第13話 写真撮影
今日はみんなではやての家へ遊びに来ています。
しかもはやてがお昼ご飯をご馳走してくれるというので……。
「ほな、料理が出来上がったで〜。タローは運ぶの手伝ってな〜」
随分前から台所からイイ匂いがしてきており、お腹の減りが刺激されていたんだよね。
そしてご指名だからソファーから立ち上がり台所へ向かう。
「はい、来ましたよ。どれから運べば良いのかな?」
「そっちに置いてあるのから頼むわ。くれぐれもこぼさんようにな」
「うん、分かったよ」
指示されたものからお皿や料理を運ぶ。
リビングのテーブルはあっという間に料理で埋め尽くされた。
「凄い……」
「あたしもこれぐらい頑張らないと……」
「はやてちゃん料理美味しそうなの」
三人娘は並んだ料理を見て、各々感想を言っている。
たしかにこの料理は凄いな。
煮物焼物揚物とバラエティに富んだ料理の数々。
一つ一つがとても美味しそうだ。
「はやて、この料理1人で作るの大変だっただろ」
「うん。でも、昨日のうちに下拵えしておいたから、そこまででもないんよ」
「そっか〜、わざわざありがとうね」
「いややわ〜。私とタローの仲やないの」
そう言ってはやては手をパタパタと振る。
そこにすずかが入ってくる。
「タローくんとはやてちゃんは、ボケとツッコミという仲でしたよね」
「誰と誰が漫才コンビやねん!」
相変わらずキレの良いツッコミですな。
反応が早いはやてを見て、すずかはニコニコしている。
完全にわざとだね。
「ほら、漫才やってないで早く食べましょ」
「はやてちゃんが作ってくれた折角の料理が冷めちゃうの」
呆れ顔のアリサに、真面目に相打ちを打つなのは。
すずかが遊びに走るとこの2人がストッパーになるんだね。
「ほな、食べようや」
「「「「「「いただきます」」」」」」
そして食事が始まる。
食べてるとみんなから聞こえる美味しいとか、どうやって作ったんだろうの言葉。
はやての料理は美味しく、僕は無言で箸を進める。
「そう言えばはやての誕生日って来月って聞いたけど、何日なの?」
「ん? 6月の4日やで」
「月曜日か〜。それならその前日は予定空けときなさいよ。パーっと盛大にはやての誕生パーティーやるわよ!」
「アリサちゃんナイスアイデア! ケーキは私の家に任せてね」
「じゃあ、私は何を用意しようかな〜」
アリサの質問から一気に誕生パーティーまで話が進む。
「僕もその日は試合が入ってるわけじゃないから大丈夫だよ」
「タローは当然来るに決まってるでしょ! つ、ついでに聞くけど、試合はいつなのよ?」
「うん? 試合はその日の前日だよ」
「それならみんなで応援に行ってあげるわよ。すずか達は平気?」
「うん、私は大丈夫だよ」
「私も平気やで」
「私も大丈夫なの」
アリサの問いかけに答えるみんな。
「みんな予定は平気だから応援してあげるから、ちゃんと活躍するのよ」
「そうやでタロー。私の誕生日なんやから、ホームランでもプレゼントしいや」
「はやてちゃん……。タロー君はそう言うと本当に打つんだよ」
「にゃははは。タロー君は手加減無いの」
あれ、なんだか酷い言われようだな。
僕はホームランよりも内野安打の方が見ている分には楽しいと思うんだけど。
ホームランってピッチャーとバッターだけで終わっちゃうけど、内野安打なら捕球する守備、そこから投げてベースでのクロスプレイなど色々と見る場面があるんだよ。
まぁ、派手さはホームランには敵わないのかもしれないけどね。
「応援に来てもらえるんじゃ、期待に答えられるように頑張るよ」
「そのためにはしっかり練習に出ておきなさいよ。今度は最初から出てくれないと、応援する方は張り合いがないじゃない!」
「うん、ありがとうねアリサ」
確かに応援に来て貰っておきながら、1打席しか出ないんだと申し訳ないよね。
これから放課後はちゃんと練習に参加しよーっと。
食事も終わりみんな大満足。
食器などはイレインが全部片付けてくれて、高速食器洗いを見せる。
これは僕に対する挑戦か!?
