第16話 マッサージ
アリサと2人で潮干狩りに行ったんだ。
大量にあさりやはまぐりが採れたんだけど、疲れたようで帰りにアリサは寝ちゃったよ。
僕を自宅に届けてくれたんだけど、まだアリサは寝たままで起きないね。
鮫島さんによろしく言ってもらうようにお願いして帰宅。
母に大量の貝を渡したら、早速砂抜きを始めたよ。
そのままじゃ食べられないからね〜。
部屋で休んでいるとなのはから電話があった。
「もしもし、タロー君?」
「うん、なのは? どうかしたのかい」
「ちょっとお願いがあるの……」
なのはは言いにくそうに口ごもるけど、お願いなら僕の答えは1つだからね。
「いいよ」
「えっと……え、いいの!?」
「うん」
僕の返事になのはは軽く溜息をつき、呆れたような声で続きを喋る。
「なんだか悩んだ私が馬鹿みたいなの……。それでお願いの内容なんだけど、ユーノ君にお弁当を届けたいんだけど、どうすれば良いかな?」
今ユーノがいるのは無限書庫……つまり管理局内と。
プレシアさん経由からリンディさんに連絡を取ってもらうしかないかな?
また、大変なお願いばかりして申し訳ない気もするんだけど……。
「分かった。とりあえず僕が知り合い経由で当たってみるね。行くなら僕達が学校を休みの日曜日、つまり明日だな。これから当たってみるから、なのははお弁当頑張って作ってね」
「うん、全力全開で頑張るよ!」
元気のいい声で返事をしてくる。
その全力全開が不安を煽るが気にしないでおこう。
「それじゃ、また。明日の朝までに連絡するね」
「うん、おやすみなの」
なのはとの電話を切り、早速プレシアさんに電話をする。
まぁ、プレシアさんは電話を持ってないから、さざなみ寮そのものに電話するんだけどね。
愛さんが電話に出たので、プレシアさんに代わってもらうようにお願いし、しばらくするとプレシアさんが電話に出る。
「タロー? プレシアよ。何の面倒事かしら?」
少し声に元気が無いけど、疲れてるのかな?
それにしても面倒事って……当たってるだけに失礼な。
「簡単に言うと、なのはが
「あ、相変わらず面倒な事を簡単に言ったわね……。無限書庫そのものに入るのは難しいでしょうけど、管理局のある土地に行くのはなんとかなるわ。まぁ、リンディに頼むのだけどね」
笑いながらあっさりとプレシアさんは答える。
「明日のお昼に間に合うようにするから……明日の10時頃にさざなみ寮に来てもらえるかしら?」
「良いけど、まだリンディさんに言ってないのに、僕達に許可を出しちゃっていいの?」
「良いのよ。リンディなら許可はしてくれるわ。連絡とかするから切るわよ」
「うん、ありがとう。それじゃお願いします」
「それじゃまた明日ね」
あっさりと話が進んでいるのがちょっとびっくりだね。
なのはにメールで今の件を伝えておいた。
直ぐに了解と簡単な返事が来た。
もしかして待っていたのかな?
次の日、潮干狩りで採ってきた貝の量が多いので、さざなみ寮へお裾分けする貝を持って早めに出発!
耕介さんに貝を渡し、プレシアさんのところへ顔を出す。
「プレシアさん、おはようございます」
「あら、おはよタロー。随分と早いのね。時間を間違えたのかしら?」
プレシアさんは起きてはいたんだけど、顔には疲労の色が見える。
使い魔を大量に動かしているから魔力枯渇気味なんだろうね。
そのために早く来たんだけどさ。
「プレシアさんが疲れているようだから、マッサージをしに来たんだ」
「私のために? そんなに疲れてるわけじゃないわよ」
そうは言うけど、声は疲れているし、顔色も少し悪い。
ここはちょっと強く押さなきゃね。
「まぁ、色々お願いを聞いてもらってるから、それのお礼だと思ってよ。ささ、横になってくださいね」
少し強引にベッドの方へ誘導して、ベッド上にプレシアさんをうつ伏せに寝かせる。
「それじゃ行きますよー」
「もぅ、強引なんだから……。でも、ありがと」
気合を入れてマッサージをする。
疲労が取れるように……魔力が回復するように……。
そんな気持ちを込めて肩から背中、腕や脚を揉みほぐす。
10分ぐらい経った時点で、プレシアさんは寝てしまった。
やっぱり疲れてるんじゃないですか。
その後30分ぐらいマッサージを続け、終わってからプレシアさんを起こす。
「プレシアさん。そろそろ10時になっちゃいますけど、起きてくださいな〜」
「ひゃい!? え、あっ、た、タロー?」
まだ寝ぼけてるみたいだね。
「はい、タローですよ。どうですか、疲れは少し取れましたか?」
