第11話 阪神ファン
はやての復学……これで学校で一緒に過ごせるね。
イレインも大変かもしれないけど頑張って貰わなきゃね。
午前の授業も終わり、お昼休みになったので屋上へ移動する。
イレインは屋上まではやてを抱きかかえて移動する。
「イレイン、ありがとなぁ〜」
「いえ、問題ありません」
「感謝するなら、手の力だけで屋上に上がったら?」
「なんでやねん! どう考えても無理やろ」
「ほら、テケテケとか壁面も登るよ」
「それ、妖怪やないか! 私はか弱い女の子なんや!」
僕はできるけど……まぁ、いいか。
「さ、ご飯にしようか」
「こら! あっさり話を止めてご飯にするって……って、みんなも?」
その言葉にアリサがため息をつき返事をする。
「タローにツッコミを入れていると疲れるわよ。それよりご飯にしましょ」
「せやかて、あんだけのことを言われたらツッコまずにはおられへんよ」
「大変だね関西
「ちゃうやろ! それを言うなら関西人! 関西汁って私はうどんか! “じん”と“じる”じゃ全然違うや無いか」
「あたし、関西のおうどん好きよ」
「向こうのはさっぱりしているよね〜。何が違うのかな?」
「それはな、関東のダシは鰹節が主になっていて、昆布や煮干などは補助的に使うんや。で、関西のダシは昆布を主体として、鰹節やイリコなどのダシを加えて使うんやで」
「へー、はやてちゃん詳しいね」
「さすがは芸人だね」
「芸人関係あらへん! しかも何で私が関東と関西のダシを説明しとるんや!?」
そして息切れするはやてに、そっとお茶を差し出すイレイン。
なかなか息のあったコンビだ。
「ありがとな」
「いえ」
「それより早く食べないと、お昼休み終わっちゃうよ」
「誰のせいでこないなってると思ってるんや……って、なんで誰のせい? みたいな顔しとるんや! アンタやアンタ! って私が差したからって自分の後ろ見るな! タローのことやで!」
「はやてちゃんは凄いツッコミなの。少しはユーノ君に見習わせなきゃ!」
ユーノもなかなか良いツッコミ持ってるんだけどな。
ボケ倒せちゃう弱さがあるってことか……。
「聞いとんのかタロー!?」
「うん、この出汁巻玉子美味しいよね」
「またダシの話が軽く混ざっとる!? ちゃうわ!」
「そだね。こっちの牛タンも美味しいよね」
「牛タンはお弁当に普通は入っとらんわ! って、本当に入っとる!?」
僕のお弁当を覗きこみ、勝手に驚くはやて。
牛タンやカレーはお弁当によく入れるでしょ。
「好物だからね。リニスも最後のお弁当だからって気合入ってるな〜」
「最後のお弁当ってどういうこと?」
アリサが首を傾げて聞いてくる。
そう言えば説明してなかったかな?
「あ、リニスは調べ物のためしばらく家にいないんだ」
「そうなの?」
「うん、おかげで明日からお弁当をどうしようかと……」
「お母さんは作ってくれないの?」
不思議そうな顔ですずかが聞いてくる。
まぁ、頼めば作ってくれそうなんだけど……。
「今、居候しているプレシアさんが作ってくれるらしいんだけど、最近料理を始めたばかりだから、どうなるかわからないんだよね」
「それはご愁傷さまね。あ、あたしので良ければ少し分けてあげるからね」
「ありがとうアリサ」
「べ、別にイイわよ」
アリサは照れてそっぽを向いてしまった。
そこにはやてが混ざってくる。
「私のお弁当はイレインだけでなく、私も作っとるんやで。だから、私のお弁当も食べてええよ」
「はやては料理がとても上手ですよ。私がいない間1人でやっていたのが良く分かります」
イレインがはやての言葉を後押しする。
「料理が得意なんだね。凄いな〜」
「むっ!」
なんだか反応するアリサ。
どうしたんだろ?
「僕はカレーぐらいしか美味しく作れないから尊敬するよ」
「そやろ。もっと褒めてもええんやで」
「さすがは料理だね。練習すれば誰でも作れるんだ」
はやてはズルッと滑るリアクションを取る。
「そっちか! 普通は料理ができる私を褒めるべきやろ!」
「そうなの?」
「不思議そうな顔で見るな! ほんと、タローは訳わからんわ……」
はやては手のひらを額に当て、呆れている。
その横でアリサにすずかが耳打ちをしている。
「アリサちゃん。ここは手料理で押してみたらどうかな?」
「でも、あたし料理は出来ないわよ」
「何事も練習あるのみだよ! はやてちゃんに負けちゃうよ」
「それは嫌ね。帰ったら料理長に聞いてみるわ」
「うん、私も応援してるね」
いくら小声で耳打ちしても、念話すら聞こえる僕の耳には届くんだけど……。
まぁ、いいか。
なんとか昼休み中にはやてはお弁当を食べ終えた。
みんなは余裕だったよ。
そして何故か僕がはやてに怒られる。
不思議だな〜?
