第17話 次元野球
無限書庫にいるユーノになのはがお弁当を届けたいために、現在僕たちはアースラの艦内に入る。
アースラではプレシアさんとフェイトの久しぶりの再開!
アルフ、クロノ、エイミィさんも一緒にやってきて、一気に騒がしくなる食堂。
騒がしくなり、冷やかされたのを誤魔化すためにクロノは咳払いをして話を始める。
「今日は無限書庫で調べ物をしているユーノになのはがお弁当を届けに行くって話だけど、そんな事のためにアースラを使わないで欲しいものだな」
「ごめんなさいなの……」
「まぁ、今回は偶然だが、アースラの補給でミッドに行くところだったから、あくまでそのついでと言う事だぞ」
クロノはそっぽを向き照れくさそうにそんな事を言う。
一応名目上の理由を作ってくれたのか。
その言葉になのはの表情が明るくなる。
「ありがとうなの」
「べ、別に感謝される筋合いはない。今回はたまたま、偶然なだけだからな。次はそう簡単に行かないぞ」
「うん」
エイミィさんがこっそり僕らの耳元で話をしてくれる。
「本来補給はもう少し後なんだけどね。クロノ君がワープを使ってまでエネルギーを消費させて、補給の理由を作ってくれたんだよ」
「さすがクロノ。何だかんだと優しいな」
「うんうん。でも、お姉さんとしては、その甘さで悪い人に引っかからないか心配なんだけどね」
ニコニコしながら嬉しそうに答えるエイミィさん。
何だかんだとクロノの事を気にするのが楽しいのかな。
「ワープ中は模擬戦も訓練も出来ないから、嘱託魔導師研修生は休憩とする」
「「はい」」
クロノの言葉にフェイトとアルフが返事をする。
だけど、フェイトはプレシアさんに抱きついたままだから、どうも緊張感がないね。
クロノも呆れてるよ。
その後プレシアさんから離れたフェイトを混ぜて、みんなで雑談。
僕らの最近の事とか、嘱託魔導師試験でフェイトとクロノが戦ったとか。
はやてのことを話したら、研修が終わればフェイトも同じ学校に行くから、友達になれると良いなーって話になった。
まぁ、フェイトの優しい性格なら大丈夫だろうし、はやてなら基本的になんでも平気だろう。
「地球か……結構面白そうな土地だよな」
「どうしたのクロノ君?」
クロノのつぶやきにエイミィさんが反応する。
「いやぁ、僕はミッドの賃貸マンションに母さんと住んでるけど、更新時期が今年いっぱいだったからさ」
「うんうん、それで?」
「今のままだと、こうやってタローと会うのにも時間が掛かるし、タロー達がミッドに用があっても、アースラとかを使わないと来れないんじゃ大変だからさ。僕が地球に住めばそこに次元ゲートを作れるなーと」
クロノの言葉にポンとエイミィさんが手を叩く。
「そーすれば、無限書庫で調べ物の必要がある時に、ユーノ君を借りやすいと」
「そうそう、ユーノは正直検索系に関しては優秀を通り越して、バケモノだ。なんでも、無限書庫検索用の魔法を開発したとかマリーが言ってたぐらいだ」
「ふぇ〜、それは凄いね。無限書庫をデータベースとして使えるなら、色々と便利になるもんね」
エイミィさんが驚いている。
ユーノのやってることってそんなに凄いことなんだ。
「あそこは管理できないような魔空間だからな。司書としてユーノを雇えないものか……」
「うーん、管理局員としてユーノ君をスカウトするとかしかないんじゃない?」
「そんな強制はしたくないんだが……。でも、ちょっと相談してみるか。今後の進路としてね」
「そうだね。なのはちゃんがいずれ魔導師としてやって行くなら、管理局に入らざるを得ないからね」
「それに併せてユーノもって……。全く、嫌な考え方だな」
「そうだねぇ。人手不足を考えると、強引な考えの人も多いし……」
「「はぁ〜」」
クロノとエイミィさんが話をしながら、最後はため息で締めくくった。
なのはが魔導師としてやるなら管理局に属さねばならないのか。
進路のことだから僕は口を出せないけど、小学生にそんな話をしてもしょうがないよね。