まぁ、いいか。
「あのな、みんなで写真撮りたいねん」
片付けを終えたイレインがリビングに戻ると、急にはやてがそんな事を言ってくる。
「脈略がないの」
「まぁ、気にせんといて。それよか、ええかな?」
「私は良いけど、はやてちゃんイキナリどうしたの?」
「実はな……」
はやてはこの通り一人暮らしなんだが、父の友人のおじさんが財政管理などをやってくれている。
その人はイギリス人で、名前をギル・グレアムと言う。
毎月最低1通の手紙のやり取りがあって、今回の手紙には学校に行けるようになったこと、友達が出来たことなどを書く。
それで折角だから制服を着て友達と一緒に写真を撮りたいそうだ。
「制服で写真撮りたいなら、僕達も制服で来れば良かったかな?」
「そうだよね……それなら明日の朝、学校にいく前に撮るとかはどうかな?」
「それなら学校を背景にして撮れるの」
「じゃあ、今日は手紙だけ書いておいて、明日写真を撮って現像が出来次第、手紙と一緒に送れば良いんじゃない?」
次々と出てくる意見。
最初から制服を持って来てと言えば良かったんだろうけど、頼み難かったのかな?
「みんな……ええの?」
「大丈夫だよはやてちゃん。みんなで少し早めに通学するだけなの」
「そうよ、友達なんだから気遣い無用! なのはが起きれるかが心配なだけよ」
「もー、アリサちゃんってば〜。私は今、朝からジョギングとかしているから早起きは得意だもん」
「まぁまぁ、2人とも……」
アリサとなのはの会話に慌ててすずかが仲裁に入る。
どっちも本気で言ってる訳じゃないけどさ。
「そう言う訳で、はやても早起き……は、イレインが起こしてくれるから平気か。イレインよろしくね」
「かしこまりましたご主人様。寝ていたらそのまま持って行きます」
「それじゃ私はパジャマのままやないの! 制服でみんなと写真撮る前提が崩れとる!?」
「じゃあ、制服で寝れば?」
「なるほど。それならそのまま連れて行っても……って、阿呆!」
「そうだよタロー君」
僕らのやり取りにすずかが入ってくる。
さすがは仲裁を得意とする……って訳じゃないだろうけどさ。
「そうや、すずかちゃん。タローに言ってやってや」
「制服で寝たら皺になっちゃうよ」
「って、すずかちゃんもかいな!」
ビシ! って音が聞こえるようなツッコミを入れるはやて。
さすがは芸人さんだな。
「にゃははは。漫才なの」
「なのは……それ、褒め言葉でもフォローでもないわよね……」
笑っているなのはに呆れるアリサ。
すずかのあれは天然なのかな?
その後はゲームをやったり、お喋りしたりと、時間があっという間に過ぎて行った。
そして明日は早目に学校の校門前に集まる約束をしてみんなと別れた。
プレシアさんもいないので、今日からは母のお弁当に戻った。
別に食べられないものじゃないから良かったんだけどね。
いつもよりも早めに学校へ向かう。
校門前に到着すると、はやてとイレインが既に居た。
「おはよー。随分と早めに出たんだけど、それより早いって凄いね」
「おはようさん。ついテンション上ってしもうて、早く起きてしもうたんよ」
「おはようございます。はやてを残念ながらパジャマのまま連れて来れませんでした」
「それはもうええねん。いつまで引っ張る気や!」
「はやてが早起きをしようとする度にですが」
「今回だけで終わらへんの!?」
気が付くとボケとツッコミになるな。
さすが芸人の血は濃いという事か……。
その後みんな集まったので、鮫島さんがカメラマンでイレインも入って写真撮影。
このまま鮫島さんが現像と焼き増しをしてきてくれるそうです。
意外とみんなと写真って取る機会がないから嬉しいね。
「そう言えば新しく出来たお友達のフェイトちゃんとビデオメールでやり取りしているから、今度はそれにみんなで付き合って欲しいの」
「へー、普通に通信じゃダメなんだ」
「うん、研修中は外部との接触は許可がないとダメらしくて、終わるまではこういうものまでならとリンディさんが許可を出してくれたんだ」
「研修って何やってる子なんや?」
はやての思わぬツッコミによりフリーズするなのは。
まぁ、そんな言い訳が簡単に出てこないだろうけどさ。
「フェイトは海外に住んでいて、母親だけが日本に住んでるんだよ。この間はやての家に来たプレシアさんね」
「あー、プレシアさんの子なんか〜」
「それで今後、日本にフェイトが引っ越してくるんだけど、今いる学校が厳しくて日本語とか日本の常識などを研修として受けさせられちゃうんだって」
「ふむふむ、大変やな」
「全寮制のお嬢様学校だから大変みたいだね。だからそれが終わるまでは電話出来ないんだよ」
「なるほどな〜。それじゃ、今度はみんなでフェイトちゃんに、研修応援ビデオメールを作ろうか」
「「「うん」」」
ふぅ、これで誤魔化されてくれるなんて、はやてはありがたいな。
結構不自然な説明なのに……。
でも、アリサとすずかが疑問を出さなければ、意外と納得してくれるのかもしれないね。
スルーしてくれているアリサとすずかに感謝。