうすぐ鮫島が車で来るから、ウチの車に一緒に乗って行きなさい」
「良いのかい?」
「さっき選ぶのを手伝ってくれたから、それのお礼よ。ありがたく受け取りなさい」
アリサのご好意に甘えちゃおう。
さすがに荷物自体は重くなくても、僕の体よりも大きい荷物を持って移動するのは目立つからね。
「うん、ありがとう。プレシアさんとリニスも良いよね」
「良いわよ」
「私もです。アリサ、ありがとうございます」
そして鮫島さんが来るまで僕たちは雑談をして過ごす。
ファッションとか色々プレシアさんとアリサが言い合っていたけど、僕には良くわからないなー。
前世でも朴念仁とか言われてたぐらいだし。
あれ、朴念仁の使い方がオカシイ気がするけど……まぁ、いいか。
お迎えの車が来たのでそれに乗って帰る。
あっさりと家に着いた。
やっぱり荷物を持っての移動よりは早くて楽だ。
「ありがとうアリサ。助かったよ」
「別にイイわよ。今度は最初から一緒に付き合いなさいよ」
「うん、楽しみにしてるね」
「それじゃまた明日ね」
「うん、また明日」
そう言ってアリサと別れる。
なんだか今日の買い物は大変だったな。
さすがに疲れた……精神的に。
リビングで買ってきた物を広げているプレシアさんとリニス。
買い物中だけでなく、買った物を見ているのも楽しそうだ。
僕も一緒にリビングでノンビリとくつろいでいると、両親からメールが入る。
どれどれ……?
「今日はデートだからご飯を食べて帰るから、後はよろしくね〜」
……はぁ。
これどうしよ?
「プレシアさん、リニス。両親は御飯食べて帰るらしいから、夕飯どうします?」
「今から作るのも良いですけど、遅くなっちゃうので外食にしませんか?」
「そうね。タローは1日付き合ってくれたから、お礼にご馳走するわよ」
「お任せしますよ」
「じゃあ、決まりね。早く支度してね」
そして荷物を広げたまま、出かける支度を始めるプレシアさんとリニス。
僕はそのままでも平気だから、外に行くかな。
徒歩圏内にFOLX(ふぉるくす)と言う洒落たレストラン兼バーがあるので、そこへ行く。
ここはお客の年齢層が高く、静かに食事をしたり酒を飲んだりできる居心地のいい場所なんだ。
お店に3人で入って行くと、マスターの国見 隆弘さんが迎えてくれる。
「いらっしゃい……っと、タロー君か。こんばんは」
「こんばんは隆弘さん。今日は3人ですけど平気ですか?」
「うん、ちょっと待っててくれ」
そう言って店内を確認しに行く。
このお店は両親と何度か来ているので、マスターは僕の顔を覚えてくれている。
しかも隆弘さんはさざなみ寮の管理人、耕介さんの実家で料理修行をしたことがあり、洋食も美味しい物を作れるんだ。
そのお陰もあって人気のお店なんだよね。
「タロー君、ごめんね。今日は満席に近いんだ。でも、あの席の人となら相席に出来るんだけど、どうかな?」
そう言って隆弘さんが指し示す先には……なぜか月村家の4名がいた。
忍さんとノエルさんはこちらを見て微笑んでいるし、なぜかファリンさんは手を振っており、それを恥ずかしそうに止めようとしているすずかがいた。
あそこは貸切の大テーブルだね。
僕達3人が入っても問題なさそうだけど。
「プレシアさん、リニス。あそこのテーブルの人達は知り合いなので、2人が良ければ一緒に食べましょう」
「あら、そうなの? 私は気にしないわよ」
「私もタローとプレシアが気にしないなら大丈夫です」
「それじゃ、ご一緒しようか」
そう言って月村家の座るテーブルへ近付く。
近くに行くと忍さんが話しかけてくる。
「こんばんは。ご一緒いかが?」
「そうだね、お邪魔じゃなければ良いかな?」
僕の言葉を聞き、ノエルさんとファリンさんが椅子を引き、席を用意してくれる。
僕達3人が席に着くと、忍さんがプレシアさんに話しかける。
「自己紹介は後にして、まずはお料理を頼みましょ。私達もまだなのよ」
「そうね。このお店はタローはともかく、私達は初めてだからオススメとか教えてくれるかしら?」
「それじゃあ……」
2人が話をして、隆弘さんに注文をする。
僕達はそれにお任せだね。
僕の左右にはすずかとファリンさんが座り、ニコニコしている。
それにしても、良く知り合いと会う日だなー。