そんな2人を見ていると、フェイトが僕の側にやってきて話しかけてきた。
「タロー、元気だった?」
「あぁ、フェイト。嘱託魔導師試験合格おめでとう」
「あ、ありがとう……」
フェイトは照れくさそうに答える。
「一発合格って凄いね。試験は難しかったかい?」
「うーん、1日がかりで色々やったけど、最後のクロノとの模擬戦が一番難しかった。勝てなかったし……」
フェイトはそう言って肩を落とす。
クロノに勝てなかったのが悔しかったのか。
僕はフェイトの頭を撫でる。
「クロノはベテランの執務官なんでしょ。そんなに簡単には勝たせてくれないさ」
「う、うん……」
フェイトは俯きながらそう答える。
イマイチ反応が悪いな。
「前回は負けたけど、次は勝てるように頑張れば良いんじゃ無いか? 僕も応援してるしさ」
「うん! 今アースラで研修中、何度かクロノと模擬戦やってるけど、まだ勝率は3割ぐらいなんだ」
「お、凄いじゃないか」
「クロノの戦い方は理詰めで堅実だから、そこをどうやって崩すかが問題なんだ……。でも、いつかはちゃんと勝てるように頑張るから、タローは応援してくれると嬉しいな」
「おう! 僕はフェイトの味方だからね。新しい魔法とか戦術をプレシアさんやリニスに相談してみたら? 意外と面白いアドバイスが聞けるかもしれないよ」
「そうだね。うん、頑張るよ!」
フェイトはそう言って顔を上げる。
僕もそれに合わせて頭を撫でているのをやめたんだけど、ちょっぴり残念そうな顔で見られてしまった。
僕が無でるのは気持ち良いんだろうか?
そんな事を思ってるとアルフもやって来た。
「タロー、次元世界の野球ってすごいんだ!」
「何だ、脈略もなく……。でも、詳しく教えて欲しいな」
「うん。実は……」
管理世界ごとに番号が付いているのは前にも話したと思うが、簡単に例を出すとミッドチルダは第1管理世界。
その管理世界ごとに1つのチームを作り、管理世界対抗の野球……つまりそれがメジャーリーグと言い、そのチームに選ばれた選手を敬意を評しメジャーリーガーと言う。
ミッドそのものにも野球はあり、そこは
それって、既に普通の野球じゃないよね。
そしてメジャーリーグとなれば、球場そのものが次元規模になり、普通の球場はもとより、無重力球場、超重力球場、竜巻が常に発生している球場など、一流の魔導師でさえそこにいるのは厳しい環境もあるらしい。
「それで、この間見たメジャーリーグの試合は大人気の無重力球場だったんだ。アレは面白いよー」
「そうだね。一進一退の攻防から、まさか儀式魔法を上手くバレないように組み、球場全体に雷を落とすとは思わなかった!」
アルフとフェイトは野球のことを話して興奮して来ている。
二人共野球が好きになってくれたのは良いんだけど……。
あれ? 次元世界の野球ってこういう感じなんだね。
詳しいルールとか知りたくなってきたぞ。
「私も昔は良く見に行ったものよ。カツオ・イソノ選手が凄くてね〜」
あ、プレシアさんも混ざってきた。
「あー、次元世界No.1プレイヤーですね。あの選手のお陰でミッドはメジャーリーグでもトップを走れる感じですよね。襲名制なのに毎回いい選手が来るんだよ〜」
……エイミィさん?
「そう言えば艦長室って立ち寄る世界に合わせた風にレイアウトを変えるんだけど、普段は野球一色なんだよ。家の中も野球色が強くって……」
クロノ!?
「あら、じゃあ今度リンディと野球観戦に行こうかしら」
「はいはーい。それならあたしも行きたいでーす」
どうしよう、何だか僕が置いていかれている雰囲気だな。
なのはも訳が分かってないはず……。
「ユーノ君も野球観戦好きなのかな? それなら一緒に……」
……駄目だこりゃ。
この後、リンディさんが食堂に現れ、この騒ぎが終結するかと思いきや、余計に熱が増してしまいました。
さらに、休憩に来たアレックスさんとランディさんも話に乗り、ギャレットさんや武装局員の人達も混ざり、大盛り上がりになってます。
どうしてこうなった……?