その後、午後の授業も終えて帰宅となる。
「僕はリトルリーグの練習に参加するから、放課後はしばらく遊べないんだ。ごめんね」
「それは残念ね。でも、しっかり次はスタメンで出なさいよね」
「うん、任せておいて」
アリサの言葉に僕は頷き返事を返す。
やはりスタメン落ちは辛いわ。
先発出場してこその野球だからね。
「代打で活躍してると八木って呼ばれるようになるで」
そして十字を切って手を合わせ、神様に祈るようなジェスチャーをするはやて。
「それは阪神○イガースの代打の神様、八木選手のことでしょ!」
「ほぅ、タローは阪神タ○ガースも知っとるんかい」
「スポーツなら全般行けるよ。はやては?」
「私は阪神ファンやからね。それ繋がりで野球は行けるで」
「あの、普通野球が最初で、その繋がりで阪神なんじゃ……」
すずかの優しいツッコミをスルーして、自信ありげに胸を張るはやて。
まだ小学生だから無いでしょ。
そんなことを思ったら、はやてに睨まれた。
女はみんな思考を読めるのか!?
そんなこんなでみんなと別れ家に着く。
直ぐに練習の準備を済ませ、河川敷の球場へ向かう。
そして、チームメイトたちとの野球の練習を遅くまでやり、帰宅する。
これを毎日繰り返しているので、放課後にアリサ達となかなか遊べない日々が続いている。
しかし、ジュエルシード事件の関係で結構抜けちゃってたから、そんな僕がスタメン入りしたら反感を買うだろうしね。
今は信頼を取り戻すためにコツコツ頑張るしかないな。
それにみんなとは学校でも充分会えるし、メールや電話でも会話ができる。
ちなみに次の日からのプレシアさん特製お弁当は、食べ物だったから食べれたよ。
みんなに少しづつオカズも貰ったけどさ。
だが、飲み込みがいいのか、金曜日には随分と美味しさを感じるようになってきた。
そのことをプレシアさんに伝えると、飛んで喜んでいたけどね。
あっという間に週末です。
土曜日はプレシアさん達の引越しとなります。
僕もお手伝いをしていますけど、基本的にデバイスの中に入れるなら僕はいらないんじゃないだろうか……?
まぁ、いいか。
そんな訳で引越しはすぐに終わり、さざなみ寮にプレシアさんの部屋が出来ました。
202号室がプレシアさん用で、203号室がリニス用ということらしいです。
しかしフェイトが戸籍が手に入る前に来た場合、202号室にプレシアさんとリニスが住み、203号室にフェイトとアルフが住むことになる予定だそうだ。
それなら、お互いの使い魔が小型動物モードになれば、部屋の広さに余裕があるからね。
そう言えばリニスとユーノは向こうでどうやって生活しているんだろう?
そのまま疑問をプレシアさんに聞いた所、ちゃんとビジネスホテルが借りられる環境を整えてあるし、お金もリニスに渡してあるそうだ。
犬小屋ならぬフェレット小屋と山猫小屋に住んでるかと思ったよ。
まぁ、自活力は強そうだから、放置しても意外と平気っぽいんだけどさ。
引越し先のさざなみ寮では軽めのパーティーがあった。
プレシアさんは結構驚いていたね。
僕はそこで今まで会ったことのない人達とも挨拶を交わした。
結構バラエティに富んだメンバーだね。
管理人、獣医、猫又、警察関係、退魔師、狐、漫画家、HGS……。
「いや、そこのプレシアさんを含めりゃ、魔導師ってのが増えるんだよ」
「それに娘さんにその使い魔のオオカミ……あんたらも十分変わってるよ」
リスティ 槙原さんと漫画家の
ちなみに仁村真雪さんは売れっ子の少女漫画家で、ペンネームを草薙まゆこと言うそうだ。
そして妹に
その研修が終わると、HGS能力者を集めた全国規模の特別レスキュー隊に入れる。
内容としては、消防の救助隊と自衛官の混ざったものらしい。
HGS能力が使える人は稀で、さらにここに所属する人は少ない。
要するに全国規模とはいえ、かなり少数精鋭になるようだ。
そりゃ、超能力が使える救助隊は便利すぎるからね。
真雪さんの少女漫画はアリサ達の部屋に、もしかしたらあるかも知れないね。
本が好きなすずかやはやてのほうが持ってる可能性は高そうだけど……。
今度聞いてみようかな?