「えっと……あれ? 疲れは取れてるし、魔力もかなり回復しているんだけど……」
「あ、それなら良かったです。そんな気持ちを込めて、一生懸命マッサージをしたのが効果あったのかな〜」
プレシアさんは起き上がってベッドに腰掛けるが、不思議そうに首を傾げている。
「マッサージで魔力が回復とかって訳が分からないわ? でも、タローだし……ブツブツ」
なんか言ってるけど、放っておこう。
とりあえず時間だしね。
しばらくするとプレシアさんが我に返り、なのはがやって来た。
かなり大きなバスケットを持っているんだけど……。
「おはようございます、プレシアさん。タロー君、早いんだね」
「あら、おはよ」
「おはよー、随分と張り切ったんだね」
「にゃははは。早起きしちゃって頑張ったの」
なのはは照れくさそうに笑う。
ユーノのためなら頑張ったって訳だね。
プレシアさんの部屋で暫く待つと、室内に魔方陣が現れリンディさんがやって来た。
僕となのはを連れて行くだけではなく、プレシアさんも一緒にリンディさんに着いて行く。
そして4人でアースラに到着したけど、プレシアさんは大丈夫なのかな。
「プレシアさん、一緒に来ちゃって平気なの?」
「ええ、ミッドまで一緒に行くとアレだけど、アースラの中までなら平気よ」
「私は何も見てませんものね」
プレシアさんの言葉に合わせて、リンディさんがそんな事を言う。
これ、上手く誤魔化すだけなんじゃ……。
まぁ、いいか。
久し振りのアースラの艦内だけど、ミッドまでは3時間もかからず着くそうだ。
本来の航行速度だともっとかかるそうなんだけど、今回はワープも使うみたいだし……。
前回の事件の後に新しい航路を見つけ、随分と近くになったようだ。
地球に次元ゲートを作ればもっと時間短縮になるらしいんだけど、それを付けるには色々と理由を作らないといけないらしい。
特に地球は管理外世界だしね。
帰りはワープを使わないので時間がかかるって言われたけど、行きが早ければ問題ないんだよね。
なのはのお弁当がユーノのお昼に届けば良いだけだしさ。
とりあえず食堂に通され、のんびり待つように言われた。
だけど、何だかプレシアさんの落ち着きが無い。
「どうしたのプレシアさん?」
「な、なんでもないわ」
「そうなの? 随分と落ち着きが無いように感じるけど……」
「何だかソワソワしてるの」
「え、あら、そ、そうかしら? そんな事ないわよ……」
目を逸らし、声も明らかに動揺している。
そんなプレシアさんを見ていると、食堂の扉が開く。
そこには……。
「母さん!」
「フェイト、落ち着きなって!」
「ふぇ、フェイト!?」
扉からフェイトが駆け込んできた。
アルフはそれを追うように走りこんでくる。
「こら、キミ達! 少しは落ち着かないか!」
「まぁまぁ、クロノ君。久し振りなんだから仕方がないよ」
そして怒り気味のクロノと、それを宥めるエイミィさんも食堂に入って来た。
そしてプレシアさんに抱きつくフェイトと、それをしっかり受け止めるプレシアさん。
なるほど、久し振りの再会でプレシアさんは緊張していたのか。
「フェイトちゃん! アルフさん!」
「なのは!」
「おー、タローもいるじゃないか。それならそうと、先に言っておいとくれよ」
「た、タローもいるの!?」
フェイトはプレシアさんに抱きついたまま真っ赤になっている。
誰も居ないと思って抱きついたから、見られてるのが分かって恥ずかしくなったのか?
「や、フェイトにアルフ。久しぶりだね。元気してた? それとクロノにエイミィさんもお疲れ様です」
「あたしゃ元気だよ! でも、アースラにはカレーがなくってねぇ。ミッドにもないから寂しい限りだよ」
「そっか。地球に戻ってきたらカレーを作るか」
「おぉ、そりゃ嬉しいね〜。期待してるよ」
アルフはそう言って尻尾をパタパタ振っている。
カレーのことが好きになってくれたようで嬉しいね。
クロノが僕の側に来て、僕とハイタッチする。
「タローは相変わらず元気そうだな」
「クロノも変わりないようだね」
顎に手を当て、首を傾げながらクロノは答える。
「そうか? 最近はアースラに嘱託魔導師研修生が2人いて、それの面倒を見ているから忙しいはずなんだが」
「クロノ君ってば、そんな事言って〜。結構楽しんでるの、みんな知ってるんだよ」
エイミィさんの言葉に慌てるクロノ。
「ば、ばかを言うな。僕は常に真剣にだな……」
「はいはーい。妹みたいな子が出来て良かったですね〜」
「エイミィ!」
ははは、相変わらずだな。
久し振りに会えて嬉しいや。